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- 藤崎萌恵
- 大阪府在住のライター。小説、漫画、アニメ、映画など“好き”を追い続ける。

すう先生の大人気BLコミック『キスは捜査のあとで』が、渡部 秀さん&齋藤璃佑さんW主演で実写ドラマ化。渡部さん演じる天然人たらしのアラフォー人情派刑事・多古井平助と、齋藤さん演じる毒舌エリート後輩・塩野 秀が織りなす、ノンストップ・ラブコメディです。
第4話では、塩野から多古井への猛アプローチが加速。グイグイ攻める塩野に、多古井は「どうすんだよ俺…」と激しく動揺していました。そんななか、父親が逮捕されたヒカリに希望を持たせたい多古井に、塩野は「期待を持たせるほうがよっぽど残酷」「本当のことを伝えるべき」と指摘し、2人の思いはすれ違ってしまいます。
本稿では、ドラマ『キスは捜査のあとで』第4話「期待させるだけは残酷」をレビュー。塩野の言葉には、多古井への切なる想いが潜んでいました。
※本稿はドラマ『キスは捜査のあとで』第4話までのネタバレを含みます。
塩野のこれまでの態度から、自分は嫌われていると思っていた多古井。「腹を割って話そう」と挑んだらキスされるという予想外の展開になり、大混乱に陥っていました。それからというもの、塩野の好意に触れる度、塩野のことを知る度に心を動かされていきます。
塩野は、多古井にだけ嫌味を言ったり邪魔したり冷たくしたりしていたのは悔しかったからと打ち明けていました。多古井が女性を好きなのは知っているし、自分は恋愛対象にならないと諦めていたから。
「俺に気付いてほしかった」「“好きだ”って言いたい欲が出ました」という塩野の切実な想いを聞いた多古井は、塩野から目が離せなくなっていました。
多古井の髪に付いたキャベツを取ってあげた塩野が笑っていると、多古井は見つめたまま彼の手首を掴みます。その瞬間、全身に電流が走ったように表情を一変させた塩野に多古井は歩み寄り、2人はそのまま唇をゆっくりと近づけていました。
しかしその時、玄関チャイムがなって慌てて離れる多古井。どこか戸惑いの感情も見せながら、塩野がそれでもキスを迫ろうとすると、多古井はそれに応えるかのように迎え入れます。
やはり塩野は簡単には引き下がらなかったんですね。なんと言っても“仕掛けてきたのは多古井”の方ですから。ただし、この2度目のキスは未遂に……!
なぜか塩野の家で宅配便を受け取ってしまう多古井。そのまま荷物を塩野に渡し、逃げるように部屋を出た後、塩野は表情を緩ませながら“たこ焼き”を口に入れます。
多古井は塩野に対して芽生えた自身の気持ちを、もう自覚せずにはいられなくなっていました。戸惑いと気まずさに襲われる多古井に、塩野の猛アプローチはますます加速していきます。
出勤時、多古井が家から出ると、そこには待ち伏せしていたのか塩野の姿が。一緒に出勤しながら、「昨日はあんなに積極的だったのに」とグイグイ攻める塩野から、多古井は「どうすんだよ俺…」と自身に問いかけながら逃げていました。
塩野は、狙った得物は逃がさないとでも言わんばかりのドSっぷり全開の顔つきに。多古井のことになると表情豊かになり、感情表現が薄いタイプだからこそ、この顕著な変化が感慨深い。デスクから多古井を見つめる熱視線には、わずかに甘さも混じっている気がします。
多古井の「嫌じゃない」というたった一言で「好きです」と言える勇気をもらえたのだから、多古井からキスしようとしてくれたなんて、嬉しくないわけがない。ただ、それでもなお、手放しで喜ぶことができない複雑な想いも見えてきます。
同僚の長谷川(演:金井勇太さん)と居酒屋に入ると、多古井が来るのを見越していたのか、そこにはよりにもよって塩野の姿が。多古井は苦しい言い訳をしながら帰ろうとします。
「逮捕…ですよ」
塩野はすかさず、ガッチリ多古井を掴んで確保。この漫画のような言葉と仕草、その強引さがまた塩野らしくて、一瞬にして心を攫われてしまいます。
そんなわけで多古井、塩野、長谷川の3人で飲むことになり、何やら妙な雰囲気に。多古井が塩野と一緒に食事をしたことがないと言うと、塩野は楽しげな様子で見つめて、「それ以上のことはしてますけどね」と甘く意味深な言葉で匂わせてきます。
人差し指で多古井の太ももをツンツンしながら「何にもないですよね〜僕たち」と煽り、太ももをそっと撫でた後、するりと多古井の手の指を絡めて「ほんとは2人がよかったのにな〜」と口説くように語りかける塩野。どうすればいいのか、狼狽えてされるがままになる多古井。
それを見てしまった大将の反応が、視聴者の気持ちを代弁してくれているかのよう。いい芝居で繰り広げられる上質なラブコメは見応えがあり、笑いと胸キュン、そしてある種の感動さえも同時にもたらしてくれます。
