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声優・アーティスト 羽多野渉 音楽活動10周年記念インタビュー【第1回】

役者ならではの音楽に気づいた『おれパラ』――羽多野渉さん音楽活動10周年記念連載企画『Wataru’s Music Cafe』Part,1「NOW&NEW」編

TVアニメ『さんかく窓の外側は夜』のED曲「Breakers」は作品の持つ美しさを歌詞とサウンドで表現

――今、話題に上がりました現在発売中の「Breakers」のご紹介をお願いします。

羽多野:TVアニメ『さんかく窓の外側は夜』のED曲で、制作の段階から「作品を1本見終わった後、次も見たいなと思ってもらえるような、作品の空気をしっかり受け継いだ楽曲にしてほしい」とプロデューサーさんにお話ししました。そしてアニメの劇伴を担当されているEvan Callさんに作っていただいて、こちらが考えていた作品の空気感を受け継いだ楽曲になって、視聴者に皆さんにも感じ取っていただけたようで嬉しかったです。

演じさせていただいている冷川理人の目線でも作品を見ることができていたので、深く作品に浸りながらレコーディングに臨めました。

――神秘的でミステリアスかつせつなさを感じさせるサウンドで、歌詞も作中では読み取りにくい理人の想いを歌っているようにも感じられて。

羽多野:聴いてくださる皆さんに解釈を委ねているところもあって。抱いている感情は「愛」なのか、「友情」なのか、いろいろな見方もできるし、ホラー的なテイストもあるけど、それだけではないところが作品のおもしろさでもあって。でもホラーっぽい楽曲にはしたくないなと思っていたら、Evanさんが「美しさ」を見事にサウンドで表現してくれました。

歌詞も岩城(由美)さんが美しい表現で仕上げていただいて。作中では理人も感情がどこにあるのかわからないしゃべり方をずっとしていますが、そこも見てくださる方に委ねているのかなと。オンエアも終盤に近付くにつれて、皆さんの歌詞の解釈度も高くなっていったようで、「1話で聴いた時に比べて、感じ方が変わってきています」という感想をいただいた時はとても嬉しかったです。僕もそんな曲になってほしいなと思っていたので。

悩んだ末の行きついたファルセットボイス。アニメのストーリーが進むごとに歌詞の印象や理解度も変化

――アニメの本編の直後に流れてくると余韻がすごくて、なんともいえない感情が芽生えてきます。ささやくような静かな歌い方が特に胸に染み入ってくるような。

羽多野:スタートをどんな歌い方にしようかとレコーディングでずっと悩んでいて、トラックダウンの時ですら、「ファルセットでよかったのかな?」って。これまでの自分の曲には歌い出しがファルセットで始まる曲がなかったし、音楽の表現のカッコよさや美しさの自分の引き出しはまだまだ足りないと思っていて、あくまで役者的なアプローチでした。ピアノの旋律に合わせて、人なのか、そうでないのかわからない、怪しくて美しい歌声を頭の中でイメージして歌いました。

出だしの「出口のない真夜中に」は地声とファルセットのちょうど中間のキーで、地声でも歌えるけど、ちょっと力強くなってしまうかなと思って。「怪しさや不安定さを何とかファルセットで出せないかなと思うんですけど」とEvanさんに相談したら「やってみましょうよ」と言っていただいたのが作品で使われているテイクです。

――フルで聴くと、1メロと2メロで強弱が変わっていたり、オケもDメロでエモーショナルになったりと、その1つひとつにもきっと意味があるんだろうなと。

羽多野:理人や作品の持つイメージ性とも関係しているのかもしれません。作品の序盤は怖いシーンも多いけれど、2人が出会って、心を通わせていくことで怖さが段々と勇気に変わり、関係性も変わって。主人公の三角くんは、最初は理人に翻弄されているけど、どんどんたくましくなっていって、最終的には「自分がみんなを助けるんだ」と人間的にも成長していくように、この曲も人生を描きたくて。

最初は子供なのか大人なのか、生きているのか死んでいるのか、わからない不安定なところからスタートして、広い世界に開放されていくように、Dメロで力強く進むイメージで、大サビで開放するという。細かく設計図を書いたわけではないけど、自然とそういう表現になりました。

父性が芽生えたMV撮影!? 原作ファンに嬉しい小ネタをリクエスト

――MVも羽多野さんのほかに、少年とコンテンポラリーダンスを踊る謎の人物が登場したり、羽多野さんも神秘的な森に現れて。そしてラストも気になる終わり方で。なんとも不思議な映像でした。

羽多野:完全に委ねてますよね。作品との親和性は高めたかったので、登場人物から立ち位置や振る舞い、小物など、細かく僕から監督さんへリクエストさせていただきました。『さんかく』の原作を知っている人やアニメを見てくださっている人はピンときたみたいで。

――子供が持っている三角の立方体のパズルや両手で三角を作ったり、どこまで三角推しなんだろうと。

羽多野:原作でも特に説明もなく、扉絵で、手で三角を作ったりしているので、「これはやりたい!」と思って、そのカットを作ってもらいました。撮影は1日で全カットを撮り終えないといけなかったのが大変でしたが、後半に子役の子と合流してからはずっと一緒に遊んだり、抱っこやおんぶしたりして、すっかり保護者みたいになってました。1日でこんなに父性が芽生えるとは(笑)。コンテンポラリーダンスのRYOMAさんも素晴らしいダンスをしてくださって。こちらからオーダーしたのは、「まず人ではなくて、時間軸が違う同一人物の僕と子供だけにしか見られない存在です」とだけで、しかもコンテンポラリーダンスには同じ振り付けがなくて、テイクを重ねるごとにどんどん世界観が変わっていくのがおもしろかったです。全部使ってほしくて、「僕のシーンを削ってでもコンテンポラリーダンスをもっと見たいです」と監督にお願いしたら「それはちょっと」と言われました(笑)。みんなで楽しみながらの撮影でした。

(C)ヤマシタトモコ/リブレ・さんかく窓プロジェクト
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