総勢19人となった『劇団アルタイル』の今後は？――ツキノ芸能プロダクション」所属『劇団アルタイル』ショートストーリー連載第16回！

2.5次元芸能プロダクション「ツキノ芸能プロダクション」に設立されたバラエティタレントユニット『劇団アルタイル』。歌もダンスもお芝居も……というマルチなタレント活動をする彼らの日々を、ショートストーリーと挿絵でお届けする連載です。

今回は、新メンバーを迎えて初めての顔合わせ。さらに今後のアル劇の方針について、リーダーである要タツヒコから説明があります。総勢19人の大所帯となった彼らは、いったいどんな方向へと舵を切っていくのでしょうか？

劇団アルタイル『次のステップへ』
【あらすじ】
新メンバー加入後に最初に行われたのは、現メンバーと新メンバーの顔合わせを兼ねたオリエンテーションだった。リーダーであるタツヒコから、今後の『劇団アルタイル』の方針が説明される。

【ストーリー】
「えっと……これで全員揃った、かな？」
　そう呟いてリンタロウが顔を上げると、七対の視線がぎゅっと集まってくる。
（うわ！　き、緊張するなぁ）
　少しばかり怯みそうになりつつ、ちらりと視線を向けると、タツヒコが穏やかに頷いた。
「それじゃ、さっそくオリエンテーションを始めようか」
「はぁい！　先輩、質問いいですか？」
　ちょこんと手を挙げたのは、タイキだ。
「これからどんなことをするんですか？　初顔合わせだし、自己紹介するのかな？　って思ってたんですけど……今日って先輩たち、全員揃ってないですよね？」
「それぞれ仕事があったから、全員参加はできなかった」
　マキの言葉に、隣のリツが頷いた。
「ん。だから、君たちの入寮日に、改めて全員で集まろうって話、してる」
「ちぇ。なんだ、そっか。久しぶりにイズモとも会えると思ってたのになぁ。でも、リツとは会えてよかった！」
　ノブアキがぼやくと、へえ、とダイスケが声を上げる。
「麻布くんは大崎先輩、千川先輩と知り合いなんだ？」
「そそ。俺、ツキプロの子役部門出身で――」
「少しいいか」
　ノブアキとダイスケの会話をタツヒコがやんわりと遮る。
「あ……すみません。お話中に雑談をしてしまって」
　恐縮するダイスケに、タツヒコは「いや、そうじゃない」と言い、続ける。
「ちょうどいい流れだから話をさせてほしいんだ」
「ちょうどいい……？」
　首を傾げるタツヤの目を見て、タツヒコはゆっくりと頷く。
「今日、俺たちからの伝達事項は、大きく分けてふたつある。ひとつは、アル劇内の序列について。……というと、ずいぶん堅苦しく聞こえると思うが、逆だ。
　いま、新メンバーのみんなは、俺たちのことを先輩と呼んでくれているが、そう言った序列は、今後積極的になくしたいと思ってる」
「序列を……なくす？」
　ジュンペイが目を丸くした。
「ああ。そもそもアル劇は、俳優やミュージシャン、モデル、芸能活動は未経験の者まで、いろんな背景を持つメンバーが幅広く所属するユニットだ。つまり、芸歴は後から入った人間の方が長い場合もあるし、得意分野もバラバラだ。今後は新メンバーのみんなから、俺たちが学ぶこともたくさんあるだろう。
　だから、上も下もなく、序列の垣根を取り払った空気を作っていきたい……と、これは、社長の意向でもある」
「うーわ、社長らしーな」
　ノブアキが笑って肩をすくめる。
「へぇええ。ツキプロの社長さんっておもしれー！」
　続けて、ショウゾウが笑う。
「けど、いいじゃん！　堅苦しくなくってさ！　な？　ジュンペイ」
「う、うん。そうだね」
「……序列がないってことは、先輩に対しても敬語は無し、ですか？」
　それまで黙って聞いていたカズキが居心地悪そうに呟くと、タイキがにっこりと笑んだ。
「ふふ。カズキくんは、リンタロウくんのこと、すっごくリスペクトしてるもんね～♪　いきなり砕けて話すのは、ちょっと無理な感じ？」
　さっそく親しげに呼ぶタイキに、カズキの表情がいっそう複雑そうになる。リンタロウが慌てて声を上げた。
「あ、あの！　ほんと、そういうこと全然気にしなくていいので！　俺のほうこそ、みんなのこと頼りにしてますからっ！」
「だって！　よかったね、カズキくん」
「……わかりました」
「あ、ほら。敬語はダメだってば」
「………………」
「まあ、そこまで無理をしなくてもいいんじゃないか？　それぞれがしっくりくる呼び方、話しやすい話し方で良いと思う。要は、同じチームの仲間だと思えることが大事ってことだろ」
　マキの助け船に、リツも「僕もそう思う」と相づちを打つ。
「それから、ふたつ目の伝達は、当面の活動について。近々、定期公演とは別に、新メンバーのお披露目を兼ねたミニ公演を行うことが正式に決定した」
「お披露目公演……！」
　新メンバー7人はお互いに顔を見合わせる。
「というわけで、しばらくはそこに向けたレッスンをしていく。もちろん、メンバー19人が一丸となって協力しつつ進めていくので、そのつもりでいてほしい。
　これからみんな一緒にがんばっていこう」
　タツヒコの言葉に、メンバー全員の表情が明るくなる。
（いよいよ始まるんだ）
　誰もが胸の中でそう思い、気づけばお互い、まったく同じ言葉を口にしていた。
「よろしくお願いします！」

　それぞれが同じ未来を見上げて、一番星を目指す――今日はそんな、新しい記念日。