声優
山寺宏一さん花江夏樹さんの師弟コンビへロングインタビュー【前編】

事務所で師弟関係を結ぶ熱い絆!! 『おはスタ』のMCを受け渡した山寺宏一さん、花江夏樹さんロングインタビュー!【前編】

山寺さんに憧れて声優業界に飛び込んだ花江さんの方法とは?

――花江さんが声優になったきっかけは、山寺さんに憧れたからと伺ったのですが?

山寺:そうそう! 僕もなんかそんな噂は聞いたことあるよ。多分ウソだと思う。アレだろ? 「そう言ったらアクロスに入れるんじゃないか」って思ったんでしょ?

一同:(爆笑)

花江:いえ本当です本当です!

山寺:そう言ってアクロスの社長を騙そうとしたんでしょ?

花江:勘弁して下さい(笑)。本当です。僕も声優になろうと思う前は声優がどんな仕事をするのかだったり、名前もそんなに分からなかったんです。

山寺:わからないよねぇ。

花江:山寺さんだけは、「あ、山ちゃんだ!」と知っていました。僕はいろいろなアニメを見て育ってきましたが、そのときは山寺さんを意識していなかったけど、あとで注意して見ると「コレもコレもコレも、全部山寺さん!?」と知って驚きました。実は僕の母親も山寺さんのことが好きなんです。

山寺:ありがとう。それは今度ちゃんとお会いして挨拶しないと。

花江:僕が高校で進路を考える時期になったとき、「声優になりたい」と思うようになりました。でも家はそんなにお金がないから、養成所に行く前に山寺さんが所属している「アクロスエンタテインメント」に相談のメールをしたんです。母親と一緒に!

一同:(笑)

花江:「うちの息子が声優になりたいって言ってて、いますごく迷ってるんですけど、どうすればいいですか?」というメールを、ボイスサンプルをつけて送ったんです。そうしたら藤崎社長からお返事が来て、面接をしてもらいました。それから話が進んで「アクロス預かり」という形になったんです。

――声優になるのに、そんなルートがあるのですか?

山寺:いやいや、こんな人はいないですよ! いまの話を聞くと、簡単に事務所入れそうな気がしますよね? でも、実際こんなことはありません。だって普通は学校とかオーディションとか、いろいろな段階を踏まえて声優になるんです。いま聞いてびっくりしたよ。花江に対するお母さんの愛とか、いい話だね。

花江:そうですね。タイミングがすごくよかったのもありました。まだアクロスができたばかりの時期でしたから。

山寺:あのころはそうだね。

花江:設立2年目とかだったので、所属タレントの人数が少なくて、まだ10代がいなかったんです。後から社長に聞いたのですが、そんなタイミングに連絡が来たので「おもしろいから話だけでもちょっと聞いてみよう」ってことになったらしいです。

山寺:すごいよね。よくメールで応募してきたよね? 声優事務所に正式な入り方なんて、あってないようなものだけど、花江の入り方は珍しいです。

花江:ホームページの問い合わせフォームから送りました(笑)。

山寺:きっと、お母さんの熱い想いとボイスサンプルがよかったんだと思うよ。そして、ウチの社長もすごいな。普通だったら「はい、じゃあがんばって下さい」とか「学校を出てから来てください」とか言われそうなものだけど。

▲花江夏樹さん

▲花江夏樹さん

――山寺さんはこのお話、初耳だったのでしょうか?

