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『メイドインアビス』の続編制作決定!「Deep in アビス語り」レポート

続編決定のサプライズに声優陣が全員号泣!? 驚きの制作秘話が多数明かされた「『メイドインアビス』 Deep in アビス語り」レポート

2017年7月から9月にかけて放送されていたTVアニメ『メイドインアビス』。つくしあきひと先生が『WEBコミックガンマ』にて連載する同名のコミックを原作とした作品で、かわいらしい絵柄に反したリアリティのある描写に、容赦のない展開が話題を呼び、数多くのアニメファンの心を鷲掴みにした作品です。

TV放送の終了から時間が経過した現在も、「アビス」に魅了され続けるファンが集結して行われた今回のイベントには、富田美憂さん(リコ役)、伊瀬茉莉也さん(レグ役)、井澤詩織さん(ナナチ役)ら3人のメインキャストに加えて、山下愼平プロデューサー、垪和等副監督らTVアニメの制作陣が登壇。「Deep in アビス語り」の名前通りの、濃厚なトークを展開しました。

 

ライザとオーゼンのエピソードがアニメ化のきっかけに
今回のイベントのメインとなっていたのは、富田さんと井澤さんがパーソナリティを務めていたラジオ番組「ラジオインアビス ~リコとナナチの探窟ラジオ~」の1コーナーである「アビス語り」の出張版。

TVアニメの第1話から13話を順番に振り返りつつ、それぞれの話数で出演者達が気になったトピックについて、とことん語り合うという流れで進行していきます。

 
まず最初のトピックとなったのは、『メイドインアビス』でキャラクターデザインを務めたアニメーター・黄瀬和哉さんへ山下プロデューサーが贈った「黄瀬さんありがとう」のメッセージ。

黄瀬さんは、『攻殻機動隊 ARISE』総監督を筆頭に、『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』、『機動警察パトレイバー』など、アニメ史に残る傑作の数々に作画監督として携わってきた、名実ともに日本を代表するトップアニメーターの1人。

当然、凄まじく多忙な身でもある黄瀬さんですが、当初「キャラクターデザインだけ」という話で本作の制作に参加されたそうなのですが、ずっとお願いし続けているうちに、気づけば第1話の作画監督を1人で全て引き受けてくれていたのだとか。

 
そうして作られた『メイドインアビス』の第1話が、劇場アニメかと思えるほどの壮絶なクオリティでファンの度肝を抜くことになったのは周知の通り。

アニメ化の最初期から制作に関わっている垪和副監督も、「最初に黄瀬さんがあのクオリティラインを示してくれたおかげで、あとは皆で必死にそれについていくことができた」と語り、その存在の大きさが改めて明かされることに。

 
そんな垪和副監督は、数多くの話数で演出を担当。基本的に『メイドインアビス』では、小島正幸監督が絵コンテを元に、各担当原画マンさんが設定を見ながらに線画に起こすという流れで制作が行われています。

ところが細かい場所移動が多かったり設定では追いきれない部分が多くあったため、副監督自身がその描き起こす作業を行ったり、後に出てくるスラム街の点描や病院船などは美術設定の西さんやプロップ設定の高倉さんが直に描いているカットも存在しているのだとか。

 
ディープなアニメの制作技法的な裏話に、客席も興味津々といった様子。中でもリコ達が住んでいた街「オース」の街の夜が明け、それぞれの建物にかかっていた影が時間経過と共に変化していくシーンは、3Dではない手描きによる作業によって作られていたことが明かされると、大きなどよめきが沸き起こりました。

 
第4話のトピックスでは、いかにも重要そうなアイテムとして登場した「星の羅針盤」をあっさりとなくしてしまったことについて井澤さんがツッコミを入れると、客席は大爆笑。

またその後には、そこから本格的に登場する、アビスの中でリコ達が出会う個性的な原生生物たちについての話題も飛び出します。

 
実は原生生物のシーンは、モンスターデザインを担当した吉成鋼さん(吉成さんも、コアなアニメファンならまず知らない人はいないであろう、日本を代表するアニメーターの1人!)から、「実験的なフィルムを作ってみたい」という申し出があり、生物感を演出するため、いきなり塗りから直に作画を行い、映像がほぼ完成した後から輪郭を輸出して線画を加えて、他のシーンとの整合性をとるという、常識外の手法によって作られていることが判明します。

 
全ての原生生物がこの手法で描かれているわけではないものの、生物独特のざらざら感が演出されているようなカットは、概ね吉成さんの手によって描かれており、Blu-ray版ではさらに吉成さんの手による細かいリテイクが加えられているそうです。

 
こうした原生生物のカットは、アフレコの時点でも他のシーンのコンテとはまったく違う雰囲気の絵になっていたそうで、キャスト陣の間でも印象に残っていたと語られていました。

