映画
劇場版『ガルパン』河東努さん×岩波美和さん対談イベントレポート

劇場音響の歴史は『ガルパン』が制覇していた!? ドルビーサウンドコンサルタント・河東努さん×『ガルパン』シリーズ音響監督・岩浪美和さん対談イベントレポート

 7月29日、音に拘るイオンシネマの幕張新都心にて「ガールズ&パンツァー 劇場版」の上映後に音へのこだわりをテーマにトークイベントが実施されました。登壇したのは、海老名を始め、板橋・茨木・福岡のTHX館の魅力を改めて引き出した、ドルビーサウンドコンサルタントの河東努氏と、幕張新都市ULTIRAセンシャラウンド/9.1chを実現させた「ガルパン」シリーズの音響監督・岩浪美和氏。そして、進行役には、音楽誌など幅広い執筆活動をおこなう一方、音響監督として劇場公開映画やCDソフトの制作・演出にも携わり、またイベントでの丁寧でわかりやすいトークとユーザーとのコミュニケーションを大切にする姿勢が多くのファンの支持を得ている、潮晴男氏。

 本稿では、世紀の対談となったイベント模様のレポートをお届けします! 

【日時】 7月29日(金)
【場所】 イオンシネマ幕張新都心
【登壇者】 河東務、岩浪美和/進行:潮晴男

■音作りのプロが思う音とは、観客にとって心地良い音が<いい音>

 「ガールズ&パンツァー 劇場版」ファンで満席の会場に、笑顔で登場した河東氏と岩浪氏。「劇場関係の仕事をしていて、初めて満席状態をみた」と驚きの河東氏に対し、「ガルパンは大体満席だよ。勝ったも同然だな(笑)」と、早くも自信満々のトークで応戦した岩浪氏。今回の上映は、アトモスシアターとして知られるイオンシネマ幕張新都心の劇場で、5.1chの音響ではもったいないということで、5.1chでできた音を9.1chにアレンジしての特別上映が実現しました。

 まず、岩浪氏によって劇場における音響の歴史が語られました。「サイレントの後、モノになりスピーカーが一個。その後4chのドルビーステレオが出現。左右と真ん中と後ろ。そして、アナログからデジタルに変化します。5.1chが出て、その次に6.1chが登場。立川の劇場が実は6.1chを使っていますが、内緒だけど、あっという間になくなって、次に7.1chが登場します。そこからいきなりドルビーアトモスという規格が登場することになるのです。実はその前にイムサウンドという、皆さん聞き覚えのある規格があるんです。「ガルパン」は、音響の歴史を総ナメしてるんですから!(笑)」と、劇場音響の歴史を解りやすく解説。

 更に最新規格ドルビーアトモスについて、詳細が語られました。「劇場内に設置された何十本ものスピーカーに自由に音を置きにいけるというのがドルビーアトモス機能です。」 本当は、アトモスでmixしてアトモスで上映をやりたかった岩浪氏でしたが、今回は9.1chアップmixでの上映となりました。9.1chアップmixの上映とは、5.1chでできている元の音をリアルタイムでアップmixし、9.1chにアレンジするという手法。アトモスでmixしてアトモスで上映した場合は、劇場内のどこの席にいてもより最適な音を供給してくれます。

 そこで、アトモス規格について、河東氏にたずねると「5.1chの音をプロセッサーの中でアップmixして9.1chにするわけですが、アップmixではどこのスピーカーにどの音を出すのかの指定はできません。例えば、戦車を操縦している人物のセリフはセンタースピーカーから、頭上から指示を出している人物のセリフは天井スピーカーから出したいとなった場合、最初からアトモスでmixをしなければ成立しません。

