三浦先生の容赦のなさに感服──『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』脚本 大河内一楼さんインタビュー

映画三部作『ベルセルク 黄金時代篇』の公開から10年。TVシリーズ『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』として、鷹の団の、あの輝かしい時代が再び語られていく。

原作は言わずとしれた三浦建太郎による同名コミック。2022年6月時点で全世界累計発行部数5,500万部（紙+電子）突破する、世界で愛され続けるダークファンタジーが、STUDIO4℃による鮮烈な映像表現でアニメーションとして描き出される。メモリアル・エディションでは映画版では描かれなかった「夢のかがり火」など原作珠玉の名シーンが追加されている。毎週土曜日24:30～好評放送中だ。

アニメイトタイムズでは、かつての制作秘話、新規シーンへのこだわりなど作品に込めた想いをスタッフ＆キャストが語り明かす連載インタビューを実施。第11回は、多くの読者が心を寄せ続ける原作から魂の躍動の軌跡を掬いあげ、脚本として紡ぎ出した大河内一楼さんインタビュー（後編）をお届けする

三浦先生の容赦のなさに感服

──映画三部作の制作当時のお話を伺います。大河内さんはフランスへのロケハンにも参加されたのですよね。

大河内：行きました。窪岡（俊之）監督と美術の竹田（悠介）さんと4℃の制作スタッフさんとの４人の旅でした。フランス語を話せる通訳的な人もなく、現地ガイドもなく、宿も僕と監督で相部屋だったりもしましたね。夜中までプロットの話をして、意見がぶつかって、ちょっと雰囲気が悪くなったまま翌朝を迎える、みたいな。真面目ですよね(笑)。もうちょっとフランスを楽しめばいいのに。

──ロケハンには、大河内さんなりの構成イメージもしたためて臨んだのでしょうか？

大河内：まだそんなに固めてはいなかったです。ロケハンがより必要なのは絵を描く人たちの方なので、僕はカメラ持ったり荷物を持ったりという役回りでした。しっかりとした原作があるので、「この取材データは、あのシーンに使おう」など、ある程度想定した上で、各地へ向かった感じですね。たとえば、ウインダム城の参考としてベルサイユ宮殿やパリのシテ島周辺の建造物を取材したりしています。

──当初、映画を軸にサーガ全体を描くのがいいんじゃないか、という構想があって、そこから黄金時代篇を三部作で描くことになったというお話でした。

大河内：最初は、映画を主軸に、OVAがあったり、TVがあったりと同時多発的に色々なベルセルクがリリースされるという話だったんです。僕はそのプロジェクトの全体のストーリー配置と映画の脚本担当という感じでした。「僕がここからここまでを映画で書くから、このエピソードはあなたがＯＶＡで書いてね」という感じで。でも、擦った揉んだした結果、まずはシンプルに映画を作ろうという話になって。結果的には三部作の映画という形になったのですが、僕への発注は一本の映画を想定したものでした。

──黄金時代篇を１本で、となると取捨選択は相当大変だったのでは。

大河内：『ロード・オブ・ザ・リング』や『タイタニック』など、3時間ぐらいある映画にもヒット作はあるじゃないですか。そんなイメージで、3時間みっしりと『ベルセルク』の世界に浸っていただいて、大好きになって帰ってもらう、というのがいいんじゃないかなと僕は思ったんですね。とはいえ、確かに削るのにかなり苦労した覚えがあります。けっこう途中をかっ飛ばしながら、3時間で楽しむならこうかな？みたいな。削りたくないシーンばかりだったけれど、それよりもお客さんが『ベルセルク』に触れやすい方がいいだろうと考えて。

──それから、三部作で行こうという話に。

大河内：はい。なので、結果的には多くの好きなシーンを削らなくて済みましたね。