
『猫と竜』子安武人さん×井上喜久子さんインタビュー|猫に育てられた竜と母猫――親としての想いや日常が滲む、観る人が「明日も頑張ろうかな」と思える温かさ
深い森の奥、一匹の火吹き竜と魔法を操る猫たちが織りなす、心あたたまるファンタジー『猫と竜』。アマラ氏による人気作品がTVアニメし、2026年7月より放送開始となります。
アニメーション制作をOLMが手掛け、実の親を失った竜が“ちょっと変わった猫”として母猫に育てられ、やがて森の猫たちを見守る「羽のおじちゃん(猫竜)」となっていく不思議な絆が描かれます。
本作の放送を控え、主人公・猫竜役を演じる子安武人さんと、彼を深い愛で育てた母猫・ママにゃん役の井上喜久子さんにインタビューを実施! 長年アニメ業界を牽引してきたレジェンドのおふたりが、本作ではなんと「親子」役に。役への解釈から、互いの役者としての信頼感までたっぷりとお話を伺いました。
「同志」のような二人が演じる「親子」役
──アニメ第1話を観て、作品の第一印象はいかがでしたか?
子安武人さん(以下、子安):原作から読みましたけど、ほのぼのとしたというか、バトルものとはちょっと違う、そういう作品だなと。ちょっと童話チックな作品は好きなので、とても良かったです。
もともと僕は『ムーミン』のスナフキンなどを演じてきたので。要は、そっちの「谷」の出身なんですよ(笑)。
井上喜久子さん(以下、井上):確かに! 子安くん、ちょっとファンタジー感あるよね。
子安:いやいや(笑)。それはよく分からない。そんなことないです(笑)。
井上:私も、原作から読ませていただいて、とにかくもう「優しさ」がいっぱいだなって。
ファンタジーではありますが、その中にもたくさんのあたたかな光が満ちているような作品、でもそれでいて“まったり”になりすぎない。
一話ごとにいろんなお話が出てきて面白いので、すごくバランスの取れた、素晴らしい作品だなって思いました。
──井上さんは、こうした「ほのぼの」した世界観はお好きですか?
井上:いやぁ、現実的ですね……って嘘です(笑)。ごめんなさい! 勝手に一人でボケちゃって(笑)。
ただ、生活していく中で、こういうあたたかくて優しい世界が自分のそばにあるっていうのは、本当に幸せなことだと思います。自分自身も、ふと気がつくと、ぼんやりして、風とお話ししてたりするので。
子安:風と……(笑)。
──どんなお話をされるのか気になります。
井上:「今日もいい天気だね~」とか、そういうやつです(笑)。人生についてとか深い話とかはしないんですけど、「今日もいい天気だね~」ってしみじみ感じたりとか。「あ、いい風ありがとうね~」みたいな。
子安:素敵ですね。
──今回、子安さんと井上さんの共演ということで、てっきりご夫婦の役かと思いきや、実は「親子」という配役には驚きました。
井上:たしかに(笑)。
子安:でも、僕はきっこさん(井上さん)は本当にぴったりだと思ったんです。「ママにゃん:井上喜久子」という一行を見た時に、「そうだよね」って、頷くしかなかったというか。
まあ多分、皆さんはきっこさんの違和感というよりも、僕の違和感をファンの方は感じるんじゃないかな。きっこさんから見ても「息子なの?」みたいな感じはあるとは思うんですけど(笑)。
井上:いやいや、そんなことないよ。
子安:ただ設定を考えれば、たまたまそういう関係になっているだけなんです。原作を読んでいたので、特に驚きを感じることはなかったですが、とにかく嬉しかったです。
やっぱりママにゃんが誰になるのかって、非常に気になるじゃないですか。特に自分は、猫竜の役が早くに決まっていたので。
井上:先に決まっていたんだよね。
子安:そう。一体誰が僕のお母さんになるんだろうと思った時に、やっぱりちょっと、僕よりも上の、ご年配の方が来るのかなって思うじゃないですか。
井上:17歳だから、だいぶ年下だね(笑)。
子安:まさか、女子高生が来るとは(笑)。そこは本当にサプライズでしたね。
井上:(笑)。私はオーディション受ける段階で、猫竜さんの声を聞いていたんです。子安くんの竜は本当にかっこいいと思いましたし、この作品は竜がただかっこいいだけじゃない。もちろん強さもあるけど、とっても優しい。大きく怖い姿の竜であったり、「猫竜」っていう小さい姿になったり。その二つを演じるっていうことで、「あー、もう子安くんぴったり!」と思って。
逆に子安くんが先に決まっていたからこそ、「自分は無理なんじゃないかな」って、オーディションの時はちょっと思ったりもしたんですが。ありがたいことに一緒に、ある種の親子みたいな関係でやれるのは、私自身もすごく嬉しくて幸せでした。
子安:今までこういう関係性はなかった気がします。
井上:ないよね! 夫婦役はあったんですけど。
子安:そうでしたね。
──おふたりは、デビュー時期も近いですよね。
子安:ほぼ同じかもしれません。僕たちはあまりそういうことは気にしないですけど(笑)。若い頃から現場でご一緒することは多かったです。
井上:そうでしたね。
──改めて、お互いの役者としての印象など、伺えますでしょうか。
子安:そんなに大きな変化はないですね。
きっこさんは昔から全然変わらないんですよ。誰と接する時もそうで、僕と接する時もこんな感じで、癒やしを与えてくれるような存在です。優しくて、怒ったところも見たことがない。
役者としても、役柄がずっと昔から変わっていないような感じがします。お姉さんだったり、今のようなお母さんだったりしても、懐が深くて、何でも包み込んで許してくれるようなキャラクターを演じている。それは昔も今も変わっていなくて、きっとこれからも変わらないんだろうなという安心感があります・素晴らしい役者さんです。
井上:私の方こそ、子安くんは変わらない! デビューの時から圧倒的な存在感があって。真っ直ぐにお芝居をバーンと出してくれる。その説得力やオーラがすごいんです。
スタジオにフラッと入ってくるだけでも光っている感じがして、ずるいですよね(笑)。チャラチャラしていないんですけど、喋りかけるととってもあたたかい。やっぱり「同級生感」というか、同じ時代を歩んできて色々見てきた「同志」という感じがあって、一緒になれると嬉しいですね。
「お母ちゃん」呼びの裏話
──実際に親子を演じる中で、印象に残っているシーンはありますか?
