「いつものライブとはちょっと違う、お歌の世界」──心を深く繋いだReoNaアコースティック公演レポート

新時代を迎えて間もない2019年5月2日（木・祝）に、東京・浜離宮朝日ホールにて『ReoNa Acoustic ONE-MAN Live』が開催された。本公演は2部形式で行われ、一部はファンクラブ会員限定のカヴァーを中心としたアコースティックライブ、二部はオリジナルナンバーを中心とした通常のアコースティックワンマンライブである。

今回の記事では二部の『ReoNa Acoustic ONE-MAN Live"ハロー、アンプラグド。"』のレポートをお届けする。

「自分自身の世界にどっぷり浸って」

満場のファンの拍手を浴びながら静かに登場し丸い絨毯の上に立ったReoNaさん。白いライダースにワンピース姿。クラシカルな雰囲気のステージの雰囲気とReoNaさんが驚くほどよく似合う。

まずはギタリストの堀崎翔さん、ピアニストの荒幡亮平さんの力強い調べに乗せて『ソードアート・オンラインアリシゼーション』ED「forget-me not」を。一気にその世界へと引き込んでいくかのように爽やかに、エモーショナルに疾走する。ピアノや繊細なアンサンブルの音色を際立たせる設計となった会場とあって、いつも以上に声が耳にまっすぐと届く。緊張感漲る静かな迫力に思わず鳥肌が立った。

「ハロー、アンプラグド。こんばんは、ReoNaです。いつものReoNaのライブとは違う、声色、メロディ、ギター、ピアノ……少ない音でお届けする、お歌の世界。自分自身の世界にどっぷり浸って、楽しんでもらえたらいいな」

2曲目に披露したのは神崎エルザ starring ReoNa名義で発表した「Disorder」。力強い声が赤く揺れるような照明とよく似合っている。もともとエネルギッシュなナンバーなだけに、いつものライブ、CDとの違いが顕著に分かって新鮮だ。

「ここじゃないどこか……半歩先に期待を抱いて飛び立った少女の唄」という言葉から始まったのは「トウシンダイ」。ReoNaさんの隣の、誰もいない場所に当たるピンスポット。<飛べるだろう＞の伸びやかな歌声の直後の、真っ赤な照明。物語の主人公の気持ちを代弁するかのように、そしてReoNaさん自身の感情とクロスしながら歌っていく。ゾクッとするけど、慈悲に満ちた温かさ。そんな歌声が高い高い天井のある空間の隅々まで届いていった。

今度はギターを持って「1年と少し前、はじめてみんなの元に届いた歌を」と、『ソードアート・オンラインオルタナティブガンゲイル・オンライン』の劇中歌「ピルグリム」を。ギターのチューニングが思ったようにいかなかったようで、イントロで「やり直していい？」と問いかける場面があり、食い入るようにみていた観客からふふっと静かな笑いが。もちろん大丈夫だよと言わんばかりの親密な空気感。奇しくもそこで緊張が溶けどんどんと解放的になっていったように私は思った。また、集中力をさらに研ぎ澄ませるように、すぐさま気持ちを切り替えていったところに、ReoNaさんの芯の強さを改めて感じた場面だった。

ここからはメドレーで「レプリカ」「ヒカリ」「step, step」とミニアルバム『ELZA』から連続で披露。さらに「それでは、おやすみなさい」という合図で「おやすみの詩」へ。さらに畳みかけるように、潜り込むように属性の違う2曲＝「Independence」「カナリア」を歌唱して、ファンと深く心を通わせていく。冒頭のMCで「自分自身の世界にどっぷり浸って」と話していたが、ライブ中、ReoNaさんの歌を聴きながら、何度も過去の自分と向き合うような時間があるが、特にアコースティックで聴く「カナリア」の繊細な声は、過去の自分にも、今の自分にも心に染みるものがあった。

「辛い時辛いと言えたらいいのになぁ」

ライブ中盤に差し掛かったところで、自身が"絶望系アニソンシンガー"と名乗る理由を静かに伝える。

「めいいっぱい頑張って疲れてるときに頑張れって言われるのは私は得意じゃなくて。分かるよ、つらいよね、疲れたよねて言ってもらえたら。大丈夫だよ、あなだたけじゃないよって言ってくれたらいいのになって。共感が私の救いだった。だからそんな、絶望に寄り添う気持ちをお歌に込めていきたい。そう思ってお歌を紡いでいます」