山寺:おもしろい話ですね~。どうやってウチに入ったのかは、いままで聞いたことなかったです。何年か前に「最近ウチの事務所の花江夏樹ってのが人気だよ」という噂は聞いたことがありました。だってそれまでは仕事の現場ではほとんど会ったことがないんだもん。というか、『おはスタ』では毎週会っていましたが、いまだに声優業の現場ではほとんど会わないよね? 『ドラゴンボール』くらいかな? それくらいしか一緒に仕事をしたことがないんです。

花江:そうですね。山寺さんとご一緒させていただいたのは、『おはスタ』が始まってからです。

山寺:そう、だから数年前はほとんど話したことなかったんです。そんなとき、マネージャーたちから「最近、ウチの花江が人気なんです」と聞いたんです。でも一緒に仕事をしてないからさ、僕としては「そうなの?」って。わからないんですよ。

――確かに、山寺さんはさまざまな現場に出入りしているのに会わないのはおかしいですね。

山寺:そんなことがあって、ある年の正月に事務所に届いた年賀状を受け取りにきたんです。僕は毎年、マネージャーよりも早く来て、自分の年賀状は自分でチェックしているんです。そうしたら「あれ? オレの年賀状は少ないな……」って思ったことがあったんです。チェックしても「花江夏樹様、花江夏樹様、伊瀬茉莉也様、花江夏樹様……なんだこれ! ほとんど花江じゃねーか!!」って(笑)。

一同:(爆笑)

山寺:昔は僕のほうが多かったんですよ。事務所の人数が少なかったですから、それがだんだんね、花江の事務所みたいになっていく……。

花江:いえいえ、それは違います(笑)。

山寺:いやほんとに! そこで「花江はすごいな」って思いました。実際にいま、たくさんの作品に出演してますし。それで「花江が人気だ」というのはわかりました。そうしたら『おはスタ』のスタッフから、「新しいレギュラーにお宅の花江夏樹を入れようと思ってる」って言われました。もちろん僕は「いいねいいね」と意見を伝えました。花江との付き合いはそこからですね。

――花江さんとしては、山寺さんは憧れの人です。しかも事務所の先輩です。

山寺:「憧れている」というのは本当かどうかわかりませんけどね~。

花江:いえいえ、ほんとです(笑)。

花江さんに対する厳しさは同じ事務所だからこその師弟関係

――花江さんに対して、他の声優として厳しく接することはありますか?

山寺:厳しい目線っていうのはないと思う。レギュラーを一緒にやると、もう仲間みたいなもんだからね。でも、同じ事務所だからほかの人と多少違うというのは、やっぱりあります。いまはあんまり役者同士でなにかを言い合う時代じゃないけどね(笑)。僕も昔はいろいろな先輩にたくさん言って頂いたけれど、いまはほとんどありませんね。現場には演出家やスタッフとか、指示を出す人はたくさんいますから。
でも、花江に対しては同じ事務所ということで親近感というか、仲間意識はあります。だから「言うべきことは言わなきゃ」と思うし、「一緒にがんばりたい」という気持ちもあります。その点に関しては、他の出演者とは違う感じです。

――いままで花江さんに伝えた言葉で、思い出深い言葉はありますか?

山寺:僕ね、言ったことは覚えてないんですよ。適当にその場しのぎで言っちゃうから。

一同:(笑)

花江:山寺さんのそれは冗談です(笑)。『おはスタ』が始まったころ、すごく細かく教えて頂きました。5人並んでテレビに映ると、少しでも間隔がずれると違和感が出るから、「ちゃんと隣との距離を確かめて立つように」と教わりました。

山寺:あ、そんなこと言った? それねスタッフが言うことだね(笑)。花江は5人のなかで一番端だったんです。だからちょっと離れ気味になるんだけど、恥ずかしがりやなのかな? テレビでそれやると、絵を引かなきゃいけなくなるから全員が映ったときに不自然なんですよね。

花江:他にも「おもちゃとかポストカードを持つときは、反射しないように斜めに持ちなさい」とか、「ちょっとでも角度がずれちゃうと映りが気持ち悪いから、画面と垂直に映しなさい」とか。

山寺:そうね。フリップみたいの持つと、みんな「イェーイ!」とかやるじゃない? あれは見てる人が気持ち悪くなるから絶対にダメって言いましたね。

花江:あのときのアドバイスは、いまでも実践しています。その他にも心構えというかも。

――本来の声優さんの仕事では求められないスキルですね。ですが、最近は声優さんの顔出し番組等が多いので、やはり『おはスタ』は経験してよかったですか?

