『朝食会』コミックス1巻（最新刊）発売記念 　渡邊ダイスケ先生・小林拓己先生インタビュー｜『朝食会』の連載が始まったきっかけとは？

“ここは今までの作品と違う”と感じるところは？

――両先生とも、お互いの作風にとても深くリスペクトされているのですね。ここからは、そんな両先生の担当される各分野をもう少し掘り下げてお聞きできればと思います。まず小林先生、先生にとっては『ギャラ』に続いて、影のある作品の執筆になるかと思いますが、『朝食会』のコミックスを手掛けての感想や、他の原作付作品と「ここは今までの作品と違う」と感じるところがあれば教えてください。

小林先生：とにかく渡邊先生の作品は、作画やキャラ設定、そして心理描写がとてもリアルで作品の運びも実は実際「何が起こったか」より、それによる「キャラクター心理」がメインのような気がします。

そのことにより、渡邊先生の作品は、どんどんキャラの心情に引き込まれるような
魅力があります。

こういう作品、つまり「何が起こったか」より「キャラクター心理」を優先のマンガは少なく、かなりの人間観察力と画力が必要とされます。

この人間観察力とその細かい心理を伝える画力が、渡邊作品最大の魅力で他の作品とは違う点だと思います。

――原作・原案付きのコミックスも多数手掛けられている小林先生ですが、そういった際に心がけている、気を付けている点があったら教えてください。

小林先生：まずは原作・原案者の中のある世界観はどんなカンジなのか？ そして、それに自分の個性をどう混ぜると作品として面白くなるのか？ ってことを一番に考えます。

――ありがとうございます。続いて、その原作を手掛けられる渡邊先生にお伺いしたいのですが、『善悪の屑』『外道の歌』ともに魅力的なキャラクターが多数登場しますが、『園田の歌』に次ぐスピンオフとして、加世子をメインに据えよう、となった決め手は何でしょうか？

渡邊先生：加世子というキャラが、どういう経緯で朝食会に入ったのか？ 僕の中で、ある程度の設定はできていたのですが本編で描くにはボリュームが大きくなりそうだったので、どうしようか……と思っていたところにスピンオフのお話を頂いたので幸いでした。

【コミック】園田の歌(1)

――先生が作品を描くうえで、「こういう描写、ストーリー展開には絶対にしない」のように決めている禁じ手のようなものはありますか？

渡邊先生：とくに決めている事は無いのですが、できるだけ直接的な描写をせずに読み手の想像を掻き立てる演出をしたいと意識しています。

――小林先生もおっしゃられていた「語らずに描く」という部分ですね！ 渡邊先生ご自身の著作である『善悪の屑』『外道の歌』では、復讐譚が1つの共通したテーマになると思いますが、『朝食会』ならではの盛り込みたい、挑戦している要素、テーマなどはありますか？

渡邊先生：僕の方から、こういうテーマで……といった提案はしていません。小林先生にしか描けない『加世子』と『朝食会』を、僕を含めた読者の皆さんに伝えて頂ければ、と思ってます。

――とても信頼されて作品を委ねてらっしゃるんですね。さて小林先生にお話を戻しますが、元々『善悪の屑』『外道の歌』の読者で、今回の『朝食会』で初めて小林先生の作品に触れる、という方もいらっしゃると思います。そういった新規の読者と、旧来のご自身の読者含め、皆さんに一言お願いいたします。

小林先生：『朝食会』は、今まで自分のオリジナルでは描いたことのないテーマで、かつ、自分一人では描くことは出来ないテーマでもあります。

このようなテーマを取り組むには、まだまだ力不足を感じておりますが、とても素晴らしい、読者視点には今までと違う小林拓己の成長の過程を是非、本を手に取って見ていただけたら幸いです。

――原作付きコミックスだからこそ生まれた新しい境地ということですね。ますます単行本が楽しみになってきました。お話し尽きないところではありますが、最後に渡邊先生にお伺いしたいと思います。ご自分の作品をこれだけ画風が異なる他の先生に預ける、というのははじめてではないかと思うのですが、『朝食会』の「ここを読んでほしい」というメッセージも含め、読者の皆さんに一言お願いいたします。

渡邊先生：僕は漫画家としては、まだまだ力不足で表現力に乏しいと思っています。人間なので得手不得手もあります。

なので他の先生のセンスや技術をお借りして自分のキャラクターに新しい命を吹き込んで頂けるのは、とても幸せな事だと思います。

もし、加世子に自分の意思があったら、きっと生みの親の僕よりも小林先生に、ずっと描き続けてもらいたいでしょう。

僕より美人に、そして魅力的に描いてくれるから。
　

リリース情報

朝食会 1

発売日：2020年11月30日（月）
価格：650円+税