紆余曲折を経てたどり着いた新境地――「ヤサシイセカイ」は新たなチャレンジが詰まった豊かな作品に・田所あずささんインタビュー
「ヤサシイセカイ」は作品に寄り添って作った曲
――「ヤサシイセカイ」の楽曲制作はいかがでしたか?
田所:オーディションに合格して『神達に拾われた男』のリョウマさんの役をいただけることになり、主題歌も歌わせてもらえることになって、本当にうれしかったです。
だから、作品の世界観を表した曲、リョウマくんが報われていくような曲にしたいなと。作品のことを考えて作った楽曲でした。
――リョウマ役が決まったときはどんなお気持ちでしたか?
田所:ビックリでした! 声優の矢島晶子さんに憧れているので、ずっと男の子の主人公を演じてみたいと思っていたんです。本当に光栄で、夢のような気持ちでした。
『神達に拾われた男』は人と人との関わりのなかでストーリーが進んでいく温かい作品なので、そういう雰囲気を曲に乗せたいなと思っていたんです。
今回はコンペ形式で曲を選ばせていただいたんですが、どういう曲にしたいかなどは、事前に私が文章にしてリクエストしていました。リョウマくんがどういう男の子で、どういう目にあってきて、どういう方々と会っていまの人生を生きているか……さらに私がいちばん感動したシーンについても具体的に伝えて、写真を添付して。曲のイメージも具体的に伝えさせていただきました。
コンペではありがたいことに40曲くらい送っていただき、原作を開きながら全曲聴いて、いちばん刺さったh-wonderさんの曲を選ばせていただきました。温かくて優しいだけじゃなくて、心にグッとくるようなエモーショナルなサウンドだなと思って。より原作の良さを引き出すような楽曲だなと。
――そこからこだまさおりさんに作詞をお願いされたのでしょうか?
田所:そうですね。曲が決まってからこだまさんにお願いしました。コンペの時と同じく、作品に対する思いを伝えさせていただいて。
それに加えて、元の世界での報われない日々があったからこそ、優しさに驚いて、温かさが染み入ってくる……そんな歌詞にしたいとお願いしました。
――リョウマは前世にいろいろあって……しかもあんなにあっけない死に方をしてしまうという……。
田所:(笑)。あんなに体力に自信があったのに……。
――(笑)。ただ優しいだけではなく、終わりを知っている者だからこその想いも感じる歌詞ですよね。
田所:はい。言葉の並びも美しいし、<生きているんだと こんなにわかる 辿り着いた 優しい世界>っていう言葉が個人的にとても刺さりました。
以前の暮らしが辛かったこと。そして、今、やっと生きてるって実感できたことがこの一行から伝わってきて。直接的でスパイシーで、好きです。
――フルートの音色が牧歌的な温かさをより引き立てていますね。
田所:実はフルートは最初は入っていなかったんです。アニメの制作の方から「今後あるシーンにフルートが出てくるのでぜひ入れてほしい」とリクエストをいただき、後から入れたんですが、すごく馴染んでいて入れてよかったなぁと。
――レコーディングはいかがでしたか?
田所:バラードということもあってごまかせない楽曲で。歌の技術を求められる楽曲だなと思っていました。勢い、強さ、そういう曲ではないので、とても集中して、頭を使いながらバランスを取っていきました。
――このアニメの第一話が(インタビュー段階だと)つい先日放送されたばかりなんですが、オープニングを見られたときはどんな印象がありましたか?
田所:すごく感動しました! 曲が難しかったこともあって正直不安だったんです。納得できるまでレコーディングしたけど、「もっとこうできればよかった」って反省してしまうところもあって。
でも実際にアニメーションを目にしたときに「すごいステキだな!」って。そこで完成したんだな、いい曲だなって改めて思えました。