花江:いろいろなお仕事で役立っています。でも始まった当時は、「山寺さんはなんで僕にだけこんなに言うんだろう」と思っていました。僕に対してアドバイスして下さることが多くて。「僕はできてないんだな……」って、若干へこんだこともありました。ですがあるとき、「他の人たちにはそこまで言わないのは事務所が違うからで、花江はアクロスだから細かく言うんだ。だからちゃんとして欲しい」って。それを聞いたとき、山寺さんはほんとに後輩想いのよい先輩だって思いました。「もう着いていくしかない!」という気持ちになったんです。

山寺:あら、そう? ありがとうございます(笑)。実は僕も新人のころ、先輩から教えて頂いて30年ずっと忘れていないことがあるんです。ただ、ものを言うにしても、その人を「思って言ってる」のか、その人に対して「いらだって言ってる」のかは違うじゃないですか? 同じ事務所だとなんか不思議ですね。まあ同じ事務所といっても、それぞれ役者は個人事業みたいなものだから、関係ないって言えば関係ありませんけど、そこは言っても「受け入れてくれるんじゃないか」と思っていました。

『おはスタ』の現場とアニメの現場の大きな違いは?

――山寺さんは花江さんに対して、『おはスタ』を一年やってきて「結果的に仲間になった」という感じでしょうか?

山寺:同じ事務所ということで、勝手に僕が思ってることでしょうけど、よりがんばって欲しいと思っていました。それに、みんなからもそう思ってもらいたかったです。テレビ見てる子供たちや、スタッフや他のキャストからも。声優の斉藤壮馬も出演してましたからね。
『おはスタ』は声優を上手に使ってくれる現場なんです。僕が第一号でしたけど、他の声優の森久保祥太郎の「ゾナー」も、松風雅也の「番長」、斎賀みつきの「サイガー」も。みんなそれまで声優をやってきた感じとは違うカタチで活かしてくれるスタッフたちです。『おはスタ』のスタッフのなかには、アニメを作っていた経験がある方も多いので、「声優の力」を信じてくれているんです。声優はしゃべりができて、表現もできる。そういう意味だと、花江の良さを大勢に知ってもらいたかった。

花江:『おはスタ』の現場は、本当にスタッフさんが多かったです。

山寺:我々出演者は、番組のごく一部っていう感じでした。アニメもものすごい大勢の人で作るけども、録音現場にいるのは数人のスタッフと声優だけです。だから全スタッフの顔は見えません。
だけど『おはスタ』は出演者が数人で、他は全員スタッフなので、どれだけの人数が番組を作っているのかがよくわかるんです。そんな現場で上手くやらないといけないから、花江にはノウハウなんかも伝えてあげたかったし、スタッフたちにも花江を知ってもらいたかった。僕はスタッフたちに「花江がダメだったら言ってね」とは伝えてありましたが、みんなから「花江はいいヤツだよ」って言われたんです。

――それを聞いて、花江さんはどう感じますか?

花江:もちろん嬉しいです! 最初のころは山寺さんから毎日メールが来てました。

山寺:別に生で見なくていいのにさ、当時は前日の夜に飲んでても朝のオンエア時間には起きて見てました。でもね、生で毎日チェックしてるってのもどうかと思うんですよ。それに、いまはもうメールしてないですよ(笑) もうしっかりやってるからいいやって思います。

花江:山寺さんは『おはスタ』を卒業してから、飲む頻度が増えましたか?

山寺:増えたねぇ。自分から「二次会に行こう!」って言うようになっちゃった。

――18年間やられてるときの生活スタイルは、どのような毎日でしたか?

山寺:僕は飲むのが好きなので、まったく飲まないわけじゃなかったです。金土以外は翌日の朝に生放送があるので、必ず早めに帰っていました。最近は「終電なので解散」って言われても、僕から「いやいや、まだ大丈夫でしょう~」って(笑)。

――生活はガラって変わるものですか?

