VALSHEさんが紡ぎ出すファンタジックな冒険の世界 VALSHE STORY LIVE「SAGAS -I’m the one of all the triggers-」レポート
VALSHE STORY LIVE「SAGAS -I’m the one of all the triggers-」が2023年3月11日(土)に赤羽ReNY alphaで開催されました。この日のライブは2023年3月1日(水)にリリースしたミニアルバム『SAGAS』がテーマ。
ステージでは『SAGAS』の全7曲とともに、SAGAS=冒険譚というタイトルに合わせ、中東・アラビアンなイメージをベースとしたストーリーライブ(朗読劇)を展開。昼夜2公演行われ、それぞれが独立した物語で完結するものの、2公演合わせて1つの作品となっています。
VALSHEさんは1部、2部ともに主人公アルド役を熱演。ストーリーの世界観にピッタリの歌声も披露し、ファンタジックで壮大な世界を表現しました。本稿ではそんなVALSHEさんのストーリーライブをレポートします。
<キャスト>
VALSHE(アルド)
平賀勇成(シャムス/カマル)
澤田拓郎(店主/アイン ほか多数)
星祐樹(主人 ほか多数)
鈴木裕斗(ナレーション/青年)
幻想的なストーリーライブがスタート!
この日の会場は開演前から波の音が流れ、観客をここではない遠くの世界へと誘います。そして、ステージ前方にキャストが座るカウンターチェアが置かれ、奥にはスクリーン。スクリーンには影絵のようなイラストが映し出され、物語を彩ります。
ステージには、アラビアンテイストの衣装に身を包んだVALSHEさん、そして白一色の民族衣装を着た男性キャストが登場し、ストーリーライブがスタート。
舞台は遥か遠い海の向こう側にある小さな島国サブア。サブアには、富裕層の暮らす街グラーブと貧困層の暮らす街マクバラがあり、人々はどちらかに属しながら生活している。
1部はマクバラで生きる人々の物語。アルド(VALSHE)は、グラーブの宮殿で働き、安い日銭を稼ぎながら、弟分のシャムス(平賀勇成)や子どもたちとともに、孤児が集うコミュニティの中で家族同然に暮らしていた。ある日、貧しい暮らしぶりのため、シャムスが奴隷として大人たちに連れていかれそうになる。アルドは彼らとの生活を守るため、マクバラの街を豊かにするため、宮殿の主人から聞いた夢物語「願いの枝」を探しに旅に出る。アルドは途中、同じ年頃の青年と出会い、その青年の「必要とあれば、善悪も飛び越える覚悟の問題だ。自分が幸せだと思えないまま死んでいくことほど無駄なことはない」という自身とは対極的な考え方に感化されていく。「願いの枝」を手に入れたアルドは、願いを唱えると、マクバラに向かう。マクバラに戻ったアルドが見た景色は、これまでと何も変わらないものだった。
驚きの展開を見せる1部
ライブはストーリーライブと『SAGAS』の楽曲を織り交ぜながら、進んでいきます。愛するものを守ろうと、ひたむきに生きるアルドを演じたVALSHEさん。時に声で、歌声で、身体を使ってアルド役を体現。美しさとともに迫真の演技を見せます。
ナレーションと青年を演じる鈴木裕斗さんが心地良く、落ち着いた響きで物語を進めながら、青年役をクールに演じ、素直なシャムスと率直なカマルの二役を務める平賀勇成さんはキュートな演技で、対極的な弟キャラを演じ分けていきます。
物語の鍵となる店主とアインを演じる澤田拓郎さんが謎めいた雰囲気を醸し出し、宮殿の主人を演じる星祐樹さんは、雄大な演技でストーリーライブに安らぎを加えます。
観客は目の前で繰り広げられるキャストたちの熱演により、マクバラの世界に入り込み、VALSHEさんの楽曲と歌声でいっそう深く物語を味わっていくことに。1曲目「calm」は、澄んだ美しい歌声で時に優しく、時に力強く歌い、続く「街路樹」では、切ないメロディーラインをしっとりと歌い上げます。
3曲目「+one step」では、明るく軽やかな歌声を披露。間奏では小さく息を吸って、遠くを見つめる表情も。ちょうど楽曲の中間に位置し、疾走感あるデジタルロックサウンド曲「Ash」を歌い、そのパワフルな歌声で会場の空気を変えていきます。ブルースファンク「John Doe」では、ファンタジックな楽曲の世界観の中で冷たさと激しさを表現し、アッパーな楽曲「MORAL LICENCING」へ。その烈々たる歌声が会場内を熱く満たしていきます。
ストーリーライブの後、ラストの曲となるのはアルバム表題曲「KARASQADAR」。物語の善と悪、覚悟と選択、登場人物の強さを歌声で表現。誇り、理想、孤独、痛みなど、歌詞に合わせた様々な表情を見せながら熱唱し、1部は終幕となりました。
何もかもが対照的な2部スタート!