そんななか、居酒屋で結城ヒカリ(演:斉藤柚奈さん)の話題になると空気はガラリと変わります。暴力事件で父親が逮捕され、学校に行きづらくなった娘のヒカリが刑事課にほぼ毎日訪ねてくるようになっていました。
ヒカリを助けると約束し、父親はもうすぐ帰ってくると励ます多古井に、「期待を持たせるほうがよっぽど残酷」と反論する塩野。希望を持った相手に、多古井は責任を取れるのか? 塩野はヒカリに自分を重ねるかのように訴えかけていました。
こうして気持ちがすれ違ったまま、多古井は塩野と合同捜査をすることに。刑事課が忙しくて生活安全課に応援を頼んだところ、塩野が立候補したのだといいます。
静と動のバディ関係としても相性が良さそうな2人。威圧するように現実を突きつけて取り調べをする塩野と、人情派らしい接し方をする多古井。しかし防犯カメラに映った決定的な証拠が見つかり、多古井はやりきれない思いをヒカリの父親にぶつけて、そんな彼を塩野が止めようとしていました。
父親の罪を知ったヒカリが行き場のない感情を多古井にぶつけると、「だから言ったじゃないですか。多古井さんの優しさがヒカリちゃんを傷つけたんです」と塩野は追い打ちをかけます。多古井と塩野の間に生じた亀裂はますます深いものに。しかし、ここからの塩野の行動に胸がじんわり温かくなりました。
第1話にて、ヒカリの目の前で「犯罪者ですよ」と強い口調で言い放っていた塩野。毒舌ではあっても普段の彼の言葉には血が通っていないわけではありません。そのため、唐突な「犯罪者ですよ」という冷たくも感じる言葉は強烈な印象を残していましたが、ここに繋がる大事な布石だったというわけです。
塩野は、ヒカリと母親に面と向かって頭を下げて謝罪。しゃがんでヒカリと目線を合わせて、自分もヒカリと同じで、「大事な人に期待して、さみしくなって」と優しく語りかけます。
「僕も多古井さんのことが好きなのにヒカリちゃんばっかり守るんだもん」
そんな塩野の言葉で、多古井がいかに寄り添ってくれていたのかをヒカリは気づくことができたはずです。塩野は多古井の思いやる気持ちを大切にしつつ本音で打ち明けていて、だからこそ塩野の言葉もちゃんとヒカリの心に届いたのでしょう。
塩野は多古井の優しさに苦言を呈してはいるけれど、根底にある想いは、“その大好きな優しさを自分にも向けてほしい”ということ。塩野は「ヒカリちゃんにはあんなに優しくするのに、僕にも少しは優しくしてくださいよ」と多古井の前で縋るように訴えかけていました。彼はずっと、そう願っているんですよね。
期待を持たせるより、本当のことを伝えるべきだという塩野の考え方。多古井のことだけでなく、期待して絶望を味わった経験が過去に何度かあったのでしょうか。ひとつ言えるのは、多古井との距離が縮んだ今の塩野にとって、より切実な問題であること。
多古井からのキスという積極的な行為に喜ぶ一方で、本当に期待していいものかどうか不安も残っているはずです。期待したら余計に傷つくことを知っているけれど、それでも希望を抱いてしまい制御できなくなっているのではないでしょうか。
精神的にも肉体的にも成熟した大人の恋というのは、煮詰めたような旨みがあり、噛めば噛むほどに味がします。仕事のことも恋愛のことも、迷ったり悩んだり、時に感情的になったり衝突したり、絡み合いながら言葉を交わして想いを重ねていく過程は尊く愛おしいものです。
多古井も塩野も、人としても警察官としても信念があるからこそ対立することも。だけど多古井は塩野にちゃんと、「ごめん」と「ありがとう」を伝えました。ずっと逃げられたり避けられたりしていた塩野にとっては、多古井がこうやって向き合ってくれるだけでも嬉しい。さらに、好きな人から水族館のお誘いを受けるなんて、塩野の喜びは計り知れないものがあります。
そんなわけで次回は多古井と塩野が水族館デートへ。2人の関係は着実に親密さを増してきました。塩野への募る想い……多古井の恋はもうとっくに走り出しています!
| 作品名 | キスは捜査のあとで |
|---|---|
| 放送形態 | 実写ドラマ |
| スケジュール | 2026年7月26日(日)~ ABCテレビにて |
| キャスト | 多古井平助:渡部秀 塩野秀:齋藤璃佑 江川まり子:工藤遥 長谷川次郎:金井勇太 八木保:ドロンズ石本 大将:矢柴俊博 松雪みすず:菊川怜 |
| スタッフ | 原作:すう『キスは捜査のあとで』(Jパブリッシング) 脚本:村田こけし 演出:大内隆弘 浅見佳史 プロデューサー:藤田洋平 寺川真未 川西琢(ABCリブラ) 制作協力:ABCリブラ 制作著作:ABC |
| 主題歌 | 「なつめき」OCTPATH |
