
恐竜の色が判明したのはイカのおかげ!? 2026年夏アニメ『プラノサウルス ガチコセイブツ部』をきっと見たくなる! 爬虫類研究家・富田京一先生による“ガチ”の恐竜&古生物講座
恐竜の色彩研究の最大の立役者はイカ!?
──ここまでお話を伺ってきて、おそらく読者の中には、どうして骨の化石から様々なことを推測できるのか気になっていると思います。
富田:実は、姿かたちだけでなく、現在ではかなりの種類の恐竜の正確な色や模様までわかってきています。
例えば「ミクロラプトル」という小型の恐竜は、全身がカラスのようにツヤのある真っ黒な色をしていたことが分かっています。また、「アンキオルニス」という恐竜も全身の色彩が解明されている代表例です。
──それらはどのようにして解明されたのでしょうか?
富田:恐竜の皮膚がそのまま化石になった「ミイラ化石」と呼ばれるものが、それなりの数が見つかっているからです。そのため、ヒョウ柄やホルスタイン柄といった模様を持つ恐竜がいたり、肌の質感も色が濃いところはざらざらしていて、逆に色が薄いところはきめが細かいといったことは結構前から研究されていました。
しかし、柄やコントラストがわかっても、ヒョウ柄の恐竜は本物のヒョウのように黄色と黒だったのか、それともピンクと黒だったのか、といったことまではわかりませんでした。
その色の研究が進んだのは2010年頃のことで、この色彩研究を大きく進展させた最大の立役者は「イカ」なんです。
──イカですか!?
富田:これには生き物が持つ色素の仕組みが関係しています。恐竜や哺乳類などの「四肢動物(4つ足の動物)」の色素は、細胞そのものが色を持っているわけではありません。細胞の中に含まれる微細な色素の粒が、アメーバの足のようにビヨーンと伸び縮みすることで色合いが変わる仕組みになっています。
イカの場合は事情が異なります。イカの色素は色を担当する細胞が個々に存在していて、その細胞は肉眼でも確認できます。しかも、イカは約1億5000万年前から姿や仕組みがほとんど変わっていない古代生物でもあります。
そこで研究者たちは、羽毛が生えた始祖鳥(しそちょう)の化石と同じ場所で見つかった、非常に保存状態の良い「1億5000万年前のイカの化石」を目に付けました。そのイカの化石に残されていた色素の粒と、現代のイカの色素の粒を比較したのです。
イカの色素は赤や青といった色ごとに粒の形状が異なっているので、古代のイカと現代のイカのデータをマッピング(照合)したところ、古代のイカの色彩を綺麗に再現することに成功したんです。
この成果をもとに中国やイギリスの大学が研究に資金提供してくれることになり、高精度の電子顕微鏡を使わなければ絶対に見ることのできないような、わずかに化石に残された恐竜の色素の粒を解析していきました。
こうして記念すべき第1号の成功例となったのが「シノサウロプテリクス」と「アンキオルニス」という2種類の恐竜です。解析の結果、シノサウロプテリクスは茶トラの猫のような柄で、アンキオルニスは体は白と黒のモノトーンで、頭と頬はタンチョウヅルのように赤い配色だったことがわかりました。
──色を照合する作業は大変そうですが、そこまで細かにわかるようになったんですね。
富田:例えば、トリケラトプスの祖先に近い系統の「プシッタコサウルス」は発情の合図や意思表示を行うために、肛門の周りだけが真っ黒だったことがわかっています。このように、色だけでなく生態や行動までが最新の研究で判明してきています。
ちなみに、現在までに色や模様が解明した恐竜のほとんどは、火山の噴火に巻き込まれて命を落とした個体です。火山の噴火によって恐竜の死体を貪り食うような肉食獣や虫たちも一緒に死んでしまったことで、死体が荒らされずに無傷のまま残り、化石の痛みがありませんでした。また、死体を覆った火山灰のきめが細かいため、化石の保存状態が非常に良かったという要因もあります。
現時点では、こうした保存状態の良い化石に限定されていますが、この条件に当てはまる地層からはティラノサウルス系統の化石も発見されています。ティラノサウルスの先祖に近い系統で羽毛が生えた恐竜の色彩の解析も始まっているので、もしかしたら数年後にはティラノサウルスの具体的な色も明かされるかもしれません。
──そういて解明された色彩が「プラノサウルス」の恐竜の色のベースになっているのでしょうか?
