声優
豊崎愛生 現役20年で講師として後輩の道標へ。OPALISで見つめた未来の仲間【独占インタビュー】

先輩ゼロの環境から始まり、今は後輩の道標へ。「好き」の力で第一線を20年走り続ける豊崎愛生さんが、初の講師体験で見つめた“未来の仲間たち”とミュージックレインの未来──『OPALIS』特別ワークショップを終えた豊崎さんに独占インタビュー

 

これまでの蓄積を「OPALIS」で受け継ぐ

──技術的な話や方法論を伝えながら、同時に実践もしていく形が面白かったです。一方で、声優さんたちは、そういう考え方や技術をどこで受け継いでいくんだろうというのも個人的に不思議で。今日豊崎さんが伝えられたことは、どのように学ばれてきたのでしょうか。

豊崎:これはあくまで私の体験ですが、私がミュージックレインに入った時は、事務所に先輩がいなかったんですね。シンガーの方はいらっしゃったんですけれど、役者や声優の先輩は一人もいなくて。なのでレッスンでは、いろんな事務所の役者の方や講師の先生方に教えていただきました。

それこそ、「OPALIS」でアフレコレッスンのワークショップをされている小島幸子さんも先生として来てくださったことがありますし、いろんな事務所のいろんな役者さんから、マインドも技術も含めて教えていただいたんです。

もちろん、実際の現場に行って学ぶこともありますが、最初の頃は事務所のレッスンでいろんなことを感じて、キャッチして、それを活かしていくということをやっていました。

今回の「OPALIS」というオーディションは、私の同期であるスフィア(寿美菜子・高垣彩陽・戸松遥・豊崎愛生のユニット)の4人がいて、その後輩にTrySail(麻倉もも・雨宮天・夏川椎菜のユニット)、さらに後輩にDayRe:(相川奏多・橘美來・宮沢小春・夏目ここな・日向もかのユニット)がいて……と世代が続いている中での開催なんです。

だから、これから入ってくる子たちに対して、そういうものをちゃんと伝えていけたらいいなと思っていますし、実際に伝えていける環境もある程度整っていると思うんですよね。

またテンカラットさんには、私たちがわからない部分、実写の俳優さんとしての基礎だったり、身体を使った表現だったり、モデルとしての経験だったり、そういった知識やスキルを持った方々がたくさんいらっしゃるので。

だから今回は、そういうものを伝えていくという意味でも、私たちも協力しつつ進められたらいいなという思いがあります。

──ある種、豊崎さんやこれまでの先輩方が積み上げてきたものを、満を持して今回の「OPALIS」で次の世代へ伝えていく、ということでもあるんですね。

豊崎:そうですね。先程の通り、私や寿美菜子、高垣彩陽、戸松遥は、事務所に先輩がいなかったので、いろんな事務所の先輩方からお芝居を教えていただきました。それはミュージックレインだけじゃない、諸先輩方からの経験値や積み上げてきたものでもあります。

今思うと……というか当時も思っていましたが、すごく贅沢で、ありがたい経験をさせていただいたなと思います。本当に恵まれた環境でした。

──今回のワークショップでは、「楽しむこと」「気持ちを作る」というフレーズが何度か出ました。

豊崎:お芝居って、心を動かすことが一番なのかなと思います。きっと俳優さんも同じで、演じるということは、「自分の心をどれだけ動かすか」というところに向かっていくと思うんです。

なので、すべての表現の土台は気持ちの部分にあるという点は、伝えたかったことの一つですね。「気持ちが動くからこういう言い方になる」「こういう気持ちだからこの表現になる」とか、そういう順番があるんじゃないかと実感しています。

でも声優の仕事って、そこが逆に捉えられがちな部分もあると思うんですよね。

──ワークショップでも「気持ちが動くから、セリフが変わる」とお話されていました。一方で、声色や話し方の変化が一般的なイメージとして強くなりますよね。

豊崎:もちろんいろんな声が出せることは大事なんですが、これから役者を目指す人たちには、まず気持ちを育てることを大切にしていただきたいです。

そのために、いろんなことを想像したり、普段の暮らしの中で感じたり、台本の行間を読んだり。言い方もやり方もいろいろありますが、考える作業そのものがお芝居の面白さだと私は思っています。

