1〜2巻まで発売中の、いま話題となっている作品や注目のおすすめBL(ボーイズラブ)コミックス25選!【ネタバレあり】
【1巻完結おすすめBLコミックス】
単行本で1巻完結のおすすめBL作品をご紹介します!気になる作品がありましたら、ぜひお手にとって読んでみてください。
君の足元で愛を知る
出版社:Jパブリッシング
著者:後之マツリ(公式Twitter)
あらすじ
男女の他に他人を支配する性・Domと、他人に支配される性・Subという第2の性別が存在する世界――。ごく一般的なサラリーマン・榛名桔平は、自分が生まれ持った支配される性“Sub”のことを毛嫌いしていた。
Dom性を持つパートナーを探しもせずに薬だけでSub性の“支配されたい”という本能を押し殺して耐えていた榛名だったが、その思いとは裏腹に欲求不満からくるストレスや身体の不調が膨らんでしまい、とうとう医者に進められてパートナーを探すことに。
観念して訪れたマッチングプログラムによって引き合わされたDomは、過去にSubである自分に威圧するような目を向けてきた同僚のエリート・大友颯汰で――!?
おすすめポイント
最近じわじわと浸透してきた“Dom/Subユニバース”がテーマの一冊。DomとSubがお互いの欲求を満たし合うプレイという行為(Domの場合、コマンドをし心が満たされる行為。Subの場合、コマンドをされ心が満たされる。)が存在します。
“同僚とマッチングしてしまった”というお互いに予期せぬ展開から話が始まるので、序盤から「どうなるんだ……!!」と期待しっぱなしでした。社内ならではのドキドキ感がたまりません!
また、Dom(支配する側)と聞いたら俺様でサディスティックな印象があるかもしれませんが、支配したい欲求には個人差があり誰しもがハードなプレイを好むわけではありません。大友も同様で、大友は普段はとっても温厚なDomです。
榛名を気にかけ温厚な印象が強いからこそ、いじわるなプレイの時のギャップに萌えが止まりません!!普段は見せない“雄”って感じの表情の破壊力が凄まじいです。
ラブラブで幸福度がかなり高い作品ですので、“Dom/Subユニバース”初めての方にもおすすめです!
食べないの?おおかみさん。
出版社:幻冬舎
著者:小石川あお
あらすじ
生贄として森に捨てられた人間の子ども・太郎。森の奥に住む狼のウルは、痩せた人間は美味しくないと言い、太郎に美味しいご飯を食べさせ、きれいな洋服を着せ、怪我の1つもしないように、大切に大切に育ててくれた。
大きくなったら大好きなウルに美味しく自分を食べてほしいと願う太郎だけど、いくつもの季節が廻った森のなかで二人は――。甘く、切ない異種族BLストーリー!
おすすめポイント
素敵なおとぎ話の絵本を読んでいるかのような気分になります。絵柄がほのぼのとしていて、色がついていないのに森の風景や動物たちには鮮やかさが。人物の表情が柔らかく心があたたかくなります。また人間姿のウルもかっこいいので見どころです。
ウルは本当に大切に、大切に太郎を育て元いた人間の世界へ、太郎がどこへ行っても恥ずかしくないように親のように育てました。ウルと太郎の2人には恋愛というよりも、もうすでに家族のような関係性を感じます。
太郎を人間の世界へ帰そうと、ウルが太郎を突き放すシーンは涙を誘います。太郎が幼い頃から今までずっと一緒に過ごしてきた2人、お互いが悲しいはずなのに太郎のためを思ってのウルの辛辣な言葉になんとも言えない切なさが。
読み終えた後、じわじわと2人の関係に心が優しくなれる本作。読者からは「作中に度々でてくるタヌキが可愛い。メルヘンな世界観も素敵、心がぽかぽかしました!」「この作品に出会えてよかった、この一冊に色々な想いが込められています」との声も。
リカー&シガレット
出版社:幻冬舎コミックス
著者:座裏屋蘭丸(公式Twitter)
あらすじ
お向かい同士で店を構える酒屋のテオとタバコ屋のカミロ。二人は幼馴染みだが、カミロが自分に特別な想いを寄せていることをテオは知っていた。
テオもカミロを意識していたが、それが恋愛感情からくるものなのかどうかわからずにいた。そんな時、カミロに「お試しでいいから付き合ってみない?」と提案され、迷いながらもテオは受け入れる。その後、情熱的なキスをされたり優しく愛撫されたり、今までと違う雄の顔を見せるカミロにテオは――?
