音楽
VALSHEインタビュー|新作『ISM』で自身の主義・主張を発信

12年目のVALSHE、目覚めるーー新たなステージへの第一歩としてリリースするミニアルバム『ISM』「原点に立ち返って自分自身に矢印を向け返してみようと思ったんです」

2010年9月、ミニアルバム『storyteller』で鮮烈なデビューを果たし、テレビアニメ『名探偵コナン』、『信長の忍び』など、数々の作品で主題歌を飾ってきたシンガー・VALSHE。激動の10年を超えて、今年2021年の締めくくりとして、そして新たなステージへの第一歩・第一声として、6枚目のコンセプトミニアルバム『ISM』を発売する。

タイトルの意味は“主義・主張”。VALSHEのスタイルを改めて発信していくという、その覚悟や気合いが込められている。

今回の楽曲的なこだわりとしての大きな部分を占めたのは、“全曲全く違うジャンル感”を目指すことだったという。この10年を振り返りながら、ミニアルバムについて掘り下げていった。

 

 

「(この10年は)人間としての育成期間だった」

ーーお久しぶりです! アニメイトタイムズでは久しぶりの取材となるので、まずは少し遡ってお話をおうかがいさせてください。

VALSHEさん(以下、VALSHE):お久しぶりです。ぜひ、なんでも聞いてください。

ーーありがとうございます。昨年デビュー10周年を迎えられたVALSHEさん。記念すべき年ではありましたが、タイミングがコロナ禍だっただけに、いろいろと考えられることも多かったと思うのですが、そのあたりはいかがでしたか。

VALSHE:(頷きながら)おっしゃっるとおり、10周年を迎えるタイミングというのが、みんなが手放しでお祝いできるムードとはちょっと違っていて。世界的にそうなってしまっていたので……常に未来を描きながら活動をしていた自分にとっても、皆さんにとっても「そんなことは想定していないぞ」と(苦笑)。だから2020年は迷いが多かったですね。ちょうど3月~4月にツアーを開催する予定だったんです。これまでツアーは夏、秋が多かったんですが「春にもやってみようよ」と初の試みとして春にツアーを組んだんですよ。まさにちょうどそこから本格的なコロナ禍に入っていって、その公演がすべて中止になって。ここからどうなるんだろうなって。最初は絶望でしたね。迷い、悩み、葛藤がありました。とは言え、自分の気持ちひとつで何かが動くようなシチュエーションでもないので、自分の中で無理やり消化して、受け入れて。

ーー激動ですよね。

VALSHE:激動も激動だなぁと(苦笑)。10周年にこうなるかと。ただ11月にはベストアルバム(『UNIFY -10th Anniversary BEST-』)を発表できましたし、結果論にはなりますけど、それを経てなお、いつも応援してくださる皆さんと気持ちをひとつにして2021年に向かっていけたことは良かったなと思っているんです。

ーーさきほど「迷い」とおっしゃってましたが、今までVALSHEさんにお話をうかがってきた中で「迷い」という言葉をはじめて聞いたのは初めてな気がします。

VALSHE:そうですね。これに関しては迷いがなかったと言ってしまうと大嘘になってしまうので(苦笑)。みんなきっと同じように迷う期間だったと思います。でもそこをちゃんと最後には越えていけたらいいよねって。

今振り返れば、自分の大事な瞬間、転機になるようなタイミングって、良いことももちろん、悪いことも満遍なく起こってきたなという10年間で。そのたびに自分の中で乗り越えて。結果的に見たときに、人間としての育成期間じゃないですけど……人として成長した10年間だったなと思ってます。良いことも悪いこともいろいろと乗り越えてきてよかったなと。

ーーそれって音楽にも結びつきますしね。

VALSHE:紐付いていると思います。作品であったり、詞であったりに反映されていると思います。

ーーそうした節目を経て、今『ISM』というタイトルの作品をリリースされようと思った理由はなんだったんでしょう?

VALSHE:今の「人間としての育成期間だった」という話しにも通じるんですが、自分はデビュー以前は人とのコミュニケーションを極力避けて生きてきた人間なんです。でも音楽活動を通じて、ファンの方にメッセージを発信したり、誰かを応援したいと思う気持ちを持ったり、「自分はこう思っているんですけど、皆さんはどうですか?」って問いかけたりする作品も多く作ってきて。自分が音楽でやりたいことがたくさん実現してきたんですよね。「じゃあ、11年目はどうするの?」て自分の中でずっと考えていました。そしてアルバム制作段階で、改めてこのタイミングで「自分自身に矢印を向け返してみよう」と思ったんです。

ーー矢印を?

VALSHE:ここしばらく、作品を聴いてくれるファンの皆の方向に向いていた矢印を自分に戻そうと。それこそコロナの期間にも改めて考えていた、自分が掲げているもの、大切にしているもの……もっと広い物事に対しての自分の主義・主張に、改めて向き合ってみようと思いました。

ーーつまり、原点に立ち返る意味も込められているんですね。改めて自分に向き合うことってそう簡単なことではないと思うんですが、実際に自分自身と対峙してみていかがでしたか。

VALSHE:総評的に言うと、主義・主張という核になる部分ってそんなに変わらないんだなって。成長に合わせて変化した考え方であったり、許せない部分が増えたり、逆に許容できる部分が増えたり。そういうものはありつつも根本的な部分は大きくは変化していないんだなと。

ーーその変わっていない部分をあえて言葉にするのであれば?

VALSHE:こうでありたいと思っていた正しさの形、これは間違っているっていう定義……ですかね。自分が活動していく中で底支えにしていた是非は変わってなかったんだなと思いました。

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