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「Cing」デビュー1周年記念|銭湯に鏡広告を出してみた

キャラクターアーティスト「Cing」デビュー1周年記念! 銭湯に鏡広告を出してみた

※この記事はCingスタッフによる寄稿です

昨年10月28日のアーティストデビュー時に、アニメイトタイムズでもインタビュー記事などで取り上げたキャラクターアーティスト「Cing」が、2022年10月28日にめでたくデビュー1周年を迎えます。

・Cing 公式YouTubeチャンネル

1周年に合わせて何か面白いことができないかと考えていた時、大阪市此花区の「千鳥温泉」さんがTwitterで鏡広告なるものを募集しているのを発見しました。

「これは面白い!」と思ったCingスタッフは、すぐに社内稟議を通して出稿を決定。
せっかくなら実際に鏡広告が設置されるまでの流れを、イラストや文字を描くところから取材させていただけないかと図々しく相談して本企画が始動しました。

「鏡広告」とは?

そもそも皆さんは「鏡広告」というものをご存知でしょうか?
ズバリこんな感じで銭湯の浴室などに掲示されている広告です。

一般的な銭湯には浴室や脱衣所に鏡が設置されていますが、その鏡と一緒に掲出される広告が「鏡広告」と呼ばれるものです。

最近では「昭和レトロ」なモノとして、ニュースやネットメディアで取り上げられているのを見たことがある方もいるでしょう。
今回は、この鏡広告に半年契約でCingとして出稿させて頂くことになりました!

大阪市此花区で愛される街の銭湯「千鳥温泉」さん

今回、鏡広告を出稿させて頂くのは、大阪市此花区で70年近い歴史を持つ「千鳥温泉」さん。

アニメファンにはTVアニメ『バンドリ』の第2期 第3話に登場した「旭湯」のモデルになった銭湯、と言うと分かる人が多いかもしれません。

そしてこちらが千鳥温泉の店主である桂 秀明さん。

桂さんはずっとサラリーマンをされていたのですが、2017年にこの千鳥温泉のオーナーになったという異色の経歴の持ち主です。

あえて手書きがおすすめ!? 鏡広告の制作の流れ

昨今、広告というとデジタル入稿が一般的ですが、「千鳥温泉」さんの鏡広告はこちらで原稿(ラフ)を作るところから、職人さんによるイラストや文字入れ、仕上げの加工まで基本的に全て手作業で進んでいきます。
今回の鏡広告は大まかに以下の流れになるそうです。

①Cingスタッフが原稿を作成する
②提出した原稿を見本にして、看板職人さんの手によって広告が描かれる
③仕上げ職人さんの手で仕上げ作業を行う
④浴室に広告を設置する

ということで、まずは広告の原稿を作るところから全ては始まります。
桂さんから頂いたサンプルを参考にしつつ、まずはラフのラフとしてパワーポイントでイメージをまとめてみました。

社内会議で確認が取れたら、これを桂さん提出用として手描きでラフに起こしてみます。

見た人に一目でアーティストと認識してもらいたいので、広告のテーマは「未来の音楽プレイヤー」
そこに「未来の音楽あり〼(ます)」という、ちょっとレトロなフレーズでアクセントを付けてみました。

なお、パワポの状態で提出しても良いそうなのですが、事前に桂さんからは「手書きの原稿を強くお薦めします」とアドバイスを頂いていました。
なんでも、その方が「職人さんのアイデアや味が出やすくなる」そうで、より仕上がりが楽しみになるとのこと。
もちろん迷わず手書き原稿で入稿します。

通常であれば原稿が完成したら、そこから先の工程は先方にお任せ。
しかし、今回は原稿を受け取った千鳥温泉さんが職人さんに制作依頼して、完成するまでの過程を取材させていただくために一路大阪へ向かいます。

看板職人歴36年のサインズシュウさんによる驚きの職人技

千鳥温泉の桂さん、桂さんのお誘いでご一緒することになったライターのスズキナオさん、地元のアーティストよいまつりさん、というバラエティ豊かな4人で大阪環状線・西九条駅に朝9時に集合。
よいまつりさんの運転する車でサインズシュウさんへと向かいます。
(運転してくださったよいまつりさん、ありがとうございました)

Cingスタッフが作った原稿を、ちゃんとした鏡広告にしてくださるのが、大阪貝塚市に工房を構える看板屋「サインズシュウ」さん。

そして、ご自身で製作された看板の前でポーズを決めて頂いたのが、このサインズシュウの代表であり職人の上林 修さん。

上林さんは「サインズシュウ」というアカウント名でTwitterやYouTubeでも活躍されている方。
Twitterで #今日の一文字 というハッシュタグでレタリング動画をアップしてバズったり、YouTubeチャンネルの登録者数が2万人超えという、ネット界隈ではちょっとした有名人です。

