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『ローリング☆ガールズ』Blu-ray BOX ~5周年記念特装版~発売記念座談会|出合小都美(監督)×むとうやすゆき(脚本) 後編【第4弾】 望未たち4人が巡った国々について、じっくり振り返る
京都編(#7 ~#8) タイトなスケジュールの中でも作品を面白くしようと思う人たちが集まってくれた
――ロックの聖地・京都の話でしたが、一条美沙(CV.中原麻衣)と豆千代(CV.早見沙織)の友情話でしたが、豆千代がかわいかったです。
出合:豆千代人気は高かったです。京都編は絵コンテの力が大きいと思っていて、7話を橘正紀さん、8話を平川哲生さんと江原康之さんがやってくださったんです。橘さんは監督もよくやられている方で、絵コンテがめちゃめちゃお上手なんです。キャラクターの良さを引き出すのがすごく上手くて、豆千代は、コンテの段階ですでにかわいかったし、それがフィルムに反映されていると思います。
8話のラストの演奏シーンは、江原さんにやってもらったんですけど、もともと原画がすごく上手い方で、今回コンテを描いてもらったら熱いものが上がってきたんです。バンドシーンでは作画にも参加していて、ラフ原をたくさん切っていただいたんです。そのくらい力を入れてやってくださいました。
――ライブシーンはすごくカッコ良かったですね。
出合:スケジュールがタイトな中でも、現場の盛り上がりはすごかったです。このフィルムを面白くしようと思う人たちが集まってやってくれた。それは6話でも感じたけど、この8話もそういう話数だったと思います。
オリジナル曲である「STONES」のアレンジは、本編でTHE BLUE HEARTSのアレンジをしてくださっていた、堤博明さんにお願いしたのですが、堤さんはギタリストでもあって、実際に演奏されている姿を録画させていただき、それを参考に作画をしているんです。ロトスコープ(※実写映像をトレースしてアニメーションにする方法)まではしていないんですけど。なので、リアリティのある演奏シーンにはなったかなと思います。
むとう:さりげない楽器の構え方とか、想像で描いているのではない感じ、あるいはよく分かっている方が描かれている感じが出ていました。バスドラの足を一拍かそこら抜くカット割りとか、ニクいな~って思いました。中年男がギターを弾いている後ろ姿も良かったです。当時の海外からの感想で、「このライブのチケットは一体どこに行ったら買えるんだ?」っていううれしいコメントもありましたっけ(笑)。
出合:あははは(笑)。それはうれしいですね。
むとう:あらためて、脚本で好き放題に書かせてもらったものを、よくあれだけの映像にしてもらえたなって。6話や8話はとくにカタルシスがありました。
――クライマックスがド派手でしたからね。
出合:このあたりから、清水寺が変形したり、仏像のミサイルが清水寺に飛んできたり、スケールが大きくなっていくんですよね。
むとう:セオリー通りの作劇を自分たちから放棄しているぶん、普通ならすんなり済むところに苦労したりして、脚本の打ち合わせはけっこう難航したのですが、それでもアイディアを出すのが楽しかったんですよね。ふだん使わない頭で突拍子もないことを出し合う感じで。モブをどう物語に介在させるか、というののひとつとして逢衣に仏像ミサイルの発射ボタンを押させようとなったときはへんなテンションになりましたよねて(笑)。
出合:妙に盛り上がりました(笑)。あのアイディアは秀逸でしたよね。そこにたどり着くまでに、相当紆余曲折があった憶えがありますけど。
私はあのあと、泣きそうな顔で、橋の上から「望未ーー!」って言うところの絵がすごく好きです。
むとう:わかります。大変なことをしてしまった、どうしよう!っていう。「望未ーー!」って言ったところでもうどうしようもないんですけどね(笑)。
――他に、印象的なシーンはありますか?
むとう:出合さんから「アバンでもいいから、7話で4人が温泉に入るシーンとか、テントで寝るくだりを入れませんか」と言っていただいたんです。6話までやってきて、どうしてもご当地キャラに尺を割かざるをえないぶん、4人だけのシーンってつくれていなかったし、以降も入れられるタイミングがなさそうだから、ここでやっておいたほうがいいのではと。後で全体をみたとき、あれがあるかないかで印象が全然違ってくるんですよ。
いつも状況に振り回されたり、誰かのために奔走奮闘している望未たちだけど、その間はあんな感じなんだよっていうのを見せることができたので、とてもありがたいご提案でした。
出合:それは良かったです。私が旅行好きで、歩き回って疲れたら温泉に入りたいよなっていう思いがあったり、「日常の中でしか見られないような4人の素の部分もどこかで描きたいな」と思っていたんですよね。tanuさんのイメージボードには4人の日常も描かれていましたし。
だから私にとっても、あそこは、望未たちの心情も垣間見られるので好きなシーンです。
むとう:結季奈が読んでいる本も見せられましたしね。
――小ネタでしたね。そういう何気ないシーンとか、細かいところに、こだわりが詰まっているんですね。
むとう:細かいところといえば、舞台設定自体がぶっとんでいるぶん京都の置屋についてなどはちゃんと調べたりしていました。「豆千代さん姉さん」って、「さん」が2回つくのはいいのか、おかしくないのか、とよくいわれたんですけど、そういうふうに呼ぶのだそうです。豆千代が女将さんを「おかあさん」と呼ぶのも、彼女が実際の母親というわけではなく、置屋の女将さんのことを舞妓や芸妓が「おかあさん」と言うからで。今でもあの二人を本当の親娘だと思っている方がいるかもしれませんが、そうではないんです。