
アニメ映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』フーシー役・櫻井孝宏さんインタビュー|フーシーが望んだ未来も1つの答え。作品を通して感じた櫻井さんの“原点”とは?
『羅小黒戦記』で描かれるハイテクと自然のブレンド具合
――アニメ作品を日本語に吹き替えるということはなかなかないと思いますが、実際に吹き替えをしてみていかがでしたか?
櫻井:すごく楽しかったです。これは私にしかわからない部分があると思うので、うまく伝えられないかもしれませんが、普段触れている作品との質感の違いをどういう風に表現しようか、日本語吹き替えの面白さをどうやったら原音のニュアンスを損ねずに表現することができるのか。
そんなことをを考えながら収録に臨んでましたが、すごく楽しかったです。
原音の強さや歯切れの良さは、原音そのものの響きからくるものです。そこに翻訳された言葉のニュアンスをどう重ねていくか。あれこれ自分なりの工夫をしながらトライさせていただきまでした。
――もともとの演者さんの演技を取り入れた部分はあったのでしょうか?
櫻井:リスペクトしつつ、アクションに関しては日本ナイズさせました。原音のアクションの息遣いは短くて強いんです。イメージするところのカンフーの呼吸ですね。
手数の多さ、緩急ある俊敏な動きがこの作品のアクションシーンの一つの醍醐味です。そこに、自分の表現したかったカタルシスを覚えるようなニュアンスを落とし込みました。
もっと原音のほうに寄せてほしいというオーダーがあれば即応じられるよう準備していましたが、こちらのアプローチでOKをいただいたので、 その形でトライさせていただきました。
――先ほど、本作は“自国(中国)の文化”を取り入れているとおっしゃっていましたが、どの辺りに中国らしさが出ていると思われましたか?
櫻井:とにかく大きくて広い、風景の描き方やスケール感の大きさに“文化”を感じました。バトルシーンも同じで、カンフー文化が根付いているとアクションの表現も少し違うというか。
ファンタジックではありますが、どこかちゃんと重心が乗っかっている、足腰がちゃんと入っているパンチのように感じて、そこが絵にのっかっていますし、質量があります。
――雄大な大自然がありつつもデジタル化されている都会のシーンもあって、すごく不思議な感じがしましたし、そこに中国らしさも感じました。
櫻井:森林のすぐ横にビル群がある風景って、やっぱりちょっと違和感がありますよね。それが当たり前の風景なわけですから。自然との付き合い方の違いなのでしょうか。
日本は更地にして全部新しくすることが多いと思いますが、僕自身、それはもったいないなぁと思います。
そのままの姿を残しながら、一方でためらいなく”今”に刷新していく様子を堂々と描いているので、そこに多少の違和感が持っても、それがストレスにならないのは面白いなぁ、と思います。
――確かに! 違和感はあっても、それがストレスにはなりませんでした。
櫻井:なので、『羅小黒戦記』で描かれる人工と自然のブレンド具合が、どことなく子供の頃に見ていたアニメと重なるところがあって、大人になった今の自分が見たかったものだと思いました。
シンプルに子供っぽく見られるというか、そういう部分がこの作品に詰まっています。