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秋アニメ『陰実』OxT(オーイシマサヨシ・Tom-H@ck)インタビュー【連載02】

秋アニメ『陰の実力者になりたくて!』OPテーマ担当 OxT(オーイシマサヨシさん・Tom-H@ckさん)インタビュー|歌詞が主人公・シドそのものな「HIGHEST」、二人がおすすめするフレーズとは【連載02】

逢沢大介さん原作の人気ライトノベル『陰の実力者になりたくて!』(陰実)のアニメが好評放送中! 先日放送された3話では転生したシドが15歳になり、姉のクレアと同じミドガル魔剣士学園に入学。寮のルームメイトとのゲームで第二王女のアレクシアに告白することになるもなぜかOKされて、付き合うことに。婚約者のゼノンとの結婚を回避するためというアレクシアと、アレクシアからの報酬目当てで偽の恋人関係を続ける二人。そんなある日、アレクシアが誘拐され、シドが容疑者として拘束され、今後の展開が気になった3話でした。

注目作の放送開始を記念して、アニメ『陰の実力者になりたくて!』にまつわるキャストやスタッフなどへのインタビュー連載をお届けしています。第2回はOP曲を担当するOxTのオーイシマサヨシさんとTom-H@ckさんです!

『陰実』の印象や「HIGHEST」の誕生秘話、そしてシングルカップリング曲に、Tom-H@ckさんも参画するユニット、MYTH & ROIDの「Paradisus-Paradoxum」(『Re:ゼロから始める異世界生活』後期OPテーマ)のカバーバージョンを収録した経緯、そして二人の黒歴史!? など話していただきました。

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陰の実力者になりたくて!
『我が名はシャドウ。陰に潜み、陰を狩る者……』みたいな中二病設定を楽しんでいたら、まさかの現実に!?主人公でも、ラスボスでもない。普段は実力を隠してモブに徹し、物語に陰ながら介入して密かに実力を示す「陰の実力者」。この「陰の実力者」に憧れ、日々モブとして目立たず生活しながら、力を求めて修業していた少年は、事故で命を失い、異世界に転生した。これ幸いと少年・シドは異世界で「陰の実力者」設定を楽しむために、「妄想」で作り上げた「闇の教団」を倒すべく(おふざけで)暗躍していたところ、どうやら本当に、その「闇の教団」が存在していて……?ノリで配下にした少女たちは勘違いからシドを崇拝し、シドは本人も知らぬところで本物の「陰の実力者」になっていき、そしてシドが率いる陰の組織「シャドウガーデン」は、やがて世界の闇を滅ぼしていく――。作品名陰の実力者になりたくて!放送形態TVアニメスケジュール2022年10月5日(水)~2022年2月15日(水)AT-X・TOKYOMXほか話数全20話キャストシド・カゲノー/シャドウ:山下誠一郎アレクシア・ミドガル:花澤香菜アイリス・ミドガル:日笠陽子アルファ:瀬戸麻沙美ベータ:水瀬いのりガンマ:三森すずこデルタ:ファイルーズ...

『陰実』はなろう系&俺TUEEE系の中でもトップクラスにおもしろい作品。OP映像を見て曲とマッチしていて安心感も

――『陰の実力者になりたくて!』の原作を読まれた感想とアニメをご覧になった感想をお聞かせください。

オーイシマサヨシさん(以下、オーイシ):元々、異世界ものや、なろう系が大好きで、特に俺TUEEE系がかなり好きで。OxTとしてOP曲やED曲を担当させていただいているアニメ『オーバーロード』は俺TUEEE系の中でもトップクラスにおもしろい作品ですけど、『陰実』も勝るとも劣らない作品だと思っています。原作と一緒にコミカライズもよく読んでいたので、今回のOP主題歌のお話をいただいた時はすごく嬉しかったですし、この世界観の中に自分の歌声が入ることができるんだなと、とても光栄に思ったことを覚えています。

