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on BLUE/from REDの裏側|BLってどうやって作られているの?【BL塾】

そもそもBLってどうやって作られているの?多くの読者を惹きつけて止まないon BLUE/from REDの裏側【BL塾】

商業BL漫画づくりの裏側に迫る

阿部:作品をつくっていただく商業BL作家さんはどのように見つけているのでしょうか? 話題の同人BL作家さんや編集者さんの好きな同人BL作家さんをスカウトすることが多い、という認識がありまして。

鹿:「on BLUE」立ち上げ当初から変わらず、基本的には編集者が好きな作家さんにご依頼をしています。おっしゃる通り同人作家さんにご依頼することはすごく多いのですが、すでに商業でご活躍されている作家さんへもご依頼しています。その辺は垣根なくですね。
ただ、“内輪の好き”になり過ぎないように気を付けていて、その時々の時代感は見るようにしています。

阿部:トレンドみたいなものも追っているということですか?

ももんが:日ごろからトレンドは追っています。「なぜこの作品が売れたのか」「同人界わいでなぜこれが流行っているのか」を見て、その萌えを作品に落とし込みたいといった話は編集部内でかなり話しています。

はむはむ:エロ要素の強いBLが売れる年、ストーリー重視の作品が売れる年とか、流行のジャンルやキャラクターは?といった話などをしていますね。例えば今だと設定をうまくボーイズラブに落とし込んだファンタジーや獣人ジャンル、鬼上司や配信者キャラクターなどが流行っていると思います。

阿部:そういったトレンドは二次創作から流行が移ってくるんですか?

はむはむ:それは多いですね。オメガバースやDom/Subユニバースは二次創作で先に用いられていたネタですし。二次創作は原作があるものなので、設定を工夫して楽しむみたいな形でさらに新しい設定が生まれたりして人気がでることもあるんじゃないでしょうか。

とはいえ、今流行っていたとしても商業で単行本として完成するのは1年以上先だったりするので、トレンドだけを狙って作品をつくることはしません。あとから加味していく方が多いですね。例えば、「作家さんの描きたい萌え」をインタビューし続け、作家さんの萌えとトレンドの萌えが合致する時は流れに乗るような感じです。単行本になった時にもしトレンドとたまたま合っていたらラッキー!くらいの気持ちで考えています。

阿部:では、「作家さんの萌え」を軸に新しい作品を生み出しているのでしょうか?

鹿:こちらも「on BLUE」立ち上げ当初から変わらず、読者のみなさんに満足してもらうことを視野に入れつつ、作家さんの好きなものを聞き出して描いてもらっています。

石橋:商業である以上、読者の方が満足する作品をつくるのは大前提ですもんね。ちなみに、取り扱うテーマやストーリーの基準みたいなものはありますか?

ももんが:テーマは「作家さんが何に萌えるか」「作家さんが何を描いたら輝きそうか」を基準に、ストーリーは「“漫画”として成立するお話かどうか」を基準に作品づくりを進めていますね。例えば、アニメでは成立しそうだけど漫画だとどうだろう……という視点で考えることもあるかもしれません。

阿部:それでいうと「on BLUE」作品は『宇田川町で待っててよ。(※1)』『ポルノグラファー(※2)』『海辺のエトランゼ(※3)』など映像化されている作品もありますが、映像化を念頭に作品づくりを進めることもあるのでしょうか?


※1:宇田川町で待っててよ。

 
秀良子先生の作品。臆病な女装男子と一途すぎる男子高校生の不器用で青いラブストーリー。2015年に実写映画化。

※2:ポルノグラファー

 
丸木戸マキ先生の作品。大学生と官能小説家の不思議で甘美な関係が描かれる。2019年に実写ドラマ化。

※3:海辺のエトランゼ

 
紀伊カンナ先生の作品。小説家の卵でゲイの青年と高校生の「心が洗われるようなボーイズラブ」というキャッチコピーがつけられるほどピュアなラブストーリー。2020年にアニメ映画化。


鹿:BLというジャンルのメディアミックス化は必ずしもいいとは限らないため、狙ってつくることはしていません。ただ、作品が広く知れ渡る絶好の機会なので企画をいただくのはいつでもハッピーです。

ももんが:私は『ポルノグラファー』の担当編集をしていたのですが、この作品も映像化を狙ったわけではありませんでした。『ポルノグラファー』の実写ドラマが放送された時、たまたま『おっさんずラブ』が流行ったタイミングでした。視聴者も映像業界もBL作品の映像化に抵抗がなくなってきたこともあり、あそこまで多くの方に見ていただけたのだと思っています。

