実写映画『ひだまりが聴こえる』主演の二人が大切にした想いとは

人気BLコミック『ひだまりが聴こえる』実写映画化! 航平役・多和田秀弥さん&太一役・小野寺晃良さんの二人が大切にした想いとは

 文乃ゆきさん原作の人気BLコミック『ひだまりが聴こえる』(プランタン出版刊)が実写映画化し、6月24日(土)より東京・池袋HUMAXシネマズにて公開スタート!

 本作では、突発性難聴になり、心を閉ざす航平が、明るく元気な太一と出会い、感情を取り戻し、共に成長していくさわやかな青春ストーリーが描かれます。

 航平役を演じるのはミュージカル『テニスの王子様』の手塚国光役や『手裏剣戦隊ニンニンジャー』のスターニンジャー/キンジ・タキガワ役を演じた多和田秀弥さん、太一役は映画『HiGH&LOW THE RED RAIN』、ドラマ『臨床犯罪学者 火村英生の推理』などに出演する小野寺晃良さん。劇場公開を記念して、主役のお二人に見どころなど伺いました。

 

実際に演じて感じた航平の苦しみの深さ
――まず原作を読まれた印象や感想をお聞かせください。

杉原航平役 多和田秀弥さん(以下、多和田):最初、BLマンガという説明を受けて、ナチュラルな気持ちで読めるかなという不安が若干ありましたが、自分で買いに行って、読み始めたら素敵なお話と絵だったのですっと入れて、気が付いたら最後まであっという間で。

読みやすくて、感情も入ってきやすくて。登場するキャラ達にも感情移入しやすかったこともありますが、ストーリーにもきれいな波があって、落ち着いて読むことができました。そしてどのように映像化して、僕も航平をどのように演じるのか、楽しみでワクワクしたことを覚えています。

佐川太一役 小野寺晃良さん(以下、小野寺):読んでいて、太一は僕だなと。そのまま太一の気持ちで、太一の目線で読み進めていました。絵もきれいで、航平と太一の関係性も優しく温かくて素敵だなと思いました。

 
――今回、演じる中で作品に対して受け取り方の変化はありましたか?

多和田:原作を読んだ時は俯瞰で見ていましたが、演技を通して自分が体感してみると違うなと思う部分はもちろんありました。航平は、自分が思っていたよりもずっと苦しみを背負っているんだなと。

小野寺:原作を読んでいる時は自然と太一になれましたが、いざ演じるとなって、自分と太一をどう近づけていくか考えてみると、自分と近いからこそ深層の部分まで考え込んでしまって。そのなかで太一と自分を重ねることで、自分自身を改めて見つめ直せたし、より自分を知ることができた気がします。

 
小野寺さんは太一と似ているがゆえに苦戦
――ご自身の演じる役柄についての印象と演じる時に心がけたこと、大変だったことは?

多和田:航平が人と接しなくなったり、心を閉ざしてしまうのもわかるんですよね。例えば言葉が聴き取りにくくて、聞き返した時に相手が変に気を使ったり、距離を置かれたりしているうちにこうなったんだろうなとすごく胸が苦しくなりました。

小野寺:航平自身は人嫌いでもなく、本当は優しい子なのにね。

多和田:航平が突発性難聴であることが演じるうえでの大きな壁でした。航平の状況になるべく近づけるためにできることをいっぱい考えたり、調べたりして。撮影に入る前には聴き取りにくい状況を作ろうと思って、イヤホンを付けて耳を密閉状態にして生活してみると、普段、当たり前に聴いている声や音がもわっとかすんで聴こえるのはしんどかったです。

でも突発性難聴になった人にはそれが普通で、航平が言う通り、自分が特殊だったり、かわいそうだなんて思っていない人もいるだろうしとか、いろいろな想いが浮かんできて。この感覚を持ったまま、撮影に挑めたらいいなと思えたきっかけになったし、自分でもやってみてよかったと思いました。

 
――航平は太一の声は聴こえるというまったく聴こえないわけでないところも演じるうえで難しそうですね。

多和田:他の人の声は聴き取りにくいのに、太一の声は奇跡的にはっきり聴こえたというところから2人が出会い、近づいていくわけですが、その差をどう演じたらいいか悩みました。太一の声は航平になって光になる存在であり、繊細さも求められるし。

自分なりに「これでいいのかな」と探りながらシーンごとに演じていきました。大変でしたが、いい経験ができたと思います。

小野寺:本当にすごいなと思いました。太一は自分と似ていたので、どう寄せていけばいいのかという苦労はありませんでしたが、近いからこそ、シンクロするがゆえに演じる難しさがあって。太一のことを考えているはずなのに、自分の過去について考えてしまったり。

太一は明るくて、元気で、誰に対しても分け隔てなく接しているけど、実は重い過去や悩みがあって。より人間っぽさが出たと思うし、もっと共感できました。

 
航平の自然な表情を引き出してくれた小野寺さんに感謝
――お互いの役柄について、または掛け合ってみた感想は?