2部では、1部と異なるダークカラーの衣装に身を包んだVALSHEさん、そして黒一色の民族衣装を着た男性キャストが登場。何やら1部とは違った雰囲気で、ストーリーライブがスタートします。
2部はグラーブで生きる人々の物語。アルド(VALSHE)は、両親から引き離され、宮殿の主人とその息子カマル(平賀勇成)から従者ではなく、家族として扱われて暮らしていた。裕福で自由な暮らしに見えても、心は不自由だった。そんな暮らしに嫌気がさしたアルドは、奪われたものを取り返すため、グラーブに復讐するため、母から聞かされた夢物語「願いの枝」を探しに旅に出る。アルドは途中、同じ年頃の青年と出会い、その青年の「他人から奪って得る幸せなんて、本当の幸せじゃない。誰か一人が幸せになること、そこに喜びなんてものはない」という自身とは対極的な考え方に感化されていく。「願いの枝」を手に入れたアルドは、願いを唱えると、グラーブに向かう。グラーブに戻ったアルドが見た景色は、これまでと何も変わらないものだった。
真逆のセットリスト
2部も1部と同様、ストーリーライブとVALSHEさんの歌声により、観客はグラーブの世界へとリンクしていきます。しかし、1部とは対照的なストーリーライブで、セットリストも1部とは真逆の順に。
1曲目「KARASQADAR」をこれから始まる物語を示唆するように神秘的に、そして力強く歌い上げます。続く「MORAL LICENCING」では、ストーリーライブ内で登場人物が見せる憎しみと激しさを表現。ダンサブルなナンバー「John Doe」に続くと、低音の歌声をステージに響かせながら、ステップを踏むという大胆不敵なステージパフォーマンスも披露します。
4曲目「Ash」はまっすぐな視線を観客に向けながら情熱的に歌い、続く「+one step」では、あたたかく、伸びやかな歌声を上げます。その後の「街路樹」では、優しく、柔らかく歌うVALSHEさんをホワイトカラーのスポットライトが包み込む演出も。ストーリーライブの結末がもたらす明るいムードが会場内にゆっくりと広がっていきます。ストーリーライブの後、ラストナンバーは「calm」。時にささやくように、時に力強くしっとりと歌い上げ、ノーブルなフィナーレに。
カーテンコールでは、鳴りやまない拍手の中、キャストが再び姿を見せ、深く一礼。キャストたちがひと言ずつ挨拶をした後、VALSHEさんが「もう普通になっていいですか~?」と観客に言葉をかけ、明るいトーンで作品への思いと感謝を告げました。
ライブ中はステージ上からは客席が見えにくかったと語ったのち、「最後に目を合わせていこう!」と観客席のファンひとりひとりと目を合わせていくVALSHEさん。そして、最後に「これからもいろいろなVALSHEワールドをみなさんにお見せしていきたいと思います。どうもありがとうございました!」と熱いメッセージを伝えて、ステージは終演となりました。
[取材・文:宋 莉淑(ソン・リスク)]
楽曲情報
VALSHE 7th mini ALBUM『SAGAS』 好評発売中!
◆収録楽曲 ※全形態共通
01.KARASQADAR
作詞:VALSHE 作曲:バルと瞬さん★ 編曲:Shun Sato
02.MORAL LICENCING
作詞・作曲:VALSHE 編曲:G’n-
03.John Doe
作詞:VALSHE 作曲:後藤康二(ck510) 編曲:後藤康二(ck510), Dr.Tyler
04.Ash
作詞:VALSHE 作曲・編曲:齋藤真也
05.+one step
作詞:VALSHE 作曲:バルと瞬さん★ 編曲:Shun Sato
06.街路樹
作詞・作曲:doriko 編曲:G’n-
07.calm
作詞:VALSHE 作曲:Yenyu Shen 編曲:徳永暁人
[bonus track]ショック THE ワールド
作詞・作曲:VALSHE 編曲:高木龍一(Dream Monster)
計8曲収録
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