早速、工房にお邪魔すると、本日描いて頂く鏡広告が並んでいます。
(隣は別案件で製作中の『じゃりン子チエ』)

Cingのイラスト部分は描いてから乾かすまで最低でも1日は必要とのことで、前日のうちに描いておいて頂いた状態からスタートします。

「未来の音楽あり〼」という文字を描いて頂くのですが、早速サインズシュウさんから「右上にネジ穴が入るから、文字の置き方を調整していいかな?」とバランス調整のご提案。
もちろん問題ありません。

文字を置く位置に白ペンで枠を書くと、ペンキをつけた筆でスラスラと文字を書いていきます。
やり直しがきかない作業に躊躇することなく、迷いのない筆さばきは正に職人技。
作業中も話しかけて良いとは言われているのですが、ついこちら側も息を呑んで見守ってしまいます。

写真だとわかりづらいのですが、実は文字の書き順が正式なものとは異なっています。
これは「横棒から書くことで、全体の間隔を整えている」とのこと。
その言葉通り、見事な寸法で文字が描かれていきます。

ここまで描くのにわずか5分ほど。
生で拝見すると迷いのないスピードはもちろん、手書きにもかかわらずブレのないフォントにも驚かされます。

そして、息つく間も無く、続けて仕上げ作業へ。
写真をよく見るとわかるのですが、Cingのイラストに縁取りが無いので、黒色のペンキで縁取りを加える作業が残っているのです。
細い筆に変えて、見本を見ながら慎重に黒い縁取りを入れていきます。

そして完成した鏡広告がこちら。

Cingは表情や洋服のデザインなど細かいバランスが難しい印象があり、実際に工房で実物を見るまでは、どんな仕上がりになるのか期待と不安が入り混じっていました。

そんな不安が杞憂に終わるくらいの上林さんの圧倒的な職人技。

上林さんも「こういう風に描ける人は、もう本当にいなくなってきていると思う」とおっしゃるように、かなり貴重な技術と制作の様子を惜しげもなく見せて頂きました。

「広告に命を吹き込む」とはよく使われる表現ですが、この意味を改めて実感できる取材になりました。

浴場広告の仕事とは? 業界歴56年の江田さんによる仕上げ作業

サインズシュウさんの職人技が存分に振るわれた鏡広告を持って、一同は近畿浴場広告社さんへと向かいます。

近畿浴場広告社の江田 ツヤ子さんは、この道56年の大ベテラン。

今回の記事では普段あまり聞かない単語が頻出していますが、この「浴場広告(社)」という名称も初めて見たと言う方も多いかと思います。

その名の通りではありますが、鏡広告など銭湯関係の広告を主に取り扱う広告会社さんです。
全国的に銭湯が減少しつつある昨今、江田さんの作業場で見せていただいた浴場組合の冊子によると、現在では近畿地方でも2軒ほどになってしまっているそうです。

そんな近畿浴場広告社さんでの作業は、主に「面取り」と「フィルム貼り」という仕上げの工程となります。
「面取り」は広告が描かれたプラスチック板のザラつきを取ること、「フィルム貼り」は浴場に設置した際に水滴や湿気に触れても大丈夫なように防水フィルムを貼る作業です。

江田さんの作業場はご自宅の一室。
「前向きに座る形で大丈夫ですか?」と作業される位置を確認されるや否や、早速カッターで勢いよくプラスチック板の端を削っていきます。

▲江田さんの面取りの勢いにブレる写真。

▲江田さんの面取りの勢いにブレる写真。

あまりの勢いに「えっ!?」と驚く一同。
「亡くなった主人はカンナを使っていたんですけど、私はカンナは使えないからね。何か良い方法がないかなと見つけたのがカッターなんです」と説明しながら、シャッシャッシャと削っていきます。

「触ってみてください。ザラザラが無いでしょ?」と作業が終わったものを触ると、確かに縁のザラつきが取れて滑らかになっています。

面取りが終わると、ヤスリを手にする江田さん。
「今度は角を取りますね」といいながら、四隅をヤスリで削って丸くします。

こうすることでフィルムが破れて隙間から水滴が入るのを防ぐとのこと。

「次はテレピンで表面をきれいにしますね」と言いながら”テレピン”と呼ばれる液体が入ったビンを取り出す江田さん。
テレピンという耳慣れないものは「テレビン油」とも呼ばれるシンナーに似た液体で、松脂を水蒸気蒸留して抽出した精油だそうです。
このテレピンで表面を擦ることで、細かな汚れが落ちてフィルムを貼れるようになるらしいのですが……

