
力の強さや怖さ、そして優しさのバランス。演じる中で意識したという“優しさのグラデーション”──TVアニメ『鬼の花嫁』連載インタビュー第3回 鬼龍院玲夜役 梅原裕一郎さん
シリーズ累計750万部を突破し、待望のTVアニメ化を果たした和風あやかしシンデレラストーリー『鬼の花嫁』。本作は人間と“あやかし”が共に暮らす日本を舞台に、家庭に居場所をなくしていた女子高生・東雲柚子と、あやかしの頂点に立つ鬼の次期当主・鬼龍院玲夜の運命の恋を描く物語です。
優れた能力と美しい容姿を持つあやかしたちは、社会の中核を担い、絶大な権力を誇る存在。そんな彼らが本能で見つけ出す、たったひとりの運命の相手が「花嫁」です。妖狐の花嫁である妹・花梨と比べられ続け、家庭の中で傷ついてきた柚子。ついに心が折れかけたその日、彼女の前に現れたのは玲夜でした。
「見つけた、俺の花嫁」
その一言をきっかけに、柚子の運命は大きく動き始めます。
今回は第3話までの放送を記念して、鬼龍院玲夜役・梅原裕一郎さんにインタビューを実施。圧倒的な力を持ちながら、柚子にとっての“安全基地”のような存在でもある玲夜を、梅原さんはどのように捉え、演じたのか。作品全体の印象から役作り、そしてアフレコ現場で感じたことまで。たっぷりと語っていただきました。
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玲夜自身が積み重ねてきた人生
──まずは、原作や台本などに最初に触れた時の印象を教えてください。
梅原裕一郎さん(以下、梅原):主人公の柚子が置かれている状況は、なかなかつらいものがあるなと思いました。そこから、どういう形にせよ、ひとまず(柚子が)救われていく物語なんですよね。ここまで極端な状況に置かれている人は、そう多くはないと思います。
ただ、いろいろなかたちで大変な思いをしている方が、「こうやって救われたいな」とか、「こういうふうに支えてくれる人が現れたらいいな」と感じながら見る作品なのかもしれない、とも思いました。
それから、あやかしという題材自体はよく描かれるものではありますが、人間とあやかしの力の差や、力を持っているがゆえの怖さみたいなものも、きちんと描かれているんです。そこも面白いなと感じました。
現代を舞台に、あやかしと人間が普通に共存しているのも興味深いですよね。そんな世界の中で、ある日突然、一番強い存在に見初められるわけですから。その展開の衝撃も、この作品ならではだと思います。
──そんな中で、玲夜というキャラクターをどのような人物として捉えていましたか。
梅原:玲夜自身にも、当然いろいろな考えや、それまで積み重ねてきた人生があると思うんです。そのうえで、柚子の前に現れた時から一貫して、彼は柚子にとっての“安全基地”のような存在なんじゃないかと感じていました。だからこそ、演じるうえでも、そこの軸はあまりぶらさないようにしたいなと思っていました。
ただ、彼の中には上位のあやかしとして強い力を持っているからこその冷酷さもある。優しさだけではなく、触れれば危うさもあるわけです。その両方をあわせ持っているからこそ、玲夜という人物の強さが立ち上がるのかなと思いながら演じていました。
一方で、モノローグや玲夜自身が追い詰められる場面では、彼もちゃんと動揺しているんですよね。普段は揺るがないように見えるからこそ、そうした細かな心の揺れもきちんと拾えたらいいなと思っていました。
──そうした玲夜の冷酷さと柚子への優しさのバランスの調整については、ディレクションもあったのでしょうか。
梅原:そうですね。玲夜は力の強さや怖さを持った人物ではありますが、そこを強調しすぎると、今度は優しさの部分が見えにくくなってしまうんですよね。実際、アフレコの中でも、自分の芝居が少しそちらに寄りすぎてしまう瞬間があって。そのときは監督から、「このセリフは本当に優しく言ってほしい」といった細かなディレクションをいただきました。
そうやって方向性を調整しながら、物語の中で玲夜の優しさにもちゃんとグラデーションが出せたらいいなと。原作ではクールさが際立つキャラクターでもあると思うんですけど、音がつくことで、そうした細かなニュアンスも少しでも伝わっていたらうれしいです。
とはいえ、玲夜自体がものすごく幅広い表情を見せるタイプの役ではないので、そのぶん、ほかのキャラクターが担っている部分も大きいとは思います。限られた振れ幅の中で、どう玲夜という人物を表現していくかは意識していました。
──共演者の皆さんのお芝居で、印象的だったことや刺激を受けたことがあれば聞かせてください。
梅原:やっぱり柚子役の早見(沙織)さんですね。がっつり掛け合いをするのは久しぶりで。以前しっかりご一緒したのは、たぶん10年くらい前かな。その頃の僕はまだデビューしたてで、右も左もわからない状態でした。だから当時は、早見さんのお芝居のすごさを、ただ圧倒されるような感覚で受け取っていたんです。「本当に天才なんだな」と。
でも今回、改めてしっかりご一緒して、ひとつひとつの表現をとても真摯に積み重ねながら役に向き合っていらっしゃることが伝わってきて、以前の自分には見えていなかった部分まで感じられた気がしています。10年前とは自分の受け取り方も変わったからこそ、あらためてすごい方だなと感じましたし、自分にとっても大きな発見でした。
それと、やっぱり“普通の女子高生”を自然に成立させるのは難しいことだと思うんです。とくに主演を務める方は、それだけで特別な存在感がにじむことも多い。でもその中で、柚子というキャラクターの等身大の魅力を自然に立ち上げていらっしゃるのは、本当にすごいことだなと感じました。
──本作ではたくさんのキャラクターが登場しますが、ご自身の役以外で気になるキャラクターや、好きな関係性があれば教えてください。
梅原:僕はずっと、柚子のお父さんが好きで(笑)。大悪人というわけではないじゃないですか。もちろん褒められた人物ではないんですけど、根はきっとそこまで悪い人じゃない。環境とかお金とか……そういうものが絡んでいく中で、おかしな方向に進んでしまったんだろうと思うんです。
一方であの弱さって、すごく人間臭いんですよね。演じられているおふたりのお芝居も本当に面白くて。もちろん、見ていて気分のいいシーンではないんですけど、同じブースの中で見ていると、「うわ、すごくリアルだな」と感じました。柚子視点で見るとしんどい場面ではあるんですが、お芝居としては強く印象に残っています。
結局、引っ張っていっているのはお母さんのほうなんだろうな、とも思いますし(笑)。柚子のおじいちゃんおばあちゃんが、とても優しい人たちでもあるので。血がつながっている以上、あのふたりから柚子が生まれたということは、どこかには善もあったはず。だからこそ、もしかしたらもう少し違う未来もあったのかな、とつい考えてしまいます。































