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『グッバイ、ドン・グリーズ!』梶裕貴&村瀬歩インタビュー

『グッバイ、ドン・グリーズ!』梶裕貴さん&村瀬歩さんインタビュー|青春時代を振り返る!声優としてのギリギリを攻めた演技とは?

2022年2月18日(金)に公開される劇場アニメーション『グッバイ、ドン・グリーズ!』。

本作では、2018年に放送され世界中で絶賛されたTVアニメ『宇宙よりも遠い場所』を手掛けたいしづかあつこ監督、吉松孝博(キャラクターデザイン)、MADHOUSE(制作)のチームが再集結。描かれるのは、少年たちの奇跡のような出逢いの物語だ。

東京から少し離れた田舎町に暮らす少年・ロウマは、友人・トトとチーム“ドン・グリーズ”を結成し、日々二人で作った秘密基地で何気ない毎日を過ごしていた。しかし、トトは東京の高校へ進学してしまい、ロウマはひとりぼっちに。そんな高校一年生の夏、アイスランドからやってきたドロップと意気投合。“ドン・グリーズ”に加わることになったのだが、彼の何気ない一言に乗せられ、ロウマらは山火事の犯人に仕立て上げられてしまう。そこから3人は無実の証拠を求めて、空の彼方へと消えたドローンを探しに大冒険へと繰り出すこととなる。

今回、トトを演じた梶裕貴さん、ドロップを演じた梶裕貴さんにインタビュー。本作に抱いた印象や、役を演じる上で苦労したこと、また「少年たちのひと夏の青春」を描いた作品にちなみ、2人の青春時代や“冒険”にまつわるエピソードもお聞きしました。

「アニメってすごい!」作品作りの素晴らしさを改めて実感

――まず、台本を読んで受けた印象を聞かせてください。

梶裕貴さん(以下、梶):オーディション時にいただいた作品資料に「いしづかあつこ監督」「ひと夏の冒険」というキーワードがあって。それだけの情報でも十分なほど「楽しそう!ワクワクする!」と感じました。主人公たちと同じ世代…いわゆる思春期の多感な時期を過ごされている若者たちには、特に胸に響くドラマが詰まっているんじゃないかと思います。

台本を読んで当時の自分を思い出し、共感できる部分と、また自分にはなかったからこそ憧れる部分の両方がありました。物語のダイナミックさはもちろん、繊細な人間ドラマが丁寧に描かれていたので、演じていてとても楽しかったですね。役者として参加でき、光栄でした。

村瀬歩さん(以下、村瀬):台本というよりも、オーディションの時から絵が出来ていたので、作品の“香り”みたいなものはその時から感じていました。

中高生の時って、クラスメイトの中に溶け込まなきゃいけなかったり、守らなきゃいけないルールもあったりと、抑圧されているという思いが強いじゃないですか。おそらく「この先ってどうなってるんだろう」「これをしたらどうなるんだろう」って気になる人も多いと思うんです。

僕が演じたドロップは、まさに自分たちのいる環境の“向こう側”に興味を抱いているキャラクター。そんなドロップによって3人は“先”に進むことになるのですが、なかなかできないことに突き進む姿を魅力的だと感じました。

――オーディションで受けたシーンは覚えていますか?

村瀬:役によって違うとは思うのですが、ドロップは秘密基地のテントの中でロウマとトトと話すシーンでした。いつも笑顔なドロップの、少し真剣な面が現れる場面。もう1つはネタバレに関わるので言えないシーンだったのですが、その表情の変化を演じられるか見られたのではないかと思っています。梶さんは?