多和田:僕も周りの人も撮影時に言っていたけど、本当に太一と似ているなって。役柄同様に等身大な感じでぶつかってきてくれて、航平にはそれがうれしいことで笑顔になっていったように僕も自然と笑顔になれました。

航平は最初の頃は表情や言葉に変化がなかったけど、太一と接するうちに、くすっと笑うようになって、素直に感情を表して笑えるようになって。そんな感情や表情の階段の作っていき方が繊細なので難しいなと思っていましたが、本番ではすっと感情が動いて。それは晃良の太一だったからできたと思っているので、感謝しています。

小野寺:ありがとう。僕も航平が多和田さんでよかったです。カメラが回っていない時の多和田さんは優しくて、明るくて、ずっとしゃべっていて、本当にいいお兄さんで。だから本番に入った時の切り替えがすごくて、驚いたし、尊敬しています。

 
――航平は心を閉ざしているからこそ、本番以外では発散したかったのでは?

多和田:そうですね。今までも無口だったり、クールな役を演じた時も本番が終わるとリミッターがはずれたようにしゃべりまくっていました(笑)。他の共演者の方もそういうふうになるみたいで、自然とバランスをとろうとしているんでしょうね。

 

航平が太一のために頑張ったシーンはほっこり&かわいい!? ラストも要チェック!!
――劇中で好きなシーンを挙げるとすれば?

多和田:ネタバレしない程度に(笑)。航平が、太一に対する気持ちが段々変化していることに気付いていくわけですが、1カ所ほっこりできるシーンがあって。見れば絶対わかります(笑)。

小野寺:あのシーンだ!

多和田:航平が家でお母さんとあることをするわけですが、昔の航平だったらきっとあんなことしないと思うし、本当の航平の気持ちや表情が見られるシーンだと思うので注目してほしいです。

 
――あのシーンの前後、太一とのやり取りと見せる表情がかわいかったです。

多和田:ありがとうございます。それまでのクールな部分とのギャップは大切にしようと思って、普段静かで笑わないからこそ印象深いし、その後の太一の「お前、笑ったほうがいいな」というセリフにもつながるし。航平の変化の象徴的なシーンですし、心が洗われると思います。

小野寺:絵の美しさでいえば、やっぱりラストシーンかな。

多和田:確かに。

小野寺:撮影期間中、ほとんど雨で、1日だけしか晴れなくて。その1日晴れた日に撮った
のがラストシーンで、一番きれいかなと。

 
――確かに、タイトルの“ひだまり”やポスターなどのやわらかく、温かい光の雰囲気がラストシーンに感じられました。

多和田:2人の気持ちと空間が一致する感じがあって。

小野寺:逆に雨もいい効果になっているねって話してたよね。

多和田:最後に晴れてくれたからこそ、感動的でもあり。

 
――劇中で雨の降るベンチで2人話すシーンがありましたが、元々、雨のシチュエーションだったんですか?

小野寺:元々、雨のシーンとして書かれたわけではなくて。

多和田:「何でこんなに雨が降るんだよ!」と嘆いていました。もう雨待ちなんて言うレベルじゃないからもう撮りましょうと(笑)。


――でも結果的に2人の心象風景にも合致した、いいシーンになりましたね。

小野寺:あの時は雨止めよと言っていたけど、心境的にもリンクしたね。

多和田:天候も味方してくれたのかもしれない。全日、雨だったら困ったけど。

小野寺:タイトルが“ひだまり”だし、加工するのもちょっと。

 
ムードメーカーの三津谷亮さん、安心感のある高島礼子さんなど素敵な共演者にも注目
――他に撮影時におもしろかったことや裏話があれば教えてください。

多和田:ここにいないけど、名前を出したら喜ぶと思うので、太一の親友のヨコ役、みちゅみちゅこと三津谷亮君の話も(笑)。ヨコは航平との接した方に変化があったり、2人の関係に影響を与えたりといいスパイスになってくれたけど、意外と自由に演じていて。それがおもしろかったんですけど、ちょいちょいやり過ぎて、上條監督から「もういい」と言われていたのが更におもしろくて。

本人は狙ったわけじゃなく、全力でやっているからこそ微笑ましいんですよね。航平と太一がお弁当のハンバーグを仲良く食べていたら、急に入ってきて、指で4、6、4、9とやっていたのも監督のディレクションではなくて(笑)。あと雨のなかで航平とヨコが会った時も、話しながら手話っぽく伝えるシーンも「手の動きが多過ぎる、やり過ぎ」と言われたり。

小野寺:本当、おもしろかったよね。

 
――あと航平のお母さん役の高島礼子さんとの掛け合いはいかがでしたか?

