『スター・ウォーズ：ビジョンズ』「The Elder」レビュー｜TRIGGER（トリガー）・大塚雅彦監督の集大成にふさわしい作品！ 作品に込められた監督からの熱いメッセージ【全作レビュー連載第7回】

様々な世代の登場人物と自然生命のつながりを綴った壮大なヒューマンドラマ

本作には年齢や種族の異なる様々な人々が登場します。経験豊富なジェダイマスターのタジン、ジェダイになるために修行を積んでいる若きパダワンのダン、種族不明の謎の老人、惑星ハボの心豊かな子どもたち。彼らにはそれぞれ積み重ねてきた時間があり、未来があります。同じ景色を見ていても、見えているビジョンはみなそれぞれ異なっていることでしょう。

また、美しい緑と田畑に囲まれた惑星ハボ、そこに生息するバムナ、深い山々、雨、雷、星空といった自然や生物たちが彼らを彩り、一つの情景として魅力的に描かれているのも見どころのひとつ。それらのシーンは日本で暮らす私たちにとって、どこか見慣れているような懐かしさを感じさせる風景でもあるはず。

そして、経験豊富ながらも衰えを感じ始めたジェダイマスターのタジンが、刺激を求めて闘気をみなぎらせる若き青年ダンに伝える「時間」というメッセージは、人間、生物、自然、誰にでも平等にめぐっているもの。

作品を観ていると、登場する全てのものが生命を表現し、繋がり、生命体系として存在しているのだと感じます。そして、その全てが物語に必要な登場キャラクターであり、壮大なヒューマンドラマとして描いているのが「The Elder」という作品なのです。

作品に込められた監督からの熱いメッセージ、大塚雅彦監督の集大成といえる作品

本作の監督を務めたのはTRIGGER（トリガー）の代表取締役で、「キルラキル」や「リトルウィッチアカデミア」などを手掛けた大塚雅彦さん。

スタイリッシュで作りこまれた作画、躍動感のあるキャラクターの動かし方、心に迫る大胆な演出といったTRIGGER（トリガー）らしさはそのままに、本作では多くはないセリフの中から、キャラクターの関係性や心情が浮かび上がる大人の作品に仕上がっています。

本作が最後の監督作品になるかも知れないと明言している大塚監督は「若いスタッフも育ってきて本当に経営や育成にシフトすべきかと考えていたところにこのお話しをいただき、区切りとするならこれ以上ない作品だと考えたからです」とコメント。

作品のタイトル「The Elder」は年長者、先輩という意味ですが、監督のコメントを聞いた上で作品を観ると、いっそう胸に響いてくることでしょう。

また、吹替え版の声優には、ジェダイマスターのタジン役に土師孝也さん、若きパダワンのダン役に中村悠一さん、物語のキーマンとなる老人役に緒方賢一さんといったアニメ作品ではおなじみの実力派が揃い、作品に華と重厚感を添えています。

『スター・ウォーズ』という作品と同じ時代に生まれたこと。『スター・ウォーズ：ビジョンズ』という作品の誕生に立ち会えたこと。TRIGGER（トリガー）の大塚雅彦監督作品の「The Elder」のレビューを担当したこと。その全てが運命であり、重ねてきた時間であり、これからの未来に繋がると感じています。

『スター・ウォーズ』だけど、『スター・ウォーズ』じゃない、『スター・ウォーズ：ビジョンズ』という新しい未来の誕生をあなたもぜひ体感してみてください！

[文/宋 莉淑（ソン・リスク）]

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『スター・ウォーズ：ビジョンズ』とは

ディズニープラスにて独占配信

ジョージ・ルーカスが黒澤明作品や日本文化から多大な影響を受け制作した「スター・ウォーズ」の創造のルーツとも言える日本へルーカスフィルムが強いリスペクトを込めた「スター・ウォーズ」史上初の一大アニメプロジェクト。「スター・ウォーズ」の創造のルーツとなった“日本”、そしてその日本から新たに誕生する、「スター・ウォーズ」への期待が、世界的に高まっていく中で、エグゼクティブ・プロデューサーであるジェームズ・ウォーは「これは私たちが愛する“アニメ”という文化を生んだ日本へ贈るルーカスフィルムからのラブレターです。」と日本アニメに対する熱い想いを語る。参加したクリエイターたちが、＜スター・ウォーズ＞そして＜日本のアニメ＞への熱い情熱を持って創り上げる、独自のビジョンで描いた9つの「スター・ウォーズ」は9月22日(水)16時よりディズニープラスにて全9話一斉に日米同時配信される。

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