マンガ・ラノベ
『魔道祖師』雲夢江氏特集|江澄の思いと双傑&江家の歴史を辿る

【シリーズ五大世家②】『魔道祖師』雲夢江氏特集|現宗主・江澄の思いと雲夢の双傑、江楓眠&虞紫鳶の縁など雲夢江氏一族の歴史を辿る

人気作家・墨香銅臭先生が綴る中国BLファンタジー小説『魔道祖師』。アニメや実写ドラマ『陳情令』、ラジオドラマ、漫画などのメディアミックスも展開し、世界が熱狂するメガヒット作品です。

本作は、妖魔や邪気などが人々の生活を脅かしていた架空の古代中国を舞台に、主人公・魏無羨(ウェイ・ウーシエン)と藍忘機(ラン・ワンジー)の激動の運命を描く物語。五つの仙門世家が大きな勢力を誇るなか、暴虐の限りを尽くしていた岐山温氏を討伐すべく、雲夢江氏、姑蘇藍氏、蘭陵金氏、清河聶氏の四大世家は一致団結します。

本日11月5日はそんな名門のひとつとして知られる雲夢江氏の現宗主・江澄(ジャン・チョン)のお誕生日。おめでとうございます! 本稿ではお誕生日を祝して、江澄が尽力して再建を果たした「雲夢江氏」をご紹介。

十代でも必死に修練しなければならない状況で、無理矢理大人にならざるを得なかった時代。若くして一人で仙門の大世家を仕切る運命を背負った江澄の思いや双傑の夢、家族の関係性を中心に雲夢江氏一族の歴史を辿ります。

※本稿には『魔道祖師』『陳情令』のネタバレが含まれます。ご了承ください。

 

明朗な雲夢江氏の家訓は「成せぬと知りても、為さねば成らぬ」

仙府:雲夢・蓮花塢
雲夢江氏の読み:うんぼうジャンし(アニメ&『陳情令』での日本語読みは「うんむジャンし」)

 

雲夢には多くの湖があり、蓮花塢は湖に隣接して建てられています。蓮花湖には葉と葉、花と花が触れ合うほどに咲き乱れ、美しい光景が見られるそう。他家の仙府とは異なり、周辺に住む一般人の出入りを禁止せず波止場はいつも賑わっていました。

雲夢江氏の家紋は「九弁蓮」で、校服は紫色。家訓は「成せぬと知りても、為さねば成らぬ」。一族の開祖である江遅(ジャン・チー)は遊侠出身で、江家の家風は明朗で度量が広く、正直で屈託がないものです。

江家の家訓と信念をよく理解する魏無羨とは対照的に、前宗主・江楓眠(ジャン・フォンミエン)の妻である虞紫鳶(ユー・ズーユエン)と、母親似の息子・江澄の人柄と性格は完全にその家風と正反対の方向を向いています。

 

前宗主・江楓眠&虞紫鳶(虞夫人)の縁と、蔵色散人との関係

 

江楓眠と虞夫人こと虞紫鳶の夫婦関係があまりよろしくないことは周知の事実。そんな二人は元々同世代の修士で、十代の頃からの知り合いです。気立てが穏やかで雅やかな江楓眠と、逆に強気で冷たく厳しい虞紫鳶。共に修練した仲で、家柄が雲夢江氏と眉山虞氏で良く釣り合っているとはいえ、二人の関係は特別深いものではありませんでした。

そんななか、抱山散人の弟子・蔵色散人(ぞうしきさんじん)が俗世に下り、旅の途中で雲夢を通った時に江楓眠と出会います。二人は友人になり、夜狩を共にしてお互いのことを非常に高く評価し合っていました。しかし世間の予想に反して、最終的に江楓眠は虞紫鳶と婚姻を結んでいます。

当時、眉山虞氏が雲夢江氏に縁談を持ちかけ、宗主は大変乗り気でしたが江楓眠は良縁ではないと何度も断っていました。けれど、多方面から圧力をかけられた上に、蔵色散人が江楓眠の最も忠実な側仕えの家僕であった魏長沢(ウェイ・チャンゾー)と結ばれ道侶に。その後二人が遠くへとあてもない旅に出たこともあり、江楓眠は結局折れて縁談を受け入れたのです。

江虞両家の二人の結婚は成立したものの、上手くいっているとは言えず年がら年中別居状態。蔵色散人の子である魏無羨を巡っても言い争いをしています。

 

旧友が遺した子・魏無羨を連れて帰り、雲夢江氏で育てる

 

江楓眠は魏長沢と蔵色散人がともに夜狩で命を落としたという知らせを受けてから、ずっとその二人の旧友が遺した子供を探していました。そして、やっと夷陵の町中でその子を見つけて雲夢に連れて帰り、我が子同然の待遇で育てるのです。

 

 

魏無羨が蓮花塢に連れて来られた頃、江澄は8、9歳。何匹かの子犬を飼っていましたが、魏無羨がとても怖がるため子犬たちは他家に譲ることに。江澄はひどく癇癪を起こしており、しばらくは魏無羨に敵意を抱いていました。

