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『ひだまりスケッチ テレビショッピング』高橋祐馬さんインタビュー

『ひだまりスケッチ テレビショッピング』はこうして生まれた! アニメファン注目の仕掛け人・高橋祐馬さん(アニプレックス)にインタビュー

 いよいよ第4期放送も迫る『ひだまりスケッチ』。そんなひだまり関連で、去る2012年8月14日(火)、『ひだまりスケッチ×365 Blu-ray Disc Box』の発売を記念して、アニメ界初となる通販番組『ひだまりスケッチ テレビショッピング』が放送された。

 今回は、番組MCとしても活躍したアニプレックス・企画制作グループ宣伝部の高橋祐馬さんにインタビューを決行! 思わぬ形で業界の内外に反響を呼んだ仕掛け人に、企画の裏側を徹底的に追求!! 企画の発端や放送されるまでの経緯、意外な発見など、見逃せない内容となっているぞ!

アニプレックス・企画制作グループ宣伝部の高橋祐馬さん

アニプレックス・企画制作グループ宣伝部の高橋祐馬さん

●キッカケはBlu-ray Disc Box発売に向けての対談で――

――まず、今回の企画が生まれた経緯についてお話を伺いたいと思います。

高橋祐馬さん(以下、高橋):もともとは、雑談に近い様な話の中から生まれたものなんです。
6月のある日に、原作者の「蒼樹うめ」さん、アニメ監督の「新房昭之」さん、キャラクターデザインの「伊藤良明」さんが集まって、『ひだまりスケッチ』第1期Blu-ray Disc Boxのブックレット用の座談会収録がありました。

 その座談会が終わった後に、第4期の放送開始やBlu-ray Disc Box発売に向けて、みんなで「こんなことをやったら面白いよね」という話をしていたんですが、そこで「テレビショッピングとかあったら面白いよね」という意見が出たんです。『ひだまりスケッチ』と「テレビショッピング」はまったく無関係ということはなく、アニメの中で登場する部屋にあるテレビでは、ドラマやニュースが流れているんですよ。その中で、テレビショッピングをやっているシーンがあったりするので、実際にアニメの商品をああいう風に売れたら面白いよねという話になりました。

 その際は「面白いですね~」くらいの軽い雰囲気で終わったんですが、会社に戻って冷静に考えてみると、本当にやれたら楽しいなと改めて思いまして、その後「どうやったらできるんだろう?」という方法を考え始めたのが始まりですね。

『ひだまりスケッチ×365 Blu-ray Disc Box 完全生産限定版』展開図

『ひだまりスケッチ×365 Blu-ray Disc Box 完全生産限定版』展開図

――通販番組のプロデューサーは高橋さんがやられたんですか?

高橋:そうですね。実際に動き始めたのは7月の頭からぐらいです。結果としては面白い番組風に出来上がりましたが、その前のプロセスで大きく3つの問題がありました。

 まず、「そもそも、そういったものがオンエアできるのか?」という部分で放送局さんと話し合い、「電話で買うシステムが構築できるのか?」というビジネス的な部分を考え、あとは「関係各社へのご説明とご理解」。要は「本当にできるの?」ということを1個ずつ洗い出してやっていった感じですかね。

――では、プロセスの段階からかなり丁寧に障害を取り除いていったということですね?

高橋:そうですね。今回はトライアルとして90秒のCMという特殊な形だったんですけど、内容をはじめ、それを作るのや放送するのにいくらかかるかなども考えていきました。

 番組自体は作品ファンに向けたものですので、放送する時間は皆さんが見やすい夜帯になるのですが、その時間帯に電話を受け付けるということが販売会社さんの方でも過去にまったくなかったので。そういう分からないところを1個ずついろんな人に相談しながらやっていきました。

――番組の演出も高橋さんがやられたんですか?

高橋:番組の台本はほぼすべて私が書いています。当然、撮影の外部スタッフと相談をしつつではあるんですけど、90秒の中でどのような内容を伝えるか、どう収めるかを考えました。

 あと、これは凄く良い発見だったんですが、撮影に使ったスタジオは平和島にあって実際のテレビショッピング番組でも使われているところなんです。そういった「らしさ」はどうしても必要になるので、撮影用に借りられる場所があるという運にも恵まれました。

 そのほか、オンエア想定日から逆算して、撮影やナレーション録りのスケジュール管理までを含めて色々やらせて頂きました。

――スケジュールを聞くと、立案からかなりのスピードですね。

高橋:動き始めてからは、1週間~2週間で側を全部固めました。で、その作業をしながら撮影の段取りや準備を進めて。あとは、いろんなテレビショッピングの番組を見て「どうやってるのかな?」という方法論を研究しました。

――ちなみに、どの辺りの番組を参考にしたんですか?