富田:そうですね。既に色がわかっている恐竜のデータに基づいて「近い種類の恐竜だから、このカラーリングは生物学的にあり得るだろう」という推測を立てて色を考えています。ギガノトサウルスのプラモデルの場合、尾に縞模様のシールを貼っていただきますが、この背中から尻尾にかけての模様は私が提案したものです。
他にも、その恐竜が「夜行性」か「昼行性」かが眼球からわかるように、瞳の形を縦長や丸、あるいは横長にするといったディテールも決めています。
恐竜の肉は美味しい?
──ここまで色や生態などがわかっているとなると、もしかして「恐竜の味」まで予測できたりするのでしょうか? 某有名格闘漫画では、研究者がティラノサウルスの肉をステーキにして食べたら「ちょっとスジっぽいけどイケるじゃん。」と感想を漏らすエピソードが印象的でした。
富田:一概に全ての恐竜が美味しかったとは言えませんが、多くの恐竜は現代の人間が食べても美味しかっただろうと私は考えています。
基本的に、恐竜はワニと鳥の中間に位置する生き物です。そのため鶏寄りの恐竜もいれば、ワニ寄りの恐竜もいますが、どちらの肉も基本的には美味しかったと思います。あとはスッポンもかなり恐竜に近い動物なので、味わいがスッポン鍋寄りの恐竜もいたかもしれませんね(笑)。
ただ、肉の味というのは何を食べていたかによっても変わってきます。昔の学説では、恐竜はソテツなどの毒性やアクの強い古代植物ばかりを食べていたと言われていました。実際、ステゴサウルスなどは、あえてそういった植物を大量に食べることで、自らの肉を強烈に不味くして天敵から身を守っていた可能性もゼロではありません。
──たしかに、昔の植物は今と異なるので美味しくなさそうですもんね。
富田:いえ、最近の研究では、昔とは植物環境に関する解釈がガラリと変わってきています。恐竜時代は古い順に「三畳紀(さんじょうき)」「ジュラ紀」「白亜紀(はくあき)」と続きますが、白亜紀と現代とで植物の世界はほとんど変化がありません。
映画『ジュラシック・ワールド』シリーズとのコラボで発売されたティタノサウルスのパッケージ絵がまさにそれを表しています。ティタノサウルスが暮らしていた当時のインドは、地球で一番の離れ小島だったので、植物の侵入が遅く、原始的な古代植物しか生えていない「僻地」だと思われていました。
しかし、近年発表された論文を基に当時のインドの植生をマッピングし直してみると「イネの仲間」や「ホウレンソウの仲間」といった、大きな分類レベルでは現代の私たちがよく知る植物たちが繁栄していたことが判明したんです。大きなグループのレベルでは、現代に至るまで絶滅したものは一つもありません。現代の地球に生えている植物とほぼ同じもので覆われていたと考えられています。
恐竜の環境といえば「原始的なシダやソテツ、イチョウばかりが生い茂る世界」としてイメージしがちですよね。しかし、それはあくまで恐竜時代の初期のことであり、後期になるとほとんど現代と同じ世界なんです。
実は、最初に監修で回ってきたティタノサウルスのパッケージ絵は、昔ながらのイメージ通りのシダ植物やソテツばかりが描かれたものでした。そこで、僕の方で当時のインドの「海岸線から山の中腹にいたるまで、どの標高にどの種類の植物が生えていたか」を図面に起こして、それを基にバンダイスピリッツの皆さんに修正していただいたんです。
──恐竜はシダ植物に覆われている場所に住んでいるイメージだったので意外です。
富田:誰もが知るティラノサウルスの場合、彼らは北米西部に生息していましたが、当時の植生は現代のアメリカのバージニア州とほとんど変わりません。当時、ティラノサウルスが住んでいたのは北米のモンタナ州やワイオミング州のあたりになりますが、その地層を調べると、当時の植物相が現在のバージニア州とほぼほぼ一致するんです。
──うすると、ティラノサウルスを現代のバージニア州に連れてきても生きられるということですか……?
