イズモやリツと旧知の人物が登場!?――ツキノ芸能プロダクション」所属『劇団アルタイル』ショートストーリー連載第11回！

　2.5次元芸能プロダクション「ツキノ芸能プロダクション」に設立されたバラエティタレントユニット『劇団アルタイル』。歌もダンスもお芝居も……というマルチなタレント活動をする彼らの日々を、ショートストーリーと挿絵でお届けする連載です。

　今回からは、ついに始まった劇団アルタイルオーディションの様子をお届けします。審査はどのように進むのか、そしてどんな人間が選ばれるのか……新しく登場する個性豊かな登場人物に注目です！

劇団アルタイル『最終審査スタート！』
【あらすじ】
　劇団アルタイルの新メンバーオーディション、三次審査が始まった。ここで選ばれた者が、正式にアル劇のメンバーとして加入することになる。そんな審査の場に現れたのは、イズモやリツと旧知の“麻布ノブアキ”だった。

【ストーリー】
「それではこれより、劇団アルタイルオーディション、三次審査を始めます」
　審査員の声に、ノブアキは改めて姿勢を正した。
「みなさんには歌、ダンス、事前にお渡しした台本による芝居と、自己アピールを行っていただき、面接官による質疑応答の後、終了となります」
　説明を聞きつつ、ゆっくりと審査会場を見渡す。
　前方に審査員、横に並んでいるのは、一次、二次審査をくぐり抜けてきたライバルたちだ。
（ま、俺は三次からの参戦だけど）
　一次の書類審査、二次審査を受けるのは一般応募組。
　元々ツキプロの他部門に所属している者や、関係者の推薦がある場合は三次審査からとされている。小さなころからツキプロの子役部門に在籍している自分は、三次審査からの参戦だ。

（みんな、めちゃめちゃ真剣な顔してるし、イイヤツっぽい！　こいつら全員と友だちになれたらいいよなー。
　……けど、ごめんっ！）
　心の中でめいっぱい、手を合わせる。
（今回は俺が受かるから！　みんなは次がんばれっ！）
　今日のメンツは、敵じゃない。
（これ、ウッカリ声に出して言うと、生意気って言われるんだけど）
　自分で言うのもなんだが、こういうときの勘は外れた例しがない。空気が、雰囲気が、風向きが「来てる」。
（それに俺、こんなとこで落っこちてる場合じゃないし）
　オーディションに合格することは、目的のための通過点でしかない。

「え、移籍？　イズモとリツが？」
　去年のことだ。急な話に面食らって、思わずマネージャーに訊き返した。
「なんで？　絶対、俳優部門に行くと思ってたのに！」
　社長の推薦があり、最終的には本人たちが希望したと聞かされたけれど、ちっとも納得がいかない。
　特に、自分とイズモは子役部門で頭ひとつ分、上のランクにいると思っていたし、当然、子役部門から俳優部門へ移り、芝居の道を極めるものだとばかり考えていた。
「どうしていまさら劇団なわけ！？」
　詳しく聞けば、劇団アルタイルは、名称として『劇団』と付いているものの、その活動は一般的な劇団とは異なり、歌や芝居という枠を越え、タレントとして幅広い活動を行うという。
決して俳優の道を諦めたとか、別の道にそれたという訳ではないそうだ。
（けど、やっぱ納得いかない！）
　しかし、イズモを問いただしても「俺が自分の将来をどうしようと俺の勝手だろ」としか言わない。並び立つライバルだと思っていたのは自分だけかと、ますます腹が立って、RigelのデビューＣＤも聴けないまま、時が過ぎた。
　考えが変わったのは、事務所でたまたま見た『ミュージック・ステージ』のＶだ。
（ヤバい）
　イズモのポテンシャルはよく知っているつもりだった。年も同じで、実力も互角——だったはずだ。
（なにこれ。アイツ、あんな顔すんの？）
　子どもの頃からの腐れ縁で、オーディションで戦ったこともあれば、同じ芝居にも出たこともある。なのに。
（あんな声でんの）
　スポットライトを浴びるイズモは、まるで別人だった。
　慌てて発売済みのＣＤを全部聴き、アル劇の定期公演も見に行った。驚いたのは、イズモの変化だけじゃない。
（え、うっそだろ！　あれがリツ！？）
　気弱そうに、スタジオの隅で佇んでいたちびっ子の面影は、もうどこにもなかった。

「審査はエントリーナンバー順に、ひとりずつ行います」
　審査員の声で我に返り、その顔を見て、思わず「あ！」と声を上げそうになった。
（あの審査員ぽい人、アル劇のメンバーだ！）
　確か、要タツヒコ——劇団アルタイルのリーダーだったはず。
「番号を呼ばれた方は起立して、所定の立ち位置に移動してください。それから名前と、事務所に所属している方は所属事務所をお答えください。
　今回は三次審査まで残った人数が多いため、オーディションは二日間に渡って行われます。審査は十人単位で行いますので、終了した方はいったん席にお戻りください。十人全員が終了したあとに退室となります」
　日程表らしきものを見ながら、タツヒコが説明する。
（三次、結構残ってんだ？　へー。　……ま、いいや。どっちにしたって負けないし）
　こっそり、大きく深呼吸をした。
　要タツヒコ、千川リツ、そして大崎イズモが所属する劇団アルタイル。
（俺は絶対、劇団アルタイルに入る）
　置いて行かれるなんて、冗談じゃない。
　彼らと同じぐらい、いや、もっともっと輝いてみせる。
「では、エントリーナンバー１番の方」
　声がかかる。
　笑って、立ち上がった。

「はい！　麻布ノブアキ、ツキノ芸能プロダクション子役部門所属です！」