構成Tこと構成作家・田原弘毅さんに聞く「ラジオの作り方」第5回

構成Tこと構成作家・田原弘毅さんに聞く「ラジオの作り方」──連載第5回「ラジオ作りはまったくのゼロからのスタートでした」

 構成Tこと構成作家・田原弘毅さんとともにアニメイトタイムズの新米編集者・石橋がオリジナルのラジオ番組を制作する本企画。田原さんからラジオの作り方をレクチャーしてもらいながら、どのようなラジオが作れるのかを模索していきます。

 過去の連載では、プロデューサー、構成と二つの目線からラジオについて学んできました。第5回となる今回のテーマは、収録現場を仕切るディレクターについて。田原さんの盟友でもあり、二人三脚で現場を歩んできたといっても過言ではないディレクターの佐藤太さんをお招きしました。お二人から業界に携わって学んだラジオ作りの心構えを窺っていきます。

 過去の連載はこちらから!
>>連載第1回「苦情も来ないようなラジオは誰も聴いてないんですよ!」
>>連載第2回「“この人とやりたい”なのか“こんな番組をやりたい”なのか?」
>>連載第3回「ラジオは生き物ですから始まってみないとわかりません」
>>連載第4回「怒られたってね、謝ればいいだけなんですよ」

今だからこそ言える衝撃の失敗談も……
 前回、田原さんに企画の添削をしてもらった石橋は、インタビュー終了後、さらにブラッシュアップした企画書を実際に声優事務所に提出しました。すると早速、とある事務所からかなり期待の持てる返事が届いたのです。「上手く行けば無事ラジオ番組を作れるかもしれない」──。今回は、実際にWEBラジオを収録する際にはどんなことが行われているのか、田原さんと佐藤さんにお伺いしていきます。


──それでは今回も始めていきたいと思います。早くも第5回目となりましたね。

田原:よろしくお願いします。第5回ですか、早いですねえ。前回は石橋さんに企画を考えてきてもらって、僕が添削したんでしたね。実際に声優事務所に提出したところ、どうやらなかなか嬉しいリアクションがあったようじゃないですか。


──そうなんです。前回の反省を踏まえてブラッシュアップした企画を各事務所さんに送らせていただいたんですが、ありがたいことに、早速そのうちの一つから返事をいただいたんです。

田原:これ(手元の企画書を見ながら)ですよね。まだ詳しくは話せませんが、かなり良い出来になってますよね。どうやら事務所さんからも好評らしく、このまま上手くいけば実現できるところまで話が進んでるとか。


──これも最初から相談に乗っていただいた田原さんのおかげです。記事の連載自体にも反響があって、Twitterなので「これが実現したら凄いぞ」なんていう声をいただいているんですよ。我ながら、記事に対するコメントをいただけて嬉しい気持ちになっています。

田原:佐倉綾音ちゃんからも相変わらず「読みましたよ」と報告がきましたよ。アニラジ好きの人たちが喜んでくれているなら、ちょっとコアな裏話をした甲斐があったなと感じています。


──そんな連載も終わりが見えてきてしまいましたが、もう少しだけ、お付き合いの方をよろしくお願いします。

田原:こちらこそ。さて、第1回、第2回では寺田プロデューサーを呼んでの制作の裏話、第3回、第4回では企画書を書いてきてもらって、その添削をすることろまでやりました。石橋さんの頑張りでラジオ番組は実現できそうなところまで漕ぎ着けましたので、今回からは実際に番組収録が始まってからのお話をしていく感じですね。というわけで、今回はディレクターの佐藤太くんをゲストにお迎えしております。

佐藤:こんにちは、ラジオ番組ディレクターの佐藤太です……。

田原:どうしたの?

佐藤:いや、記事を読んで感じてたんだけど、このインタビューって本当にラジオっぽく喋りながらやってるんだなと(笑)。レコーダーを僕に渡してくれれば、編集してそのままラジオにしちゃいますよ。

──それも面白そう……(笑)。ではまず、自己紹介をお願いします。

佐藤:改めて自己紹介するというのはなんだか緊張しますね。僕はもともと、声優の竹内順子さんが所属している「BQMAP」という劇団の旗揚げメンバーでした。田原くんともその時からの付き合いで、当時は僕も田原くんも役者として舞台に立っていたんですよ(笑)。そんな中で、僕は劇中音楽製作として、田原くんは脚本家としての活動もしていたんです。


──ラジオに関わるようになったきっかけはなんだったんでしょうか?

佐藤:竹内さんが声優として大きな役をいただくようになり、舞台もアニメ関係者の方に見に来ていただける機会が多くなっていたんですが、劇中の音楽を聴いたとある方に制作状況を聴かれたんです。僕は地味にですがゲーム音楽などの仕事などもしていたので、当時から家にいろいろな機材があり、基本的に自宅で作っていますと説明すると、「ラジオ番組を作れないか?」と声をかけていただいたんです。


──それまでラジオを作った経験はあったんですか?

