声優
朗読劇『霧雨が降る森』12/10公演レポート

シオリの目線だけではなく、須賀の目線で描かれる、朗読劇ならではのエピソードが満載! 朗読劇『霧雨が降る森』12/10公演をレポート

主人公・神崎シオリ役を久保田未夢さん&瀬戸麻沙美さん(Wキャスト)が演じ、須賀孝太郎役を濱野大輝さん、佐久間美夜子役を小原好美さん、望月洋介役を赤羽根健治さん、ことりおばけ役を大原さやかさん&日笠陽子さん(Wキャスト)と、そうそうたるキャスト陣が務めました。

なお、今回の公演では、主人公のシオリ目線で物語を追っていく「SIDEシオリ」と、須賀のモノローグを中心に、彼の抱える秘密や想いなどを描いた「SIDE須賀」の2部制で展開。2つの公演を観ることで繋がる伏線が散りばめられています。

本稿では、10日(土)公演の模様をレポートとしてお届けします。

シオリ&須賀の視点から明かされる、ふたりの約束と森に隠された物語の全容

「おいで おいで 約束を果たしに」

霧雨の音にかき消されそうで、それでいてどこか情念の込められた、“ことりおばけ”の呼び声によって物語は幕を開けます。

主人公は、両親を交通事故で亡くし、天涯孤独となった女子大生の神崎シオリ。両親以外の親類はいないものと思っていた彼女がたまたま見つけた古い写真には、初めて見る祖父と、阿座河村という住所のメモ書きが。祖父に会って話をするために、シオリは夏休みを機に阿座河村へ赴くことを決意します。

廃線となったバスを知らずに待っていたところ、通りかかった村の警官・望月洋介に村まで送ってもらうことに。そこでは、祖父が亡くなったこと、祖父が住んでいた屋敷は村の資料館となっていることを聞かされます。

動揺しながらも資料館に赴いたシオリが出会ったのは、須賀孝太郎という青年と佐久間美夜子という少女。

須賀は、とある事情から喋ることができず、筆談でコミュニケーションをとっている資料館の管理人。何故か模造刀を帯刀しており、村の人間からは変わり者と呼ばれています。

一方の佐久間は、家庭や学校に馴染めず、隠れ蓑として資料館に赴いては、何度も須賀や望月の世話になっているじゃじゃ馬娘。かなり気の強い性格で、先のふたりもかなり手を焼いている様子。

そんな3人に囲まれつつ、シオリは祖父の手がかりを見つけるため資料館に滞在することに。資料館では、村のこどもをさらっていく“ことりおばけ”と、それに立ち向かった村人こと“おがみさん”を描いた「ことりおばけとおがみさん」という伝承や、孫とその友達についてシオリの祖父が綴ったであろう日記、祖父名義の土地の謄本など、自身のルーツに関わる手がかりを探すと同時に、謎の既視感も覚えていきます。

日々が過ぎていく中で、シオリを気にかけては助力する望月、軽口を叩きつつもシオリのことを「お姉さん」と慕う佐久間でしたが、須賀だけは、調べ物が終わり次第帰るように促し、シオリのことをよく思っていない様子。

あるとき、村の役人が須賀に資料館の立ち退きを強要し、いわれのない悪態までつかれながら口が出せずにいたところ、シオリは相続者であることを伝えて役人を追い払います。そこで須賀は心を開いたかのように「ありがとう」「夕飯食べる?」と、シオリに問いかけ、やっと距離が縮む様子が窺えました。

夕食を共にしたシオリは、村に訪れた日から抱えていた違和感を払拭するため、「須賀さんと昔どこかで……」と問いかけますが、形相を変えてやってきた望月の声にかき消されてしまいます。佐久間が家に帰っておらず、失踪した旨が伝えられたのです。

早速、捜索に加わろうとするシオリですが、須賀からは森に入るなと強いメッセージで警告が。資料館の中を捜索するシオリですが、どこからともなく“ことりおばけ”の「約束覚えてる? 逃げられない」という言葉と共に、館内が豹変。廊下に続く血を辿っていくと、佐久間の不安そうな声が。彼女が森の中に連れて行かれたことを確信すると、須賀の言伝を破り森の中に入っていくことを決意。