おすすめポイント
見た目もですが性格含め少年のような瑞々しい印象のテオと、落ち着いていてちょっとセクシーな雰囲気が漂うカミロ。タイプが違う2人の幼馴染のラブストーリーで、カミロの長年の恋心が実る様子にキュンキュンします。
登場人物も多くなく、2人の生活中心のストーリー構成。2人の普段の日常が約200ページに収まっています。海外が舞台となっているので、セリフや仕草におおらかさがあり開放的です。1ページ1ページ穏やかに感じるため、一冊しか読んでいないのに随分長い間2人の日常を眺めていたかのような気分に。
作中でよくカミロがテオを口説いているのですが、その口説き方が「さすが海外の方、アプローチがめちゃくちゃ熱烈!まだ交際前だよね……!?!?」と付き合う前からもラブラブな様子を楽しむことができるのもこの作品ならでは!
座裏屋先生は海外をモチーフに漫画を描かれることが多い作家さんなのですが、どの作品も登場人物がとても素敵だと好評です。東洋の顔立ちや体格とは違った良さを感じることができます!
寺野くんと熊崎くん
出版社:竹書房
著者:依子(公式Twitter)
あらすじ
校内の人気者な生徒会長の寺野と学校一の不良でコワモテな熊崎。接点なんてなさそうなふたりだけど、実はお付き合いを始めたばかりの恋人同士。
キスの先に進みたくてついがっついてしまう寺野に、キスすら慣れないうぶすぎる熊崎は「無理だ!!」と激しく拒絶してその場から逃げ去ってしまい、求めてるのは自分だけなのかと不安になる寺野。
1週間後、熊崎の家にお呼ばれすることになり熊崎のペースに合わせて焦らずいこうと心に決めた寺野だったが恥ずかしげに「ケツの準備をした」と言う熊崎に理性崩壊――さわやか生徒会長×うぶかわ強面ヤンキーNO接点なふたりが実はコイビト同士!?!?
“大好き”をこっそり育む独占シークレットラブ★
おすすめポイント
ヤンキー(不良)受け大好物の方はぜひ読んでほしい作品です!!寺野くんは受け溺愛攻めという言葉がしっくりきます。ピュアすぎる熊崎くんに寺野くん含め読者までもが胸キュン。
最初から付き合っている設定です。寺野くんと熊崎くんがイチャイチャしている時に、赤面する熊崎くんがあまりにも可愛すぎて寺島くんが「ぎゅんぎゅん」となっているシーンがあるんですがそんな2人にギュンギュンします。
寺野くんの方が身長が高かったり熊崎くんのガタイが良かったりと、キャラのビジュアルがハマりにハマります。“クラスメイトに秘密の恋”“優等生×不良”という設定もたまりません。学生でしか味わうことのできない青春(文化祭や卒業式など)が詰まってます。熊崎くんのこととなるとちょっとおバカになってしまう寺島くんも可愛くて2人合わせて愛おしいです。
また熊崎くんを見つめる寺野くんの目がとてつもなく優しくて、メロメロの骨抜き状態なのがこれまたいい!クラスメイトみんなにはナイショの中、心の中では「僕の熊崎くん」と独占欲を包み隠さず、2人の時にその感情を爆発させているため終始2人のラブラブが読めます!!
