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- わたなべみきこ
- 出産を機にライターになる。『シャーマンキング』『鋼の錬金術師』『アイドリッシュセブン』と好きなジャンルは様々。

この4月から放送が始まったアニメ『あかね噺』(原作:末永裕樹先生・作画:馬上鷹将先生)。元落語家の父を持つ女子高生・桜咲朱音が、落語界の最高位“真打”を目指す本格落語物語です。
落語協会所属の真打・林家木久彦さんが落語監修として入っているだけでなく、毎話ごとにプロの落語家たちがキャストとして出演しており、落語界バックアップのもと制作されていることがうかがえる本作。
筆者は元々落語に興味があったことから本作を観始めたのですが、豪華声優陣による「ガチ落語」がとにかくすごいんです。ぜひもっと多くの人に広がってほしいと強く感じています。
そこで本稿ではそんな『あかね噺』で披露されるキャスト陣の本気落語について語らせていただきます。アニメにおける演技とはまた違ったアプローチで展開される落語のお芝居は声優ファン、アニメファン必見です!
本作で欠かせない要素と言えばもちろん「落語」。落語界を舞台にした物語ですから、メインキャラクターたちはほぼ全員がプロの落語家、あるいは落語家を目指す人物です。
作中でも解説される内容なのですが、落語は喋りで魅せる芸。落語独特の語り口調はもちろんなのですが、複数の人物が登場する噺(演目)においては、落語家1人で何人もの登場人物を演じ分ける技術が必要となります。
第2話は、小学生の頃から6年間稽古を続けてきた朱音が初めて高座で落語を披露するシーンがメインとなるのですが、朱音を演じる永瀬アンナさんは本物の落語のような口調で複数人を演じ分けるだけでなく、まんじゅうを食べる場面も本当に食べているかのようなリアルな音で表現されています。
そんな朱音が憧れる父・阿良川志ん太が落語を披露するのは第1話。福山潤さんが声を担当されているのですが、艶のある声で登場人物の男女と語りを演じ分けつつ、さらに志ん太自身のモノローグもまた違った声色でこなしているのです。
加えて、流れるように語り続けながらも、決して聴きづらいことはなく、福山さんの演技力や声優としての技術の高さに改めて気付かされました。
また、朱音の兄弟子として登場する阿良川享二(CV.阿座上洋平)と阿良川こぐま(CV.小林千晃)も、阿座上さんと小林さんそれぞれの良い声を活かしつつ、享二は真面目で堅物、こぐまは勤勉で博学というキャラクターの個性を持ったうえで、落語のお芝居が加えられており、こちらもつい見入ってしまいます。
残念ながら尺の都合上、落語のシーンが通して流されることはないのですが、ぜひ全部聴いてみたい、と本物の落語にも興味がわいてくるほどです。
私がすごいと思うのは、キャラクターの声を演じたうえで、落語の登場人物の演じ分けをしているという点。キャラクターの声から逸脱してはいけない制約の中で、さらに他の人物を演じ分けるというのは、素人は想像するだけでわけがわからなくなりそうです。
それに加えて、落語独特の語り口調や言い立て、聴きやすさなどもキープしなければならないでしょうし、それが並大抵の技術ではないことは想像に容易いでしょう。
そしてやっぱり声が良い。声優さんたちの良い声による落語は、流れるような喋りを聞いているだけで心地よく、ずっと聴いていたくなります。
見事な落語を披露する声優陣ですが、それもそのはず。メインキャストである永瀬さんや江口拓也さん(練磨家からし役)、高橋李依さん(高良木ひかる役)たちは、作品のために1年かけて落語の稽古を重ねていたのです。
1年間の稽古には密着取材が入っており、その模様は公式YouTubeで公開されています。初挑戦の落語に奮闘する声優陣の姿を観ることができるのですが、その内容がこれまたすごいんです。
そもそも、朱音もからしもひかるも、根っからの初心者としてではなく、ある程度腕のある若手落語家として登場します。そのため、声優陣は落語界の階級で言う「二ツ目」くらいの腕を備えていなければいけません。
落語指導を担当する林家木久彦さんによると、通常「二ツ目」になるまでに3~5年の年月を要するそう。その技術を永瀬さんたちは1年弱で身に着けなければならないのです。
驚いたのは、本当に1から落語を学んでいるということ。私はてっきり作中で演じる演目を出てくる順番に稽古しているものだと思っていたのですが、キャスト陣が最初に教えられていたのは「つる」という演目。第6話が放送された現時点ではどのキャラクターも披露していない演目です。
ネタバレしたくないので薄目で見ながら調べてみたところ、どうやらこの「つる」は原作でもかなり先の方で登場する演目のようで、おそらく今期の放送には含まれない範囲。
「つる」は落語の演目の中でも10分程度と比較的短いものであることから、最初の課題として出されたのでしょう。付け焼刃のような稽古ではなく、しっかりと落語をものにするための稽古が行われていることが感じられました。
特に主役を担う永瀬さんはまるで本物の落語家のように様々な落語の稽古を付けてもらっており、本気で取り組み成長していく姿はさながら“ジャンプの主人公”、まさに朱音そのものです。
さらに、稽古開始から6ヶ月経過したところで、永瀬さんたちは初高座にも上がっています。観客となるのは数十名のアニメ関係者。本物の落語家のように着物姿で扇子片手に座布団へ上がって一席披露しており、その様子も公開されています。
もちろん、落語指導を受けるのは永瀬さんたちだけではありません。福山潤さん、阿座上洋平さん、小林千晃さん、山下誠一郎さんらも基礎的な部分から落語の稽古をつけてもらっています。
ベテラン声優、人気声優と呼ばれる彼らが本気で落語に向き合う中で感じられるのは、声優と落語家の違い。「声で表現する仕事」という意味では共通している双方ですが、難しさや技術面での違いも知ることができ、『あかね噺』という作品や落語そのものの面白さにも気付くことができる動画となっています。
江口拓也さんや高橋李依さんらのキャラクターはこれからの登場となるため、おふたりの稽古の様子はまだ公開されていませんが、アニメの放送に合わせて順次公開されていくでしょう。
おふたりがどのように落語の腕を磨いていったのか、そしてその成果がアニメでどのように活かされているのか、今から放送が楽しみで仕方ありません。
私は知らない世界に気軽に飛び込めるのがアニメの良いところだと思っているのですが、『あかね噺』はまさにそんな作品ではないでしょうか。
興味がなかった、知らなかった落語の世界を知るワクワク感が感じられる作品だと思います。そして、人気声優たちがこれほどまでに本気で磨いた落語の腕を堪能できるなんてこんな贅沢なことはないと思うんです。
YouTubeで公開されている「落語稽古編」とともにアニメ『あかね噺』をいっしょに楽しんでみませんか?

1990年生まれ、福岡県出身。小学生の頃『シャーマンキング』でオタクになり、以降『鋼の錬金術師』『今日からマ王!』『おおきく振りかぶって』などの作品と共に青春時代を過ごす。結婚・出産を機にライターとなり、現在はアプリゲーム『アイドリッシュセブン』を中心に様々な作品を楽しみつつ、面白い記事とは……?を考える日々。BUMP OF CHICKENとUNISON SQUARE GARDENの熱烈なファン。