佐藤:いや、まったくのゼロからのスタートでした(笑)。

一同:(笑)。

田原:僕もその縁で構成作家の仕事を始めたわけですが、二人共なにも知らない状態だったからねえ。我流もいいところですよ。


──正直な話、よくなんとかなりましたね。

佐藤:今はネットでも生放送が出来る時代なので、WEBというと生の感覚が強いと思うんですけど、当時は録音したものを編集して流すのが精一杯だったんですよ。ラジオは本来放送局で流れるものだったこともあって、WEBラジオはまだ先輩が少ない状態だったわけです。だから、自分たちのやりやすい方法で勝手にやれてしまったんですよ。

田原:これは以前話したことですけど、僕らはちょうどWEBラジオの立ち上げの時期に関わっているんです。だから一般的なラジオの話って、あまり深くできないんですよね。

佐藤:ただ最近は地上波の方でもRadikoのようにWEBでも聴けたり、タイムフリーで聴けるようになっています。逆にネットが発達したおかげでWEBでも生放送が可能になりました。お互いがいいとこ取りすることで、ラジオという全体のコンテンツが大きくなってる印象ですね。

ごめんなさい。なんか気がついたら自己紹介じゃなくてWEBラジオの歴史の話になってた気がする(笑)。


──いやいや、関係者視点からの話は貴重です。せっかくなので、佐藤さんと田原さんが手掛けた番組の話をお願いしてもいいですか?

田原:初期に僕らが一緒に作った時期は、アニメイトTV(アニメイトタイムズの前身となるサイト)さんもWEBラジオをガッツリ始める時期でしたね。『カンださん☆アイぽんのネギまほラジお』『少年陰陽師・彼方に放つ声をきけ~略して孫ラジ』や『ラジオdeアイマSHOW!』、『ぱにらじだっしゅ!』と、前回までに話題に上がった番組に関わって、そして『さよなら絶望放送』に繋がっていく感じですね。

最近はお互い別口で忙しくなっちゃったので、去年から二人でガッツリ絡む番組は1年に一度くらいなんですけど、最近で大きかったのはやっぱり『シェーWAVE おそ松ステーション』と『下ネタという概念が存在しない退屈なラジオ』ですかね。

佐藤:僕が一人でやっているのだと、アニメイトさんでは過去では『らじかもん』や『安定・清光の『花丸通信』」』とかですね。今は『きいてますよ、アザゼルさん。G』、あと「響 -HiBiKi Radio Station-」さんの方で『TRICKSTER 少年探偵団ラジオ』をやっているのと、『パカラジッ!~ウマ娘広報部~』という番組をやらせてもらってます。これは『ウマ娘』というサイゲームスのコンテンツのラジオ番組です。『ウマ娘』で最初にスタートした宣伝番組でもあるので、番組が宣伝担当でもあるんですよ。若干のプレッシャーもあるんですが、楽しくコンテンツを広げていけたらいいなと思っています。

それとニコ生になるんですが、『アイドルマスター SideM ラジオ 315プロNight!』という番組もやらせてもらっています。田原くん関係だとあとは、『東映公認 鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー』ですかね。ただこれはディレクターというかただ一ファンとして知恵を使わせてもらってるだけなんです。「特撮好きなのに話が来ないのはかわいそうだから俺が声をかけてやるよ」と、田原くんから凄い上から目線で誘われたのを覚えています(笑)。

一同:(笑)。

田原:基本的に文芸部的な扱いなんですけど、太くんって技術があるじゃないですか。僕ら元は舞台上がりの人間なので、ステージとか機材の基本的なベースがある程度はわかるんですよ。太くんなんて箱(会場)の使い方や録音のノウハウがあるので、公開録音とかイベントがあった時に、ディレクターさんのヘルプや、会場の叩き(音出し)なんかもやってもらってるんです。


──お話を聞くかぎりでは、アニラジに留まらず仕事を広げていっていらっしゃるんですね。

佐藤:それでも得意なのは編集で仕上げていく番組だと思っています。もともとコンピューターで音楽を作るタイプの人間だったので、音をちまちま編集するのが性にあっていたんだと思います。それに生放送にはあまりいい思い出がない、というか人生の五本指に入るトラウマを経験していまして……。


──一体何が?