富田:もちろん!! もし白亜紀の恐竜をタイムマシンなどで現代に連れてきても、環境的には問題なく生きていける種が大半を占めています。
さらに言うと、ティラノサウルスは分布域が南北にまたがっていますが、ティラノサウルスの化石がたくさん見つかった場所の当時の気候は、日本だと新潟県から静岡県くらいでした。
──「プラノサウルス」のラインナップにある「ティラノサウルス降雪地バージョン」や「熱帯雨林バージョン」も、単なるバージョン違いとかでは無かったんですね。
富田:「ティラノサウルス降雪地バージョン」のように本当に白かったかまではわかりませんが、雪が降る環境で生きていたのであれば、こんな色に変化していた可能性は大いにあるし、思考実験としても非常に面白い試みだと思っています。
──ティラノサウルスのような大型の肉食恐竜の場合、誰かに食べられる心配が無さそうなくらい強いですが、それでも環境に溶け込む「保護色」である必要はあったのでしょうか?
富田:彼らは獲物を追いかけて狩りをするので、植物食恐竜に「あっ、ティラノサウルスだ!」と気付かれたら逃げられてしまいます。植物食恐竜のように防衛のための保護色である必要はありませんが、ある程度は環境に擬態していないと捕食できないですからね。
むしろ、恐竜で恐ろしいのは「視力」です。眼の大きさや視神経の太さから考えると、哺乳類とは比較にならないくらい視力が良いんです。これは爬虫類全体の特徴でもありますが、ちょっとやそっとの擬態では見抜かれてしまいます。
そして、眼が良いということは、彼らが色を使ったコミュニケーションを行っていた可能性も高いので、「プラノサウルス」でも体の一部にワンポイントつけています。パートナーや仲間に気付いてもらえるようなワンポイントを付けつつ、全体としては保護色だったのかなと推測して、今回のカラーリングをバンダイスピリッツの皆さんと作っています。
──「プラノサウルス」のこだわりってすごいですね。
富田:他にも「プラノサウルス」のパッケージのこだわりはあって、例えば水中に描く魚なども「その時代、その場所に確実に泳いでいた種類しか出さない」という方針で作っていただいています。だからバンダイスピリッツの皆さんは本当に大変だと思いますね(笑)。
「オルドビス紀」に思いをはせて
──アニメ本編のように、もし先生が白亜紀やジュラ紀など好きな時代へ行けるとしたら、どの時代で何をしたいですか?