あなたはいやらしい人
出版社:竹書房
著者:鹿島こたる(公式Twitter)
あらすじ
真面目で硬派、検挙率も高く仕事の出来る刑事・宗形は誰もがうらやむ完璧人間。しかし、宗形には誰にも言えない秘密がある――それは、ドMで淫乱な身体だということ。
有り余る性欲を抑えきれず、過激で危うい行為にひとり没頭する日々。一方、宗形の“秘密”などつゆ知らず、純粋なまなざしで彼に憧れを抱く新米刑事・トオルは、開けてはいけない扉を開いてしまう――。
潜在的ドSなワンコ系部下×ドMな淫乱刑事のエロティシズム・リビドー。
おすすめポイント
絵画のように美しい鹿島先生の絵には目を見張る魅力があります。宗形とトオルどちらにも言えることですが、瞬きしたら音が聞こえそうなほど長いまつ毛と大きな瞳が印象的で、笑ったり困惑したり目の表情がとても豊かで引き込まれてしまいます。仕事柄、スーツ姿が多くスーツの上からでも分かる肉体美にも注目です!
先輩刑事と部下の2人の関係性がとてもよく、職場だと宗形の方が立場が上なのに、プライベートだと立場が逆転するところがたまりません!
そしてなんと言ってもトオルの自分でも自覚していないサディスティックな部分のポテンシャルの高さが凄まじい!!「職場ではめちゃくちゃご褒美とか欲しがっちゃうワンコキャラなのに〜〜!!」と読者をドキドキさせまくります。
後半、少々シリアスっぽくなるのですがギクシャクとした関係は長くは続かないので最後まで安心できます。そのギクシャクの理由は宗形の性癖を加速させた発端とも関係がありますので後半にいくにつれ次ページが気になって仕方のない作品です!
いとしの毛むくじゃら
出版社:三交社
著者:赤いシラフ(公式Twitter)
あらすじ
平凡な俺が『歩く全身恥部』!?……ってどんな世界だよ!!
他人よりもかなり、だいぶ。 体毛の薄いことがコンプレックスな辻 慎一郎は、自宅の風呂でつるつるな腕や股間を眺めては、友人らのからかいを思い出し凹んでいた。
そうして目を閉じ、物思いに耽るなんていつものこと。 平和に今日も日常は過ぎていくはずだった……のに!
顔を上げるとそこは、異国の宮殿。目の前にたなびく艶やかな髪に目を奪われているとあっという間に囚われの身!?全くこちらを見ない毛の民らの中でただ一人。慎一郎に声をかけ、触れるのは、一番末弟の王子・ファルだった。
おすすめポイント
まず主人公・慎一郎が体のほとんどに毛が生えていることが当たり前な異世界にトリップしてしまうところから話がスタートします。元々、体毛が薄いことがコンプレックスの慎一郎ですが、話が進むにつれコンプレックスへの心境の変化が。
体毛がないことから“歩く全身恥部”“おぞましい”とまで言われてしまう中、ファルは慎一郎に興味を持ち慎一郎が元の世界に戻るまで面倒を見ることに。
ファルもそうですが、異国の人々は身体がモフモフ!体毛がない慎一郎と毛むくじゃらなファルが触れ合うシーンはなんだかいけないものを見ているかのような気分になります。
またファルが野生的な思考を持っているので、恋愛していく中で妙な駆け引きっぽさがなくて安心できます。その野生っぽい思考のせいで理性的な慎一郎と行き違いがあったりするのですが、最終的にはハッピーエンドなので行き違い含めて楽しめます!
宮殿内の装飾や衣装などもおしゃれで、アラビアンな雰囲気の獣人やファンタジー作品を読みたいときにおすすめです!