子安:やっぱり、小さい頃に離れ離れになっているので、実際、猫竜との会話は初めのうちはないんですよ。なんですけど、物語が進む中で、改めて対面するシーンがあって。そこで「お母ちゃん」って……(笑)。
井上:そうそう。
子安:いや、ちょっとね、「お母ちゃん」って言っている自分も、なんかちょっと「お母ちゃんって言っている子安武人ってどうなんだろう?」と。加えて、きっこさんを「お母ちゃん」と呼ばなければいけないダブルの抵抗がやってきて(笑)。
井上:(笑)
子安:この壁を乗り越えてお芝居をするっていうのは、結構大変なんじゃないかなと。アフレコ自体はとても楽しくて、そんなことを感じる間もなく、自然に「お母ちゃん」と言っている自分がいました。
井上:自然だったよね。
子安:あれは何と言うか……やっぱり「役」って素晴らしいなと思いました。
──井上さんが「お母ちゃん」と呼ばれる役は、なかなか珍しいですよね。
井上:そうなんです。「ママ」「お母さん」とかが多くて、なので「お母ちゃん」って呼ばれるのは、すごくキュンとしました。
どこかママにゃんは「肝っ玉母ちゃん」みたいな部分もあるし、お母ちゃんと呼ばれるだけの愛嬌のある猫なので、やっていて楽しかったですね。やっぱり子安くんから「お母ちゃん」と呼ばれる不思議な感じではありましたけど(笑)。
とにかく映像がバッチリで素晴らしいものができていたので、そちらに気持ちを乗せてやってたら、本当に自然に私も喋ることができて、楽しかったです。
──ちなみに、子供の頃の竜の役は……。
井上:娘(井上ほの花さん)ですね! すみません(笑)。卵から生まれて「きゅーん」って言って、ほんの少しなんですけども。娘をキャスティングしていただいて、恐縮です……みたいな(笑)。
ちょっと、自分の子育てを思い出すようなシーンもたくさんあったので。嬉しかったですね。
──子安さんも、息子さん(子安光樹さん)が出演されていますね。
子安:8話に出ています(笑)。でも、その回は猫竜が出てないので、僕は現場にいなかったんですよ。
井上:えー、立ち会ってなかったの?
子安:僕は立ち会っていないです。今までも何度かいろんな現場で共演はありますし、今回も、帰ってきた後で色々と話しました。「どうだった?」って。いろいろ大変だったとか、難しかったとか、そういう話はしましたけどね。
──そういう時、お仕事のアドバイスなどをされることもあるのでしょうか?
子安:アドバイスもしますし、お芝居の方向性とか、初めにいろいろ聞いたり、僕から話したりはしょっちゅうしています。家の中でお芝居の話は禁止ではないので、仕事の話は全然しますね。なんなら、家族で僕の出ている作品を見たりしますし。
井上:いっしょに見るんだ!
子安:ゲームもいっしょに遊んだりしますから、それが日常という感じです。多分、『猫と竜』も一緒に見ると思います。
──本作は「見送る物語」、「受け継がれていく物語」でもありますし、親として共感する部分などもあったのではないでしょうか?
子安:そうですね、僕は自分の息子の芝居を見るのはちょっと恥ずかしくて。成長を見守る優しい目というよりは、どうしても厳しい目で見てしまうようなところがあって(笑)。
井上:分かる、分かる。
子安:やっぱり同じスタジオにいるとどうしても気になっちゃうんで、いてほしくないなと思うんですけど(笑)。自分のことを精一杯頑張らなきゃいけないのに、相手のことが気になってお腹が痛くなることもありますからね。なんだかんだ言っても、自分よりも子供の方を優先して考えてしまう。それは親になってみなければ分からないことかなと思います。
井上:ママにゃんに関しては、自分の人生をそのまま表現できる部分が多かったです。
1話で子供たちにお乳をあげているシーンなんかも、自分の娘が小さかった頃にお友達がいっぱい遊びに来て、みんなでお昼寝させていたのを思い出しました。
愛情いっぱいで見守る反面、狩りの仕方や敵への対処法を教えて、最終的に「旅立ちなさい」と送り出す。切なさもありますが、それが親としてできる一番のことなんだろうな、としみじみ思います。





































