「何事も自分で体験しよう」――アーティストデビュー20周年を迎える椎名へきるさんへインタビュー【後編】
「hm3 Special」「Pick-up Voice」に掲載された記事に加えて、撮り下ろしの写真や、2004年~2013年までの活動の歩みを振り返った最新インタビューなども収録された書籍「HEKIRU FILE 2 2004-2013」をリリースしたばかりの椎名へきるさん。年末には大阪を舞台に行うカウントダウン・コンサート、年始には東京と名古屋で1日2公演ライブを行うことも決定している。
そんな椎名さんにインタビューを決行! 前後編の2回に渡ってお届けするこのインタビュー。前編では、「声優アーティストという捉え方について」の話などを語っていただきました。今回お届けする後編では、「ライブの話」や「何事も自分で体験しよう」という、自らの経験を参考にした話をしてくださいました。
「わたし、永遠の19歳ってファンの人たちには言ってるの」という言葉の真意とは!?
――今でこそ週末中心ですけど、以前は連続コンサートもよく行っていましたよね。
椎名へきるさん(以下、椎名): 中野サンプラザ6DAYSや大宮ソニックシティ4DAYSとか東京厚生年金で4 DAYSなど、今考えると狂気の沙汰ですよね。あの頃は、ホント若さだけで乗り切れていたんだと思います。
――今でも、メチャクチャ激しいステージングを2時間半以上行っているように、へきるさんはものすごくタフな方じゃないですかぁ。
椎名:20代の頃は、無理しても全然平気だったんですけど。30代となった今は、そのパワーを継続するためにジムへ通ったりと、体力を維持するための努力はしないとダメですね。
それがあってこそ出来ていることなんです。むしろ、何もしなくても平気で乗り越えられてた20代の頃のほうが不思議ですよ。
――そんなこと言ってるへきるさんですが、何歳になっても、20代の頃と同じようなパワフルなステージングを行っていると思いますよ。
椎名:いやぁ、みんなもそこまで求めてないでしょ。
――そんなことないですよぉ。事実、大人になったファンの方々だって、(たとえ椅子のある環境でも)いまだスタンディング・ライブで騒ぎまくってるじゃないですか。
椎名:あっ、確かに!!これはちょっと余談話になるんですけど。よくライブに足を運んでくださるファンの方の中に、大阪在住のおばあちゃんがいるんです。きっかけは、お孫さんに連れられて観たことからなんですけど。何時しか、みずからもライブの魅力にはまってしまったらしく、わざわざ東京まで遠征して観に来てくださるんですよ。
そういう事情を知らない頃、始まる前に客席で座り込んでるおばあちゃんを発見したスタッフさんが、「体力的にきつければお席ご用意しましょうか?!」と言ったら、「大丈夫です」って、ズッとスタンディングで楽しんでくださっていたんですね。
ファンの方々の間でも、その姿を見て「負けられるか」という気持ちにもなるらしく、よくライブへ通ってらっしゃる椎名へきるファンの間では話題になっている方なんです。そういう話を聴くと、わたしも「負けてらんない」となりますよね!!
――その話にも納得ですが。へきるさん自身もそうですけど、ファンの方々の年齢を感じさせない熱狂ぶりは、本当に凄まじいです。
椎名:ライブに来てくださるみなさん言われるのが、「楽曲が流れたとたんに10代の自分に戻れる」という発言なんです。音楽の力って、それくらいすごいものなんだと思います。わたしも10代のときに聞いて励まされた曲や、人生の節目で勇気をもらった曲って、聞いた瞬間に当時の自分の気持ちに戻してくれますもん。そういう過去の記憶ともリンクさせてくれるのが、歌の力なんだと思います。
――「HEKIRU FILE 2」の話にくっつけちゃいますけど。この本には、へきるさん自身が影響を受けたアルバムや漫画について語った話もたくさん掲載されています。
椎名:そうですね(笑)。人って成長していくものじゃないですか。たとえ自分では「変わってない」と思ってても、時代や人との出会いによって、やっぱし変わっていってるんですよね。もちろん変わっていくきっかけも、迷走したり、壁にぶつかったり、乗り越えたときに新しい自分を発見できたりなど、いろんな経験の積み重ねがあってのことなんですけど。それでも前へ進み続けていれるのは、何か試練があっても、かならず幸せを実感できているからなんです。
その形が何でもいい、人って幸せを見つけると先へ進んでいけるんです。わたしもまた、いくつになっても「幸せのスタートラインに立っていたい」し、「幸せのスタートラインに立ってなきゃいけない」と思うんです。その一歩が小さく些細なことでもいい、自分がスタートラインに立てている気持ちにさえなれれば、何かを始めたりチャレンジしていくうえで、それが大きな勇気になっていけるんです。そういう、スタートラインに立てる気持ちを何時でも持てる自分でいたいなと思います。
――そんなへきるさんは、永遠の何歳なんですか?
