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TVアニメ『WAVE!! ~サーフィンやっぺ!!~』尾崎隆晴監督インタビュー vol.1【連載】

【連載】TVアニメ『WAVE!!〜サーフィンやっぺ!!〜』尾崎隆晴監督インタビュー vol.1|気になるショウの行方……第11話で登場した兄・ハヤミチの意図とは?

「海で繋がっている」というショウの言葉

――シリーズ構成や演出面など、制作中に印象に残っている制作スタッフとのやり取りなどがあれば教えてください。

尾崎:オリジナルの作品でしたので、ビジュアルでいうとキャラクターデザインなど部分的な情報しかなく、その中で制作陣もいろいろと苦労したところはありました。

結構、聖地巡礼のようなリアルな描写をしたいというところで、大洗と湘南などいろいろな土地に取材しに行ったことが印象に残っています。

実際にその土地に赴きサーファーと会って話をして、それぞれ皆さんにはホームタウンがあって、違う場所に行くときは何か1つ成長するんですよね。

自分の知らない土地に行ったときにそれぞれの思いがしっかりとあることを感じましたし、他の人たちがとやかく言うわけではなくて、その人にとっては大切な場所だと。その1つ1つを大事に描かなければならないな、と思いました。

また、サーフィンの大会もいくつか取材させていただいたのも思い出深いです。ただ、大会は沖に出るので、肉眼だと本当に出場者が小さくて。

――やっぱり肉眼では見えづらいんですね。

尾崎:そうなんです。観客は浜から見ているので双眼鏡を使ったり、モニター画面を見たりしていました。肉眼で見るより中継されている画面のほうが断然見やすいです。

あくまで自分の印象ですが、選手たちは大会よりも練習しているときの方がダイナミックな演技というか、ワイルドな動きをしているように感じました。

おそらく、失敗すると点数に関わるので、本番では少し慎重になっているのかもしれません。大会は点数で競うことになりますし、大きな技を使っても失敗すると点数にならないんです。

――本作でも大会の様子は描かれているのですが、監督自身お気に入りのシーンはありますか?

尾崎:第4話のショウが失踪する前に、温泉でマサキとショウと田中が会話しているシーンです。そのシーンは非常に重要な意味があって、“海で繋がっている”、“さよならじゃない”という会話がありますが、この作品のすべてを語っている形になります。

海で繋がっている=人の心も繋がり合っているというテーマを意識していたところもあったので、ショウの「海で繋がっているから」という言葉にすべてが入っているんだな、と。

漠然ではありますが、後で“海で繋がっている”という言葉をキーワードに物語を見直すと、ここも繋がっている!とたくさん新しい発見が出てきます。

人や世界、いろいろな気持ちが繋がっているんだと、「海」を通して表現されているんです。サーフィンは1人で乗るものというイメージがありますが、人と人を結ぶものでもある。

第4話の3人の会話は、距離が離れても近くても人は繋がり合えるのが素晴らしいことだと思わせてくれるので好きなシーンです。

――今のご時世もあって、その言葉が深く感じられるような気がします。

尾崎:そうですね。上映や放送の時期は制作の都合もあってタイミングを見計らっていましたが、もともと東京オリンピックでサーフィンが新しい競技として入るということで、そこに合わせたいという意図がありました。

今はこういう状況下になってしまって、タイミングを外してしまいましたが、こういうご時世だからこそ、大事なメッセージが伝わるんじゃないかな、と感じます。逆に、放送には良い時期だったのかもしれません。

しっかりと表現したかった“波”

――先ほど聖地巡礼のお話が出てきましたが、大洗編、湘南編、ハワイ編など、主人公のマサキを通して場所が変わっていくのも面白い要素だと感じました。

尾崎:群像劇という部分と同時に、サーフィンやキャラクターの説明もしなければならないので表現するものがたくさんありました。

原作で既にたくさんのキャラクターがいたので、心の成長も踏まえてどういう手順で表現していくか、サーフィンもどんどん世界へと踏み出していくところから「段階」が必要だと思ったんです。

段階は人にとって、ものを考えるために重要な時期。たとえば、小学校、中学校、高校・大学、就職……だいたい3年置きに区切りがあります。そのスタンスがすごくわかりやすいなと思い、アニメにも少し取り入れました。

これが今度、社会に出ていくとスタンスは自分で決めないといけない。そういうところも含めて、そこに至るまでの段階を作るという考えで大洗編、湘南編と分けました。

あとは、ただキャラクターが圧倒的に多いのも理由の1つです(笑)。

――たくさんいますからね(笑)。サーフィンの有名な場所が描かれているので、いつか行ってみたいと思うようになりました。

尾崎:この作品は大洗が出発点ではありますが、サーファーの数でいうと湘南のほうがすごく多いんですよね。海辺にずーっとサーファーの方々が横に並んでいて、僕自身、取材で現地に行ったときはびっくりしました。

このアニメをやる前は漠然と見ていましたが、ものすごい人でしたので、せっかくサーフィンを描くのであれば湘南は外せないなという気持ちがあって。

もちろん大洗もサーフィンでは有名な場所ですし、地方からハワイへと世界に近づいている感じがしますよね。その辺りもいろいろと変化をつけさせていただきました。

――また、波の描き方もキラキラしていて綺麗でした。あれはCGですか?

尾崎:そうですね。波は結構苦労した部分で、出来上がるまで時間がかかりました。アニメーションでの波の表現は非常に難しくて、作画で描くと手間も時間もかかりますし、スキルも必要になります。

今はCG技術が追いついてきているので、CGを利用して波を描きましたが、労力はかかりました。さらに、そこにサーフボードに乗ったキャラクターをのせなければなりません。基本的に全体の波はCGで作り、人物に寄ったときに作画でまとめました。

先ほども言ったように、サーフィンは人生を物語っているようなスポーツですので、波もしっかりと表現しないと伝わらないな、と。

現れては消えていく、寄せては返す波を見ているだけで、自分を見つめ直したり、一歩を踏み出したりとドラマや映画でもよく定番になっていますよね。

それほど、しっかり描かないと台無しになってしまうので、波の表現は苦労しましたけどスタッフの努力もあって描くことができました。

(C)MAGES./アニメWAVE!!製作委員会
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