夏アニメ「先輩はおとこのこ」連載：内田雄馬さん（大我竜二役）インタビュー｜”普通“って言葉には必ず「自分にとって」が付くのではないか

“普通”は人間の数だけある

――まことは「他の人とは違う」「“普通”じゃないかもしれない」という自分の感覚に悩む少年です。内田さんは“普通”とはどういうことを指すと思いますか？

内田：うーん、これはかなり難しい問いです（笑）。ただ、“普通”って自分のなかでの常識だと思うんですよね。だから、みんなと自分の“普通”が違う可能性は大いにあって。「普通なら分かるじゃん」って言われても、それはあくまでその人の感覚であって、周りはそうではないかもしれません。”普通“って言葉には、必ず「自分にとって」が付くのではないかと、僕は思っています。

――確かに、そうかもしれません。

内田：だからこそ、人間は会話が必要だと思うんです。それぞれの“普通”が違うんだから、コミュニケーションを取ってお互いの考え方や気持ちを理解したり、絆を強くしたりしていく。みんなの“普通”を持ち合わせたら、新しい“普通”が生まれる可能性もあるかもしれません。“普通”は人間の数だけあるけれど、それでいいと僕は思っています。

――生まれた場所や年代によっても“普通”って変わってきますよね。10年前の“普通”と今の“普通”は、変わらないものもあれば、変わっているものもある気がします。

内田：僕もそう思います。でもこういうのって、自分が大人になって色々な人の“普通”を知ったからこその考え方なのかも。子供の頃って、もっと狭い世界で生きてきたと思うんです。最初にできるコミュニティは家族という場合が多いでしょうし、その次は学校などが大きなコミュニティになるんじゃないかなと。

そういうコミュニティで、自分の“普通”だけが他の人と違うと、孤独を感じることもあると思います。ただ、社会に出たらもっとたくさん色々な“普通”を持っている方がいて。そこだと、実は自分と同じような“普通”を持っている方がいる可能性だってあるんです。

――コミュニティが広がったら、同じ価値観を持つ人が現れる可能性がある。それは確かに、そうかもしれません。

内田：孤独ってめちゃくちゃ怖いですし、狭い世界でなら本当に辛いと思うんです。でも、世の中に出ると一人じゃないかもしれない。それに、もっと色々な“普通”を持った人もいます。だから、仮になかなか同じ“普通”の考え方をする人が現れなくても、自分が大事にしたいことであれば、それを貫けばいいと思います。人それぞれなのだから、もし分かり合いたいのであれば、ちゃんとコミュニケーションを取る。ただ、押し付けてはいけないかなと。自分の“普通”を侵されたくないのと同じように、他人も“普通”を侵されたくないと思っているはずなので。

――多数派が正しいと思いがちですが、大切なのは自分のなかにある価値観かもしれません。

内田：SNSが盛んな今の時代は、多数派の意見が大きく見えてしまうことがより多くなった気もします。一方の意見がバズっていると、そっちの見え方が正しいみたいになりがちですが、実際に自分の目で見たわけじゃないなら、真実はわからないはず。

「みんなが言っているから、そうなんだ」と思い込んでしまうのは、とても怖いことだと思っています。誰かに言われたからではなく、自分としては何が問題で、何と思ったのかを個人的には大事にしていきたいです。何だか、壮大な話になってしまいましたね（笑）。

――いえ、個人的にはとても共感できる考えです……！　お話しいただき、ありがとうございました。

　
内田：先ほどコミュニティの話をしましたが、本作は多感でコミュニティもまだ広くはない高校生たちを中心とした物語です。学校生活だけでなく、家庭内での考え方や“普通”の捉え方の違い、すれ違いも描かれています。そのなかで、まことが「こうありたい」という気持ちに気づいていく。それが本作の面白さのひとつだと思っています。

――最後に、改めて内田さんが思う本作の推しポイントを語っていただければと思います！

内田：自分というものに不安を覚えて“普通”を求めるけれど、その答えは人の数だけあって。そんなとき、そのままでいいと思える答えをくれるのは、隣にいる誰かなのかもしれません。笑い合える友達と一緒にいるその時間はまさしく青春なのではないでしょうか。三人がずっと笑顔で一緒にいるところを見ていたくなってしまう作品です。

　
［文＆写真・M.TOKU］