そういう流れにうまくのったようなところもあるので、そこにこだわって作品をつくることはしません。ただ、「映像化のチャンスを秘めていそう」と作品をつくっていく中で感じた場合、「突然外国に行くような展開にはしない」とかには少し気を払ったりしています(笑)。

石橋:なるほど、外国に行くとなると実写映像化の場合はロケが必要ですもんね(笑)。

ももんが:舞台がニューヨークになってしまうと実写化のハードルが一気に上がってしまうので、そういった展開が来るようなことがあれば、何か言うかも知れません(笑)。

商業BL漫画編集者、三者三様の創意工夫

阿部:シュークリームの商業BL漫画のつくり方が見えてきたところで、続いては作家さんと作品をつくる上で編集者のみなさんがそれぞれ掲げているポリシーやこだわりを教えてください!

ももんが:私個人は前段でお話した通り、作家さんのやりたいこと・好きなこと・描きたいことをベースに、どう調整したらより読者反応が良くなるかを考えてつくっている感じですね。自分の好みや萌えは一旦置いておいて、作家さんが何を好きか、二次創作をされてきた方ならどんなジャンルやカップリングに萌えてきたのか、なぜ萌えていたのかをとにかく聞きます。

そもそも作家さんの趣味嗜好、何にときめきを感じ、何を大事にしているか、を聞くことが大好きでして……。そういった話を聞き、「この人はこれに対する考えがすごく深いから、こういう作品を描いてもらえば話を広げられそう」「同じ系統が好きな人にすごく響きそう」とアイデアを広げていきます。

はむはむ:ももんがと同じく雑談の中で作家さんの萌えを探ることは多いです。その一方で、私は「こういうことをやりませんか?」と積極的に提案をするタイプでもあります。編集者は作家さん以上にBL作品を読んでいたりトレンドや数字などの情報を持っていますし、中には縛りや取っ掛かりがあった方が描きやすいという作家さんも結構いらっしゃるんですよ。なので、作家さんの中にある描きたいこと・やりたいことと、より多くの読者さんの興味を引けそうなアイデアを結び付けたご提案を目指しています。

鹿:私もベースはももんがと同じで、萌えを描く方がノって描けるから漫画が面白くなる!と思い、「何に萌えていますか?」というのを聞いて、商業BLの読者さんの傾向も視野にチューニングをしています。ただご自身の萌えを自己分析済みの方ばかりではないので、その場合ははむはむのように「これどうですか?」と提案をします。

私はおしゃべりが好きなので、相手がおしゃべり嫌いじゃない限りめちゃくちゃおしゃべりし続ける。私だけではなく、うちの人間全員ラジオ機能がめちゃめちゃ強いと思っています(笑)。

ももんが:鹿さんが一番ラジオ機能が強いですけどね(笑)。

鹿:え! 嘘でしょ!?

一同:あははは!

石橋:今お話を聞いていて、みなさんめちゃめちゃラジオ機能強いな!って思っていました(笑)。作家さんとのコミュニケーションから生まれるアイデアを大事にしているからこそなんだなぁとすごく感じています。

鹿:「あなたの萌えはどこから?」を何時間でも聞けてしまいますからね(笑)。

はむはむ:編集部内でも編集者同士で「あなたの萌えは?」と詰められるんですよ!

ももんが:入社してすぐに洗礼を受けますからね……。「何が好き?」「誰が好き?」「なんで好き!?」と(笑)。編集者側も最初はぼんやりしていることが多いので、BLが大好きなはずなのに何も答えられないなんてことも起きる。そうすると「また聞くから考えておいて!」と宿題が出されるんですよ(笑)。

鹿:それは漫画編集者としての意識を促したいとかは一切なく、単純に聞きたいから聞いてます(笑)。

ももんが:BLって100人いたら100パターンの好きがあるんですよね。だから、その人はどういう萌えを持っている人なのか知りたすぎて、いつも詰めているようになってしまいます(笑)。でもそれは作家さんとも編集部内でも、やっていてすごく楽しい作業です。

阿部:今すぐ洗礼を受けたい……。

石橋:僕も……自分の萌えは何なんだ?と考えたい(笑)。

シュークリーム一同:(笑)。

ももんが:あと、ポリシーといえばですが、ネームは第一印象を大切にしているので、初読は読者の気持ちで読むようにしています。バーッと雑に読んでも面白いと思えるか、ピンとこないと思ったのか。そういった感覚は大切にしていますね。

石橋:なるほど……僕も記事の編集者なので、すごく納得です。

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