夏アニメ『ピーチボーイリバーサイド』はなぜシャッフル放送を取り入れたのか？　原作ファンをがっかりさせないための制作意図を上田繁監督に聞く【スタッフインタビュー】

上田監督にとって「アニメづくり」は天職！しかし満足した作品は!?

――『ピーチボーイリバーサイド』を作っていて、もっとも楽しかったところはどこですか？

上田：僕はアニメを作るのが楽しくてしょうがないので、全部楽しいんですよ。だから20年も続けています。

――では質問を変えます（笑）。アニメを制作していてテンションが上がる瞬間はどこですか？

上田：どこだろ。作品によって違うかなぁ（笑）。初めて編集したときの楽しさとか、声や音が入ったときの楽しさ、完成したときの楽しさ、それぞれ違う楽しみがあるんですよね。ちょっと伝えにくい話なのですが、自分が満足できたフィルムは、いままでひとつもないんですよ。『ピーチボーイリバーサイド』を含めても。

――クリエイターさんらしい意見ですね。

上田：だから、それを求めてずっと作り続けているのかもしれません。監督という仕事だと作業を他人に任せることが多いので、すべて自分の思い通りにはなりません。でも、僕がひとりで思い通りに作っちゃったら、それはそれでつまらないアニメになると思います。アニメ作品とは、いろいろな人の手が入って、初めておもしろい作品になるんです。

――とてもいいお話です！

上田：多少のデキの良さと悪さがあっての「アニメ」です。だから僕にとってアニメ監督という仕事は、昔からずーっと楽しいままです。

――それは天職ですね。では苦労した点はありますか？

上田：これも変な言い方ですが「全部」ですね。

――アニメは楽しくもあり苦しくもある？（笑）

上田：この質問は僕じゃなくて、制作さんに聞いたほうがいいかもしれません。シャッフルさせて混乱させてしまったわけだし（笑）。こちらの要求が高すぎて、いろいろ苦労をかけています。僕がアニメを作っていてもっとも嫌なのが、関わった人間から「おもしろくなかった」とか、そういう意見が出ることです。スタッフが「大変だったけどよかった」と言ってくれて、見てくれた人が「おもしろかった」と言ってくれるのを目指して、ずっとアニメを作り続けています。

上田監督が好きな『ピーチボーイリバーサイド』名シーンベスト3を聞いてみた

――監督が好きなシーンを、ネタバレせずにお聞かせいただけますか？

上田：ネタバレせずにですね！　3つ挙げさせてもらいます。まずは、シャッフル第1話の最後。「サリーがあることに目覚める」シーンです。そしてふたつ目は、シャッフル順の最終回（OA第12話）の「サリーの成長した瞬間」です。最後は時系列順の最終回の「ミコトのあるシーン」です。これは何を言ってもネタバレになってしまうので、これだけで勘弁してください（笑）。

――最後にファンのみなさんにメッセージをお願いします。

上田：『ピーチボーイリバーサイド』のコミック版、Web版、アニメ版を見てくださる方、全員が楽しめるように作りました。毎週楽しみに見ていただけると嬉しいです。放送をお楽しみにしてください。

[取材・文／佐藤ポン]

TVアニメ『ピーチボーイリバーサイド』作品情報

放送情報

2021年7月1日（木）より TOKYO MX、BS日テレほかにて放送開始！

TOKYO MX：7月1日（木）より毎週木曜22時00分～
BS日テレ：7月1日（木）より毎週木曜23時30分～
AT-X：7月1日（木）より毎週木曜23時30分～
J：テレ：7月7日（水）より毎週水曜25時00分～

配信情報

dアニメストアほかにて配信予定！

イントロダクション

昔々のお話です。ある所におじいさんとおばあさんがおりました。おじいさんは山へ芝刈りにおばあさんは川へ洗濯に──（中略）

ついには鬼を退治しましたが、外国にも鬼がいるようなので……桃太郎は海を渡りました。

すごいのは倒したこと　喜ぶべきは救ったこと　ただ一つ……駄目だったことは……────楽しんだこと

これはもしもの話だが……

もし流れてきた大きな桃が一つではないとしたら……

日本に流れてきた桃が複数あるうちの一つに過ぎないとしたら……

スタッフ

原作：クール教信者・ヨハネ（講談社「少年マガジン R」「マガポケ」連載）
監督：上田繁
シリーズ構成：大知慶一郎
キャラクターデザイン：栗田聡美、加藤真人
プロップデザイン：今門卓也
色彩設計：斉藤麻記
美術監督：福島孝喜
美術設定：曽野由大
撮影監督：長谷川奈穂
編集：本田優規
音響監督：田中亮
音楽：中橋孝晃
アニメーション制作：旭プロダクション

オープニングテーマ：Q-MHz feat. 鈴華ゆう子「Dark spiral journey」
エンディングテーマ：ミテイノハナシ「夜を越える足音」