一般的な異世界ものの主人公は現実世界ではオタクだったり、弱い立場だったのにも関わらず、異世界に転生したら強くなっていることが多いけど、主人公のシドは現実世界でも強さを追求していて、「核に勝ちたい」というのもおもしろい観点だなと。そして主役なのに陰で暗躍するものに徹する姿勢も、僕の中二心をめちゃめちゃ、くすぐられました。

アニメの1話では現実世界での描写が多かったので、「現実世界でのエピソードがこんなに描かれるんだ!?」と驚きました。転生もののアニメでは現実世界はAパートで終わらせることが多いけど、この作品ではBパートでも描かれていて、エンドクレジットも早いタイミングで流れたのでおもしろいなと。そこからCパートに入って転生後の物語が始まっていく構成もトリッキーで。そして最後に僕らの「HIGHEST」とOP映像が流れて。楽曲的にも構成が豊かで、TVサイズの中でもAメロ、Bメロ、サビ、Dメロまで入っているので、「どんなOP映像になるのかな?」と楽しみにしていたら、すごくスピード感があって、素敵な映像を付けていただけて光栄でした。

Tom-H@ckさん(以下、Tom-H@ck):本編の前のPVで初めて動く映像を見た時、ものすごくクオリティーが高くて、「ここまできれいで、あのキャラクターデザインでここまで動くんだ」と感心したことを覚えています。だからアニメ本編もOP映像も楽しみでしたが、スピード感がある映像になっていて嬉しかったです。

そして映像と一緒に「HIGHEST」が流れた時、まったく違って聴こえたのも印象的でした。音楽を作る時、僕らは何度も聴いているので、イメージが覆ることはあまりないんですけど、今回に関しては「これで大丈夫だったんだな」とホッとしました。今までにないような音楽性を突き詰めたこともあって、不安な部分もありましたが、アニメを見た時、腑に落ちて安心できました。

――本作の中でのお気に入りのキャラクターや七陰の中で誰が一推しなのか教えてください。

オーイシ:アニメがまだ始まったばかりなので、それぞれのキャラの魅力が出し切っている状態ではありませんが、原作やコミカライズを読んだ中で一番好きなのは三森すずこさん演じる七陰第三席のガンマです。ちょっとお姉さんキャラで、商才を発揮していて、チョコレートのエピソードもとても好きです。しっかりしていそうで、ちょっとドジなところがあるギャップ感など萌えざるをえません(笑)。次点は、今後人気が出てくると思いますが、第四席のデルタです。演じるのがファイルーズあいさんということで、イメージもピッタリで、これから魅力的に描かれていくのだろうなと期待しています。

Tom-H@ck:KADOKAWAさんとはたくさんのアニメ作品のお仕事でご一緒させていただいていますが、異世界ものの作品を数多くやらせていただいていますが、どの作品も主人公が好きで、作詞を手掛けることが多いhotaruも同じことが多いんじゃないかと思います。この作品の主人公のシドは物語を汲み取る上でも、曲を作る上でも重要なキャラだと思っています。

――シドは善人というわけでなく、立ちふさがったり、ジャマをする敵に対しては冷酷になったと思ったら、他人に優しく振舞う場面もあったり、つかみどころがないのがおもしろいですよね。

Tom-H@ck:異世界ものの作品では典型的ではない、一筋縄ではいかない主人公が多いかもしれませんね。

オーイシ:シドがおもしろいのは正義と悪という概念がないところで、中二設定の中で自分がやりたいことをしているだけで。僕はそれほど中二病をこじらせてはいませんでしたが、屋上や屋根の上で戦況を見守るシチュエーションに憧れがあったし、小中学生の頃に思い描いていた中二感を主人公が拾ってくれている感じが、僕らの傷跡を優しくなでている感じがしてありがたかったです(笑)。

