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夏アニメ『ワールド イズ ダンシング』鬼夜叉役・花守ゆみりインタビュー

「苦しいのにやめられない。むしろ苦しいからこそ向き合ってしまう」表現者の苦悩と葛藤を肌で感じられる作品──アニメ『ワールド イズ ダンシング』鬼夜叉役・花守ゆみりさんインタビュー

笑っているように見えて泣いていて、怒っているように見えて楽しんでいる

──アフレコを通して、鬼夜叉という人物をどのように捉えるようになりましたか?

花守:現場でもよく「鬼夜叉って本当に役者だよね」という話を土屋さんとしていました。鬼夜叉は自分自身と向き合い続けているのに、最後まで自分自身を掴みきれない存在なんです。彼が追い求める「花」も、自分ではなく他者の目を通して初めて見えてくるものなんですよね。

実際、鬼夜叉も能や自分自身の中にある「花」がどこにあるのかを、生涯をかけて探し続けたのではないかと思っています。けれど、その答えを自分では見つけられなかったのかもしれない。そんな話を世阿弥について考えながらしていたこともありました。

だから私は、鬼夜叉を「こういう人間だ」と定義するよりも「同じ悩みと戦い続ける表現者」として捉えています。そのほうが声の芝居としても、見ている方により生々しく伝わるのではないかと思って演じていました。

──単純に一言で説明できる人物ではないのですね。

花守:「カリスマ」と言い切るのも違う気がしますし、かといって犬王のような圧倒的な才能の持ち主と断言するのも少し違う。私たちが普段友人と接するように「こういう人だよね」と簡単に定義できないまま、一人の人間として向き合い続けたキャラクターだったと思います。

「いろいろな面を持っている」という言葉でも少し足りない気がするんです。本当に一人の“役者人間”として存在していて「こういう人が実際にいたのかもしれない」と感じてもらえるような人物になればいいなと思いながら演じていました。

──監督からも、その人物像について何かディレクションがあったのでしょうか。

花守:アフレコ前の読み合わせの段階で、監督から「この子は笑っているように見えて泣いていてほしいし、怒っているように見えて楽しんでいてほしい」と言われたんです。表に見えている感情の奥には常に別の感情が流れていて、それが絶えず揺れ動いているような子であってほしいと。だからきっと「簡単には掴みきれない存在でいてほしい」という意図があったんだろうなと思います。

私自身も「今は怒っているように見えるけれど、本当は何を考えているんだろう」とずっと考えながら演じていましたし、鬼夜叉と関わる登場人物たちも同じように彼を見つめていたのではないかと思います。言葉にするのは難しいのですが、鬼夜叉は「私たちがずっと考え続けてしまう人物」でした。そういう意味でもとても特別なキャラクターだったと思います。

──鬼夜叉が「なぜ舞うのか」を問い続ける姿も印象的でした。

花守:鬼夜叉が「舞う意味」を考える最初のきっかけは、白拍子の出来事や観阿弥とのやり取りにあったと思っていて。鬼夜叉はもともと「良いものだ」と感じていたから舞っていたはずなのに、観阿弥から「芸には対価が伴う」という現実を突きつけられる。その瞬間に、自分の中にあった価値観が一度壊されるんです。でもその経験こそが「なぜ舞うのか」という問いの出発点になったのではないかと。

これは私自身も経験があって「これだ」と思ったものに対してまったく違う答えや結果が返ってくることがあるんです。一度積み上げたものが崩れて、また考え直して、新しく築き直していく。そんな「破壊と再構築」の繰り返しが、ものづくりの根っこにあるものだと思っています。

鬼夜叉にとって、その最初の大きな経験が観阿弥や白拍子との出来事だったのではないでしょうか。そしてその先にある見えないゴールを背負いながら、彼は問い続けていくんだと思います。

──今回の収録を経て、花守さんご自身も改めて「なぜ演じるのか」を考えられたのでしょうか。

花守:実際、私たちも表現を仕事にする中で「芸には対価が伴う」ということを身をもって感じています。でもその一方で鬼夜叉が最初に抱いていた「本当に良いものには値段を付けられない」という感覚も、今でも持ち続けている気がするんです。だからこそ、彼の葛藤は決して他人事ではありませんでした。

上手く言葉にできないのですが、その痛みや迷いを、現場のみんなが実感しながら演じていたと思います。

鬼気迫る映像に「本気で向き合わなければ振り落とされる」

──完成した映像をご覧になって、どのような感想を抱かれましたか?

花守:まず驚いたのが、私たちがまだ仮映像の段階でアフレコをしていたころから、すでに作品の熱量が尋常ではなかったことです。キャラクターが「生きている」と感じました。

特に白拍子の舞のシーンは、絵コンテの時点ですでに圧倒されました。「鬼気迫る」という言葉がぴったりな迫力があって、見ているこちらまで追い立てられるような感覚があったんです。実際に現場でも、役者陣が顔を合わせるとまず「見た?」という話になるくらいでした(笑)。

私たちも、この作品では最初から最後まで“生きている芝居”をしたいと思って臨んでいました。だから毎週フィルムを見るたびにワクワクしていましたし、同時に武者震いのような感覚もあったんです。「この映像と本気で向き合わなければ振り落とされる」と感じるほど、作品そのものに力がありました。

──映像からも強い刺激を受けながら収録されていたのですね。

花守:刺激も受けましたし、実際のアフレコでは絵コンテから少し離れたお芝居になった場面もありました。監督からは「キャラクターが生きた結果として出てきた感情なら、自由に演じていい」と言っていただいていたんです。私たちも「そこまで言っていただけるなら、本当に自由にやりますよ?」と(笑)。

そして完成した映像を観たとき「こんなに表情が変わっていたんだ」と驚きましたし、絵コンテ以上に豊かな感情が描かれていて衝撃を受けました。私たち自身が予定調和ではない芝居をした自覚があるからこそ、「どうしてこんなにもぴったりな表情が付いているんだろう」と不思議に思うほどだったんです。何人か悪魔に魂を売ったんじゃないかと思うくらい凄い映像でした(笑)。

──(笑)。それほどまでに映像とお芝居が噛み合っていたのですね。

花守:本当にそう思います。この作品は「舞う」という行為を通して、言葉では表現しきれない感情を届けなければいけない作品なので、すごく難しい挑戦だったと思います。

でも監督をはじめとするスタッフの皆さんからは「絶対にやり切る」という強い意志が伝わってきました。現代を生きる人たちに能の魅力を届けるんだという覚悟が、フィルム全体からひしひしと感じられて。実はアフレコが終わった今でも少し悔しい気持ちが残っているんです。

──その悔しさというのは、映像の完成度の高さに対するものなのでしょうか?

花守:そうかもしれません。もちろん私たちも全力で挑みましたし、完成した作品はみんなで作り上げたものですが、それでもなお悔しさを覚えてしまうくらい、監督たちが本気で挑み続けた跡が伝わってくるフィルムなんです。だから「悔しい」という感情が出てくるんだと思います。それだけ素晴らしい作品です。

原作の三原和人先生が描きたかったことはもちろん、アニメだからこそ挑戦できた表現も数多く詰め込まれていて、完成した映像を見ることで改めてその思いが伝わってきました。監督をはじめとするスタッフの皆さんが最後の最後まで作品と戦い続けたことが感じられる、本当に熱量のある映像作品になっていると思います。

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