高橋:「ジャパネット」さんはもちろん、CSやBSでひたすら生放送のテレビショッピングをやっている「QVCジャパン」というチャンネルがあるんです。

 あと、深夜には民法各局で通販番組がたくさん流れていますので、そういったものを日がな録画して見ながら「なるほど、こういう風にやってるんだ」と、いかに「らしさ」を出すか考えましたね。

――失礼な話かもしれないですけど、「らしさ」が出ることのバカバカしさが面白さに繋がっているように感じます。

高橋:今回は『ひだまりスケッチ』と「テレビショッピング」を組み合わせて新しいコンテンツを作る、僕はそれを自分で勝手に「カツカレー理論」と呼んでいるんですけど、「カツ」に「カレー」を足すと「カツカレー」という新しいメニューになるじゃないですか。

 郷に入っては郷に従えということで、縁遠いもの同士を足したことで出る面白さというか、新しいコンテンツにするためには「らしさ」がないといけないと思うんです。だから、あそこで僕がスーツを着ていなかったらダメだし、物撮りの展開図がなくてもダメ。そういう「らしさ」をとことん追求しました。

――あと、ネットじゃなくて電話で申し込むというのも重要な点ですよね。

高橋:そうですね。実際、電話対応に関しては結構な回線数は用意していたんです。ただ、番組が始まって数時間の間は「全然、電話が繋がらない」という状況になってしまって……。

 「ウェブ購入」を含め、いろんな方法論を事前に検討していたんですけど、コンテンツとして1番お客さんが楽しんでくれるのは「通販番組を見てアニメのBlu-ray Disc Boxを買うために電話すること」かなと考えました。そういう体験をしてもらうことがひとつのエンターテインメントですし、あれ自体が1個の宣伝にもなります。実際、やってみて可能性は凄く感じましたね。

●業界初の試みで、新たな発見も!

――情報をもらう方の立場としては、高橋さんの出ている写真に「なんだろうこれ? クリックしたいぞ」と心を揺さぶられました。

高橋:宣伝マンの趣向なんですけど、あの写真はあえてですね。今回の企画説明は多分、テキストだけでは伝わらないと思うんです。いかにもな風景をバックにした写真があることによって、ようやく伝わるかなと。今、情報は数多あるので「どう伝えたら引っかかるかな?」、「気にしてくれるかな?」という部分を考えて。今回の番組自体がご好評をいただいていることを含め、やっぱり、みんな初めてのものには興味を示して下さるのかなと感じました。

 あと、新房さんの絵コンテの複製を付けるというのは今までにないことでした。本編では、新房さんという名前ではなく「帆村壮二」さんというペンネーム的なもので絵コンテを描かれているんですけど、実はそれが新房さんであるということは、今回の番組で初めて発表したんです。そういった部分でもファンにちょっとした驚きを提供できたらいいなという風に考えました。

――それはまさにコンテンツですね。

高橋:真面目にスキームを作って企画を実現させていくところと、どうやったらコンテンツ感や面白さを提供できるかという両軸を短期間で練っていきました。

――すべてを終えた後の感想はどうですか? ここに反響があって意外だった、もしくは気付いたことなどありましたらお願いします。

高橋:凄く嬉しいことではあるんですけど、これほど話題になると思っていなくて。ファンの人は気にしてくれるかなと思っていたんですけど、いざ始めてみるとまったく作品のことを知らない人でも気にしてくれた人はいるんじゃないかなというほどでした。

 あとは、業界関係の他社の人からも「どうやったらやれるんですか?」と聞かれたりして(笑)。内外両方に反応をいただけたことは凄く嬉しくて、それ自体が1個の宣伝になったと思います。定価での販売なので、実際の販売数が3個とかだったら黒歴史として封印しようと思っていたんですけど(笑)、ご注文も予想以上に頂けて、本当に感謝です。

 また、番組を見たときすぐに買ってもらえなくても、ほかの場所で「買おう」という発想に至ってもらえたら、それはそれで良いと思うんです。宣伝と販売って、今まではそれぞれ頑張るものだったのですが、今回はそれを両立させることができたというところに方法論としての可能性を感じました。