「ええっ!? そんな勢いよく擦って大丈夫なんですか!?」

上林さんが描いた広告の上を、勢いよくテレピンが着いた布で擦っていきます。
擦った勢いでイラストや文字が消えてしまわないか不安だったのですが、見事にイラストに付いていた汚れが消えて、表面がピカピカの状態になっていきます。

テレピンで表面を綺麗にしたところで、続いて鏡広告を取り付けるためのネジ穴をキリとドリルで開けていきます。

穴を開けたら、その部分も丁寧に面取りしてフィルムを貼るための準備は完了。
慎重にフィルムを貼ると、気泡やシワを江田さん手製の道具で取り除いていきます。
フィルムの余分な部分をカッター(刃を直握り!)で切ると、縁の部分を最後の面取りをして広告部分は完成!

いよいよ両面テープでガラスに貼り付ける作業。
背面に両面テープを貼り付けていきます。

ネジ穴の位置や縁同士を合わせつつ、広告が取付けられて完成したものがこちら。

半日がかりで制作過程を密着しているので、完成した鏡広告を見ると感慨もひとしお。
デジタル全盛の時代に、全ての工程が手作業だからこそ感じられる温もり。
どの工程でも人の手による細やかな作業が入っていたのがとても印象的でした。

上林さんと江田さん2人の職人さんの職人魂が込められた鏡広告を持って、いよいよ千鳥温泉さんへと設置に向かいます。

ついに千鳥温泉にCingの鏡広告を設置!

完成した鏡広告を慎重に車に積み込んだ車が千鳥温泉に到着。

今回は別案件と合わせて数枚の鏡広告があるのですが、桂さんは慣れた手つきで古い鏡広告を取り外すと、あっという間に今回作ったものに取り替えてしまいました。

「こんなにパパッと取り替えられるものなんですか?」とスタッフが伺うと、笑いながら「以前はこの作業も業者さんにお願いしていたんですけど、今は自分でパッとやっちゃうようになりました」との返事。
ものの15分くらいで今回作った様々な鏡広告が取り付けられていきました。

ついに設置されたCingの鏡広告がこちら!

上林さんに目の前で描いて頂き、江田さんに仕上げて頂いた鏡広告が千鳥温泉さんの浴場に掲出されています!

鏡だから当たり前ですが、それでも輝いて見えます。

職人さんの技術が詰まった繊細な広告なのに、銭湯で裸にならないと見られないというのはなんだか不思議な感じです。

このCingの鏡広告はアーティストデビュー1周年に合わせて10月28日(金)から半年間の掲出予定。
この記事が掲載された今日現在は男湯に設置されていますが、3ヶ月後を目処に女湯に移動するそうです。
皆さんも関西方面に行かれる機会があれば、ぜひ千鳥温泉さんに足を運んでみてください。

千鳥温泉さんに浸かってリラックスした方が、何気なく目にしたCingの鏡広告が気になって風呂上がりの牛乳を飲みながら聴いてみる。

そんな光景が見られたらスタッフ冥利に尽きるな~と思っています。

[文・写真/岩崎航太]

千鳥温泉 情報

JR西九条駅から徒歩12分、阪神千鳥橋駅から徒歩6分。 USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)から約3kmにある千鳥温泉は、1952年創業の町のお風呂屋さんです。
浴室にある小さな豆タイルで描かれた大きな富士山のタイル絵は他ではあまり見られない貴重なものです。
熱めの主湯や無料の乾式サウナと最適温の水風呂との繰り返しの温冷浴でたっぷりリフレッシュしていただけます。
風呂上がりはゆったりとロビーエリアで冷たいお飲み物をお楽しみください。
番台はフロント形式なので女性の方もご安心してご来店ください。

大阪府大阪市此花区梅香2-12-20
◎営業時間/14:30~22:30
(火曜 定休日)
◎TEL/06-6463-3888

千鳥温泉 公式サイト

よいまつりさん情報

今回、車を運転してくださった よいまつりさんはアーティスト。
面白い音楽を作られているので、ご興味を持たれた方はぜひ聴いてみてください。

よいまつり 公式サイト

よいまつり Twitter

よいまつり SOUNDCLOUD

Cing アーティスト情報

Beingグループ内のレーベルasistobeによるキャラクターアーティストプロジェクト『Cing(シング)』

◆公式サイト
◆公式YouTubeチャンネル
◆公式Twitter
◆公式Instagram

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