祖母に宛てられたユウリの手紙の内容とは？「ツキノ芸能プロダクション」所属『劇団アルタイル』ショートストーリー連載第25回！

2.5次元芸能プロダクション「ツキノ芸能プロダクション」に設立されたバラエティタレントユニット『劇団アルタイル』。歌もダンスもお芝居も……というマルチなタレント活動をする彼らの日々を、ショートストーリーと音楽でお届けする連載です。

今回は、妖精が見える系ハーフ男子・東雲ユウリを中心とした物語。いつも穏やかな笑みを絶やさず、メンバーを見守っているユウリの視点から、アル劇メンバーとの日常をお届けします。

劇団アルタイル『It’s my life』
【あらすじ】
スウェーデンに住んでいる祖母に、手紙をしたためるユウリ。仲間たちとの関係や、日々の出来事を綴っていく。その手紙の内容と、彼が過ごす日常の1コマが同時に描かれる。

【ストーリー】
――拝啓、お祖母様。元気にお過ごしでしょうか。
ご無沙汰してしまいましたが、僕は、日本で楽しく過ごしています。どうか安心してください。
久しぶりで、なにから伝えようか迷ってしまいますが、真っ先に報告したいことは、新しい仲間が増えたことです。

「おはよう。タイキ」
「ユウリくん、おはよぉ……ふぁ」
欠伸まじりに言ったタイキは、共有ルームのソファに座るユウリをじっと見つめた。
「ユウリくんさぁ、もしかして寝てないの？」
「？　たくさん寝たつもりだけど、寝不足に見えるかな？」
「や、いつも以上に爽やか～ってカンジだけど。こんな時間に起きてるの初めて見たから、徹夜でもしたのかなって」
「ふふ。今日は久々の秋晴れだから、トムテさんが散歩に行きたがってね。早起きして、少し歩いてきたんだ」
「……トムテさん、ね。ていうか早起きできるなら、普段からもうちょっとがんばろうよ。毎朝誰かに起こされてるんでしょ？」
「そうだねぇ。でも、なぜか毎回アラームがOFFになってるんだ。これもトムテさんのイタズラなのかな？」
トムテがぎょっとして、顔を左右にブンブンと振ったのを見て、ユウリは「どうやら違うみたいだ」と笑った。それを見たタイキも、少し呆れたように微笑む。
「ユウリくんって不思議だよね、妖精が見えるだけじゃなくて。ねぼすけさんなのに、眠そうにしてるとこは見たことないし。いっつも優雅で涼しげでニコニコしててさ……」
「おはよう、ございます。ユウリさん、タイキさん」
カズキが、共有ルームに入ってきた。
「おはよー。あ、そうだ。ここにもいたな～。ユウリくんとはタイプぜんっぜん違うけど、基本的に顔が変わんない子！」
「？　なんの話ですか」
「はーい、カズキくん。笑って笑って～」
「……いひゃんれすけろ」
「わぁ。素敵な笑顔だね、カズキ」
「やめへくりゃはい」
「だいじょぶ、だいじょぶ。笑うのなんて慣れれば全然いける♪　真顔と笑顔でギャップ狙ってこ？」
「ふふ。タイキは研究熱心なんだね」

どの子も前向きで、元気いっぱいで、がんばり屋さんです。
そうそう。今度、メンバー全員のソロ曲がリリースされることになりました。パワーアップしたメンバーで一丸となって臨む企画、本当に楽しみです。

「おーっす！　おはよーっす！」
続いて、共有ルームにショウゾウとジュンペイが顔を覗かせた。
「タイキくんとカズキくん……なにしてるの？」
「笑顔の練習♪　カズキくんの表情筋をこーして、積極的に緩めてこーと思って！」
「あーわかる！　筋肉ほぐすのは基本だもんな！」
「えっ……そ、そういうもの……？」

みんなまだ知り合って間もないけれど、とても打ち解けています。パフォーマンスにもいい影響があるに違いありません。
それから、打ち解けたのは新しい仲間たちだけではないんです。

「朝からずいぶん賑やかだな」
「ああ、ミカド。おはよう」
「おはようユウリ。それに、みんなも。……サクヤとリツはまだ来ていないんだな」
ふたりが頷き交わすのを見て、ジュンペイが首を傾げた。
「みなさん、なにか約束が？」
「今日は、Sargasのメンバーで朝食の約束しているんだ。ただ、ふたりとも、朝はあまり得意じゃないから」
「あ！　もしかして今日、自主練やる日？」
ショウゾウに、ユウリが頷く。
「よくわかったね」
「ヨウスケから聞いたんだ。Sargasはよく自主練してるって。けど、ヒジリは？」
「レッスン室で合流するよ。彼は、朝から現場だ」
「へー。アイツ忙しいのにちゃんと顔出すんだな。スゲー」

SPRING FESTIVALで同じステージに立った僕らも、ぐっと距離が近くなりました。

「あ、そうだ。フェスのDVD見たよ」
タイキが、カズキからパッと手を放して振り向いた。
「あれさ、Sargasずるくない？　あの流れ、みんな泣くしかないでしょ」
頬をさすりながらカズキも頷く。
「すごくよかった」
「そうそう。カズキとタイキは泣いてたよなー」
「ちょっと、ショウゾウくん！　バラすのやめてよっ」
「…………」

このところ、昔、お祖母様が教えてくださった言葉を思い出します。
――喜びは分かち合うと2倍になる。悲しみは分かち合うと半分になる
本当に、そのとおりですね。

「俺も、みんなで自主練したいな。……あ、その、みんながよければ、だけど」
ジュンペイが言うと、ショウゾウがニッと笑う。
「いいな！　けど、その前に俺らも飯食わね？　……あれ、ダイスケは？　また、タツヤ起こしに行ってんの？」
「たぶん。ノブアキくんもまだ寝てるんじゃないかな」
「僕、お腹空いちゃったよ。もー待てない！」
「んじゃ、みんなで起こしにいくか！」

みんなをいつか、お祖母様に紹介できたらいいな。
時間を作って、トムテさんと一緒に顔を見せに行きますね。
それでは、今回はこの辺で。そちらはもう、雪が降っているかもしれませんが、お風邪など召しませんように。

――あなたのことが大好きな孫、ユウリより。

今回登場した人物をご紹介！
◆東雲ユウリ（CV：市川太一）
日本人の父、スウェーデン人の母を持つハーフ。どこか浮世離れした麗人で、妖精（トムテさん）が見えるらしい。