遥か遠き家
出版社:フランス書院
著者:八田てき(公式Twitter)
あらすじ
僕に全てを与え、捧げてくれた人。90年代、アメリカ。過保護すぎる親の箱庭で、死んだように生きていた少年・アラン。
旅人・ヘイデンと出会い、強烈に惹かれ合うも、彼には一か所にとどまれない放浪癖があると知る。共にいるためには、家出するしかない。それはヘイデンが、誘拐犯になるということ。
それでも彼は、何もかも投げ捨て、アランを地獄から連れ出してくれる――。その轍は、逃走経路。しかし彼らにとっては――「二人だけの家」への、帰り道。
おすすめポイント
宗教やトラウマなど、アランとヘイデンにはさまざまな自分ではどうすることもできない問題を抱えています。宗教に陶酔する両親を持つアランは、帰宅すると神に祈りを捧げるために何時間も祭壇の前に立つ毎日にうんざりしていた。そんな中で出会ったヘイデンと逃亡をするのですが、次々と災難が2人を襲います。
最初から重たいシリアスでその仄暗さはページを捲るたびにじわじわと増していき、「なんで、どうしてこうも上手くいかないんだろう」「まだまだ若い2人が……そんなはずじゃなかったのに」とそんな思いで苦しくもなります。作中の人物が「彼らは生きるのに必死だっただけだ、この事態を引き起こしたのは周囲の大人だ」と話していて読者はこの言葉に大きな共感を抱くことでしょう。
こんなに胸が締め付けられるほど切なく、美しいと感じる作品は珍しいと思います。悲しい洋画を観ているような、一コマ一コマが映像の如く動いて、鮮明に脳裏に浮かんでくる衝撃的なラスト。いわゆるバッドエンドといわれてしまうかもしれませんが、単純なものではなく深く考えさせられます。
アランとエイデン本人たちにとってはハッピーエンドかもしれません。そう思いを巡らせると、タイトルの「遥か遠き家」の意味が最初とは違った意味で胸に響いてきます。2人が行き着いた心に残る結末をぜひご覧ください。
犬浦くんは片重い
出版社:KADOKAWA
著者:ヲクムラ(公式Twitter)
あらすじ
爽やかな見た目でクラスの女子にも人気の高い犬浦。しかし彼は同じクラスの金髪ヤンキー・兎本に片想いをしていた。
とんでもなく重い愛でぶっ飛んだアプローチを続けるも、鈍感すぎる兎本にはまったく気がついてもらえない。
そんな中、兎本の幼なじみの猿飼や隣のお姉さんといったライバル的存在が出現!さらには”狂想のファントムキラー“という名の不良コンビまでが現われて……!?
SNSで話題の規格外の大暴走BLがついに待望の書籍化!!
おすすめポイント
SNSで話題となった犬浦くんと兎本くんのお話が本になりました!書籍化するまではヲクムラ先生が定期的にTwitterで投稿していたのですが、この2人の絶妙でコミカルな関係が面白すぎて当時から中毒者続出でした。
犬浦くんの兎本くんに対し変態的な執着心を発揮するも、兎本君が鈍感でその執着具合にあんまり気づいていないところが笑いを誘います!犬浦くんのその執着の重さはタイトルの“片重い”からも汲み取ることができますね。
そして犬浦くんは変態な上に少々腹黒いところもあり、「こういう風に行動したら兎本くんはこうしてくれるかな。ドキドキ」と乙女な恋心と共に思いを巡らせ、兎本くんに対し行動するもなかなか思い通りに行かなかったり……失敗例が多々あるので不憫さすら感じますがそこがまた良い!
1話完結型の話が複数収録されているので、2人の生活の一部分を切り取って読んでいるような気分に。他のキャラクターもめちゃくちゃ個性が強くて最高です。ギャグ要素が多くて、どこかクセになる2人なのでいつもとは一味違うギャグ強めのBLを読みたい方に今イチ推しの作品です!
【2巻完結おすすめBLコミックス】
単行本で2巻完結のおすすめBL作品をご紹介します!気になる作品がありましたら、ぜひお手にとって読んでみてください。
俺の生徒はかわいくない
出版社:リブレ
著者:外岡もったす(公式Twitter)
あらすじ
その日、俺の大事な研究室と尻は悪魔のような教え子に奪われた――新米准教授の水谷正冬は、校内成績ナンバーワンの学生・天使良悟にとある弱みを握られ、研究室を乗っ取られてしまう。
不本意なまま始まった二人っきりの研究生活だったけど、ことあるごとに天使は、えっちなイタズラを仕掛けてきて――!?