けれど、いつしか打ち解けて一緒にイタズラをするぐらいに仲良くなります。江澄の姉・江厭離(ジャン・イエンリー)とも絆を深め、魏無羨にとって彼女のことは守るべき特別大切な人となっています。

江楓眠は魏無羨の両親のことをあまり語ろうとはせず、また虞夫人は思うところがあるようで魏無羨にきつくあたっていました。やがて、蓮花塢は壊滅の悲劇に見舞われ、江楓眠と虞夫人は江澄と魏無羨を逃がしたあと帰らぬ人に。『魔道祖師』の最もしんどいシーンのひとつです。

虞夫人が身につけていた指輪「紫電」は、息子の江澄に託されています。「紫電」は最高級の霊器であり、虞夫人の意思を最優先にしていたのですが、江楓眠を二番目の主人として認めていたことが明らかになります。それは江楓眠もこれまで知らないことでした。二人は最後に、くれぐれも江澄のことを守るよう魏無羨に言い残しています。

 

 

雲夢の双傑と江澄の思い

 

雲夢江氏の姉弟

江楓眠の長男・江澄は、本家直系の公子でいずれは江家の宗主となる身。しかし、魏無羨には修為も夜狩も一生勝てないという劣等感を抱え、性格が母親に似ていて父親から愛されていないことに胸を痛めていました。宗主の長男でありながら「一番弟子」の座を魏無羨に持っていかれていることを思うと、彼のプライドはひどく傷ついているはず。

それでも、姉の江厭離と三人仲の良い様子も見受けられます。江澄が魏無羨に文句を言いながら時に罵倒しながらも、お姉ちゃん大好きな弟二人の構図が尊くて愛おしい江家の姉弟たち。けれど、この時代は現世とは違い緊迫しており、彼らの穏やかな時間はそう長くは続きませんでした。

 

 

江澄が江家の若き宗主に

 

岐山温氏により蓮花塢が滅ぼされて両親が他界し、化丹手こと温逐流(ウェン・ジューリウ)により金丹を消された江澄は生きる希望を失います。しかし、魏無羨の導きにより金丹を取り戻したあと、他世家と協力して温氏の討伐に成功。力を尽くして雲夢江氏を再建するのでした。

壮絶な経験を経て、若くして宗主の座に就いた江澄は、悲しみを乗り越えて無理矢理大人にならなければならなかったのです。

魏無羨が鬼道を修めたことに関しては当初あまり追及することはなかった江澄。温氏への復讐をする雲夢の二人の残忍な一面も垣間見ることができます。一族の恨みを晴らすこの場面は、鬼道に関する魏無羨への追及の件も含めて姑蘇藍氏の藍忘機には立ち入れない領域でもありました。

 

魏無羨が雲夢江氏から離反

射日の征戦後、あらゆる犠牲を生んでまで温氏の生き残りを守ることを選ぶ魏無羨に江澄は感情をぶつけています。

「お前が頑としてこいつらを守ろうとすれば、俺がお前を守れない」(日本語版小説第3巻「豪毅」より引用)

こちら側に立っていれば豪傑だ逸材だと称賛されるけれど、立場が変わるだけで残虐非道だの邪道だのと敵視されてしまう。江澄は言葉は悪くていつも喧嘩腰になってしまうけれど、魏無羨を守りたい気持ちも大きいようです。

魏無羨が雲夢江氏から離反したと世間の人々に見せた大芝居のあと、江厭離が蘭陵金氏の金子軒(ジン・ズーシュエン)と結婚。しかしその後、事態はとんでもない悲劇へと向かい、江澄は魏無羨を激しく憎むようになります。

 

 

江澄が見せる執着

魏無羨が死んでからは邪道を修練する者に当たり散らし、魏無羨に奪舎された疑いのある者を捕らえて拷問するなど、その執着ぶりは凄いものだったようです。

江厭離の息子で江澄の甥である金凌(ジン・リン)から見た叔父は、昔から冷たくて厳格な人でした。いつも暗く沈んだ顔をしていて、情を挟まず誰に対しても一切容赦することがなかったといいます。

しかし莫玄羽(モー・シュエンユー)が目の前に現れ、その正体が魏無羨だと確信している様子の江澄は、生気を取り戻したかのようでした。憎悪なのか狂喜なのか、必死で沸き上がる感情を抑えこんでいるものの、目は怖いくらいに爛々と光っていたのです。

 

雲夢の双傑

昔、魏無羨が江澄に語った将来の話は、江澄にとってどれだけ大きなものだったでしょう。彼はこの言葉を後々までずっと心に残していました。

「将来お前が宗主になったら、俺はお前の部下になる。お前の父親と俺の父親みたいにな。姑蘇藍氏に双璧がいるからってなんだよ。雲夢には俺たち双傑がいる!」(日本語版小説第2巻「三毒」より引用)

しかし魏無羨が蘇ってから、彼の隣にいるのは江澄ではなく藍忘機でした。全ての真実を知った江澄が過去の因縁から解放されて素直になって元通り、というわけにはいかないかもしれないですが、かつての雲夢の二人にも思いを馳せてしまいます。魏無羨が江澄に伝えられなかったことがあるように、江澄もまた彼に話せずにいることがあって切なさを残しています。

 

 

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