浪川大輔さん 6年半ぶりのフルアルバム『Ruts』インタビュー|「誕生」から「未来」まで浪川さんの人生の「轍」を描いた10曲を収録
「だって楽しいじゃない」と「GAZE」では「決意」と「独立」をロックサウンドにのせて
――「だって楽しいじゃない」は、「もうやるんだって 決めちゃったんで進むしかないや」から「ハジケる リズムで Oh シャンラランラララ」と自分の中で何か割り切ったり、スッキリした感じを、ギターやベースのリズムの軽やかさが様子を表現しているような。
浪川:タイトルを聞くとポップな印象があるかもしれませんが、テーマは役者をもう1度やろうという「決意」で。「挫折」、「葛藤」、「決意」と続くと重いと言われたけど、「『もうやるって決めたら楽しくやるしかないじゃん』と明るく、開き直ることも決意じゃないの?」と話したらこのタイトルになっていました(笑)。
「昔は売れっ子とか天才とか言われていたのに今ではただの凡人じゃん」と言われても、「あの頃を取り戻さなきゃ」という悲壮感は全然なくて、「なるようにしかならないだろう」と。結局、うまくいかず、生活するために30歳まで会社員を続けなくていけなくて。今思うとそれがよかったのか、悪かったのか、決意が緩かったのかはわからないけど。皆さんも「決意」する時、楽しく決める「決意」があってもいいんじゃないですか? という僕からの提案です。
――「GAZE」は「ひとすじの光 めがけ 挑むのさ」や「高らかに雄叫びをあげろ」など力強いメッセージとオルタナティブなロックサウンドで聞いていると勇気が湧いてきます。
浪川:1年以上前から曲はあって、7thシングル「wonderful days」をリリースした時のリード曲にしようと思っていましたが、ちょっとロック過ぎて、その時の自分の気持ちとは違っていたので、改めて「wonderful days」を作っていただきました。
この曲のテーマは「挑戦」で、僕の年表では「独立」です。ある程度、年齢を重ねると自分が思い描いてイメージとはまったく違うものになったし、環境もどんどん変わったけど、「これならできるかもしれない」という、かすかな希望を少しずつたぐり寄せながら挑戦し続けてきました。
その中でスピード感を求められたり、踏ん張らなくてはいけない局面も多くて。「決意」よりも重いかも。僕がメモした単語や文章を渡して、書いていただいたので、言いたいことはすべて歌詞にあります。
「DISSONANCE」は戦友・森久保祥太郎さんに曲作りをリクエスト!
――「DISSONANCE」はイントロの「ウオーウオー」など、お客さんと盛り上がれるライブチューンです。荒々しい歌声で、「ボクらが描く未来 共に闘う時代」と一緒に同じ時代を生きる人たちへのエールにも。
浪川:この曲は「現在」です。森久保(祥太郎)さんに書いてもらうのではあれば今だというタイミングでお願いしました。裏テーマは「戦友」で、昔は同じ劇団にいた坂本真綾ちゃんが戦友だと言っていて、6thミニアルバム『Picture』でも「L’ambition」という曲で、彼女から見た浪川大輔を歌詞として書いてもらいました。
今回の戦友にお願いしたことは、今は自分が何かをしようと思った時、必ず他の人の手を借りたり、理解者が必要なんですよね。エンタメ業界に限らず、誰かと力を合わせてやらなくてはいけないことがほとんどで。画家も1人で完結しているようで、完成した絵を見てもらうために動いてくれる人が必要ですから。そんなことを歌を通して伝えたくて。
一緒にやっているラジオ番組(『森久保祥太郎・浪川大輔 つまみは塩だけ』)の収録のたびに森久保さんから「何がやりたいんだ?」、「どんな音楽が好きなんだ?」と取材を受けました。僕の今思っていることがしっかり伝わる曲を作ってくれました。
ラストは先を見つめて一歩ずつ歩んでいく「未定の未来」。浪川さんと聞き手が「轍」を見せ合う1枚!
――「未定の未来」は、優しい歌声とメロディで、「忘れたい想いも今は抱きとめて 止まらない毎日に乗り遅れない様に」と今後も歩き続けていく自分自身に言い聞かせるように。
浪川:これから先のことはわからないけど、ちょっとしたヒントを見つけたり、勘で行動することがあるけど、そういうのって大事かなと。それらを元に一歩進んで見ると、景色が変わってきますから。
「最初はまねごと今は宝物 見えそうな答えに夢中だった 覚えたセリフを繰り返しながら なけなしの毎日に語りかけ続けてる」のフレーズが大好きで、声優も最初は憧れの人のモノマネをしているとそのうち自分のものになるんですよね。
また、人間は全部を持って歩いていくのは無理で、何かを手に入れたら変わりに何かを失ってしまうけど、まさに大事なことは「こぼれた何かをもう恐れないで 振り返るにはまだ 何もかも途中だからさ」で。
この曲だけではなく、ほぼ全曲で僕が感じていたことをお渡しして歌詞を書いてもらっているので歌詞を見てくれればわかります。そして僕の年表を混ぜていますが、皆さんにとっても誕生からここまで歩いてきた軌跡や「轍」があると思うので、お互いに見せ合いましょうというフルアルバムになっています。