劇団アルタイルに所属するきっかけとなった出来事とは？――ツキノ芸能プロダクション」所属『劇団アルタイル』ショートストーリー連載第6回！

　2.5次元芸能プロダクション「ツキノ芸能プロダクション」に設立されたバラエティタレントユニット『劇団アルタイル』。歌もダンスもお芝居も……というマルチなタレント活動をする彼らの日々を、ショートストーリーと挿絵でお届けする連載です。

　Rigel、Regulus、そしてSargasのユニットデビューを迎えて、より絆を深めたメンバーたち。そんな折り、ツキプロが劇団アルタイルの追加メンバーを募集していることを知った彼らは、初めての後輩の存在を意識しつつ、自分たちの過去を振り返ります。芸歴も得意分野も異なる彼らが、いったいどのように集められたのか……グループ結成前のエピソードにご注目ください！

劇団アルタイル『新しい星』
【あらすじ】
劇団アルタイルに、新規メンバーを募集することになった。タツヒコ、ミカド、ヨウスケ、ユウリは、まだ見ぬ後輩たちの存在に浮き立ちながらも、話題は自分たちが劇団アルタイルに所属するきっかけとなった出来事へと移っていく。

【ストーリー】
　ミカドが共有ルームに足を運ぶと、ちょうどタツヒコが電話を受けているところだった。
「わかりました。メンバーには俺から伝えます。……はい、よろしくお願いします」
「なんの電話？」
　声をかけると、タツヒコは通話を切りつつ、こちらへ軽く笑顔を向ける。
「マネージャーからだ。劇団アルタイルの、次のプロジェクトの話で」
「えっ、次のプロジェクトって、なになに！？」
「気になるね」
　どこで聞いていたのか、ヨウスケとユウリが興味津々といった素振りでこちらへやってきた。
「みんな耳ざといな」
　タツヒコがソファにかけると、各々、彼を囲むように座った。

　誰が言いだしたわけでもないが、最近はなんとなく座る場所も決まっている。タツヒコの隣にはだいたいヨウスケが陣取るし、ユウリはアームレストの脇がお気に入りだ。
（俺は……じゃあ、ここかな）
　背もたれに両肘をついて、ミカドはソファの外側から覗き込む。
　タツヒコよりほんの少し後ろ、みんなからは斜めの位置。わざと、ほんの少しみんなと外れた立ち位置に納まるのが気に入っている。
「なあなあ、タツ。もったいぶってないで早く話せよ。気になるじゃん」
「別に、もったいぶってるわけじゃない」
　タツヒコは苦笑いしながら「今度、劇団アルタイルの新規メンバーを募集するそうなんだ」と告げた。
「新規メンバー……！」
「俺たちに後輩ができるということか？」
　訊ねると、タツヒコが頷く。
「それは楽しみだね。どんな人が来るんだろう」
　目を細めて笑うユウリに、タツヒコはもう一度頷いた。
「募集と選抜にあたって、俺たちが協力することがあるかもしれない、という話だった」
「うわ、スッゲー楽しみ！　わくわくするなぁ！」
　目をきらきら輝かせてヨウスケが笑う。
「なーんか不思議だよなぁ。みんなと出会ったのがつい昨日のことみたいな気もするし、もー遠い昔のことみたいな気もするしさ」
「確か、ヨウスケとタツヒコは、同じ劇団の出身だったよね？」
「そーそー。その劇団が解散することになったんだ。どうしたもんかな〜って思ってたとき、ツキプロの社長にスカウトされて、ふたり一緒に移籍！
　そういうユウリもスカウトだよな？」
「うん、そうだよ。最初はモデル部門にいて、そのあと移籍したんだ」
「で。ミカドは、ちょうどツキプロに入所することになってたんだっけ？」
「ああ。父がツキプロ所属だったからね」
　自分はいわゆる、二世俳優だ。父は大物俳優で、母は人気モデル。結婚当時はビッグカップルと騒がれたらしい。
　一年前、すでに芸能界デビューは済ませていたけれど、漠然と「将来は俳優になるんだろうな」と思っていただけだ。仕事はどれも親を経由して決まったものばかりで、自ら掴み取ったことは一度もない。
（あのころは、本当になにも知らなかったな）
　他人が羨むものを、両手に山ほど抱えている——そんな自覚はあった。けれど、いま振り返ってみると、あのころの自分は自身で得るべきものをなにも持っていなかった。
　夢も、仲間も、挑戦も、挫折も、成功も、きらめく毎日も。
　大切なものはどれも、劇団アルタイルに入ってから手に入れたものばかりだ。

「ふふ」
「？　ミカド、なに笑ってんの？」
「いや……うん」
　首を傾げるヨウスケに、ミカドはちいさく頷く。
「短いようでとても長い、充実した一年だったな、と思って」
　すると、他の三人もまた、互いに顔を見合わせ——くしゃりと笑った。