「キモチイイとこちゃ~んと教えてよ、セーンセ?」
外岡もったす先生待望のデビューコミックスは、性悪大学生×強気准教授の下剋上ラブコメ!
おすすめポイント
天使のゆるく独特な口調とビジュアルがマッチしていて、他の作品にはいないキャラだなぁと思います。生徒と大学教授という設定で、先生の方が立場が上だと思うかもしれませんが、天使がハイスペックなので水谷とは師弟関係というよりも対等な研究仲間という印象が強いです。
1巻では天使が大学を卒業し、また新たな道へと進むところで終わりましたが、2巻では違う道を歩む成長した2人の様子を楽しむことができます!最初からラブが強めでしたが、続編でよりパワーアップしたラブラブな2人を読むことができます。
セリフの横に表情の絵が描かれていることが多く、キャラの心の動きが分かりやすいのも特徴です!
他に登場する水谷先生の同僚・美青年愛好家の灰田教授のキャラがすごい濃くて2人とは違った意味で登場するたびにニヤニヤしちゃいます。2巻での「土下座したまえキミ――!!」の状況とセリフはクスッときます。
2巻では約200ページの内の100ページほどは『俺の生徒はかわいくない』で残りのページは同時収録の『あいつとバディは組めません!』という本作の前に掲載していたデビュー読み切りとなっています!
僕らのミクロな終末
出版社:祥伝社
著者:丸木戸マキ(公式Twitter)
あらすじ
「世界が終わるまで、あと10日ーー。」
稀代のストーリーテラー・丸木戸マキ先生が紡ぐ、異色の終末 × 恋愛ヒューマンドラマ!
あと10日で、巨大隕石が地球に落下する。 限界人生を送る社畜サラリーマンの真澄は、せめて残された時間を穏やかに過ごしたいと母校の大学図書館を訪れる。
そこで10年ぶりに偶然再会した男・律は、かつて真澄を裏切り傷つけ、いまの底辺生活の元凶となった 「この世で一番会いたくない昔の男」だった。
律はそんな真澄に、楽に死ねる薬を渡す代わりに死体処理を手伝ってほしいと、とんでもない話を持ちかけてくるがーー?
おすすめポイント
“あと10日で世界が終わる”というハラハラした中で、大学生時代に最悪の思い出のある律と偶然再会してしまうところからスタートします。BLとしても楽しめますが、世紀末のヒューマンドラマとしても楽しめる作品です。
本当にクズな律ですが、律が今ある性格になってしまったのは幼い頃から積み重なったさまざまな事情にありました。真澄と疎遠になってからその存在の大きさに気づきますが、気づいたところで真澄からの印象は最悪なので詰んでる、頭がいいはずなのに恋愛下手な律を応援したくなる気持ちが溢れることも。そんな律の性格がなんやかんやで憎めないため、最後は真澄含め読者までも絆されてしまいます。
設定がシリアスなはずなのに、そこまでシリアスさがなく楽しく読めるのは2人の他に登場する人物のうちの1人、前向きな高校生・遊馬がいるからだと思います。遊馬の発言や行動に引っ張られて周りの登場人物が明るくなったりするシーンを見ると読者まで前向きな気持ちになります。また遊馬が不思議な力を持っているような描写があり独特な存在感があります。
地球が滅亡寸前の人々が騒然としている姿がまざまざと描かれており、「地球が終わるならあなたはどうする?」といった問いが作中の所々に散りばめられていて考えさせられる一冊でした。隕石が衝突する直前(または衝突した)で話が終わっており、その先の2人の運命は描かれていないため読者の受け取り方次第ということになりますが、ファンタジー作品の中でこんなにも読後に胸が弾んだストーリーはありません!
午前2時まで君のもの
出版社:新書館
著者:奥田枠(公式Twitter)
あらすじ
道夫は、学生時代からずっと友人の恭一のことを好きだったが、想いを告げることもなく21歳になる現在まで、キヨラカな友人関係を続けている。
ところがある朝目覚めると、彼の世界は一変していた。
道夫は29歳になっていて、隣には見知らぬ寝顔が――。奥田 枠先生が描く、切なく愛おしく繰り返す、真夜中過ぎのカウントダウン・ラブ、上下同時発売!
