
TVアニメ『才女のお世話』のドタバタ劇を音楽で表現! 最最最高級の“アニソン職人”angelaが送る勝負作「最最最高級のお世話して」インタビュー
シリアスで壮大な曲調からコミカルな楽曲まで、多彩な音楽性と幅広いスタイルであらゆる作品の世界観に寄り添い表現する、“アニソン職人”と言うべき2人組音楽ユニット、angela。その通算34枚目となるニューシングル「最最最高級のお世話して」は、タイアップ作品とのマリアージュが生み出すアニソンならではの旨味とチャレンジが詰まった会心作となった。
表向きは“完璧なお嬢様”だが実は生活能力皆無の“ぐうたら娘”という本性の持ち主・此花雛子(CV:小原好美)と、ひょんなことから彼女の“お世話係”になる男子高校生・友成伊月(CV:上村祐翔)。そんな二人の主従関係を超えた甘々な恋物語を描くTVアニメ『才女のお世話 高嶺の花だらけな名門校で、学院一のお嬢様(生活能力皆無)を陰ながらお世話することになりました』(以下、『才女のお世話』)のOPテーマとなる本楽曲は、作品のどんな部分に焦点を当てて制作されたのか? 同アニメの“非公式ソング”として制作されたカップリング曲「夏夏夏です」や、約7年ぶりの“大サーカス”シリーズとなるライブイベント『angelaの「ミュージック・ワンダー★大サーカス2026~スタチャまみれ?!~」』への想いを含め、ボーカルのatsuko、ギター&アレンジのKATSUに話を聞いた。
"CDで出す意味"を問い直した、3年ぶりのシングル
──今回取材するにあたって気付いたのですが、CDシングルをリリースするのは3年ぶりなんですね。
atsukoさん(以下、atsuko):そうなんですよ。「AYAKASHI」(TVアニメ『AYAKA -あやか-』OPテーマ)以来になります。コラボという意味では蒼井翔太くんと一緒に歌った「晴れのちハレルヤ!」(劇場版『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』主題歌)がありましたけど。
KATSUさん(以下、KATSU):タイアップ曲の「不器用なI love you」(TVアニメ『不器用な先輩。』OPテーマ)もアルバム『Answer』の中の1曲だったので、CDとしてのシングルは本当に久々です。
atsuko:近年はデジタルリリースが多くて、それが溜まってきたらアルバムになるという流れが業界的にも定着していたので、まさかまたシングルCDを出す機会に恵まれるとは思わず。
KATSU:今の時代はサブスクが主流になっているなかで、多分、いずれCDはなくなると思うんですよ。その中での今回のCDリリース。フィジカル、いわゆる「物」として出すことの意味をいま一度改めて、詰め込んでみたいと思い、こだわって制作しました。
──そんなニューシングルの表題曲「最最最高級のお世話して」は、TVアニメ『才女のお世話』のオープニングテーマ。まさに『才女のお世話』の世界観そのものと言えるキャッチーな楽曲ですが、制作はどのように進めたのでしょうか。
atsuko:作品サイドからは「オープニングらしいテンポ感」「キャッチーさ」といったリクエストをいただきつつ、どちらかというと「angelaさんにお任せで」という形でお話をいただいたなかで、原作の小説やコミックスを読んだうえでピアノを弾いていたら、アニメサイズの楽曲のBメロにあたる“最最最高級のお世話してください”というフレーズのメロディと歌詞が同時に生まれてしまったんです。
それでKATSUさんに「こういうフレーズと歌詞を思いついちゃったんだけど、ここから肉付けして曲にならないかな?」と相談して、前後を付け加えて1曲に仕上げていきました。普段だったらメロディを全部作ってから歌詞を書くのですが、今回はそのフレーズから肉付けしていくという、偶然ながら珍しいパターンを取りました。その“最最最高級のお世話してください”のパートは雛子ちゃんの思い。それ以外のところは、急に雛子のお世話をしなくてはならない状況になった伊月くんの思い。1曲の中で2人の心情を表現する形になりました。
