
2023年初冬公開『劇場版 ポールプリンセス!!』に先駆け、主題歌シングル&キャラクターソングアルバムリリースに寄せて――音楽・東大路憲太さんインタビュー
意識したのはメロディーの面白さ
――劇場版主題歌にもなっている主題歌「Starlight challenge」は作品を象徴する曲になりましたよね。ものすごくキャッチーでメロディが耳に残ります。
東大路:そう言っていただけると本当にうれしいです。自分が主題歌を作るときに大切にしているのが、メロディとコードだけをピアノで弾いたときに、つまらなくならないもの。例えば、キャラソンってラップだけでも成立するじゃないですか。つまり、メロディーの良さじゃないところで勝負することもできるんですよね。でも主題歌は何で勝負するかと言えばメロディーで。
――曲によるかもしれませんが、コードすら飾りの印象があります。
東大路:そうですね。そのため、いかにちゃんと自分が面白いと思えるメロディーを書けるかということに注力しました。
――その面白いメロディーというのはどうやって浮かんでくるものなのでしょうか。
東大路:本当にちょっとずつ、ちょっとずつです。今回はワンコーラスのメロディーだけ作るのに一週間くらい。パソコンで作ってしまうとある程度イメージが固まってしまうので、五線紙にひたすら音符を書いていましたね。ああでもない、こうでもない、と。ただ、作業をしている間はつらくはなくて。いろいろなパターンを書いて「ここのパターン面白いな」とか、ジグザグと行ったり来たりしていました。ただ目指しているのは、爽やかで、みんなが覚えやすい……アニソンという言い方でくくるのがいちばん分かりやすいのかと思うのですが、そういう方向でした。そこを目指して、サビを何パターンか書いていました。
――東大路さんの中で手応えを感じたのはどの段階だったのですか?
東大路:歌詞が来たときや、歌を録りおわったときです。イメージを固めないで作っていったことで、頭の中になんとなくあったものが、だんだんと固まっていきました。
――アニソンという言葉がありましたが、YouTubeの中での放送ということもあって、パンチラインのようなものも大切にされたのではないでしょうか。
東大路:間違いないです。今回は劇伴もやらせていただいていますが、主題歌のメロディが良いものであれば劇伴でも使えるなと思っていまして。実際に制作するにあたって、主題歌に加えて主人公である星北ヒナノのキャラクターソングも制作させていただいていたので、その2曲のメロディを意識して劇伴制作を進めていきました。
キャラクターソングアルバムは十人十色
――7月26日(水)に主題歌シングルとキャラクターソング・アルバムが同時発売されます。東大路さんは、主題歌と星北ヒナノ(CV.土屋李央)の「Wish upon a polestar」だけではなく、蒼唯ノア(CV.早見沙織)の「眩暈の波紋」も手掛けられていますが、それぞれの曲についてもぜひおうかがいさせて下さい。
東大路:はい、ぜひ。
――ヒナノの「Wish upon a polestar」はイベントで初披露となりました。polestarは北極星という意味で、作中タイトルにも登場します。本作にピッタリな言葉ですよね。
東大路:そうですね。歌詞はマイクスギヤマさんが書いてくれていて、まさにポールダンスにピッタリな言葉だなと思っていました。polestarは、地球の自転軸上にある、明るい星のこと。プラネタリウムもまさに地球のような、円形ですし、その中心にポールがあって。ヒナノが最後に踊っているシーンは、まさにpolestarという言葉にピッタリだなと思っていました。
――<たとえ飛び切り無謀な チャレンジでもゼロじゃないよ 可能性はあるから>という言葉があります。ヒナノらしい、そして本作を象徴する言葉のように思います。
東大路:チャレンジという言葉はヒナノちゃんにピッタリですよね。僕はヒナノちゃんのキャラデザがすごく好きなんですよ。その後、土屋さんのセリフを聞いて、思い入れが強くなってしまって(笑)。だから「Wish upon a polestar」に関しては、ヒナノちゃんの声でこういう曲を歌って欲しい!という……そういう個人的な思いもありました。ヒナノちゃん特有の繊細な息遣い、かすれ具合、そういうものがどれだけ際立つかというところを意識して作っています。
―― 一方、蒼唯ノア(CV.早見沙織)の「眩暈の波紋」はガラりと変わって、雅やかな雰囲気。歌詞の雰囲気もまったく違いますね。
東大路:和風というテーマをいただいていたので、同じポールダンスでもコンセプトが違うだけでまったく違う曲が当てはまるんだ、と自分自身でも思いました。しかもそれがピッタリとハマる。三者三様のポールダンスがあるんだなと改めて感じますね。
早見さんの歌を頭の中でイメージしながら「早見さんにこういう曲を歌ってほしい」という思いで作りました。レコーディングはほぼ一発オッケーで、ものすごく良いものを聴かせていただいたなと。どれだけ早見さんが伸び伸びと歌われているかというのも聴いて欲しいなと思っています。
――主題歌シングル「ポールプリンセス!! Starlight challenge」、キャラクターソングアルバム「ポールプリンセス!! -Solo Pole Song Album-」を改めて聴いて、どのようなご印象がありましたか?
東大路:主題歌を改めて聴くと、初めて作品に出会ったときの、自分のワクワク感を思い出します。レコーディングもミックスも時間を多く取り、コーラスやハモりも丁寧に録りました。手間が掛かった分、思い入れも強いので、ぜひ聴いて欲しいです。自分が手掛けた曲以外は僕の事務所の仲間が書いていて。作家が違うだけでも、まったく違う色彩を放つ曲になっています。それはサナ(CV.日高里菜)の「Avaricious Heroine」に顕著だと思います。
――「Avaricious Heroine」は、サナ姫コールが入っていて、本作の中でもまた違ったカラーの曲となっていますよね。
東大路:そうですね。本当に玉手箱のようなアルバムになっています。