 また、9.1chアップmixではサラウンドと天井にいくつスピーカーがあっても、Lss、Rss、Lrs、Rrs、Lts、Rtsの各スピーカー群で音が鳴ります。しかしドルビーアトモスは9.1chアレイと同時に118個のオブジェクトと呼ばれる個別の音を、劇場によって最大64個のスピーカー個々に任意で置く事が可能です。また、サラウンドスピーカーと天井スピーカーのチューニングが従来のサラウンドの音響特性よりも低音域、高音域ともに広くなります。そのため、劇場空間にある空気感をより広域で感じられるのです。アトモスでmixした音とアップmixした音では圧倒的な違いがあります。」河東氏の技術的な解説の後、場内で実際にアトモス・コンテンツを上映し、アトモスサウンドを体験できました。

 劇場内を音が駆け巡るという形容がフィットする感覚。正に、劇場でしか体感できない音の魅力が明らかに。今回の特別上映は、5.1chの作品をリアルタイムで9.1chにアレンジした世界初の上映となる。調整は12人体制で行われました。

 そして最後は、おふたりに<いい音>についてお聞きしました。

 「実際に音を作る側の思いがどれだけ観客の皆さんに伝わるのかが大事だと思っています。観客として気持ちいいなと思う音がいい音だと思います。」と語る河東氏に対し、岩浪氏は「お客さんが喜んでくれる音、それが<いい音>だと思います。イオンシネマあげて、劇場で映画を見ることの価値をあげる取り組みをやっていただきたいと思います。一番劇場数の多いイオンシネマさんが拘っていただけると、他は追随するでしょう。」と、イオンシネマにエールを贈り、音作りのプロが思う音とは、観客にとって心地良い音が<いい音>という結論で、約30分のイベントは幕を閉じました。

 「超音、イオンシネマ プロジェクト」の一環として行われた「ガールズ&パンツァー 劇場版」のTHX上映、幕張新都心ULTIRAセンシャラウンド/9.1chの上映は好評の内に終了し、現在、「#超音、イオンシネマ プロジェクト Twitter」キャンペーンを実施中。また本イベントに登壇した河東氏が映画の音響の魅力を最大限に引き出す為のサウンド・アドバイザーを担ったTHXがイオンシネマ海老名、イオンシネマ板橋、イオンシネマ茨木、イオンシネマ福岡で稼働中、さらにイオンシネマ幕張新都心、イオンシネマ春日部、イオンシネマ港北ニュータウン、イオンシネマ名古屋茶屋、イオンシネマ和歌山、イオンシネマ京都桂川、イオンシネマ岡山では本イベントにて多くの観客を魅了したULTIRAが稼働中です。

■「#超音、イオンシネマ プロジェクト Twitter」キャンペーン
キャンペーン期間:7月29日(金)22:00~9月4日(日)23:59
キャンペーン概要:イオンシネマ公式アカウント(@AEON_CINEMA)をフォローし、「#超音THXはいいぞ」または「#超音ULTIRAはいいぞ」をツイート。どちらも決められないという方は両方をツイート。
抽選でTHXオリジナルグッズやULTIRAオリジナルグッズなどが当たる。

<イオンシネマ THX認定劇場>
イオンシネマ小樽(7番スクリーン)
イオンシネマ大宮(1番スクリーン)
イオンシネマ板橋(8番スクリーン)
イオンシネマ海老名(7番スクリーン)
イオンシネマつきみ野(9番スクリーン)
イオンシネマ近江八幡(8番スクリーン)
イオンシネマ茨木(7番スクリーン)
イオンシネマ福岡(7番スクリーン)
※河東氏がサウンド・アドバイザーを担ったスクリーンはイオンシネマ海老名、イオンシネマ板橋、イオンシネマ茨木、イオンシネマ福岡のみになります。

<イオンシネマ ULTIRA対応劇場>
イオンシネマ幕張新都心(8番スクリーン)
イオンシネマ春日部(1番スクリーン)
イオンシネマ港北ニュータウン(10番スクリーン)
イオンシネマ名古屋茶屋(10番スクリーン)
イオンシネマ和歌山(7番スクリーン)
イオンシネマ京都桂川(8番スクリーン)
イオンシネマ岡山(7番スクリーン)

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