――今回のOP主題歌「HIGHEST」を制作するにあたって意識された点や、オーダーがあった場合は合わせてお聞かせください。

Tom-H@ck:KADOKAWAさんとご一緒してから3年くらい経ったら、具体的な注文をいただくことはなくなった気がします(笑)。それは信頼感の表れだと思うし、今回も僕らが楽しめて、いいものを作ってほしいというリクエストなのかなと。以前、オーイシさんと音楽プロデューサーの若林(豪)さんとの対談企画でもOxTをキャスティングした時点で、任せているみたいなことをおっしゃっていました。

あと若林さんからは「『陰実』の物語や世界観を表現する上で、表に見せていない才能を戦わせてほしい」と言われました。そしてオーイシさんのボーカルスキルと僕の楽曲を作るスキルを、今まで表現したことがないようなメロディー感で『陰実』の世界観に合わせていきました。また参考曲が送られてきて、オーイシさんのファルセットと地声を行き来するようなテクニカルな要素も入れてほしいと。それ以外は自由に作らせていただきました。

アレンジは僕ではなく、KanadeYUKにやってもらっています。アレンジを委ねる場合は僕のほうから「Bメロはこんな感じで」などリクエストをするケースが多いんですけど、今回は意識的にそれをしませんでした。例えばサビ前で難しいキメが入っていますが、デモの段階では入っていなかったり、自由にやってもらっています。トリッキーさや今までにない部分を見せようとする場合、他者のインスピレーションをつぶさないほうがリスナーさんの元に届いた時、結果的におもしろいものができるのではないかと。

オーイシさんのボーカルも独特な言葉にできないストレートさを感じていて、楽曲が個性的に光っている部分に大きく関与していると思っています。B1、B2というセクションがあり、ラップっぽくなったり、変則的になる部分がありますが、全部裏声みたいなニュアンスでやってもおもしろいかもと思ったり、一般的なラップだとおもしろくないなという僕の気持ちをオーイシさんが汲み取ってくれて、ラップもオクターブを重ねてメロディをつけてもらったりといろいろな人のいろいろなインスピレーションが音になじんでいった楽曲になったと思います。

――オーイシさんは曲を受け取った時、どう思われましたか?

オーイシ:難しい曲を書いてきたなと(笑)。構成が多くて、いろいろな要素が詰め込まれている楽曲だったので、Aメロだけ、Bメロだけなど部分でレコーディングしました。だからこそ、よりセクションごとの色分けができているかなと思っています。

この曲で一番Tomくんと相談したのは、キー決めでした。ファルセットと地声を行ったり来たりする歌唱方法でテクニカルさを出したいということでしたが、あまり高すぎると頑張っても届かないこともあるので。僕から提案したのはサビの頭の「HIGHEST」の繰り返しをファルセットのオクターブ上と下の実音を同じくらいのボリューム感で出していますが、元々あったメインメロディはオクターブ上のファルセットに重ねているメロディで、2つ合わせたほうが現代的におもしろい響き方をするんじゃないかなと。

Tom-H@ck:確かに相談してそのアイデアが採用されましたね。

オーイシ:高いほうをハモり扱いにしてもらって、低い地声をメインメロディ扱いにしてもらいました。そしてミックスダウンの時、ハモりのオクターブの音を大きくしてもらいました。だからサビ頭はモダンな感じで、どっちの音階でもとれて、今っぽさが出せている気がして、とても気に入っています。

――OxTの楽曲は毎回いろいろな要素が詰め込まれていて、聴き心地がいい曲でも実は複雑だったりしますが、そこにオーイシさんの多彩なボーカルワークが加わることで、楽曲に厚みがあるんですよね。

オーイシ:ありがとうございます。最近、思うのは僕、歌がうまくなっていて。自分で言うのは恥ずかしいんですけど(笑)。2021年6月から鈴木愛理さんと『アニソン神曲カバーでしょdeショー!!』という番組をやらせていただいますが、かなり過酷で(笑)。今のアニソンや主題歌で使われる曲は難しい曲が多いんですけど、それを生歌でカバーしなくてはいけないので、めちゃめちゃ練習するようになって。だから「HIGHEST」みたいなテクニカルな曲が来た時でも対応できる引き出しがいまだに増え続けていて、それが役に立ったかなと思います。

