アニメ
『天幕のジャードゥーガル』もっと好きになっちゃう歴史豆知識

今話題の『天幕のジャードゥーガル』って本当に面白いの? 歴史を知らなくても楽しめる? 見てるは見てるけどちょっと難しいかも!? そんなあなたが「ジャードゥーガル」をもっと好きになっちゃう歴史豆知識

『天幕のジャードゥーガル』は、秋田書店のWEBコミックサイト『Souffle』にて2021年から連載中の、トマトスープ先生による漫画原作作品です。2026年6月からはアニメ作品として放映配信され、アニメとしての作りと原作の魅力両方が、高く評価されて話題になっています。この評価に特徴的なのは、普段アニメに関わらないような大学の先生方や文芸評論家といった玄人の方々の間で、その作りの丁寧さが絶賛されていることです。
 
話によると、物語の背景となるモンゴル史やイスラム史を描くに当たって、それぞれの専門家の先生をお招きし、現地の方が見ても違和感がないかにまで気が配られているとか。とはいえ、これはアニメの面白さの第一要因にはなり得ませんよね。では、この作品は何が魅力なのでしょうか?
 
ここでは、それを探りながら、物語の背景に横たわる歴史や文化についても調べてみたいと思います。すでにファンの方にはさらに作品が好きになるきっかけに、これから見てみるよという方には作品へのハードルを下げるきっかけにと、ご活用くださると嬉しいです。

 

関連記事
天幕のジャードゥーガル
少女と妃。復讐の絆で結ばれた二人が、地上最強の帝国に嵐を起こす――。母を亡くし、故郷からも遠く引き離された幼い少女・シタラは、学者一家の心優しい奥方・ファーティマに拾われる。「勉強して賢くなれば、どんなに困ったことが起きたって何をすれば一番いいのかわかるんだ」――ファーティマの息子・ムハンマドの言葉に心を揺さぶられたシタラは、"知"の可能性と大切さを知り、教養を深めていく。いつの日にか、ムハンマドに追いつくことを夢見て……。その頃、皇帝チンギス・カンによる地上最強の「モンゴル帝国」が日に日に勢力を拡大していた。その歴史のうねりは、ついにシタラの住む街をも巻き込んでいく。帝国の第四皇子トルイによってすべてを奪われ捕虜となったシタラは、ただ一つ残った“知恵”を駆使して王族に取り入り、帝国を内側から崩壊させようと決意する。奥方から受け継いだ"ファーティマ"を名乗って。心に復讐の炎を宿しつつ、表向きは帝国に仕える身となったシタラはある日、第三皇子オゴタイの第六妃ドレゲネと運命的な出逢いを果たす。彼女もまた壮絶な過去を抱え、心の内に帝国への深い恨みを秘めていた。シタラとドレゲネ。出逢うはずのなかった二人が手...

 

作品の概要と、最低限押さえておきたい登場人物

まずは、作品の概要ですが、現在も連載中の作品なので、物語のラストがどうなるのかはわかりません。ただ、原作者トマトスープ先生のこれまでの展開を見ると、史実とされる出来事を大きく変えることはなく、むしろその史実の隙間に想像力の翼をはためかせるという描き方ですので、歴史は歴史として知っていてもネタバレにはならないのではないかと思います。

 

冒頭のあらすじ

作品の舞台は、13世紀、現在のイランの地。奴隷の少女シタラは、ある裕福な家で生活することに。その家は亡き学者の家で、シタラの主人は未亡人のファーティマ。彼女には、シタラと同じ年頃のムハンマドという息子がいました。シタラは、彼を通して“学問の価値”を知りますが、彼は高度な学問を修めるために都に旅立ってしまいます。

それから8年が経ち、シタラたちの住む街を、モンゴルが襲います。主人のファーティマは殺され、シタラは他の奴隷たちとともに捕虜として草原(モンゴルの首都カラコルム)に連れていかれます。その後、ムハンマドのいる都も陥落したことを知り、モンゴルへの復讐心を燃えたぎらせるシタラ。

一方で、草原で天幕を張りながら移動するというモンゴルの生活スタイルにも少しずつ馴染んでいきます。

1227年にチンギス・カンが亡くなり、1229年に「クリルタイ」の結果、三男のオゴタイが王(カン)あらため皇帝(カアン)に即位。政権内に揺らぎが生じ始めます。新皇帝オゴタイの王妃のひとり、ドレゲネは、元は征服された側の異民族だったことから、モンゴルを深く憎んでいました。この王妃ととシタラが手を結び、モンゴルへの復讐を誓う……、というお話です。

