『月夜のグルメ』漫画担当・奥西チエインタビュー|原案担当・舞城王太郎から届くプロットに“日付”が記されている意味とは?
プロットに記された場所、料理、日付
――お料理の描き方も本当に美しいですね。モノクロという表現方法を取られていますが……。
奥西:確かに、フルカラーと違って描き分けしづらいので難しいですよね。魚が1匹そのまま出てくるような料理ならまだいいですが、いろんな具が入ったスープだと人参と芋の区別がつかないですから。「イカ墨のパエーリャ」(第2夜「La cena」)なんて真っ黒ですし、まだ慣れてない時期に描くことになったので大変でした(笑)。
――頭を抱えますね。
奥西:難しかったです(笑)。なので色によって濃淡を変えるのはもちろん、「人参よりも芋のほうがザラッとしているな」と、質感を変えるといったこともしています。
――観察眼が大切ですね。
奥西:そうですね。それに加えて、誇張して描くことが大事かなと思います。
――奥西さんといえば、『玉子の毎週BBQ!』でも料理の絵を多く描かれていましたが、そちらと『月夜のグルメ』で描く料理に違いは感じますか?
奥西:『〜BBQ!』はバーベキューなので食材そのものがボーンと出てくることが多かったんです。
なので、勢いに任せて描いていることが多かったのですが、今回は種類が多いし1話につき1品ではないですし凝った料理も多いので、作業がとても繊細になりました。
描く前に実際にお店に行きいろんな方向から写真を撮っておいて、それを資料に作業に取り掛かります。
――作中に登場するお店は、細かく明かされていないものの実在するのだとか。お店のセレクトも、プロットを書かれる舞城さんがされているのですか?
奥西:そうですね。プロットには、場所と料理と日付が書かれています。
――日付まで、ですか?
奥西:はい。月の満ち欠けに関係しますからね。月が地平線の下に隠れる日は月を空に描かず、月が昇る日は、どこかのコマにその日の月齢で月を描くようにしています。『月夜のグルメ』というタイトルなので、そこはこだわって描いています。
――グルメ漫画として、リアルを追求されている証拠ですね。
奥西:ちなみに、プロット上の料理は、たまに女子1人ではとてもじゃないけれど食べられない量になっていることがあるんです(笑)。そういうときは、漫画の中では全体的に量を減らしています。
――いろんなところにこだわりが散りばめられていますね。そもそも、奥西さんは食べ歩きやお酒ってお好きなのですか?
奥西:実は、この連載をはじめるまでは居酒屋といえばチェーン店ばかりに行っていましたし、ファストフードばかりでも苦にならないタイプだったんです。
なので、今は朔良と同じように私も新鮮な体験をしている感覚。だから描くときも気持ちが乗りますね。基本的に自由にやらせてもらえていますし、8ページというボリューム感も重荷になりすぎないですし、とても楽しくやらせていただいています。
――では、今後もし奥西さんがお話を提案できるとしたら、何をやってみたいですか?
奥西:以前、ホッピー初体験の回(第24夜「ホッピー」)があったんです。「ホッピーにはこの料理が合うんだよ」とお父さんから手帖を通じて教えてもらう回なのですが、それと同じ感じでパフェを食べさせたいですね。
なぜお父さんがパフェを食べたのか不思議に思いますから。あとは時代的にあまり食べなくなった鯨。お父さんはきっと日常的に食べていたでしょうから、話も弾むのではないでしょうか。
――奥西さんにとって朔良とはどんな存在でしょうか。
奥西:同じクラスにいる気になる人です。近い存在ではないけれど、行動はなんとなく予測がつくくらいの距離感。そんな感覚も持ち合わせているから、描けるのかなと思います。
――では最後に、朔良に一言声をかけるとしたら何と伝えますか?
奥西:「これからもずっと、そのままのペースで。一個一個丁寧に向き合う姿勢を崩さず生きていってね」と言いたいですね。
「月夜のグルメ」作品情報
1〜2巻好評発売中
原案・舞城王太郎 漫画・奥西チエ
▼アサヒビールとタイアップ中!
詳細はこちら
舞城王太郎関連作品
オリジナルS Fミステリ「ID:INVADED イド:インヴェイデッド」
▼Blu-rayBOX上下巻好評発売中
▼コミックス第1巻〜第2巻好評発売中(ヤングエース にて好評連載中)