 
トークの流れの中で、キャスト陣がそれぞれの中で印象に残った場面を上げていく中、伊瀬さんがチョイスしていたのが、第5話のレグが初めて自分の意思で火葬砲を撃つシーン。

レグの心理描写もさることながら、映像的な表現もカッコよく、とくに火葬砲を撃ったあとのマントが風でたなびいている演出がお気に入りなのだとか。

 
また、火葬砲は後に最終話でミーティを葬ることになる、その名前の通りの使われ方がされることになる武器ですが、最初からあの展開を想定していたのか原作者のつくし先生に尋ねたという伊瀬さん。

ところが、つくし先生からは「実はまったくの偶然」と、まさかの回答が返ってきたそうで、客席の爆笑も誘います。

 
一方、富田さんが挙げていたのが、第7話でのライザとオーゼンの過去が明らかになるエピソードで、「リコ達だけじゃなく、登場人物全員にドラマがあるのが『アビス』のすごいところ」と、そのドラマ性の深さを絶賛。

 
伊瀬さんや山下さんもこのシーンを印象に残った場面として挙げており、特に山下さんはライザが最後に見せる笑顔のカットを見た時に、アニメ化を決断したのだと明かしていました。

 
「富田飯」のコーナーでは、アビスのようなドリンクが完成!?
イベントも後半に差し掛かった後、熱いトークの小休止的なイベントとして行われたのが、料理が得意なリコにならって、富田さんが登壇者にちょっと変わった料理を振る舞う「富田飯」のコーナー。

こちらも「ラジオインアビス」の人気コーナーで、今回は第一回放送で実施されたもののリベンジとして「ジュースのようでスープのような料理」に挑戦することに。

 
会場に用意された食材は、いちごやりんごといった果物の他。クッキーやチョコなど菓子の類、たまねぎや大葉、ゴーヤなどの野菜類、さらに、ちくわに豆腐、わさびや生姜まで揃うという充実ぶり。(なお具体的なレシピはなく、全てその場の富田さんのさじ加減に委ねられます)

 
ラジオでは一度、とんでもないものを作ってしまったこともあり、当初は牛乳をベースにいちごやりんごに、チョコといった甘い系統の食材で統一し、普通に食べられそうな雰囲気が漂っていたのですが、ラジオのリスナーでもある垪和副監督が「守りに入ってどうするんですか!」とまさかの発言。


大盛り上がりとなった会場の雰囲気を受けて、本来の(?)思い切りを取り戻した富田さんは、ゴーヤーや大葉、ピーマンといったいかにもヤバげな雰囲気の食材を次々と投入していくと、最後にはマシュマロを浮かせて料理を完成させます。

 
ところが、出来上がった料理はかなり強烈な匂いを発しており(伊瀬さんや井澤さんいわく「畑の匂い」)、恐る恐る口にした瞬間、思わず言葉を失ってしまう出演者が続出。

 
それでも、垪和副監督が一気飲みで全て飲み干すという男らしい一面を見せると、最初は強すぎるゴーヤーの存在感に苦い顔を見せていた伊瀬さんも、「だってリコ飯でしょ。そりゃ飲むよ」と、レグ役としての気合で最後まで飲み干し、会場を大いに沸かせます。(ちなみに、作った当人である富田さんは早々にギブアップ)

 
なお、今回のドリンクは見た目こそ意外と飲めそうな雰囲気にも関わらず、いざ口にしてみると……というギャップが、かわいらしい絵柄でありつつ容赦のない展開を描く『メイドインアビス』にも通じる部分があるということで、「アビスドリンク」と命名されていました。

 
その後には、『メイドインアビス』の楽曲を手がけるKevin PenkinさんがSkypeでの通話を通じてサプライズ出演。

 
この時、滞在しているロンドンは時差の関係で朝6時という早朝だったにも関わらず、笑顔で現れたKevinさんは、流暢な日本語を用いて直接ファンに向けてメッセージを送ります。

 
井澤さんと会話を交わす場面では「ナナチだ、すごい」と完全にファン目線でのコメントも飛び出しつつ、「すごく刺激を受けて、幸せな仕事だった」と作品への思い入れの深さを語っていました。

 
最後のトピックスでは、待望のあの発表も
後半のトークで注目を集めたのは「7回チェック」という意味深なトピックス。

これは多くの視聴者に衝撃を与えたであろう、第10話でのリコが大怪我を負うエピソードに関するもので、TVで放送するため、原作や絵コンテ、完成した映像などを放送局へこまめに送って問題がないかをチェックしてもらい、放送にこぎつけたという苦労が明かされることに。(通常のアニメではチェックは一回のみ)