KATSU:ただ、atsukoさんは最初、その部分をどうしても使いたいというわけではなかったっぽくて。僕も最初は「へえ」ぐらいで受け止めたんですけど、曲作りを進めていく中でお互いの目指しているものというか、目標が噛み合わなくて。「なんでだろう?」と思ったら、お互い「どっちが主人公か」が見えていなかったんです。僕は伊月が主人公だと思っていたんですけど、atsukoさんは雛子が主人公だと。
──なるほど。才女のお世話係になる伊月と、実はぐうたら娘でお世話される側の雛子、2人のやり取りがメインで描かれるお話ですものね。
KATSU:そこで「この作品って2人の話であって、どっちも主人公なんだな」と気づきまして。じゃあ曲の中に2人のドタバタ感と、2人の主人公感の両方を入れようと。普段、アニソンを作る時は、主人公のテーマ曲や応援歌、生き様を歌うものという意識で作っているんですけど、この曲はそこが違っていて。見る人によって視点が変わるのが、逆にすごく面白いなと。そういうことを考える中で出てきたのが『ドラえもん』だったんです。
──『ドラえもん』?
KATSU:「ドラえもんのうた」って、どちらかと言うとのび太くん側の心情なんですよね。でもタイトルは『ドラえもん』で。
atsuko:最後のフレーズは“アンアンアン とってもだいすきドラえもん”ですからね。
KATSU:そう、それが視聴者の気持ちにもなっている。「そこだ!」と思って。それを今回の楽曲の歌詞に落とし込もうとなった時に、atsukoさんが最初、この雛子パートの部分を無くそうとしていたんですよ。でも僕は「無くしちゃダメだろ」と。伊月の気持ちを歌っている中に急に「最最最高級のお世話してください!」って割り込んでくる雛子を出したい。ここは細かく説明すると転調しているんですけど、そのギャップ感がすごく雛子っぽくなると思ったんです。それでようやく完成しました。
atsuko:いやあ、ギリギリでしたね(笑)。KATSUさんが言った通り、お互いの見ているポイントが違ったからこそ、2人の主人公の気持ちをまとめられたのかなと。もし2人とも「雛子が主人公だよね」と一致していたら、こういう曲にはならなかったので。制作者2人の視点が違うところから、楽曲の中にコントラストとメリハリが生まれたのかなと思っております。
──ある種、別々に生まれたパーツを合体させる大胆さがすごいですね。
KATSU:結構、勇気がいりましたね。アニソンじゃないとできないことというか。僕も最初、atsukoさんが「最最最高級のお世話してください」って歌い始めたとき、正直「なんだそれ?」って思ったんですよ(笑)。でもひらめいたんだから何かあるんだろうな、というのは頭の片隅にずっとあって。デモの第2稿を作った時にはもうそこがなくなっていたので、「何でなくしちゃうんだよ!」と。
atsuko:ここは「ドラえもんのうた」で言う「はい、タケコプター」の部分なんだろうね。あそこはドラえもんの台詞になっているから。
KATSU:その意味ではオーキド博士の「そりゃそうじゃ」(「めざせポケモンマスター」)でもある(笑)。
──その意味でもアニソンらしいギミックを組み込んだのが、楽曲の中に突然入ってくる雛子パートであると。
atsuko:ただ、そこも全部私が歌ってしまうと声のコントラストがつきにくいので、この「お世話してください」の部分は私ではない方に歌っていただきました 。
──聴いていて「声の感じがいつもと違うな」とは思いましたが、あの歌はatsukoさんではないんですね。
