川端裕人さんによる『声のお仕事』刊行記念トーク＆サイン回が開催！　ゲストにKENNさん、明坂聡美さんが登場！

　3月1日(火)、アニメイト池袋本店において、2月12日に発売となった小説『声のお仕事』の刊行記念トーク&サイン会が行われました。
　登壇者には著者の川端裕人さんに加え、スペシャルゲストとして声優のKENNさん、明坂聡美さんが登場。声優業界をリアルに書ききった作品ということで、川端さんのファンに加え声優を志す多くの人が会場に集結し、用意された座席に収まりきらないほど大盛況なイベントとなりました。今回はそんなトークイベントの様子をレポートしていきます！

■鳥肌が立つくらいリアルな世界観
　本日のスペシャルゲストであるKENNさんと明坂さんは、かつて川端さんが原作を執筆としたTVアニメ『銀河へキックオフ！！』で声優を務めた経験のあるお二人です。『声のお仕事』刊行記念イベントにはアニメ収録時の縁でゲストとして駆けつけることになり、当時のエピソードや明坂さんが「冒頭部分で胃がキリキリした」や「声優の関門が全部書いてあった」と語るほどにリアルを追求した本作について、三人が縦横に広がるトークを繰り広げました。

　イベントが始まると、話題は『銀河へキックオフ！！』収録時の川端さんが初めてアフレコ現場を見学した際のエピソードまで遡ります。
　普段は小説家として活躍している川端さんは、「普段は絶対に知ることのない防音ガラス越しの閉じたアフレコ現場にインスピレーションを受けた」と収録時を振り返り、それが小説の創作に繋がったと話しました。

　また当時から人当たりが良くフレンドリーだったという川端さんは、収録後のキャストによるお茶会にお邪魔することも多く、キャストたちが経験した声優界の体験を熱心に聞いていた、といったエピソードをKENNさんと明坂さんが明かしてくれました。そして、その話の中で飛び出したのが「そのときの取材をもとにコレを書いてるんだよ」という衝撃の発言。『声のお仕事』にリアリティがあるのは当然のことで、当時の川端さんがキャストたちから直接見聞きしたエッセンスを元に誕生していたのです。この衝撃の事実には二人とも椅子から思わず立ち上がり「あれ取材だったんですか!?」と声を揃えて驚愕。そんなゲストの様子に会場からは笑いがこぼれました。

　イベントが中盤に差し掛かると、ちょっと変わった企画が催されることに。それは、『声のお仕事』で声優業界の荒波に揉まれる主人公・結城勇樹からの質問に、業界の先輩であるKENNさんと明坂さんに答えてもらうというもので、これには来場者のみなさんも興味津々。

　最初の質問は「声優を続けながらアルバイトをするならどんな職業がいいか」。KENNさんの回答はテレフォンアポイントメントというものでした。これは、まったく知らない人と話すのは、会話のリズムを学ぶのに適しているんじゃないか、というKENNさんの実体験からくる考えだったようです。対して明坂さんの回答は、自身がアルバイト経験がないということで、叶うなら某夢の国でキャストをしてみたいというもの。こちらはお客様に対して常に笑顔を絶やさない演技力を磨くことが出来るのではないか、という理由からでした。

　続いては「収録時に欠かせないマイクアクションのコツ」について。これにはお二人とも難色を示していましたが、自身の現場での経験を思い出しながら「正解なんてない」という結論を導き出しました。収録時には監督の助言やアドリブの関係でマイクの前に立つ時間は違ってくるため、その都度現場で対応する力が求められる。それは、実際の現場での経験して慣れるしかないことで、長くやっていても難しいことなのだと語りました。

　最後は「お当番回（サブキャラにスポットの当たる回）に向けた演技プランの練り方」についての質問。これに対する答えも「王道を真似にならないように」や「キャラクターを研究する」など多くの意見が飛び出しましたが、最終的にお二人が出したのは「日常生活で面白い人を観察する」というものでした。面白い人がなぜ面白いのかを考え続けることは、キャラクターの肉付けする力に繋がり、いずれは自分の演技の幅を広げることにもなるからです。

　イベントの締めくくりには、発売されたばかりの『声のお仕事』の1節を使用しての生アテレコ企画。時間は5分少々でしたが、結城勇樹の葛藤や声優業界の深いものが凝縮されていて、そこにKENNさんと明坂さんの声が入ることでハッと息をのむような緊張感が会場を包み込みました。しかしアテレコが行われたのは小説のほんの一部分。『声のお仕事』を読むことは、業界の深いところを知ることに繋がるのだと感じた瞬間でした。

　最後の挨拶のさなか、川端さんが会場の最後列に見知った顔がいると発言。そこにはなんと『銀河へキックオフ！！』で監督を務めた宇田鋼之介さんの姿が！　完全にオフモードにもかかわらず会場の声援に応えた宇田さんがサプライズで登壇し一言挨拶。川端さんがイベント中に話していた「いつか『銀河へキックオフ！！』のスタッフでもう一度集まりたい」という夢が少しだけ叶ったところで、本日のトークイベントは幕を閉じました。

[衣装協力：BLACK LABEL CRESTBRIDGE（KENNさん）]
[写真提供／文藝春秋]
[取材・文／原直輝]

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