富田:それは贅沢な質問ですね(笑)。
1つは「羽毛の起源」を見てみたいです。と言うのも、昔はワニの仲間にも毛が生えていた可能性があるんです。だから、三畳紀の初期の頃に行って、ワニと恐竜と翼竜の共通の祖先たちがいつ頃から体に羽毛をまとい始めたのか、その始まりをこの目で直接確かめてみたいです。
もう1つは、地球史全体の話になりますが、恐竜時代よりもさらに遥か昔の「オルドビス紀(約4億8700万年前〜4億4300万年前)」を見てみたいです。
今の図鑑ってカンブリア紀はいっぱい生き物とか載っているじゃないですか。三畳紀やペルム紀なんかも目立つ動物が出現するのでページ数が多いんですけど、オルドビス紀というのはカンブリア紀と、動植物が大々的に上陸を始めたシルル紀の間の時代で、古生物の図鑑で一番ページ数が少ない不遇の時代なんです(笑)。
我々の先祖たる魚類はカンブリア紀の段階で適応放散(さまざまな種類に分かれる進化)をしていますが、オルドビス紀は魚類のバリエーションに乏しくて地味なのでページがもらえないわけです。
ただ、当時の海には10メートル以上のイカやタコの先祖や、現代のシャチくらいの大きさのオウムガイの仲間もいたりする面白い時代なんです。
今から20年ほど前になりますが、私は自宅でタコやイカも飼育していました。彼らはとにかく学習能力や知的好奇心が強くて、人の動きを真似してビンの蓋を開けたり、明確に自己認識ができる生き物なんです。そんな特性を持つイカやタコの祖先たちが大繁栄したのが「オルドビス紀」です。
イギリスのBBCなどでも取り上げられていますが「人間とは違う仲間で、知性のようなものが最初に進化したのがオルドビス紀ではないか?」という説もあります。そんな知性の始まりみたいなものを、オルドビス紀を観察したら見られるのではないかという興味はありますね。
──「プラノサウルス」のアニメやプラモデルをきっかけに、改めて恐竜に興味を持つ方も多いと思います。そんな方々に向けて、最後に先生からメッセージをお願いします。
富田:この「プラノサウルス」というコンテンツならではの面白さは、自分の好きな学説を再現できる点です。例えば、スピノサウルスは最近の研究で「2本足で歩いていた説」と「4つ足で歩いていた説」の2つの学説があるので、それぞれの学説に基づいた商品を展開しています。
▲プラノサウルス スピノサウルス
▲プラノサウルス スピノサウルス1915
頭部に長いトサカを持つパラサウロロフスであれば、トサカの大小がオスメスの個体の違いではないかと言われているため、両方のパーツが付属しています。あわよくば2個買って、オスとメスを並べて遊んでほしいですね(笑)。
このように、ただ説明書通りに作るだけではなく、自分で学説を考えながら作る楽しみが「プラノサウルス」にはあります。
──自分だけの博物館みたいで楽しそうですね。
富田:あと、これはメーカーが公式には謳っていない裏設定のような話ですが……。
実は、体験会などで配られているヴェロキラプトル以外の「プラノサウルス」のプラモデルは、全て「同一の縮尺(同スケール)」で統一されています。これから先、どんなサイズの恐竜が出るか分からないので公式には伏せられていますが、基本は全て同じ縮尺です。
ですから、部屋にずらりと並べて自分だけのミニチュア博物館を作るのも良いですし、あるいは昔の怪獣のソフビ人形で遊ぶように対決させて戦わせるのも良し。ちゃんと並べて遊べる大きさでデザインされていて、それ故に商品によって値段が少しずつ違っているので、そんな楽しみも内包されているコンテンツなんです。
大げさな言い方になってしまうかもしれませんが、この「プラノサウルス」をきっかけに生き物の体の仕組みや構造を学んでいただくと同時に、もっと知りたいという知的好奇心が湧いたのであれば、その時は本物の骨のディテールを見に博物館へ足を運んだり、実際に化石の発掘現場を見学しに行ったりしてほしいですね。
恐竜と比較しながら、動物園や野山で生きている動物を見るのもありだと思います。実際に生きている動物たちを観察するようになると、今度は「彼らが普段食べている植物は何だろう?」「周りの自然環境はどうなっているのだろう?」と視点が変わってくるはずです。きっと自然と人間との関わりにまで視野が広がっていくと思います。
化石に代表される太古の自然物も、今を生きている動植物も、それを取り巻く地球上の様々なものに目を向けるための最初のきっかけになってくれたら、個人的に嬉しく思います。
関連情報
金のプラノサウルスが当たる!キャンペーン実施中
>>https://bandai-hobby.net/site/plannosaurus/goldplanno2026/
『プラノサウルス』公式サイト
>>https://bandai-hobby.net/site/plannosaurus/
『プラノサウルス ガチコセイブツ部』公式サイト
>>https://bandai-hobby.net/site/gachikoseibutsubu/
作品情報




