梶:物語序盤、ドローンを買うか買わないかで一悶着あるシーンが中心でした。終始トトがしゃべり続けるという場面だった記憶があります(笑)。スピード感のあるテンポの中に、トトのいろんな感情が詰まっていて。きっと、その切り替えや表情の振れ幅をチェックされていたのかなと思います。

――すでに作品は完成しているとお聞きしました。完成版を観ての感想を聞かせてください。

梶:オーディション開催のタイミングで、既に映像がほぼ出来上がっていたというのもあって、その段階から、長い時間をかけて愛情たっぷりに作られてきた作品なんだなということは感じていました。なので、そんなスタッフの皆さんのお気持ちに応えたいという思いでアフレコに臨みましたね。収録後、ヘトヘトになるくらいフルスロットルで演じたので…実際に完成したものを見た時には、やはり感動しました。画だけでも作品の面白さは十分伝わってきていたのに、「そこに様々な音が入ると、これほどまでに素晴らしい作品になるのか!」と驚きましたね。

村瀬:それは僕も思いました。自分で言うのもなんですが、「声優ってすごい!」と(笑)。アフレコは2日に分けて録ったのですが、1日目と2日目の間が1週間くらい空いたんです。その間に、1日目に録った声を絵にアテたものを送っていただいたのですが、絵だけ見ていた時と大分印象が変わりました。「これだけでも感動するのに、さらに音楽が付いたらどうなっちゃうんだろう!?」とワクワクしました。

梶:わかる!まさに「総合芸術」だよね。あらためて、アニメ製作って、努力、時間、覚悟、責任感、お金、遊び心など、本当に様々な要素が合わさって、はじめて生み出されるコンテンツなんだなと感じました。そこへ、さらに沢山の人の愛が集まって、ようやく自立してくれる"こども"みたいな存在だな、とも。

村瀬:完成したものを見て、「アニメってすごい!」と改めて思いました。

 

――自身の役を演じるにあたり、苦労した部分、また工夫したところはありますか?

梶:トトは、周りから見えている彼と、彼自身の本当の気持ちにズレがある人物なのかなと。ハイテンションで捲し立てるようなしゃべり方をする描写が多いのですが、実のところ、ドン・グリーズの中だと比較的大人な考えを持っているキャラクターです。劇中では、そのギャップがきっかけで葛藤することになるなど、本当は繊細な青年。周りに気を使えるからこそ盛り上げ役に徹したり、あえて厳しい言葉を掛けたり。空気を読んでしまう人なんですよね。

今まで培ってきた芝居の引き出しをガバガバ開けて対応しなくちゃいけない、かなり難しい役でした。アフレコが終わる頃には、燃えカスのようにになっていましたね(笑)。

村瀬:ドロップは、とある“思惑”を抱えるキャラクター。それがかなりヘビーで、彼くらいの年齢、いや今の僕でも抱えきれないかもしれない。それを彼がどういう風に受け止めているのかを、自分なりに解釈して演じました。楽しいシーンの中にも、彼の何かを抱えていることを覗かせるというか…。どんなシーンを演じていても、彼の“苦味”の感じ方は忘れないようにしましたね。

――オフィシャルインタビューでは「等身大」「リアリティ」などの言葉が出ていたのが印象に残りました。キャラクターを演じる上で“リアリティ”を演出するにあたり意識したことはありますか?

村瀬:声優という職業だからこそ、ある程度美しい発音で、きれいな言葉の置き方で、視聴者の方が聴き取りやすいようにキャラクターを演じているのですが、今回のアフレコでは「もう少し口をもごもごさせてみて」と提案されました。

それまでは“聴き取りやすく”が大前提だと思っていたのですが、確かにキャラクターに寄せたらそうなるという新しい“気付き”があって「面白い!」とすごくワクワクしたんです。そこからはたまに呂律を悪くしてみたり。ぜひ意識して聴いてみてほしいですね。

梶:おお!実はそれ、僕も普段から念頭に置いていることで。例えば「仕事中の先生や弁護士さん、国会議員の方じゃない限り、現実世界では、そこまでハキハキとしゃべることはないよなぁ」と。けれど忘れてはいけないのは、"リアル"ではなく"リアリティ"。リアルを追求しすぎると、途端にのっぺりしてしまいますからね。粒立たせるところは粒立たせる。そういった考え方のなかでリアリティを演出していくならば、今村瀬くんが言ったように"意図的に崩して話す"というやり方は、テクニックのひとつとして十分成立するのではないかなと。