atsuko:そうなんです。アニメのキャストさんではなく、私以外のかわいらしい声で歌える方にお願いしたいとなった中で、声優の緒方恵美さんに相談しまして、緒方さんがやっているブリーズアーツという事務所に所属している声優さんを4名ほど紹介していただいて、歌ってもらいました。レコーディング当日、なぜか緒方さんも来てくださったんですよ。歌うわけではないんですけど、「俺は引率の先生だから」って(笑)。
KATSU:歌が歌えるだけでなく、役としてキャラも作れる人となると、コーラスのお仕事メインの方には難しいだろうなと思ったんです。ダンサーとか若い子たちを集めるのも元気があっていいかもしれないけど、今回は雛子としての役も作れないといけない。それで緒方さんにダメ元でご相談したら快く引き受けてくださって。僕は緒方さんの事務所に所属している若手の人たちのことを「緒方チルドレン」と勝手に呼んでいるんですけど、皆さん能力がめちゃくちゃ高いんですよね。多分、すごく厳しい指導を受けているんですよ。「レッスン」ではなく「訓練」だろうなと(笑)。
──なるほど。雛子パートはその4名の方々の歌声がミックスされていると。
atsuko:そうなんです。私ではない声を組み込むことで、楽曲の中にコントラストをつけました。ここまでは打ち込みのサウンドで表現しているのですが、この後のサビで生ドラムやバンドが入ってくるところも、KATSUさん的には、ここでガラッと印象を変えたいという狙いがありました。
──サウンド面でも『才女のお世話』の世界観が表現されていますよね。冒頭はバロック風の優雅な雰囲気で。
KATSU:エレガントというかヨーロピアンな感じですね。お嬢様という存在を音で表現しました。
atsuko:ただ、我々は89秒でオープニングを作らなくてはいけないので、逆算が必要なんです。全体の長さから、イントロは何秒いけるか、と。今回はギリギリ4小節だったらイントロが入るんじゃないかということで、その中で「お嬢様っぽいイントロ」をイメージして、いろいろ弾きながら作っていきました。
──なおかつ「ぽよよん」みたいな感じのコミカルなSEが入っているのも面白くて。昔のカートゥーンっぽい雰囲気もあります。
KATSU:そうですね。原作は最初から結構むちゃくちゃな展開じゃないですか。それをサウンドに落とし込むのが我々の仕事なので、スピード感とドタバタ感というのは意識して作りました。これは他の作品ではなかなかできない、今回だからこそやれることでしたね。
──そしてBメロにあたる雛子パートではクラップと歌声だけになるギャップもすごかったです。
KATSU:これもチャレンジでした。atsukoさんがデモの段階ですでにあの形で歌っていたので、最初は「なんだこれ」と思ったんですけど(笑)。
atsuko:KATSUさんは音を詰め込みたいタイプのアレンジをする人なので、こういう「引き算」は珍しいんですよね。よくできたなと思います。
KATSU:実は最初はもっと音を入れていたんですけど、結果「いらねえな」と思って。クラップと歌だけの方がインパクトが強いし、雛子っぽいんですよね。結構、目一杯に詰め込んでから、「これでもか」っていうぐらい引き算しましたね。
atsuko:しかもここは16小節も使ってますからね。普通のBメロなら8小節でいいところを。
KATSU:でも短いと、雛子の控えめではない感じが出ないと思ったんだよね。「しつけえよ」って思われるくらい16小節で繰り返すのが彼女にはしっくりくるので。そこが雛子のかわいいところでもあると思いますし。
──サビではバンドが入ると共に、かなりヒロイックな印象になりますね。
KATSU:まさに伊月くんがヒーローになるように、生バンドで彼の思いを表現しました。やっぱり生演奏だと人間の感情が見えて、荒々しさや大人しい感じがわかりやすく伝わるじゃないですか。伊月の決意なのか愛情なのかわからない思いみたいなものをサウンドで形にしたくて。とにかく1曲の中で伊月と雛子の2人が出てきて、急に雛子が絡んで、急に帰っていった、みたいなコントラストを意識しました。