椎名:わたし、「永遠の19歳」ってファンの人たちには言ってるの。しかも、「へきる星に来れば、みんな永遠に19歳になれるんだよ、何時だって青春だから」って。
――なるほどー!!あのコンサートでの異常なまでの熱気と興奮と盛り上がりは、みんな永遠の19歳だからなんですね。
椎名:そうですそうです。「椎名へきるライブは楽しむためだけにみんな来てるんだから、普段のことはすべて忘れて楽しもうよ」っていう。なんかそういう場であって欲しいなと、わたし自身も思っています。
今の時代は、山ほど情報がネットの中に転がっているんです。
――改めて「HEKIRU FILE 2」のことについて伺いたいのですが。ネット社会の今、検索すればいろんな過去の情報が表面的には手に入ります。でもこの本には、ネットでは手に入らない、その時代ごとのリアルなへきるさんの感情や表情が記されています。
椎名:決して表層だけのものじゃない、そのときごとのわたしの本心や、そのときの姿を文字や写真へ残しているように、椎名へきるの歩みがここには記録されています。ですので、ぜひご覧になってください。ただし、たとえば10年前の声優業界や音楽業界と今とを比べると状況がまったく違いすぎるので、若い人たちによっては、発言に、今の時代性とのギャップを感じるような気もしています。「今の感覚で捉えたら、あまり実感沸かないのかなぁ」とか。でも、それはしょうがないことですからね。
――えっ、そうなんですか?
椎名:だって、わたしが年配の方々に「昭和20年代ってこうだった」と言われても、お話を伺ったうえでの感覚は抱けても、その当時の厳しさというのはわからないし、リアルに実感は出来ないわけじゃないですか。それと同じ感覚だと思うんです。
――よく「10年ひと昔」って言いますからね。
椎名:だって、今や小学生が「声優になりたいから」とネットで養成所を検索しては。それこそ"養成所ブログ"を見て養成所を選んでる時代ですよ。今や、調べようと思えばネットを通して何でも調べられますからね。
わたしも、当時の時代的には早かったと言いますか。中学生の頃から「声優になりたい」「演劇をしたい」と思って、その夢をつかもうとしていました。でもわたしの時代には、今のようネットなんて普及していませんでした。そんなわたしが求めた方法が、声優に紐付けられるいろんな雑誌を買っては、ひたすら声優になるための術を調べることでした。
雑誌の記事を通して、体験入学に行ってみたり、スタジオ見学をさせていただいたり。ダンスを学ぼうと、いろんなダンス教室が参加している発表会に足を運んでは、自分に合う教室を自分の目で観たり。気になった教室へ直接足を運んでは、「入門したいんですけど、その前に見学させていただいていいですか?」と聞いたり。
とにかく、何事も自分の目で直接確かめ、そこの空気を感じ、体験しながら判断しないことには、自分に相応しい情報を入手することは出来なかったんです。でも今の時代は、山ほど情報がネットの中に転がっているんですよ。
――今や、そういう情報化された社会ですからね。
椎名:わたし、今でもよく「声優になりたいんです」「何処の養成所がいいんですか?」という相談を、小中学生の方や、その親御さんから受けるんですね。むしろ、「わたしにそれを聴くのか?!」って感じですけど(笑((椎名へきるさんの所属しているアーツビジョンは、日ナレこと日本ナレーション演技研究所を系列会社として備えていれば、所属声優たちのほとんどが日ナレ出身)。
――まずは、自分で調べろって感じですよね(笑)。
椎名:今は養成所も数多くの門戸があるわけで。「何処がいい」と聞かれても、結局その善し悪しって、その人との相性の問題になっていくんですよね。ネットの中には、良い情報から悪い情報までいろいろとありますけど。人それぞれに個性や特性が違うように、何事にも「その人との相性」ってあるんですよ。
だからこそ、その情報を鵜呑みにするんじゃなく、一番自分の波長と合う場や合う人を捜したらいいと思う。いくら誉めてる言葉が多かろうが(非難する言葉があろうと)、そこは個人の感情が優先されての評価ですから人の意見に乗っかるのではなく、まず、自分が経験して答えを出してかないといけないこと。情報に左右されてばかりいると、結局は自分を見失っちゃいますからね。
