『るろうに剣心』和月先生から「CG使わないで」とリクエスト
2012年7月9日(月)、映画『るろうに剣心』のティーチインが行われ、大友啓史監督が制作にまつわるエピソードなどを披露しました。
「週刊少年ジャンプ」連載時から女性の支持を受けてシリーズ累計5700万部を突破、アニメも大ヒットを記録した『るろうに剣心』。その原作のスピリットを引き継ぎながらも、全く新しいオリジナルの作品として完成させた大友啓史監督。監督はこれまで『ハゲタカ』『白洲次郎』、大河ドラマ『龍馬伝』などを手がけてきました。
今夏一番の話題作ともいえる本作の公開を記念した大友監督によるティーチインには、多くの映画ファンがかけつけ、監督のメッセージに耳を傾けました。
――『龍馬伝』も時代劇でしたが、今回は時代劇でもマンガ原作ということで、意識したことはありますか?
大友監督:もちろん原作は知っていました。今までと違った作風なので、最初はなんで自分にオファーが?とは思ったけど、逆に気になったのも本心です。『龍馬伝』で描いてきた幕末を生きたキャラクターたちが、明治ではどう生きていくんだろう……という意味でもね。やったことないジャンルの作品で、当然原作ファンの目も厳しい。そのハードルの高さにはやりがいを感じましたね。
――原作者の和月先生もすでに映画をご覧になっているということですが……。
大友監督:最初に和月さんからはCGを使わないリアルな作品に仕上げてほしいと言われました。和月さんとは本当に何度も打ち合わせを重ね、丁寧にキャッチボールをしながら一緒に作っていきました。漫画は自分のペースで読めるのに対し映画は入ってくるもの。漫画と映画の違いを、だれよりも和月さんが一番理解してくれていたからこそ完成した作品です。実は初号で和月先生が隣で観ていたんです。観終わった後手を差し出して「最高です、言うことないです、満足です」と言ってくださって、ほっとしました(笑)。
――佐藤健さんの剣心素晴らしかったですね。
大友監督:和月さんと話した時も、剣心は健しかいない!という点で意気投合でした。他作品でご一緒させていただいた際に、身体能力も演技力も一流なのはわかっていましたから。今回はアクションにも相当こだわっていますよ。それも魅せるアクション。ドラマ性とアクションの融合は一番気を使った点でもあります。
――今の日本はリーダーやヒーローを求めていると思いますが、緋村剣心の中に、時代が求めているヒーロー像を描こうとしたのでしょうか?
大友監督:現場の合言葉はマーベルに負けない日本発のヒーローを生み出そう!でした。ヒーローを作るのは本当に大変だけど、でもかっこいいでしょ?僕は不器用でも戦っている人が大好きなんだよね!剣心は新しい時代に刀を捨てきれないけれど、もう人を殺したくないという矛盾した気持ちと葛藤しながら必死に戦っている。それがヒーローと呼べる条件でもあるかなと思っています。
Q:印象に残っている裏話はありますか?
大友監督:佐藤さんは本当に暇があればアクションの練習をしていました。でも一回だけ、けがをしちゃって……。怒られる!と思ったけど、練習が足りないからけがなんかしちゃって……もっと練習させてください!!って連絡くれたんです。健君自身剣心が大好きで、剣心を裏切れないと勝負をかけて挑んでいる姿に本当に心打たれましたね。彼はアクションがかっこ悪かったら役者をやめるとまで言ってくれて……。監督冥利につきますよ。幸せです。
――漫画原作の映画化ということで譲れなかった点は?
大友監督:生身のアクションです。ただのアクションではない、芝居としてのアクションにこだわりましたね。役者さんには苦労をかけたなーとしみじみ思います(笑)。
――原作との違いや忠実な点など、意識されたことはありますか?
大友監督:原作のコンセプトは活かしたいと思って作りました。ただ、全部忠実に作ったところでどうしても無理がでてきてしまう。約2時間という時間に収めるためにもキャラクターを減らしたり、素材をかえてみたり、ぎりぎりまで調整していった感じです。役者とキャラクター、双方仲良くしてね!!と思っています。
最後に大友監督からのメッセージとして、「時代劇としてではなく、日本にないアクションエンターテイメントを目指しました。細かい点を工夫してチャレンジしながら作りました。そのディテールにも注目していただけると嬉しいです。是非、応援してください」と言葉が送られました。
上映終了後のイベントということだけあって、場内は大友監督の登場に拍手喝采の大歓迎。質疑応答もヒートアップし、他では聞けない貴重な撮影裏話も盛りだくさんで、場内は異常な盛り上がりに。また、本日の試写会は先日行われた完成披露試写会に続いて2回目、ということで、会場に集まった人々は数少ない試写会のチャンスを得たばかりでなく、大友監督のティーチイン付き試写会という貴重な時間をおおいに楽しんだようでした。
<ストーリー>
幕末に「人斬り抜刀斎」として恐れられていた伝説の剣客・緋村剣心。彼は明治という新しい時代の訪れとともに姿を消し、「不殺(ころさず)」の誓いをたて流浪人として旅をしていた。ある日、「神谷道場」の師範代をつとめる薫を助けたことから薫のもとで居候することになるが、その頃、街では剣心のかつての呼び名・抜刀斎を名乗った人斬り事件が勃発していた……。
『るろうに剣心』
2012年8月25日公開
出演:佐藤健、武井咲、吉川晃司、蒼井優
青木崇高、綾野剛、須藤元気、田中偉登 / 奥田瑛二
江口洋介 香川照之
原作:和月伸宏『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』(集英社 ジャンプ・コミックス刊)
監督:大友啓史 脚本:藤井清美・大友啓史 音楽:佐藤直紀 製作:『るろうに剣心』製作委員会
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント 配給:ワーナー・ブラザース映画
>>映画『るろうに剣心』公式サイト
>>twitter