歌に対する決意をも感じる力強い発言のあと「はじめてのオリジナル曲。私のゼロの原点の曲」と、未発表音源である「怪物の詩（うた）」を。「おやすみの詩（うた）」とセットで歌われることが多かったこの曲。この日は少し離れた位置に立ったことで、それぞれの痛烈な魂の叫びがより響いてきた。

加えて、ライブでずっと歌っているAqua Timezのカバー「決意の朝に」、神崎エルザの楽曲として初めてレコーディングした「Rea(s)oN」を歌唱とReoNaさんの軌跡と原点を感じるブロック。「Rea(s)oN」ではミラーボールの演出、羽が舞うような照明と相まって、ReoNaさんの放つ声の光がさらに輝いて見えた。凛とした表情、時折浮かべるほほえみも美しい。

「虹の彼方に」の前に、「『ソードアート・オンラインアリシゼーション』、最新話、みんな見ましたか？」と問いかけ「見たよ」の声があがる。「幸せな時間、楽しい時間があったからこそ別れの痛みが増して。なら最初から出会わなければ、楽しい時間なんてなければ、心なんてなければ、別れを惜しむこともなかったのでしょうか」と問いかけ、「道はここで別れるけれど想い出は、ここにある。永遠に、ここにある。」と本作の劇中歌へ。エモーショナルな心の叫び。まっくらな照明がだんだんと明るくなる演出に、「虹の彼方に」が流れた時のあるシーンを思い出して胸が苦しくなる。＜ねえ、おやすみ＞の締めくくりが、余韻として強く残った。

ReoNaのライブにアンコールはない

最後のMC。「ハロー、アンプラグド。楽しんでもらえたでしょうか」とファンに問いかけると大きな拍手が沸く。「いつものライブとはちょっと違う、お歌の世界。またこうしてみんなとこういう時間がたくさん作れたらいいなと思ってます。一緒に作ってくれますか？」と話すと、今度は一際長い拍手が送られた。

「またこうして顔を見てお歌をお届けする時間を作れることになりました」と全国ツアー[ReoNa Live Tour 2019"Colorless"]を昼公演に続き発表。歓喜に包まれた。

「ReoNaのライブにアンコールはありません。最後の最後まで、音と、声を余すことなく聴いて帰ってね」と、ラストにデビューシングルの「SWEET HURT」を贈る。躍動するピアノの旋律に合わせて、澄んだ声を伸ばしていく。＜この愛をくれたあなたに　わたしのすべてをあげよう＞と一人ひとりに伝え、最後に「じゃあな！」といつもの挨拶。聴くものの心を震わす濃密な時間に幕を落としたのだった。

このアコースティックの経験と挑戦が、彼女をまた一段と強く輝かせるだろう。この日発表となった [ReoNa Live Tour 2019"Colorless"]は9月21日の大阪BIGCAT公演からスタート。また、10/20（日）にZepp Tokyoワンマンライブ「ReoNa ONE-MAN Live "Birth 2019"」も決定している。

[Photo by 山本哲也]　
[文・逆井マリ]
　

セットリスト

M1.forget-me not
M2.Disorder
M3.トウシンダイ
M4.ピルグリム
M5.レプリカ、ヒカリ、step, step
M6.おやすみの詩
M7.Independence
M8.カナリア
M9.怪物の詩
M10．決意の朝に（Aqua Timezカバー）
M11.Rea(s)oN
M12.虹の彼方に
M13.SWEET HURT

イベント情報

「ReoNa Live Tour 2019 "Colorless"」

■日程・会場：
・9月21日（土）BIGCAT（大阪府）
OPEN 17:00 / START 18:00 問）夢番地 06-6341-3525
・9月29日（日）HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3（埼玉県）※女性限定ライブ
OPEN 17:30 / START 18:00 問）ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-9999
・10月5日（土）DRUM LOGOS（福岡県）
OPEN 17:00 / START 18:00 問）キョードー西日本 0570-09-2424
・10月10日（木）仙台 Rensa（宮城県）
OPEN 18:00 / START 19:00 問）キョードー東北 022-217-7788
・10月12日（土）THE BOTTOM LINE（愛知県）
OPEN 17:00 / START 18:00 問）サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
・10月18日（金）cube garden（北海道）
OPEN 18:30 / START 18:00 問）マウントアライブ 011-623-5555

■チケット：自由￥5,000（整理番号付 tax in/drink 代別）※4歳以上チケット必要
【ReoNa オフィシャルファンクラブ「ふあんくらぶ」会員先行予約（抽選）】
5/2（木）16:00～5/20（月）23:59
※お一人様2枚まで