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夏アニメ『ピーチボーイリバーサイド』上田繁監督インタビュー

夏アニメ『ピーチボーイリバーサイド』はなぜシャッフル放送を取り入れたのか? 原作ファンをがっかりさせないための制作意図を上田繁監督に聞く【スタッフインタビュー】

2021年7月からテレビ放送されるアニメ『ピーチボーイリバーサイド』。誰もが知る昔話「桃太郎伝説」をテーマに、Web版とコミック版がアニメ化される。

つい先日、テレビでは原作の時系列とは異なり、シャッフル構成によって放送されることが発表された。あえて時系列に構成しない意図や、作品に込められたメッセージなどを、監督を務めた上田繁監督にインタビュー!

業界歴20年を誇る上田監督が綿密に計算して作り上げたTVアニメ『ピーチボーイリバーサイド』。原作ファンへの最大のリスペクトを感じられる言葉を聞いてからアニメを観ると、より一層楽しめるはずだ。

『ピーチボーイリバーサイド』最大の魅力は要素の多さと多様性

――まずは簡単に自己紹介をお願いします。

上田繁さん(以下、上田):『ピーチボーイリバーサイド』監督の上田繁です。最近オンエアされたアニメだと、他社ですが『ゲキドル』を作らせていただきました。もともとは撮影出身なのですが、そのころから含めるとこの業界は20年くらいやっています。撮影の後は演出になって15年くらいキャリアを積んで、最近は監督業です。

――『ピーチボーイリバーサイド』に携わった経緯をお聞かせください。

上田:2018年くらいから旭プロダクションと仕事をさせていただくようになったのですが、当初から「後々は監督をやってほしい」と言われていたんです。なので『ピーチボーイリバーサイド』のお話は旭プロダクションさんから声をかけてもらいました。

――『ピーチボーイリバーサイド』の魅力はどこだと感じましたか?

上田:たくさんありますが、まず気になったのは作品がとても複雑なところです。もともとは10年以上前からWeb版が公開されている作品で、6年前からコミック版が始まりました。なので、漫画からのアニメ化ではないんです。長い時間をかけて作られてきた作品なんです。

 

 

――お話の内容は、どのように感じましたか?

上田:キャラクターと世界観がとても多様的です。桃太郎や鬼、中世ヨーロッパ風の人物が登場します。さらにストーリーはバトルやロードムービーで構成されています。『ピーチボーイリバーサイド』は要素が多い作品なんです。

――要素が多い作品だと、アニメ化しにくいイメージもあります。

上田:要素が多いので、事前にどのように絞ろうかを話し合いました。Web版のボリュームはとても多いけど、コミック版はアニメ化の企画が決まった段階ではまだ第6巻までで、もちろん話は終わっていません。アニメはコミック版をもとにしていますが、Web版のファンも大勢いらっしゃいますので、どうやってWeb版の要素も取り入れていくかを考えました。

『ピーチボーイリバーサイド』は要素の多さが魅力なので、ファンのみなさんの捉え方はそれぞれだと思います。バトルものとして見るか、桃太郎伝説として見るか、ロードムービーとして見るか……。さらに、物語では敵とされている「鬼」がいるのですが、彼らもただの悪者ではないのです。

――それだと客層を絞れないのでは?

上田:そうですね。なので、あえてお客さんを絞らずに作りました。要素が多い作品ですが、子供も大人も、男性も女性も見られるように、わかりやすいアニメを目指したんです。そもそもコミック版がよくできているので、まずはそれを絵にしていく、といった感じでしょうか。

――キャスティングの意図やこだわりはどこですか?

上田:今回のアニメは脚本が難しいと感じたので、僕が過去にお仕事させもらった大知慶一郎さんをシリーズ構成に指名させていただきました。作品をうまくまとめられて、いろんな意見や要素を取り入れてくれる人を考えたら、大知さんがまっさきに浮かびました。

――そして、キャラクターデザインが2名ですね。

上田:はい。女性の栗田聡美さんと、男性の加藤真人さんにお願いしました。これも『ピーチボーイリバーサイド』の多様性を考えた布陣です。本作に登場する人間はかわいらしい部分があるので、女性の栗田さんに担当してもらい、鬼や重厚なキャラクターは加藤さんに作ってもらいました。

――キャラクターで分けたのですね。同じシーンに登場すると、違和感はありませんでしたか?

上田:違和感はないと思いますが、キャラデザを2名に担当してもらったのは意図したものです。キャラクターデザインに多少のばらつきがあったほうが、『ピーチボーイリバーサイド』っぽいんです。コミックで第6巻まで描かれている作品をアニメの12話で説明しきれないので、「作品らしさ」を絵のニュアンスから伝えていこうと思ったのが理由です。

――それはおもしろいですね。その点を注意して見ると違った見方ができそうです。

上田:その代わりに、演出は限りなくシンプルにしました。最近のアニメはCG効果を多めに乗せますが、『ピーチボーイリバーサイド』はほとんど入れていません。見た目をシンプルにしたかったので、CGなどを使って映像をきれいにまとめてしまうと、作品らしさが消えてしまいます。ですが撮影監督(長谷川奈穂さん)は、とてもいい処理をかけてくれています。僕が撮影出身なので、細かい注文をさせてもらいました。効果は少なめで、キャラクターの良さと原作っぽさを出せるように……と。

――監督はアニメの制作前から、完成形の映像は頭に浮かんでいるのでしょうか?

上田:監督によって違うと思いますが、僕は画面の作り方や音楽、フィニッシュのフィルムの方向性は決まっています。今回の場合は、ちょっと特殊な音楽を使おうとか、いまお話したように絵をシンプルにするとか、展開に仕掛けを用意しようとか、事前に思い描いてました。でも、『ピーチボーイリバーサイド』はとにかくコミック版がしっかりしていたので、どちらかと言うと漫画をアニメで再現することに力を注いだ印象が強いです。

(C)クール教信者・ヨハネ/講談社/「ピーチボーイリバーサイド」製作委員会
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