──ドタバタ感を含めて作品の世界観にぴったりですし遊び心も満載で、アニソンならではの粋が詰まった楽曲だと思いました。
atsuko:今回は作品タイトル(『才女のお世話』)もサビの歌詞に入れられましたからね。私たちがデビューした23年前と比べると、今はJ-POPのアーティストさんがアニメの主題歌を歌うのが当たり前の時代になりましたよね。それはバリエーションが増えてとてもいいことだと思うんですけど、その分、ここまで作品に寄り添って作る人たちはなかなかいないんじゃないかと思っていて。そこが私たちの個性だとするならば、伸ばしていくべき部分だと思うんですね。angelaに主題歌を頼んでもらえれば、ロジックとパッションを持って、作品に合うように楽曲を作りますし、これからもそういう楽曲を作っていきたいですね。
──歌詞については、雛子パート以外の部分は伊月に寄り添って書かれたのでしょうか。
atsuko:そうです。さっきKATSUさんが言った通り、私は最初、雛子ちゃんが主人公だと思っていたので、歌詞を全部彼女の目線で書いていたんですよ。そこからKATSUさんが「ドラえもん論」を熱弁し始めて(笑)。「雛子はドラえもんみたいな、何だか分からない存在なんだよ!」と言われて、そう言われればそうかもなと。それで雛子パートのところは雛子ちゃん、あとは伊月くんの目線で行こうと決めました。ただ、私は歌詞をこねくり回して難しくしてしまうタイプなので、KATSUさんから「もっと簡単な言葉で」「わかりやすく!」と3~4回書き直させられましたね。
──わかりやすい言葉、というのは逆に難しいですよね。
atsuko:そうなんです。みんなが使っているような、使い古された表現になってしまわないかというラインが難しくて。「こんなに真っ直ぐ言っていいのかしら」と。“ずっと傍に居てあげる”とか、自分で書くには正直恥ずかしいぐらいのストレートさなんです。でもKATSUさんは「これはラブレターなんだよ! 愛を率直に伝えるべきなんだ!」って言うので(笑)。
KATSU:僕は伊月目線、atsukoは雛子目線でぶつかっていたので、なんか衝突しているなあとは感じましたね。でも、そのディスカッションをする時間がすごく大事なんです。今回の「最最最高級のお世話して」はパッと勢いで作ったように見えて、実はめちゃくちゃ計算されているし、僕たちにとっても勝負している曲なんですよね。あえてクラップだけにするというのも勇気がいりましたし、皆さんに「面白い」と言っていただけてる今もまだ、ちょっと半信半疑な部分が実はあって(笑)。
──いや、めちゃくちゃ面白い曲ですよ。
KATSU:ありがとうございます。ただ、アニソンはファンの皆さんのものだと思っているので、angelaがどうこうというより、『才女のお世話』のアニメを観た時に、この曲が頭の中で流れるような存在になれば嬉しいです。
──ちなみにこれは個人的な感想なのですが、この曲を初めて聴いた時、雛子パートの部分は今どきのSNSやTikTokでバズりそうなキャッチーさがあるなと思ったんですよね。もしかしたらそこも狙ったのかなと思って。
atsuko:鋭い! 実はその部分には振り付けをつけていて。みんな一緒に踊ってほしいなと思っていて、動画を作る予定なんです。
KATSU:今日、この後に撮るんですけど(笑)。
atsuko:angela史上、一番難しい振り付けなんですけどね。KATSUさんは「俺ができるから大丈夫だ」って言ってますけど。
KATSU:できてはいないんだけどね(笑)。「できそう」なラインです。
──ライブでのパフォーマンスも楽しみです。
atsuko:今年の「アニサマ」でライブ初披露するんですけど、ダンサーの皆さんと大勢で踊ろうと思っています。私もマイクのことは忘れて踊る気でいます。
KATSU:(雛子パートの部分は)バンドメンバーも演奏がないので、全員踊らされるんだろうなあ(笑)。



