――とても納得させられる発言です。
椎名:一番大事なのは何かってことですよね。そこの選択肢を誤ると、あとで苦い想いをするのは自分自身ですから。「みんながそう言ってるから」が答えじゃないんですよ。と、いろんなことを言ってきましたが、わたしはそういう意識のもと、ここまで進んできたのでご参考までになさって下さい。
昼公演を楽しんだ後に、夜はご家族で過ごすとか、そこは自由に活用していただけたらなと思います。
――まずは何事も、自分の心や身体で体感しないとね。それは、へきるさんのライブにも言えることです。ちょうど、「HEKIRU SHIINA LIVE TOUR 2013~2014」が発表になりました。今年のカウントダウンは、大阪はumeda AKASOでやるんですね。
椎名:初めての大阪でのカウントダウン・コンサートになります。何よりも、またみんなで年末を歌で締め年始を歌で始められることが、とってもハッピーなんです。これまでは東京公演ということから、地方の方々には大変な想いをして来てくださっていただいてたわけですけど。今回は、関東の方々に苦労をかけてしまいますが。それでも、みなさんが大阪に集まってくださったらすごく嬉しく思います。
――さらに、1月4日・渋谷O-EASTと1月5日・名古屋ELLは1日2公演になっています。1日2公演は、とても新鮮な驚きでした。
椎名:今回、東京と名古屋が2公演になることもあって、大阪でのカウントダウンも含め、みなさんからリクエストを求めたんですね。そうしたら、寄せられた曲たちが見事にバラバラ(笑)。
――それでも、定番/鉄板曲も多いんでしょ。
椎名:かなり定番曲は多いと思います。ただ、初期の頃の楽曲リクエストも多くいただいてるので、90年代の楽曲もけっこう入れようか、そこは検討しているところです。今回、東京と名古屋で1日2公演にしたのも、演目をどう変えるか?!という理由もありますけど。まだまだお正月時期ということもあって、みなさん、大人の事情もいろいろありますよね。
なので、実家への挨拶を終えてから夜公演へ来ていただくとか。昼公演を楽しんだあとに、夜はご家族で過ごすとか、そこは自由に活用していただけたらなと思っています。コンサートに関する細かい内容は(取材時点では)これからなので、まだ具体的なことは言えないんですけど。「みなさんが幸せになれたら、それが最高!!」と思っているように、ぜひ一緒に楽しみたいです。
――楽しみにしています。では最後に、改めて「HEKIRU FILE 2」についてひと言お願いします。
椎名:この本には、本当に素敵なことがギュッと詰まっていますし。これから声優を目指される方にとって参考となりそうなことも、新たなインタビューの中で答えていますので、ぜひご覧になってください。きっと、愛蔵版となる一冊になりますから。
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アーティストデビュー20周年を迎える椎名へきるさんに直撃【後編】
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★ライブ日程
「HEKIRU SHIINA LIVE TOUR 2013~2014」
・2013/12/31(火)大阪 umeda AKASO
19:00/19:30
キョードーインフォメーション/ 06-7732-8888
・2013/12/31(火大阪umeda AKASO
22:00/22:30
キョードーインフォメーション / 06-7732-8888
・2014/1/4(土)東京 Shibuya O-EAST
15:00/15:30
キョードー東京 / 0570-064-708
・2014/1/4(土)東京 Shibuya O-EAST
18:00/18:30
キョードー東京 / 0570-064-708
・2014/1/5(日)名古屋 E.L.L.
15:00/15:30
サンデーフォークプロモーション / 052-320-9100
・2014/1/5(日)名古屋 E.L.L.
18:00/18:30
サンデーフォークプロモーション/ 052-320-9100
[取材&文・長澤智典]