多和田:すごく安心感がありました。

小野寺:うん。太一も劇中でお話しするシーンがあって、楽しかったです。

多和田:初めましてだし、絶対緊張すると思っていたけど、お会いした瞬間に「母さん」と言いそうになるくらい。そういう雰囲気を作ってくださったからだと思うし、とても感謝しています。だから家のなかのシーンも楽しかったです。

家のなかでしか見せない航平のやわらかい表情も引き出せてもらえたと思います。短い期間でしたが、濃い時間だったし、もっとお母さんとのシーンを演りたいなと思いました。

 
――航平と太一は大学生ということで、キャンパスでのシーンも多かったですが、自然かつリアルで。

小野寺:本物の大学で撮影させていただいて。また共演者同士、仲良かったからかも。

多和田:僕は大学に行っていないので、大学生の感覚を味わえて楽しかったです。学食や教室の雰囲気を体感できたり、サークルの勧誘とかコンパの話題とかあったり。「大学に行ってからが楽しいんだよ」と友達に言われたことがあったけど、そのワケがわかった気がするし、何かワクワクしました。

小野寺:僕はまだ高校生なので、大学生の年齢になる前に大学生のシーンを撮っているのは不思議な感覚でした。演じていて、大学って楽しいところだなと思ったし、行きたくなりました。

 
友情の延長線に生まれた恋から自分は1人じゃないと気付かせてくれる作品
――この映画の見どころや注目ポイントを教えてください。

多和田:航平と太一が出会い、どう変わっていくかという過程や変化が、心理描写と共に丁寧に描かれていて、どんな世代の人が見てもきっと共感できる部分があると思います。人はお互いに支え合って生きているということに気付かせてくれるし、誰にでも大切な存在がいると思うけど、2人はたまたま男の子同士だったというだけで……。

この映画を観たら、きっと人に対してもっと優しくなれるんじゃないかなと。実際、僕もいろいろな人に感謝して、接していかなきゃと改めて実感できました。

小野寺:2人の人がいて、その友情の延長線上に、たまたま恋があっただけで。変なフィルターをかけずに素直に見て、何か感じてもらえたら。太一にとって航平が欠かすことのない存在ですが、そんな人と出会えたら素敵だなと思うし、今、僕の周りにいる人達にも優しく接していけたらと思っています。

多和田:誰でも心を閉ざしたり、閉ざしたくなるタイミングがあって、自分で解決できるのが一番だけど、できない時は誰かが支えてくれるわけで。今、悩んだり、心を閉ざしたくなっている人にぜひ観てほしいんです。自分のことを見守ってくれたり、助けてくれた人がいたことに気付いて、決して1人じゃないんだとわかってもらえると思うから。

 
揺れ動く人間模様をそれぞれの視点で観つつ、あなたの心を温める“ひだまり”に
――では最後に皆さんへメッセージをお願いします。

小野寺:心を閉ざしている航平と、歩み寄っていく太一の関係性は微笑ましいし、温かいと思います。2人の距離が縮まったり、すれ違いそうになったり、お互いの心境が変わっていく様子を温かく見守っていただけたら。

僕のように太一と自分を重ね合わせたり、共感できる方は太一目線で、どうしようもなく心を閉ざしたくなっている人は航平目線で、とそれぞれの目線で観ると、感じ方や受け取り方も違ってくると思うので、何度も観て楽しんでください。

多和田:航平と太一を中心に描く人間模様やさわやかな青春、ひだまりのような美しく温かい映像など見どころがたくさんある作品になったと思います。女性の方にはキュンキュンしてもらえるシーンもあるし、「私もその気持ちわかる」と共感できたり、いろいろな感情がこの映画の中で体感できると思うし、観た後にはきっと違った感情や新たな気持ちが芽生えたり、優しくなれるはずです。

ぜひ大きなスクリーンで監督がこだわった美しい映像と2人の人間ドラマを楽しんでいただき、帰り道で2人が今後どうなっていくのか、未来に想いを馳せていただけたら。皆さんにもこの映画が“ひだまり”になって、心が温かくなってもらえたらうれしいです。

 
『ひだまりが聴こえる』作品情報
2017年6月24日より東京・池袋HUMAXシネマズほか全国順次公開!

★メイキングDVDは好評発売中!!
『君の声が届く時「ひだまりが聴こえる」メイキング』
2017年5月17日発売
2,800円(税別)
発売:ポニーキャニオン

>>映画『ひだまりが聴こえる』公式サイト

(C)文乃ゆき/プランタン出版 (C)2017「ひだまりが聴こえる」製作委員会
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