やっとキャラデザができる! 一時と紅雪と時貞をデザインしたコンペ秘話――秋アニメ『忍の一時』キャラクターデザイン・総作画監督・鈴木 勇インタビュー
『アルドノア・ゼロ』や『アイドリッシュセブン』で知られるTROYCAが、DMM picturesとタッグを組んでお届けするオリジナルアニメ『忍の一時』。渡部周監督を中心に実力派スタッフが集結した本作がついに2022年10月から放送開始となります。
『表向きには』忍者が存在しないはずの世界。なぜか甲賀忍者に命を狙われる櫻羽一時は、自らが伊賀忍者第19代正当後継者だと知り、誰も知らない忍者の世界に身を投じることに。しかし、それは一時が辿る過酷な運命の、ほんの序章でしかなかった……。
アニメイトタイムズでは、未だ謎に包まれる本作についてインタビューを実施します! 第4回はキャラクターデザイン・総作画監督・鈴木勇氏です。
【鈴木 勇さんプロフィール】
アニメーター。
代表作:『ラブライブ!』シリーズ、『魔装学園H×H』、『アイドリッシュセブン』、『ロード・エルメロイII世の事件簿』(作画監督)、『やがて君になる』(総作画監督)ほか多数
やっとキャラデザができる!
――最初に企画の説明を受けたとき、どんな感想を持たれました?
鈴木:「TROYCAであんまりやらない感じの作品だな」と、「アクションが面白そうだな」という感じでしたね。キャラクターデザインにはコンペを経て決まったんですけど、企画の内容よりも何よりも、自分としては「やっとキャラデザができる!」という喜びのほうが大きかったというのが、正直なところです(笑)。
――キャラクターデザインを担当されるのは今回が初めて、しかもオリジナル作品ですものね。
鈴木:だから、いろいろなことを試してみたいと思っていました。
――ちなみにコンペの段階では、どのようなオーダーがあったのでしょう?
鈴木:コンペでは一時と紅雪と時貞をデザインしたんですけど、その段階では「マスクをしている女の子」とか、「どこにでもいるような男の子」くらいの指示でしたね。キャラデザに正式に決まった後に、作品が狙っている年齢層に合わせたり、いろいろと調整していったんです。
――コンペ段階ではかなり自由度が高かった。
鈴木:そうですね。逆にいえば取っ掛かりが少ない状態だったので、自分の素の絵柄が前面に出たものになっていたと思います。だからコンペのために描いた最初期の絵は、あんまり自分では見たくないですね……(笑)。
――そこから絵柄を調整していく過程では、どのようなオーダーが?
鈴木:TROYCAの社長の長野(敏之)さんからは、「紅雪は小動物みたいな可愛さを出せたら」と言われましたのを覚えています。思いの外、絵としては普通の女の子になってしまった感が、自分としてはありますが……。
――いやいや。雰囲気ありますよ。渡部周監督からは、何かありましたか?
鈴木:基本は好きにやらせてくれて、上がったものに対して指示をいただく形でした。たとえば、キャラクターの膝の位置とか。「脛が長い方がカッコいい」と言われたんです。自分は解剖学的なこだわりで、「大腿骨が人体で一番長い骨だ」という知識に基づいて描いていたんですが、立ち絵で見たときに膝の位置が低くなってしまうんですね。それを考えると、脛が長い方が見栄えがする。そういう、自分の中で勝手に「こうしないと」と決めつけているところを、監督に壊してもらったような印象でした。
――さきほどお話に出た、企画の狙っている年齢層に合わせた調整というのは?
鈴木:少年誌ではなく、青年誌くらいのテイストだとざっくり言われたので、少しリアル寄りになるように意識しました。「ヤングジャンプ」に載っていそうなイメージというか。ただ、もともと僕自身、リアル寄りな絵が好きなのもあって、結果としてはそんなに描いたものに大幅な修正が入ったわけではないですね。絵柄もそこまで、この作品のためにデザインしたというより、結局自分の素の絵柄に近いものにはなってしまったような(笑)。