歌詞はシドそのもの。聴きどころで二人が挙げたのはサビの「HIGHEST」のフレーズ

――あとアニメのOP主題歌は先のストーリーや要素を織り込んでいて、見進めていくうちにわかるというケースが多い気がしますが、この曲の歌詞はシドそのものですね。

オーイシ:作詞のhotaruくんから歌詞の意味や意図を聞くことはあまりなくて、受け取ったメッセージを読み解いてオーイシさんなりの解釈で歌ってくださいというパターンが多いのですが、今回もそうで。僕もシドそのものだなと思いながら歌っていました。シドが陰で暗躍してリーダーシップを取っている感じの歌い方がいいなと思ったし、ちょっと強めのニュアンスや芯がある感じを入れてみました。

――いろいろな表情を見せる歌声やサウンドなど、曲全体がシドなんですね。

オーイシ:そうかもしれません。この取材時点ではまだライブで歌ったことがないんですけど、その時はマントを用意しようかなと(笑)。歌っていると合法的に中二になれる曲なので、皆さんの前で歌うのが楽しみです。

――この曲の聴きどころや注目ポイントは?

オーイシ:サビの一行目と三行目の「HIGHEST」と歌っているところで、「上と下のどちらを取ろうかな?」と耳が迷う感じが今っぽくて好きですし、聴きどころかなと思っています。

Tom-H@ck:サビ頭は僕的にも聴きどころです。めちゃくちゃキャッチーな、J-POPではあまりやらない音符とメロディ感で、マニアックな曲だけど聴き終わるとそのメロディが頭に残って何度も反復するのは事象としておもしろいことだなと。オーイシさんの声の力やオクターブを重ねた感じ、メロディの流れなど独特のパワーが宿っているので、聴きどころです。

あと数カ月前にツアーを行いましたが、横で「OxTの曲ってめちゃめちゃ大変だよな」と思いながら聴いていたので、今後はキーも下げて歌いやすい曲を作っていかないと、と思いました(笑)。

オーイシ:ぜひ聴き込んでカラオケで歌って、僕の苦労を知ってほしいです。「オーイシ頑張ったんだな」とわかっていただけたら嬉しいです(笑)。

Tom-H@ck:と言いつつも、ある取材でオーイシさんがこの曲はキーが高すぎないので、ライブでは歌いやすいかもと言っていたし、近々生でやる予定もあるので楽しみです。

オーイシ:あと言葉数も印象的で、Bメロでは16分音符で全部の楽器が同じメロディを弾いていて、メインのボーカルと他の楽器との早い追いかけ合いもおもしろいなと。早口言葉に近いところもあって、ぜひ注目してほしいし、実際に歌ってみてください。

――滑舌も大切な曲なので機会があれば、シド役の山下誠一郎さんに歌ってほしいですね。

オーイシ:もし歌ってもらえたら最高ですね。どう歌ってもらえるのか楽しみです(笑)。山下さんといえば、演技も素敵ですね。シャドウとシドの2つのフェイズを用意されていて、その演じ分けが素晴らしくて。すごい声優さんだなといちアニメファンとして楽しませていただいています。

――ジャケットのコンセプトについてお聞かせください。

Tom-H@ck:OxTはジャケットに関してはあまり希望や提案をしたことがなく、その時々の作品や楽曲にインスピレーションされたものを他者からアイデアを形にしていくことが多くて。

今回は、2人はジャケットに登場せず、深い世界観を感じられるようなジャケットを作ろうということになって、想像以上にカッコいいジャケットになりました。

オーイシ:CDの完成品をいろいろな現場で、共演者や関係者の方にお配りさせていただいていますが、皆さん口をそろえて、「カッコいいジャケットだね」とか「アニメと合っているね」と言っていただいて。僕らが写っていなくても世界観が表せるジャケット、表紙は素敵だなと思いながら、今も配りまくっています(笑)。

 

(C)逢沢大介・KADOKAWA刊/シャドウガーデン
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