おすすめポイント
序盤ストーリーはタイトルの「午前2時まで君のもの」という言葉の意味を理解してしまい切なさを含んだ書き出しとなっています。学生の頃から両片想いの2人、何もなければ順調に関係が進んでいくと思われていましたが、道夫が交通事故を境に眠ると記憶がリセットされてしまう前向性健忘を患ってしまいます。
そこから話は大きく進展し、前向性健忘になってから8年、29歳の道夫が目を覚ますと灯さんという女性と結婚していることが明らかに。お互いの勢いだったとはいえ、結婚している道夫の「ずっと恭一が好きだっただろ?」「なんで他人と結婚してんだよ!」との心の声はとても印象的です。
灯さんと結婚したのは23歳の頃、交通事故に遭ったのは21歳の頃なので前向性健忘になってから結婚を決意した道夫ですが、朝起きると何も分からない恭一に恋心を抱いている21歳の心のままなので、毎朝その自身の決断の重たさ、恭一へのどうすることもできない想いに苦しみます。また、結婚してしまったことに対し、後悔からか恭一がひとり涙を流すシーンも。
色々な問題が解決されていき、最後に恭平が朝を迎えるまで眠っている道夫を眺めているシーンがあるのですが、道夫が起きる直前「おはよう、ミチ…」と涙ながらに言う姿にジンと胸が熱くなります。目が覚めると昨日キスしたことも忘れてしまうというのは悲しいです。
こんなにも報われてほしいと読者が願うカップルは中々いないでしょう。2人で新しい未来を作り出そうとしていく姿は感動と涙なしでは語れません。たくさんの感情がぐちゃぐちゃに混ざってしまうような奥田先生のストーリーはまさに圧巻です。
神様なんか信じない僕らのエデン
出版社:リブレ
著者:一ノ瀬ゆま(公式Twitter)
あらすじ
普通の世界。世界最小の衛星ロケットが打ち上げられ、 天才中学生棋士が最年少で六段に昇格した、そんな世界――。
勉強が好きなこと以外は平凡な喬 織人はある日、 密かに憧れていたクラスメイトの西央凛々斗から異常なほどの良い匂いを感じる。
体育の授業終わり、火照った顔で呼吸も浅い西央を心配し保健室に連れて行こうとする喬だったが、 半ば強引に体育倉庫へと誘い込まれ――?
人類初のαとΩを描く、オメガバース前夜譚!
おすすめポイント
人類初のαとΩが誕生したお話になります。喬と西央に突然起こった身体の変化に、困惑しながらも自分達は一体何になってしまったのかを探っていく、既存のオメガバース作品とは異なる新鮮さがあります。
西央から香る甘い匂いに当てられて本人たちも訳がわからずに身体の関係を持ってしまうところから物語は始まります。αやΩといった概念が全く浸透しておらず、カースト格差もない普通の世界で宇宙や生物といった幅広い分野で博識な喬が、自身や西央の身体の変化からイヌ科の発情期(ヒート)の特徴と酷似していることを突き詰め、“オメガバース”というジャンルのルーツを辿っていくシーンには読者を惹き込む興味深さが。
一ノ瀬先生の作品には登場人物が葛藤したり自分と向き合うシーンが描かれることが多いのですが、本作でも本能と理性の狭間で揺れる2人の心情描写が巧妙に描かれています。
「僕らのエデン」というのはこの世界に初めて誕生したアダムとイブが住んでいた楽園(エデン)のように、初めて誕生したαとΩの世界(エデン)の始まりという意味が込められているように感じます。
人類に第二の性(α・β・Ω)を持つ者が多数派になるその日まで、擬態して“普通”の人のフリをしようと2人で決意するシーンに「世界で2人だけが特異体質(αとΩ)、これは正しく人類が誕生して以来のエデンだ」と思いました。とても奥が深い作品ですので、オメガバースがお好きな方には一度読んで欲しいです!
[文/星いおり]