佐藤:まだアニラジを始めたばかりの頃、いろんなラジオ番組をまとめるような生放送の特番に『ハンター×ハンターR』として参加することになったんです。生放送は本当に嫌で逃げたいとさえ思ったんですが、どうしても行かなきゃならなくなってしまいまして。何度も言うように当時は一般的なラジオの知識がない状態でしたから、ほとんど初めて生放送でディレクターをすることになったわけです。

だから、いろいろテンパってたんでしょうね。機材をちゃんと確認しないで番組を始めちゃって、僕の指示のミスで無音で放送がはじまったんです。ある程度無音が続くと放送事故扱いになって始末書を書かなきゃいけないんですが、そんな状態になってるって気が付かないで番組を回しているつもりになってたんだから最悪ですよね。

時報のピピピポーンの音の余韻の中、ミキサーさんが繋いでくれたおかげでギリギリセーフだったんですけど、もうあれ以来“生放送”と名前がつくのが怖くて怖くて。最近になってニコ生で長いことお仕事をいただけるようになり、ようやくそのトラウマも克服しつつあります。おかげで生放送ならではの面白さを理解できるようになってきましたね。


──それはまた……。

ウェブラジオにおけるディレクターの仕事とは?
 ラジオの奥深い話を聞き、改めてその魅力を再確認した石橋。先人たちの苦労を聞き、これから自分がやろうとしている、ラジオ番組作りに向けてよりいっそう気合を入れていくことを心に決めます。ここからはそんな佐藤さんから、ラジオ番組づくりにおけるディレクターの仕事内容について窺っていきます。


──アニラジにおいてディレクターとはどんなことをしているんでしょうか?

佐藤:僕の場合だと、大きく分けてスタジオでの仕事と家での仕事の2つに別れます。スタジオでの仕事は、ラジオの元となる音を録るための作業ですね。ミキサーさんやキャストさんに段取りの説明をしたり、収録が始まってから指示出しをして番組を進めたりします。そこで収録した音を持って帰り、番組の尺に合わせてトークの編集したり、音楽をつけたり演出するのが家での作業です。僕の場合は家での作業の比重は大きいんじゃないかなと思っています。

田原:ディレクターの作業は、“ディレクション”と“エディット”という言い方をしますね。ただ最近だと、ディレクターがミキサーの椅子に座ることもあり、もっといろんなことも兼任している方も増えてきている印象がありますね。

佐藤:僕が話したのは収録番組の話なので、生放送のラジオになるとまた少し変わってくるんです。生だと番組の尺に合うようにタイムキープする必用がありますし、音楽などもその場で出し、あとは僕みたいなミスをして無音にならないよう、より機材の動線にも気を配る必要がありますから。


──何度か取材でラジオの収録現場にお邪魔したことがあるのですが、ディレクターの方がなにやら機材をよく触っているのを見たことはありました。しかし、「何をしてるんだろう……?」と思っていたんです。

佐藤:色々触りますが、現場ならではだとキューボタンですね、パーソナリティなどに指示を出す時に使うやつです。よく「キューを出す」っていうでしょ。ランプが点くボタンを操作して、ブースの中の人に簡単な指示を出すんです。そういうのは「このランプがついたらトークを始めてください」と事前に打ち合わせをしておくんですけど、具体的な指示をしたいときには、収録には入らない別の音声ラインを使うこともあります。

田原:トークバックってやつですね。キャストさんが付けてるイヤホンやヘッドホンに直接声が届くんですよ。収録中にめちゃくちゃ話すディレクターもいますし、逆にまったく指示を出さない人もいたりして、この辺りのさじ加減は人による印象です。

佐藤:ちなみに僕はどうなの?

田原:君はね、喋りだすと長いから面倒くさいタイプだよ。

一同:(笑)。

田原:この人の場合、もとから編集するつもりでいますからね。生放送のラジオだとパーソナリティが間を作ったりしないようにパパっと指示を出すのが普通なんですけど、この人は長い時だと一分くらい喋り続けることがあって。だからその間はパーソナリティさんが一切しゃべらないという、ラジオにあるまじき事態が発生するわけです。

佐藤:いや、でも最近は学習してきたでしょ。喋らなくなったはず……(笑)。

田原:生放送ではね(笑)。ラジオでパーソナリティが誰かに相槌打っているのを聞いたことがある方もいると思います。そういうのは、多分この人が原因ですよ。


──なんだか裏話的なお話になってきましたね。スタジオでの仕事は指示出しが基本になる感じなんでしょうか?

佐藤:そうなります。あとは、パーソナリティが一人のラジオの場合は、番組の流れが良くなるように適度にパーソナリティさんに反応するようにしたいます。話しやすく、ラジオの空気を良くするための方法ですね。

田原:確かに一人喋りの番組だとリズムが良くなるように、意識して声を出すディレクターや構成作家は多いですね。そうやって全体を見ながら、トークの道筋を作ってあげるのが、一番大切なんです。

 これからのラジオ番組作りの糧にしようと、二人の話をしっかりと胸に刻み込む石橋。最後の連載となる第6回では引き続き佐藤さんをゲストにお招きし、アニラジ界の最強タッグからラジオ番組企画への最後のアドバイスを伺います。

 今回の連載のポイントはこちら。

“田原さんと佐藤さんは、WEBラジオを開拓してきたひとり”
“ディレクターのメインの仕事はディレクションとエディット”
“ラジオの収録現場を仕切るのはディレクター”
“構成作家もディレクターもパーソナリティのトークの道筋を作ってあげるのが一番大切”


[インタビュー/石橋悠 文/原直輝]

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