この作品、そしてトトという役は、まさにその最たる例だったなと感じています。楽しければ良し!ノリが大事!でも落ちる時はとことん落ちる!(笑)みたいな、若者特有のエネルギーを演出するには、ある程度グダついたところを見せてもアリなんじゃないのかなと。もちろん、観ている方が聴き取れなければ意味がなくなるので、そのギリギリを攻めるのが大事なんですが(笑)。

声優に向かって突き進んでいた青春時代を振り返る

――少年たちのひと夏の青春を描いている本作にちなみ、お2人の「青春」にまつわるエピソードも聞かせていただきたいです。どのような青春時代を過ごされていたのでしょうか?

梶:僕は16歳で声優事務所に入ったので、高校生の頃には、もう既に将来の夢に向かって動き出していたことになりますね。そして18歳の時に、初めて声優として仕事をしました。

村瀬:声優デビューの話をするならば、僕は結構遅かったんですよね。事務所に入ったのは20歳の時でした。

梶:それって(現在も所属している)ヴィムス?

村瀬:そうです(笑)。僕の青春時代は、養成所に通い始めた19歳の頃が一番濃密でした。運動以外ならルールを覚えればある程度どんなことでもできたのですが、お芝居はできないことが多くて。レッスンが終わった後に友人たちとカラオケに行って「あれってどうすればいいと思う?」「次の朗読劇どういう風に演じる?」と話し合ったりして、楽しかったな~!

梶:わかるわかる!僕は公園でやってたな~。稽古場を借りるお金もなくて、基本的に外で(笑)。

村瀬:僕は大阪校で、ちょっと離れた区民会館をみんなでお金出し合って3時間だけ借りていました。やばい、懐かしすぎる(笑)。

 

――思い切って挑戦したこと、どこかに行ってみたなど、青春時代の「冒険」エピソードはありますか?

梶:高校を卒業した翌日、友人と2人で池袋まで自転車で行ったことですね。当時、埼玉県の田舎の方に住んでいたのですが、東武東上線が通っている町で、それ一本で行ける一番の都会が池袋だったんですよ。乗車してから計っても片道40分くらいかかるほどの距離だったので、自転車だとどれくらいかかるのかは、まったくの未知数(笑)。けれど卒業の開放感も手伝ってか、あれだけ嫌に思っていた早起きも苦に思わず、ひとまず朝の5時に待ち合わせをし、出発しましたね。

ですが…案の定、漕げども漕げども辿り着かず(笑)。やっと到着したのが昼の12時過ぎ。とにかくお腹が空いていたので目についたファミレスに入ったのですが、その時には二人とも、既に疲労困憊。ほとんど無言で食べましたね。そこで、ふと「あれ?もしかしてこれ、帰りも7時間かけて帰らなきゃならなんじゃ…?」なんて、当たり前のことに今さら気づき、絶望したりして(笑)。結局、家に着いたのは19時あたり。出発したのが15時だと考えると、行きと比べて2時間も早い、所要時間約5時間で帰ることができました。まあ帰りは、疲れていることもあり、早く帰りたいのもあり、お互い一言も話さずに漕ぎ続けたからでしょうね(笑)。

そのときは「もう二度とやるもんか!」なんて思ったものですが、今思えば、これ以上なく青春っぽい良い思い出ですよね。きっと今回のドラマのなかで、トトたちもこんな気持ちだったんだろうな、と(笑)。

村瀬:僕は基本的に出不精でアクティビティはそんなにやらないのですが、3年前に仲の良い友人2人と山登りをしたのが良い思い出として残っています。

梶さんの思い出と同じく、行きの途中までは楽しくてテンション高いんですよ。でもだんだん疲れが出てきて、ハーッハーッという息遣いしか聞こえなくなってきて(笑)。それでも険しい道を乗り越えて、頂上に辿りついた時の達成感はすごかったです。……まぁそれ以来一度も山登りはしていないのですが(笑)。

梶:やっぱり!(笑)

(C)Goodbye,DonGlees Partners
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