 逆に反省点としてはまず、結構な数のオペレーターさんを用意していたのですが電話回線が埋まってしまったということが予想外で。あと、その流れで発見できたことなんですが、夜中に見られない人やネットの動画で見てくれる人のことまで想定して24時間受付にしたのですが、放送直後には凄い勢いで電話がかかってきたのに、日中は逆にまったく電話が来なかったんですよ。

 あとで聞いたのですが、それは別に『ひだまりスケッチ』に限ったことではなく、掃除機やカーナビなど、ほかの番組でもそうらしいんです。要はテレビショッピングってその瞬間の勢いやノリで買うものであって、寝て起きて日中にどうこうするもんじゃないんだなと。だから、日中の問い合わせは本当に0件だったらしいんですよ。

――盛り上がりがピーク値を越えたら、あとはスーッと熱が下がっていく?

高橋:そうです。テレビショッピング独特のものなのかもしれないですけど、それが1番新しい発見でした。あと、今回の放送に関してはTOKYO MXさんにご理解・ご協力をいただいて、『ゴールデンアワー』に放送していただいたんです。

 でも、その日のテーマが「武器と貿易」という凄く重いものだったんです。みなさんが明日の平和について考えている中、突如、まったく空気を読まないCMが流れて凄く悪いことをしたなと。放送を見ながら、「何をのんきにやってるんだこいつは!?」と申し訳ない気持ちになりました(笑)。

――貴重なお話ありがとうございました!

『ひだまりスケッチ×ハニカム』キービジュアル

『ひだまりスケッチ×ハニカム』キービジュアル

◆『ひだまりスケッチ×ハニカム』
【放送局】
TBSにて10月4日(木)深夜1時25分~放送開始
MBS・CBCにて10月~放送予定
BS-TBSにて10月20日(土)深夜1時~放送開始
※放送日時は変更となる可能性があります。

【あらすじ】
 憧れの私立やまぶき高校美術科に入学したゆの。親元を離れ、学校のまん前にある小さなアパート『ひだまり荘』で一人暮らしをはじめたゆのは、そこで同級生の宮子、先輩の沙英とヒロの3人にで出会う。

 美術科の変わり者が集う事で有名なひだまり荘では、新入生の乃莉、なずなも迎え、毎日がてんやわんやな出来事ばかり。しかし、慣れない生活に戸惑いつつも、優しく温かい仲間に囲まれながら、ゆのは今ゆっくりと夢に向かって歩き出す。

【制作スタッフ】
原作:蒼樹うめ
監督:新房昭之
シリーズ構成:長谷川菜穂子・大嶋実句
キャラクターデザイン・総作画監督:伊藤良明
シリーズディレクター:八瀬祐樹
総作画監督:西田美弥子
美術監督:飯島寿治
色彩設計:滝沢いづみ
撮影監督:江上 怜
編集:関 一彦
音響監督:亀山俊樹
音楽:菊谷知樹
音楽制作:ランティス
アニメーション制作:シャフト

【キャスト】
ゆの:阿澄佳奈
宮子:水橋かおり
ヒロ:後藤邑子
沙英:新谷良子
乃莉:原田ひとみ
なずな:小見川千明
吉野家:松来未祐
智花:釘宮理恵
夏目:福圓美里
校長:チョー
大家:沢城みゆき
うめ先生:蒼樹うめ


<パッケージ情報>
◆ひだまりスケッチ×365 Blu-ray Disc Box 完全生産限定版

発売日:2012年8月22日(水)
価格:27,300円(税込)

【収録内容】
※16話収録
(第2期本編全13話 + EX + 特別編2話) + DVDファンディスク

第1話 「はじめまして! うめてんてー」
第2話 「サクラサクラ」
第3話 「狛モンスター」
第4話 「まろやかツナ風味」
第5話 「おめちか」
第6話 「さえ太」
第7話 「入学式と歓迎会」
第8話 「お山の大将」
第9話 「ナツヤスメナーイ」
第10話 「まーるニンジン」
第11話 「パンツの怪」
第12話 「みちゃダメ」
第13話 「おかえり…うめ先生」
EX (TV未放送話数) 「ポラロイドン」
特別編 「どこでも自転車」 / 「赤い糸/イミシン」
DVDファンディスク 「もうすぐ!ひだまりスケッチ×☆☆☆」


>>アニメ『ひだまりスケッチ』公式サイト

(C)蒼樹うめ・芳文社/ひだまり荘管理組合
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