だから、そういう部分を大事にして育てていくことを、一番忘れないでいてほしいなと思いました。

──そういった考え方は、お芝居をする声優として普遍的なものなんでしょうか。声優の仕事の幅が広がった今だからこそ大切になってきているかもしれませんが。

豊崎:基本的には声優であろうと俳優であろうと、お芝居のベースってとても近いというか、同じような部分にあると思うんですね。核になる部分というのは共通している、普遍的なものだと思います。

私のワークショップではやっていませんが、ボーカルの先生方が腹式呼吸を教えていらっしゃったという話も聞きましたし、滑舌など基礎的なものもいろいろあると思います。

それにプラスアルファで、今は仕事の幅も、役者の数もすごく増えている。その中で自分らしさとか個性をどれだけ出せるか、役という枠の中でも「自分がやる意味」をどれだけ乗せられるかというのが、ここ最近はすごく大事だなと考えています。

──切実というか、すごくシビアな話でもありますよね。

豊崎:そうですね。だから、そういう「この人じゃなきゃダメだ」と思われる役者さんが、「OPALIS」から生まれたら良いですよね。……って、私の立場で偉そうなことは言えないんですけど(笑)。

でも私自身、日々仕事をする中で、「私じゃないとダメな理由ってなんだろう」「この役を任せていただいた意味ってなんだろう」ということを考えながらお芝居をしています。だから、そういうオリジナリティのある人たちが、それぞれ個性豊かに育っていくことが、「OPALIS」というオーディションを行うの意義のひとつなのかなと個人的には思っています。

 

唯一無二の役者って?

──唯一無二性、オリジナリティみたいなものが、大事な要素になってくるんですね。

豊崎:実際は戦国時代なので……。というか「声優戦国時代」みたいな言葉も、使われ始めてからもう長いですよね(笑)。なんなら、私がデビューした時から戦国時代って言われていたような気がします。「もう終わらせてよ!」って思うんですけど(笑)。

実際、今も戦国時代真っただ中みたいな状態で、サバイバルなんですよ。参加者の皆さんにも、ネガティブな意味ではなくお話したんですけれど、声優になった後も役を取るためには毎回オーディションがあります。もちろん私も9割方はオーディションです。

作品数も増えている一方で、役者の数も増えていると思うし。そういう中で、オーディションに受かって役をいただける役者になる、って思うと唯一無二性というか、オリジナリティは大事な要素の一つなんじゃないかなと思います。

それは自分自身にも刺さりながら、「うっ……!」って思いつつワークショップでも話しましたけど(笑)、永遠の課題ですね。

オリジナリティとか個性の出し方って本当にいろんな方法があると思うので、うまくなることだけが目的ではなくて、それぞれのいいところをどんどん伸ばしていくことが大事なんじゃないかなと思います。

今日も「声色を変えられなくて……」と悩んでいた参加者の方がいましたけど、もちろん声色は変えられてなんぼというか、できるに越したことはないですよね。でも、それ以上に個性的であることや、その人の人生が乗ったお芝居ができることとか、意外とそういうところで選ばれたりするんです。

──豊崎さんにもそういう経験がありますか?

豊崎:私自身の経験でも、自分が狙っていたところとは違う理由で役が決まる経験はありますね。例えば隠しきれない芋っぽさとか(笑)。

地元の徳島の大自然で育った感じとか、「おばあちゃん子っぽい雰囲気が滲み出ている」と言ってもらったこともあって。自分では出しているつもりがなくても、人柄や人生がにじみ出ていて、そこがキャスティングの理由になることもやっぱりあるんです。

だから、うまくやろうとするよりも、自分しか持っていない声と人生経験をベースに役を演じることができたら、きっとそれは持ち味になると思います。

それに、オーディションに落ちたからといって人格を否定されているわけではないので、そこは自信を持って、「俺ならこうする」「私ならこうする」という気持ちで役作りができると、すごく楽しくなるかもしれません。

