【BLのことさらに知ってみませんか？】オメガバースの基本知識からBLの時流に乗ろう！の巻 【アニメイト編集部BL塾・応用編】

「オメガバース」の歴史

阿部：ではなぜ、このような特殊設定が登場したのか。オメガバースの詳細な起源は不明なのですが、海外のファンダム系サイトから仕入れた情報をもとにお話していきます。

冒頭でも少しお話しましたが、はじまりは海外の二次創作BLです。海外ファンが投稿サイトへ某人気海外ドラマの某カップリングでとある設定が投稿されます。スライドにまとめてみたので確認しましょう！

阿部：2010年5月～2011年1月の期間で一気にオメガバース設定が確立されていきました。

石橋：そんな短期間にこれだけの複雑な設定がわーっと盛り上がったのはすごい現象ですね。

阿部：ソースが定かではないので諸説ありですが、前述の海外ドラマで2007年に放映されたオオカミ男が登場するお話が発端という説もあります。石橋さんのおっしゃる通り、オメガバースはオオカミの特性を用いた部分がとても多くあるため、オメガバースのはじまりは2007年と思っている人も多いとか。

ほかにも、海外の二次創作BL界隈では1980年代に「男性妊娠」、1990年代に「男性半分がフェロモンを放ち繁殖する性になった」という設定が用いられていたらしいです。某海外ドラマの二次創作BLをきっかけにそれらの設定が組み合わさり、一つの特殊設定として「オメガバース」が完成されたのではないかなと思っています。

石橋：なるほどね～。日本にはいつ頃きたんですか？

阿部：私がpixivで調べた限り、最初にオメガバース設定を用いた投稿があったのは2013年でした。海外から設定を見つけて描き始めたのかなぁと思っています。

ただですね、海外からオメガバースが来日する前から、類似設定が存在していたんです。

石橋：さすが日本人……！

阿部：しかも、二次創作ではなく商業BL作品からなんです！　「男女以外の区別」「階級社会」「男性妊娠」「発情」などオメガバースと同様の設定を用いていた作品『SEX PISTOLS（※４）』です。

※４：SEX PISTOLS

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リブレにて刊行された寿たらこさんの漫画作品。通称、セクピス。人間には「人類（＝猿人）」「斑類」2種類の種族が存在する世界。普通の高校生のノリ夫は自己の影響で「斑類」に目覚めてしまう。

石橋：バンドみたいな名前だ……（笑）。

阿部：こちらの作品は2003年に連載が開始されています。BL界隈に大きな影響を与え、のちにさまざまな作品の二次創作で「セクピスパロ」として設定や世界観を模した作品が多く描かれていました。そのため、日本でのオメガバースの原点なのでは……というのが個人的な見解です。

石橋：日本では『セクピス』の設定がメインストリームとしてあったけど、黒船的に海外から「オメガバース」がやってきて文明開化が起こった感じですね。BL愛好家のみなさんが考える最強の世界という感じでおもしろい！

阿部：何より想像力がすごい（笑）。新しい設定を生み出してしまうなんて。

そんなオメガバースは2013年に来日したのをきっかけに二次創作で人気を博します。そして、2015年に商業BL作品へ改めて参入してきました。

「オメガバース」は賛否両論？

阿部：作品数は年々少しずつ増加傾向にありますが、いまはまだテストマーケティング的に出版されているのかなと思う部分もありますね。

石橋：それはなぜなんですか？

阿部：賛否の分かれる設定であるのかなと。「男性同士の恋愛なのに男性妊娠って…」と違和感を覚える人、社会階級が描かれるため「差別・偏見の表現はちょっと……」と思われる人もいます。センシティブな内容であることは否めないので、否定的な意見は避けて通れないのかなと。

ただ、オメガバースの魅力としてあるのは関係性がより広がるところなのかなと。「運命の番」という魂からの深い繋がりにロマンを感じたり、好き合って番関係になって子どもが生まれて、と関係性が変化していくことに尊さを感じたり……。だから、特殊だけど需要もあるのだと思います。

石橋：なるほどね。少し例えがズレるかもですが、ギャルゲーって告白して、OKもらって、結ばれたら終わりな作品がほとんどなんですよ。そんな中で登場した『ラブプラス』という作品は、付き合った後の関係が描かれます。「付き合ったら終わりと思っていたけど、ずっとその先を見たかったんだ！」と思わされました。みんなこぞってプレイして、あの世界から帰ってこられない人がたくさんいたのですが（笑）。付き合った先が見たい人にとって、オメガバースは魅力的に感じるのかなと思いました。

しかし、お話を聞いていて、何となくオメガバースについて理解はできましたけど、一体どのように物語が展開していくのかあまりイメージができず……。商業BLで描かれるオメガバースの世界には、男性と女性が存在しながら男性同士のアルファ、ベータ、オメガの物語が繰り広げられるんですか？

阿部：基本はそうです！　そこはやっぱりBLだから、男性の登場人物で物語が構成されます。「運命の番」であるアルファとオメガが出会って結ばれる（番になる）というラブロマンスがオメガバースの王道かなと思います。もちろんアルファとオメガの組み合わせ以外のカップリングも描かれますが。

石橋：そうか、アルファがアルファを好きになる可能性も、ベータがオメガを好きになる可能性もあるんですね！　そう考えると設定が無限大ですね。

阿部：そうですそうです！“第二の性”の組み合わせによって結ばれ方も異なってきます。アルファとオメガなら番になれるけど、ベータとオメガだと番にはなれないとか。そこがオメガバースのおもしろさなんです。