「みつけた やくそく」とささやく子供の声と、「おいで おいで」と誘う“ことりおばけ”の声に誘われるように歩みを進めるシオリですが……。

シオリが度々耳にする、“ことりおばけ”のおどろおどろしい呼び声と、不穏なメッセージを残す謎の子供の声。「ことりおばけとおがみさん」の伝承を紐解くと同時に、シオリ自身のルーツを明かしていく息もつかない展開の数々。さらには、須賀に抱いた既視感が、「SIDEシオリ」では徐々に明かされていきます。

緊迫するストーリーもさることながら、声優陣の演技も物語を彩っていきます。シオリを演じる久保田さんは、ときに明るく、ときに強かさを感じられる芝居で、観客と共に阿座河村の怪奇に足を踏み入れていきます。その前向きな声色からはクライマックスにかけて帰結していく物語の中でもひときわ希望を感じられ、観終わったあとにどこかカタルシスを覚えるほど。

濱野さん演じる須賀は、基本的には筆談でコミュニケーションをとるため、「SIDEシオリ」において喋ることはほぼないのですが、声にならない絶妙な息遣いで喜怒哀楽を表現しており、耳だけで伝わる情緒は流石の一言。

「SIDE須賀」においては、独白を通して「SIDEシオリ」で語られなかった彼の心情がセリフとして明らかになり、同じストーリーをなぞりながらも、異なる視点で彼らの行く末を観届けることができます。独白で語られる須賀の感情は、「SIDEシオリ」からは想像できないほどに振れ幅が大きく、シオリを想う気持ちや様々な葛藤は、観ている側も心を揺さぶられることでしょう。

日常的な場面から感じられる佐久間の気の強さは、口こそ悪いものの彼女の芯の強さの表れ。悪辣な役人に対し、強い言葉で追い返す跳ねっ返りぶりは観客も、スカッとさせられることでしょう。一方、森の中に連れて行かれ窮地に陥る芝居は、日常パートとのコントラストとして印象深く、より観客の没入感を高めます。そんな中でこそ、相手を思いやる根の優しさが垣間見え、話が進むにつれて印象が大きく変わるキャラクターと言えます。

謎を解き明かしていくにつれて差し迫る展開に対し、赤羽根さんが演じる望月の芝居からは絶対的な安心感が得られます。冒頭のシオリに手を差し伸べる場面や、佐久間に気をかける素振りは序盤に張り巡らされた伏線となり、後半の登場シーンでは、声を聞くとどこか安堵を覚えるほど。赤羽根さんの温かみのある声や芝居から発せられる望月の姿は、まるで本作における灯火のよう。

“ことりおばけ”や、謎の子供たちの声を演じるのは大原さやかさん。状況や役柄に応じた声色と芝居、息遣いは、包み込むような優しさを見せる場面もあれば、とてつもない恐怖を与えるものまで、まさに変幻自在。物語において、シオリを何度も呼ぶ「おいで おいで」の声は、冒頭から終盤に至るまで、観客の背筋を凍りつかせ、彼女の存在感を表現します。

さらに、“ことりおばけ”が登場する要所で差し込まれるダンサーの表現によって、大原さんの芝居は解像度を高め、観客を阿座河村の深淵へと引き込んでいきます。

多くのユーザーを魅了したストーリーをアップデートし、霧雨の静寂を基調とした音・映像・ダンサーによる演出、声優陣の熱演が相まって、本公演ならではの『霧雨が降る森』を体感することができました。

しかし、ここまでご紹介した内容のほとんどは「SIDEシオリ」の魅力の一端。先述の通り、「SIDE須賀」では、彼の抱える想いや苦悩がより色濃く描かれ、新たな『霧雨が降る森』の世界に浸れることでしょう。

現在、上記の10日(土)公演に加え、シオリ役を瀬戸麻沙美さん、ことりおばけ役を日笠陽子さんがWキャストとして務める11日(日)公演のアーカイブが18日(日)まで配信中です。

初めて阿座河村に訪れるあなたも、過去に訪れたことのあるあなたも、この機会に朗読劇『霧雨が降る森』の世界に足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

配信チケット

【購入期間】12月18日(日)21:00まで
【視聴期間】12月18日(日)23:59まで
【イープラス販売URL】https://eplus.jp/readpia_kirisame-st/

朗読劇『霧雨が降る森』特設ページ
READPIA 公式Twitter

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