主人公のシタラという存在は作品オリジナルですが、イスラム圏出身のファーティマ(作品内ではシタラがこの名を乗っ取る)という女性と王妃ドレゲネの2人が、モンゴルの王権争いに関与したのは史実です。チンギス・カンが草原の部族をまとめ、やがてその子孫たちが帝国を築いていくという歴史の流れの中で、強い家父長社会に突如出現した “魔女”。これが作品でどのように描かれていくのか、歴史を知っている方にも知らない方にも、この緊張感が魅力となるのではないでしょうか。

 

最低限押さえておくと話がわかりやすい登場人物

・主人公 シタラ
=身元を良く見せるために元主人の名であるファーティマを名乗ります。実はドレゲネと通じています。

・チンギス・カン①※
=モンゴル草原の王者。1206年生まれ。大小様々な集団に分かれていたモンゴルの諸民族を一代で統一。1227年8月25日死亡。
※丸数字でモンゴルのトップの継承順位を表しておきます。

〈チンギス・カンの子どもたち〉
・ジョチ=長男。作品内では母はチンギスの第一皇妃ボルテとされます
・チャガタイ=次男。母はチンギスの第一皇妃ボルテ
・オゴタイ=三男。母はチンギスの第一皇妃ボルテ → オゴタイ・カアン②
・トルイ=末子。母はチンギスの第一皇妃ボルテ → 父チンギスの私財を継承します。

〈オゴデイ家〉
・ボラクチン
=チンギス・カンの三男オゴタイの第一皇妃。作品内ではチンギスから継承された妃とされ、大カトゥンと呼ばれています。
・ドレゲネ=オゴタイの第六皇妃。モンゴルを憎んでいます。
・グユク=オゴタイとドレゲネの子→③

〈トルイ家〉
・ソルコクタニ・ベキ
=チンギス・カンの末子トルイの第一皇妃。ケレイト族出身でネストリウス派キリスト教の信者で学問や知識への敬意をもつ珍しい存在。夫トルイに頼んで『原論』の写本を手に入れ、その指南役としてシタラ(ファーティマと名乗り始める)を側に付けます。
・モンケ=トルイとソルコクタニの長男→④
・クビライ=トルイとソルコクタニの次男→⑤
・フレグ=トルイとソルコクタニの三男
・アリク・ブケ=トルイとソルコクタニの末子→⑥

 

やはり歴史が難しい!?

まずは、概要と登場人物を少し見てきましたが、ここまででもかなり情報量が多いです。未読未視聴の方は、もう辟易ですよね。なにせ、登場人物を並べただけでも、疑問点がいっぱいなのですから。ということで、この登場人物の疑問点を調べていきます。
 

レヴィレート婚

〈オゴタイ家〉のボラクチンの紹介、何か変ではありませんか? チンギスから継承されたとありますが、父の妃を息子が娶るって大丈夫なのでしょうか。

これには、世界史的に、主に牧畜を生業とする民族の間で見られる慣習「レヴィレート婚」からきているものだと思われます。

「レヴィレート婚」というのは、ウィキペディアによると、「寡婦が死亡した夫の兄弟と結婚する慣習」だそうで、つまり女性目線だと「夫が死んだから夫の弟と結婚し直した」ということですね。

現在の貞操観念ではアウトかと思いますが、強い権限のある家父長制度で一夫多妻という社会で、“最初の結婚(兄との結婚)で結ばれた家同士の絆が、次の代(弟の代)になっても途絶えないように”、という意図があったようです。嫁いできた女性には、“家同士のかなめ”という大きな存在価値があり、その価値を次の家長が財産として引き継ぐということなのでしょう。

女性の側にもメリットは大きかったと思います。牧畜、中でも遊牧と移動の生活は、女性にいくらカリスマや財産があっても腕力なしにはどうにも成り立ちません。家畜業でも定住をしていれば話は変わってきますが、家族以外に頼るものがない(村落共同体や都市のインフラがない)中で、家族を養っていくのは難しいでしょう。女性は「レヴィレート婚」により、夫が死んでも家族共同体の中で一定の地位が保障されたというわけですね。

今作のボラクチンの場合は、父から子への継承ですが、その意味するところは同様なのだと思われます。史実でもボラクチンは、オゴタイの第一皇妃としてオゴタイよりかなり年上だったことは確かです。ただ史実では、その出自については不詳。モンゴルは、もともと文字を使わない民族なので、歴史もよくわかっていないことが多いんですよね。

  

