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ガルパンコミック作家座談会【中編】野上武志らが語るガルパンコミック史!

野上武志×才谷屋龍一×伊能高史×葉来緑×むらかわみちお×吉田創によるガルパンコミック作家座談会! 作家の挑戦と作品の懐の深さで築かれた、これがガルパンコミック史!【中編】

2019年10月11日(金)から上映が始まった『ガールズ&パンツァー 最終章 4D ~第1話+第2話~』は、まるでアトラクションのように楽しめると早くも話題沸騰中!

『最終章』第2話の後半戦となる大洗女子学園対知波単学園も、ジャングルの様々な要素がまさしく4D向けで、激しく揺れる椅子やけっこう濡れる水も臨場感を高めています。

今回は、前回の【前編】記事では収録しきれなかったその大洗対知波単戦を、ガルパンコミック作家の方々がミリタリー作家らしい視点で大いに語りまくり!

さらには、これまで出版されてきた『ガルパン』コミカライズ作品の数々を、アニメイトタイムズが独自に「ガルパンコミック史」としてまとめ、それぞれの作品がお互いにどのような影響を受けながら発展したのかに迫っていきます!

野上武志×才谷屋龍一×伊能高史×葉来緑×むらかわみちお×吉田創によるガルパンコミック作家座談会! まずは『ガールズ&パンツァー 最終章』第2話を語る!【前編】

▲アニメイトの「ガールズ&パンツァー 最終章第2話公開記念フェア」の特典となった描き下ろしポストカードや、単行本のアニメイト購入特典を手にする作家のみなさん。ガルパンコミックはアニメイト各店でどうぞ!
 
前列中央:野上武志(のがみ たけし)先生
『ガールズ&パンツァー リボンの武者』
前列左側:才谷屋龍一(さいたにや りょういち)先生
『ガールズ&パンツァー』『激闘!マジノ戦ですっ!!』
『フェイズエリカ』『樅の木と鉄の羽の魔女(戦術構成)』
前列右側:伊能高史(いのう たかし)先生
『ガールズ&パンツァー 劇場版 Variante』
後列右側:葉来緑(はぎ みどり)先生
『はじめての戦車道』『戦車道ノススメ』
後列左側:むらかわみちお先生
『ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女』
後列中央:吉田創(よしだ はじめ)先生
『ガールズ&パンツァー プラウダ戦記』
 

「柔よく剛を制す」はロマンなんですよ(むらかわ)

――続いて後半戦の大洗女子学園対知波単学園ですが、知波単は対戦相手なのに、まったく敵という感じがしないんですよ。旧日本軍をモチーフにした学校だから、日本人として親近感を抱くし、生徒も全員真面目で。

大洗に対しても物凄く謙虚だし、リスペクトもしていて、全国大会覇者の大洗に挑む姿に、むしろ知波単を応援したくなるという。

葉来緑先生(以下、葉来):凄い成長っぷりですしねー。地の利も活かしてるなんて。

吉田創先生(以下、吉田):第2話が知波単の成長物語としてあからさまに描かれているのは、そっちに想い入れてほしいってことなんでしょうね。

葉来:『劇場版』も、知波単の成長物語の側面はありましたからね。

吉田:どうなるのか。次で決着はつくんだろうけど。

むらかわみちお先生(以下、むらかわ):まだもう一捻りありそうですよね。

才谷屋龍一先生(以下、才谷屋):あるかもしれないですね。

葉来:あの人数の多い知波単に、さらに新キャラが加わるとは思いませんでした。久保田かわいいですよね。

伊能高史先生(以下、伊能):寺本が変なスピーカーを出していましたね。

一同:あー!

葉来:前はカメラだったから。

才谷屋:軍用リリーの代わりに今度はスピーカーみたいな感じで。

伊能:知波単マークが付いているやつ。

――特二式内火艇 カミ車が出てきましたね。

吉田:ちょうどパトリオットパーク(ロシア軍事テーマパーク)でカミ車を発見した場にいたんですよ。俺はまだその頃は詳しくなかったから、吉川(和篤)先生が「うわっ、底面に何かあるぞ!」って言って、先生たちが騒いでいるのをチンプンカンプンで見てて。

後になって「うわっ、そんなに凄いことだったのか! プラモデルではここ、つるつるだったのか!」って。

むらかわ:あ、底面の話ですね。

吉田:そうそう。後でエッチングパーツで加わるようになったんですけど。それまでは史料がないので、水の抵抗がないようにつるつるにしてて。

伊能:学芸員の方に怒られながら(笑)。

むらかわ:這いつくばって写真を撮っていたと(笑)。

野上武志先生(以下、野上):軍事監修の人たち、田村(尚也)先生とか吉川(和篤)先生とか斎木(伸生)先生とかって根っこが日本戦車案件だから、ミリオタの中でも最高にこだわりが強いんですよ。