──シビアな面もありつつポジティブなお話でもありますね。どんな経験も無駄じゃないというか。徳島で育ってきたことが、そのまま役に活きることもある。

豊崎:例えば、私がヒロインデビューさせてもらった作品とか、今見返すと、もう下手で下手で! 「本当にごめんなさい」って思うんです(笑)。こんなの聞いてらんねぇ!って(笑)。

でも、その役を今の年齢やキャリアで、もう一度同じようにやってくださいと言われても、できないと思うんです。デビューしたてのフレッシュさだったり、純粋さやまっすぐさだったり。今だったら絶対そんなセリフの読み方はしないけれど、その役にはすごく合っているとか、そういうことが起きるんです。

だから、そういう役と出会えること自体がすごく幸せなことだなとも思います。先輩方を見ていても「これは本当にハマり役だな」と思うものって、やっぱりその声優さんご自身の生き様を感じますから。

──人生が乗っているというような。

豊崎:はい。説得力を感じられるんです。だからこれから活躍していく皆さんにも、自分らしさというか、そういう部分を大事にしてほしいなと思います。

あくまで私個人の意見ですが、「OPALIS」では、そういうものを大切に、尊重していきたいなと考えています。

今回ワークショップという形でしたが、もし誰かが選ばれて所属になって、一緒に何かを作ったり、お仕事をしたり、あるいは今日みたいに何かを教えたりする機会があった時には、そういうことができる事務所でありたいなと思います。

──ワークショップでの質疑応答も印象的でした。「どのように自己プロデュースをするか」「自分の見られ方について」「落ち込んだ時に気持ちを切り替えられない」といった悩みがたくさん出ていて。豊崎さん自身は、そうした不安とどう向き合ってこられたのでしょうか。

豊崎:凄く切実だし、「本当にそうだよね」って私自身共感しながらお話を聞いていましたね。それこそ今ってSNSも普及しているし、数字で見えるものもたくさんあるじゃないですか。だから、見え方を気にするとか、人からどう見られているのかって、昔に比べるとすごく当たり前の感覚だと思います。

その中で、私が意識しているのは、「自分で決めたことにする」ということなんです。

──進む道や、選択などですか?

豊崎:はい。結果がどうであれ、そこに至るまでの経緯で、「あの人がこう言ったから」「誰かに言われたから」ではなく、自分で決めたと思う。もちろん他人の意見は聞くし、吸収もするんですけど、一番大事な部分は自分で決めるのが良いんじゃないかなって。

そもそも、私は皆にいろいろ相談するタイプなんですよ。「どうだった?」「大丈夫だった?」とか、「やばかったよね?」とか(笑)。今でもマネージャーさんに相談します。細かいことから、大きなライブのコンセプトをどうするかまで。お芝居のプランも「これだったらどっちが伝わると思う?」と、第三者の意見がほしくて。

でも、最終的に決断するのは自分。最後に決めたのは自分だ、という感覚を持っておけば、全部自分の責任になるので、後悔しないんですよね。

──誰のせいにもできない状況にするというか。

豊崎:あとから「ああすればよかった」って思うこともあります。それが人に言われて決めたことだったり、周りの評価を基準に決めたことだったりすると、「本当は私はこっちが良かったんだけどな」という気持ちがすごく残ると思うんです。

反省はするけれど、後悔はしないようにしたい。そのためには、大事なことは全部自分で決める。「自分で決めたことだから」と思えるようにしておく。そうすると誰のせいにもできないし、「じゃあしょうがないか」って思える気がしていて。

──逆に少し軽くなるというか。

豊崎:そうですね。そういうふうに考えるようにしています。オーディションって、当たり前のように日々落ちるんですよ。今週だって二つくらい落ちていると思います(笑)。

でも、最終的に「私はこうやりたかったからこうやった」というところまで考えた上で、結果として「今回は違いました」「合いませんでした」と言われて落ちたなら、もうしょうがないなって思えるんです。

自分で決めるということは、その前段階でめちゃくちゃ考えるし、いろんな人の意見も聞いているんですよね。その過程があると後悔が残らないんです。いろんなことを試した上で、最後は自分で決める。

そうしておけば、「しょうがなかったかな」と思える。そういう気持ちで切り替えるようにしています。

 

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