 
山下プロデューサーも、「このシーンを放送できなければ、アニメ化した意味がない」と決死の覚悟で制作に臨んでいたようで、少しでも早くチェックを重ねて万が一の事態に備えるため、「このシーンのカットだけは先にあげて欲しい」と現場にお願いしていたのだとか。

そうした涙ぐましい苦労の結果、大きな修正を加えることなく、制作陣が意図した形でのTV放送にこぎ着けられたそうです。

 
やはりキャスト陣にとってもこのシーンは正念場だったようで、アフレコ時にはリハーサルの時から本番のつもりで演じようという異例の指示が出ていたほど。伊瀬さんは「レグとして見ているだけでも辛かった」と当時を振り返ります。

 
一方、完成した映像では、怪我の痛みに必死に耐えようとするリコを熱演した富田さんですが、演じている最中は役に入り込んでいるため、当時のことを詳細には記憶していないのだとか。

「こうすれば痛そうに聞こえるだろう」という技術的なことはあまり考えず、ただその時感じたままに演じることを意識していたと明かし、ファンを驚かせます。

 
なおこの回では、井澤さんが演じるナナチもようやく登場。すでにこの前にも、何度かアフレコの様子は見学に来ていたという井澤さんですが、いよいよ満を持しての登場ということもあり、第一声を発する際にはかなり緊張していたのだとか。

 
当初は、井澤さんの想定していたプランと、現場で求められたものに差があり、思い悩んだ時もあったそうなのですが、原作者のつくし先生に相談し、直にアドバイスをもらったことで、自分の中でうまく形にすることができたというエピソードも語られていました。

 
井澤さん・伊瀬さんが台本を読んだ時に号泣したと明かす最終話では、電報船がこれまで来たリコ達の道中を辿りながら、ナットの元へと帰ってくる感動的なエンディングが話題に。

特殊エンディングについては、アニメオリジナルの演出をやりたいという話が早期の段階からあがっており、エンディング用にKevinさんから送られてきた楽曲と絵コンテを細かく調整し、あのシーンが作り出されたのだとか。

 
あのエンディングに登場する、最後にリコ達の出した電報船が到着する場所は、リコとレグが最初に出会った木の根元であることも判明。

そんな徹底したこだわりの中作られた映像には、山下プロデューサー自身も、「あのエンディングだけで1つの作品が完成したと思えた」と、大きな手応えを感じていた様子でした。

 
さらにその後には、「続きは……」という、ファンにとってもっとも気がかりとなっているトピックが映し出されたかと思うと、アニメでも強烈な印象を残した白笛の1人、ボンドルド卿からのメッセージとして、新たな映像が公開に。



その中で『メイドインアビス』続編の制作が決定したことがサプライズ発表されると、客席からは地鳴りのような大歓声が! いたるところでざわめきが沸き起こる、お祭り騒ぎのような雰囲気に会場全体が包まれます。

 
これは本当にキャスト陣も知らされていなかったサプライズだったようで、発表の瞬間にはメインキャスト3人全員が泣き崩れてしまうという事態に。

伊瀬さんは「『メイドインアビス』は、私達3人全員にとって特別な作品なので……」とコメントの途中に言葉をつまらせ、しばらくの間、富田さんと井澤さんも何も喋れなくなってしまっていたほど、それぞれに喜びを噛み締めていた様子でした。

 
なお具体的な媒体や時期といった詳細は明かされなかったものの、メインスタッフは前作から続投を予定しているようで、山下プロデューサーが「スケジュールを空けておいてください」と、垪和副監督に早速オファーを出す一幕も。

 
最後には「本当に出演者にも知らされていないサプライズ発表、心から嬉しいです。また皆に会えるのは楽しみだけど、いっぱい試練もあって、楽しさと同時に覚悟を決めないといけないと思っています」(伊瀬さん)

「皆さんの応援が形になる瞬間ってどうしてこんなに泣けるんでしょうか。あまり喋るとまた泣きそうなるので……ただただ、まだナナチの声帯でいられることが嬉しいです!」(井澤さん)

「『メイドインアビス』は私にとって初めて尽くしの経験をさせていただいた、本当に大事な作品です。今まで以上にパワーアップしたリコを届けられるよう、もっともっと全力を出し切って頑張っていきたいと思います!」と、3人のキャストがそれぞれ続編に向けた意気込みを語り、イベントは締めくくられました。

誰もが待ち望んでいたであろう、最高のサプライズが届けられた本イベント。アビスを巡るリコ達の冒険と同様に、『メイドインアビス』を愛するファン達の盛り上がりも、まだまだ続いていくことになりそうです。

[取材・文/米澤崇史 撮影/鳥谷部宏平]

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