――メカ物の場合、後から出るメカほど強くなっていくのがセオリーなのに、『ガルパン』ではどんどんマニアックな方面に走ることで、強さのインフレを起こさないようにしているのが上手いなと思いました。

才谷屋:大戦初期の戦車がどうやって戦うんだろうと思いながら観てたら、意外にやってる! みたいな(笑)。

野上:ミリオタから出発したストーリーテラーでは、ここに辿り着くのはきつかったと思います。やっぱり広い視野を持っている水島監督だからこそ、こういう方向に走れたというふうに思います。

吉田:「この戦車とこの戦車が戦ったら、一方的に負けますよ。絶対無理ですよ」っていう発想になっちゃいますからね。

野上:そうそう!

葉来:『ガルパン』の場合、性能が弱いほうがかなりがんばりますもんね。

才谷屋:逆にそのほうがドラマになるんですよね。

むらかわ:「柔よく剛を制す」はロマンなんですよ。

――今回、ジャングルをCGで描くことを成し遂げたら、ここもアトラクションのような興奮が生まれていましたね。

吉田:最初はあまりにも自然に背景が流れていくので、これを3Dで描いているって気付かなかったんですよ。ああいう鬱蒼とした木々は、一枚絵を描いてそれをスライドさせていくとか、そういうことをよくやっているんですよ。

それがよく見ると、ちゃんと3Dで動いている。後で話を聞いてみたら、ゲーム用のUnreal Engineを使っているというので、ビックリしました。

むらかわ:暗さもプラスになっていますよね。光源のレンダリングをシリアスにしなくても済むはずだから。

葉来:途中の月夜も綺麗ですもんね。

――環境音というか、雨音とかも劇場で観ると、自分の周りで降っている感覚なんですよね。

吉田:沙織がハッチを閉じた瞬間、音が変わるんですよ。

葉来:4Dで観たら水が飛んできますね(笑)。前のとき、すごい濡れたんですよ。

才谷屋:あははっ! ヤバいな!

――ジャングルって4D向きですよね。4Dのいろんな要素が全部使えるじゃないですか。

吉田:泥地に誘うシーンとか、絶対凄いですよ!

野上:ガクン! って(笑)。

才谷屋:また椅子からズリ落ちますね(笑)。

――『ガルパン』をきっかけに爆音上映や4Dで作品を楽しむスタイルが定着したところもあると思いますが、改めてその威力を『ガルパン』が全部活かせるように作りましたっていう感じが、特にこのジャングルシーンにはありました。

今どきはBlu-rayやDVDで視聴することが一般的になったアニメ業界において、もう一度お客さんに劇場に足を運んでもらうことに挑戦した作品だと思います。実際、劇場で観ると桁違いの真価を発揮するという。

むらかわ:相性がいいんですよね。アトラクション的というか。

――この辺り、福田が主人公に思えてくるんですよ。

吉田:いやぁ、主人公ですよ、後半は!

――知波単をなんとかしようと苦悩して、どんどんアイデアを出して。しかも敵は全国覇者の大洗で。

吉田:『スクール☆ウォーズ』ですよ!

むらかわ:『スクール☆ウォーズ』なんだ(笑)。

――西さんも、最初は脳筋な人という感じだったけど、今や福田とのコンビが素晴らしくて。『ガルパン』にはいろんな名コンビがいますけど、凄くいい関係性だと思うんですよ。

野上:一番日本人ウケするコンビなんですよね。どんと責任を取るリーダーと、悩みながら進む参謀的立ち位置の人間と。日本人は大抵、どちらかにハマるんです。

葉来:西さんもずっと板挟みでしたからね。

吉田:バレー部の知波単に対する評価のセリフが、知波単が強くなっているということを表現していますよね。「福ちゃんたち変わったねー!」って。

才谷屋:そうそう!

――その絡みがあるのが戦車道ですよね。戦いではなく、スポーツであるという。

才谷屋:死なないから、経験を次に活かせますからね。死んだら終わっちゃいますから。

――「ナントカ突撃!」って名前をつけて、疑問を抱くのを捻じ伏せていくのが知波単らしいと思いました。

葉来:真っ直ぐなんですよ! 愚直なくらい。

吉田:俺はむしろ、日本の役所の融通の利かないところに、言葉遊びでなんとか要求を通すみたいな。

才谷屋:それを表現しているんだ。

吉田:そういうことだと思いますよ。「本当はこうしたほうがいいんだけど、名目上こうなっているからできないよ」とかいうのを、別の名目を立ててやるみたいな、そういう涙ぐましい努力を表しているんですよ(笑)。

むらかわ:まぁ日本人的ですよね。

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