春アニメ『君は放課後インソムニア』中見丸太役・佐藤元さん×曲伊咲役・田村好さん、声優ならではのリアルな葛藤を乗せた二人の演技とは|「作品を通して皆さんと“不安”を共有したいな」
「ビッグコミックスピリッツ」にて連載中の、オジロマコト先生による青春漫画『君は放課後インソムニア(以下、君ソム)』。ファン待望である本作のTVアニメが、2023年4月10日(月)よりテレビ東京にて絶賛放送中です。
物置部屋になっている天文台で出会った、不眠症に悩む高校生・中見丸太(なかみがんた)と、クラスメイトの曲伊咲(まがりいさき)。第2話(「タイトル」)では、倉敷兎子(CV.能登麻美子)先生を顧問に迎え、ふたりは天文部を設立。望遠鏡で月を観測するなど、本格的に部活が始動しました。
本稿では、中見丸太役の佐藤元さんと曲伊咲役の田村好さんのインタビュー後編をお届け!
佐藤さんが涙したという、第2話の伊咲の台詞についてや、初共演を通してのお互いの感想、声優としての不安や葛藤などについて語っていただきました。
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安心し合える丸太と伊咲は奇跡の関係
ーー第2話では天文部が設立され、ふたりの距離も縮まりました。丸太と伊咲の関係性の変化をどのように演じましたか?
曲伊咲役・田村好さん(以下、田村):私には変化をつける技量がなくて、とにかく素直になるように意識しました。眠れないという悩みを共有できる「この人には言える」と言う安心感を表現するには、素直になることが一番なのかなって。
時々「明るく振る舞う私は本当に私なのかな?」と思うことがあります。クラスメイトと一緒にいる伊咲も同じかもしれないと思っていまして。明るさは嘘ではないですが、「心からの笑顔なのかな?」と考えると私は頷けないので、感じたままを演じた方がいいなと思い、丸太と伊咲の素直同士の会話を心がけていました。
中見丸太役・佐藤元さん(以下、佐藤):僕はグループに属さない陰キャな高校生でした。
丸太が素直になった時は、そんな高校時代でも「本当はこれで良かったのかもな」と思えるトーンで話しています。この素直さを引き出してくれたのは、このちゃん(田村さん)のお陰です。
(満足げな田村さん)
佐藤:実は素直同士なんですよね、丸太も伊咲も。最初から一緒に寝れたのも(距離が縮まる要因として)大きいのかなと。
田村:一緒に寝れるってすごいですよね! 居心地が良いからできることです。
佐藤:肩を預けて寝る描写は純愛作品ならありますが、ふたりは知り合いになったばかりなのに、波長が合うからか安心し合えているんです。この世の中で自分以外に安心できる相手は何人いますかね?(笑) 本当に片手で数えられるかもわからないくらい。そんな中で、落ち着ける人に出会えているのは奇跡ですよね。
ーー大人なら安心できる相手が稀だと口に出せますが、高校生の頃はそこまで考えられないと思います。にも関わらず、「中身がいないとさ 眠れないから」と言える関係にキュンときますね。
佐藤:お互いにいないと駄目だと本能的に感じているんでしょうね。
ーー田村さんは伊咲について「どこか憂いを帯びた様な立ち居振る舞い」とコメントされていました。そんな一面が見える「私が月に行ったら、そこから手ぇ振るよ」という台詞も飛び出しましたね。
田村:その台詞は「先に行ってるから、またね」と言っているような気がして。伊咲はまだ高校生なのに人生は長くないと感じていて。あの台詞だけでただ明るい子と括ってはいけないなと、儚い憂さを感じましたね。
ーーこの台詞を聞くと、第1話の冒頭の天文部の霊の話を、もう一度振り返ってみたくなりますよね。
田村:冒頭のナレーションは私ではないのですが、あの話を作ったのは伊咲であり、完全な嘘ではないのかなって。自分の人生を反映しているのかな、とも思います。
ーー丸太には気がついてほしいサインなのかなとも受け取れます。
田村:気がついてほしいけれど、重くなるから言い切れない。伊咲なりの主張なのかなと思います。
ーー佐藤さんはその台詞を近くで聞いていていかがでしたか?
佐藤:帰ってから泣きました。
大事な人がいなくなるのが怖いんですよ。“儚さ”という言葉がこれほど似合うシーンはないと思います。「もしかしてこの子は……」と考えますが、その先は誰も言いたくないんです。なので、(インタビュー前編で)話したように二人静の花言葉(「いつまでも一緒」)に込めて願うしかなくて。と言っても、物語の結末を知っているのはオジロ先生ですから(笑)。
ーー先を読むのがちょっと怖くなりますね……。
佐藤:そう、怖いんですよ。ふたりにはいつまでも仲良く楽しい高校生活を送ってほしいので、どうか幸せなままでいてほしいなと願っています。
「佐藤さんの丸太に出会えて良かったな」
ーーおふたりは初めての共演となりますが、アフレコを終えてみてのお互いの印象や感想を教えてください。
田村:真隣で聞いていて、役ではなく素で苦しそうで、魂を削っているなと感じていました。アニメのレギュラーに初めて入って、一番関わらせていただいた方で、「佐藤さんの丸太に出会えて良かった」と心から思います。
佐藤:すごく嬉しいです。オーディションに受かった時、嬉しさよりも先に「誰が相手なの?」と気になりました。というのも、この作品は伊咲が肝になるなと感じていたので。このちゃんだと知り、すぐにサンプルボイスや過去の作品、一瞬の音声も聞きました。徹底的に調べてシミュレーションしました。
田村:実は私も同じことをしました。ちょうど見ていたアニメの主役が佐藤さんでしたし、YouTubeチャンネルも見ながら「とんでもなく熱い方だな」と思いつつ(笑)。視聴者の質問に真面目に答えられていて、丸太そのままの方だからついていけばいいなと思っていました。
佐藤:ありがたいですね。僕の座長像は小林裕介さんで、芝居をやりやすい雰囲気を作りたいと思っています。普段はおしゃべりしますが、収録になるとピッと空気が切り替わって、コロナ前なら収録後にご飯へ行ったりとか。オンオフがしっかりあって、良い座組だなと思われるような座長でありたいと思っています。
弊社の松岡禎丞さんからは役者としての心構えを教えていただきました。余計なことは言わず、芝居の中で語り、他の方が心持ちを感じてくれればいい。集中して自分の役割を果たすことを徹底している僕を見て、魂を削ってると感じたのかな?
田村:心配になるんですよ! 収録の中盤で、「『君ソム』の収録は魂が削られるから、その日は1本にしてもらった」とおっしゃっていて、鳥肌が立ちました。
佐藤:丸太と僕があまりに似過ぎているので役に引っ張られそうだなと思い、リアルを追求するために人生を削らないと届かないかもしれないと考えて、『君ソム』一本に絞りました。
ーー引っ張られてしまいそうなほど似ている丸太役は、憑依させるような感覚で演じられているのでしょうか?
佐藤:作品によっては役を憑依させることもありますが、どちらかと言うと基本は直感派ですね。ですが、この作品は特別で、人生を賭けて内から出している感じです。「こんな話し方する人だっけ?」とファンの方もびっくりするんじゃないかな?
ーーPVを見た時から、今まで聞いてきた佐藤さんの声ではないなと感じていました。
佐藤:声の高さ、低さとかではないので、違和感があって良いと思っています。絵もとても綺麗で、動作もリアルでアニメっぽく見えない作品ですから、僕もその雰囲気に沿うようにしたいと思いながら演じています。