山寺:本当に変わりましたね、「毎朝の生放送がなくなると、こんなに楽なのか!」って。で、花江は毎日大変だから毎日早く寝てるんだよね?

花江:そうですね。僕の出演は週3日なので、『おはスタ』の放送があった日に飲みに行くんです。

――そのときの朝は何時から動いてるんですか?

花江:朝5時くらいから活動しています。なので『おはスタ』の日は途中でちょっと仮眠を取ることもあります。そんな日に飲みに行くと、寝ちゃうこともありますね(笑)。

山寺:僕も初期のころはずっとそうだったもん。友達の家とかで飲んでると、すぐ寝ちゃうんですよ。なのでよく「また寝てるよ」って言われてました。あ、そうそう! 花江は飲むと泣くってウワサを聞いたんだけど、ホント?

花江:最近はあまり泣きませんけど、泣くことがありました(笑)。

山寺:以前、斉藤壮馬くんから「また泣いてたんですよー」って言ってたからさ。あのときは『おはスタ』が週一回のときだったけど。

花江:感情が豊かなので……(笑)。

山寺:でも、まだ花江と一緒に飲んだことないよね? 誘おうにも花江の翌朝が早いからなー。僕がやり始めたころと時代が違うからさ。

――山寺さんが『おはスタ』を始めたころは、どんな時代だったのですか?

山寺:翌朝早いって先輩に言っても、「何時? 5時半? だったらまだ5時間も飲めるじゃねーか」ってよく言われて連れて行かれました。

――それで飲みに行く山寺さん、タフすぎます!(笑)

『おはスタ』の目標は子供が早起きしたくなる番組作り――山寺宏一

――花江さんから山寺さんに、なにか聞きたいことありますか? 

花江:「『おはスタ』をやっててよかったな」と思えた瞬間はどこでしょうか?

山寺:やっぱり「見てて楽しいよ」とか、「早起きが楽になった」とか、そういう率直な感想が嬉しいですね。

 お父さんお母さんから言われたり。本人からもね。

 僕が『おはスタ』をやり続けていたときの第一目標は、「早く起きて見たくなる番組にすること」だった。僕は子供のころ、とにかく早起きが苦手な子供でした。高校生のころまで毎朝母親に叩き起こされていたから、いまでも「コウイチー、起きろー!」という声が耳に残っているくらい、早起きが苦手でした。

 そういう経験があったから、番組を楽しみにしてもらって「『おはスタ』を見たいから起きる」と思ってほしかったんです。人間って、無理やり起きるよりも、なにか楽しいことがあるからワクワクして起きるほうが健康的じゃないですか? 僕の『おはスタ』が、その手助けをしたいという気持ちがありました。

▲山寺宏一さん

▲山寺宏一さん

――早く起きて欲しいから楽しい番組にしたのは、とてもおもしろいお話ですね。

山寺:だって「今日も1日が始まるのか……憂鬱だな」なんて思ってる子供の姿は想像したくないじゃないですか? 子供だったらやっぱり「今日も学校が楽しみ」とか「今日も好きな子に会える」、とか前向きに1日をスタートさせてほしい。そのなかのひとつとして、「今日も『おはスタ』を見よう」と楽しみにしてほしかった。そして番組を続けてきて、あるとき実際にお子さんをお持ちのお母さんから、「番組を見るためにうちの子が早起きになった」と言ってもらったことがあったんです。とても嬉しかったですね。

――感動するお話です。

山寺:あとは、『おはスタ』を長年やってきたので、別の仕事現場のスタッフから「『おはスタ』を見てました」と言ってもらえます。いまバリバリ第一線で働いている20代が、僕の『おはスタ』の世代らしいです。なんかヘンな気分ですよ。僕はついこの前まで『おはスタ』をやっていたのにね。そりゃ僕から花江に世代交代しますよ(笑)。

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