家は末子相続、部族長は「クリルタイ」

農村社会では長男相続が一般的で日本もこちらなのですが、モンゴル社会では末子相続が基本とのこと。今度はこちらについて見てみましょう。

チンギス・カンを一代目の草原の王とすると、二代目はオゴタイです。学校の教科書でもこうなっていたような気がします。しかし、これは「王・皇帝という部族連合の長」を引き継いだという意味で、具体的には、「モンゴル全体の軍権、部族共同の財産、その管理権」になります。では、チンギス・カンの私財(チンギス家の財)はというと、これが末子トルイに行くんですよね。日本人には「え?」と思うところです。

末子相続社会では、男子が成人した順に、家畜の一部とともに生家から独立して出ていきます。そして、末子が年老いた親の面倒を見るのと引き換えに、親の財産を受け継ぎます。財産が土地ではなく、家畜という動く物だからこそできる相続制度ですね。ちなみにこの制度なら、かつて日本の農村であったような、長男と結婚したお嫁さんが、未婚の弟や妹の衣食住まで面倒を見るということがありません。そう考えると、これはこれで合理的な気がします。

また、オゴタイは「クリルタイ」によって、部族連合の長となっている点にも注目です。

「クリルタイ」とは誰を長にするか決める投票のこと。家は慣習的に末子相続ですが、部族連合の長を決める慣習は「クリルタイ」なのです。これは草原の民が“実力重視”だからなのでしょう。部族がしっかりまとまっていないと、南の中華世界(当時は金と宋)に対抗できないですからね。

 

要は王権争い、政治のどろどろ

シタラは学問を身につけていたことで、ソルコクタニの指南役という立場で政権中枢に近づくことができました。そして、チンギス・カンの子どもたちの家が、微妙な力関係にあることを知ります。

この “政治のどろどろ” というものは、下世話な趣味ではありますが、はたから見る分には大変おもしろいものです。そこにシタラと妃たちがどのようにして入っていくわけですが、誰と誰が同盟関係にあるのか?とか、この死は暗殺ではないのか?とか、探偵のような気分にもなってきます。
 
ということで、この作品のキモは、モンゴルの王権争いと言ってしまってもいいのではないでしょうか。

歴史的な政治のどろどろと、魔女たちの活躍。厭らしいとか覗きだとか言われても、やはり権力闘争は面白い!

 

作品情報

天幕のジャードゥーガル

あらすじ

少女と妃。
復讐の絆で結ばれた二人が、地上最強の帝国に嵐を起こす――。
母を亡くし、故郷からも遠く引き離された幼い少女・シタラは、
学者一家の心優しい奥方・ファーティマに拾われる。
「勉強して賢くなれば、どんなに困ったことが起きたって何をすれば一番いいのかわかるんだ」――
ファーティマの息子・ムハンマドの言葉に心を揺さぶられたシタラは、
"知"の可能性と大切さを知り、教養を深めていく。
いつの日にか、ムハンマドに追いつくことを夢見て……。
その頃、皇帝チンギス・カンによる地上最強の「モンゴル帝国」が日に日に勢力を拡大していた。
その歴史のうねりは、ついにシタラの住む街をも巻き込んでいく。
帝国の第四皇子トルイによってすべてを奪われ捕虜となったシタラは、
ただ一つ残った“知恵”を駆使して王族に取り入り、帝国を内側から崩壊させようと決意する。
奥方から受け継いだ"ファーティマ"を名乗って。
心に復讐の炎を宿しつつ、表向きは帝国に仕える身となったシタラはある日、第三皇子オゴタイの第六妃ドレゲネと運命的な出逢いを果たす。彼女もまた壮絶な過去を抱え、心の内に帝国への深い恨みを秘めていた。
シタラとドレゲネ。
出逢うはずのなかった二人が手を取り合うとき、運命が大きく動き始める

キャスト

シタラ:関根明良
ドレゲネ:小清水亜美
ファーティマ:桑島法子
ムハンマド:齋藤潤
オゴタイ:下野紘
トルイ:鈴木崚汰
シラ:入野自由
チャガタイ:浪川大輔
ジュチ:野島健児
ソルコクタニ:久野美咲
モゲ:朝井彩加
キルギスタニ:新谷真弓
チンギス・カン:玉鷲関
モンゴル兵士:玉正鳳関
ダイル:石田彰
クラン:水瀬いのり
クルトガン:千葉翔也
ボラクチン:くじら

(C)トマトスープ(秋田書店)/天幕のジャードゥーガル製作委員会
おすすめタグ
あわせて読みたい

天幕のジャードゥーガルの関連画像集

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2026年夏アニメ一覧 7月放送開始
2026年秋アニメ一覧 10月放送開始
2027年冬アニメ一覧 1月放送開始
2026年春アニメ一覧 4月放送開始
2026夏アニメ何観る
2026夏アニメ最速放送日
2026夏アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
放送・放送予定ドラマ作品一覧
周年アニメまとめ